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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1105911
異議申立番号 異議2003-72690  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-06 
確定日 2004-08-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3403320号「空気調和機用ワイヤレスリモコン」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3403320号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3403320号の発明についての出願は、平成9年7月8日に出願され、平成15年2月28日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、三菱電機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月25日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

・訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1を削除する。
・訂正事項2
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を請求項1として、
「【請求項1】 空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記第2の表示領域は、設定内容に変更がないときには、上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容以外の第2の設定内容を常時表示し、設定内容が変更されたときに、その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成であることを特徴とする空気調和機用ワイヤレスリモコン。」と訂正する。
・訂正事項3
特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。
・訂正事項4
特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
・訂正事項5
特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を削除する。
・訂正事項6
特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を削除する。
・訂正事項7
特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を請求項2として、
「【請求項2】 空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記操作部の操作により設定された設定内容を確認するための設定内容確認ボタンを有し、この設定内容確認ボタンが操作されたとき、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した後、設定内容を所定時間毎に順次表示し、前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせることを特徴とする空気調和機用ワイヤレスリモコン。」と訂正する。
・訂正事項8
特許明細書の特許請求の範囲の請求項8を削除する。
・訂正事項9
特許明細書の段落番号【0006】を、
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記第2の表示領域は、設定内容に変更がないときには、上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容以外の第2の設定内容を常時表示し、設定内容が変更されたときに、その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成であることを特徴とする。」と訂正する。
・訂正事項10
特許明細書の段落番号【0007】、【0008】を削除する。
・訂正事項11
特許明細書の段落番号【0009】を、
「この発明によれば、設定内容が変更されたときに変更後の設定内容を第2の表示領域で強調して表示しているので、その設定内容の変更をユーザーに喚起して視認性をさらに向上させることができる。
また、基本的な設定内容以外の所定の設定内容については第2の表示領域で常時表示するので、この設定内容を第1の表示領域で表示する必要がない。したがって、その分、第1の表示領域の表示スペースを節約することができるので、第1の表示領域の表記を拡大して視認性を向上させることができる。」と訂正する。
・訂正事項12
特許明細書の段落番号【0010】ないし【0017】を削除する。
・訂正事項13
特許明細書の段落番号【0018】を、
「請求項2記載の発明は、空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記操作部の操作により設定された設定内容を確認するための設定内容確認ボタンを有し、この設定内容確認ボタンが操作されたとき、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した後、設定内容を所定時間毎に順次表示し、前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせることを特徴とする。」と訂正する。
・訂正事項14
特許明細書の段落番号【0020】、【0021】を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1、3ないし6、8の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項2、7は、上記訂正事項1に付随して、従属形式から独立形式に訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項9ないし14は、上記訂正事項1ないし8の訂正と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立ての概要
特許異議申立人 三菱電機株式会社は、甲第1号証(実願平1-95026号(実開平3-33461号)のマイクロフィルム。)、甲第2号証(特開平9-170802号公報)、甲第3号証(特開平4-84945号公報)、甲第4号証(特開平5-208062号公報)を提出し、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それら発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべき旨の主張をしている。

(2)本件発明
上記「2.訂正の適否」で示したように、上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1、請求項2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「2.訂正の適否)の訂正事項2、訂正事項7を参照)

(3)甲号各証に記載された事項
甲第1号証(実願平1-95026号(実開平3-33461号)のマイクロフィルム。)には、給湯器やヒートポンプ式の冷暖房装置などの複合機器の運転条件など、機器の動作を表示する状態表示装置に関して、図面とともに、
「機器本体またはリモートコントロールに表示装置を設け、機器の制御回路からの信号に応じて前記表示装置に複数の項目についての情報を同時に表示する機器の状態表示装置であって、拡大表示部と縮小表示部を有する液晶ディスプレイ素子を備え、縮小表示部には各項目についての現在の設定条件に関する情報を表示し、ある項目について設定条件を変更した場合においては、その項目についての変更後の設定条件に関する情報を前記拡大表示部に拡大して表示することを特徴とする。」(4頁15行〜5頁6行)こと、
「第1図に示すように、給湯器1を遠隔操作するリモートコントロール2には液晶ディスプレイ素子3、給湯器1の運転条件の設定や変更などを行う操作部4、
前記液晶ディスプレイ素子3を駆動するドライブ回路5が設けられている。」
(6頁8行〜同13行)こと、
「また、液晶ディスプレイ素子3は第2図から第4図に示すように、拡大表示部7、第1縮小表示部8、第2縮小表示部9を備えている。」(6頁17行〜同19行)こと、
「第2図に示すように、シャワーの絵11と42℃という数字を拡大表示部7に大きく表示し、リモートコントロール2を操作する者は、変更した設定条件等の情報を一目で確認することができる。このとき、第1縮小表示部8が浴槽内の湯温を表示し、第2縮小表示部9が暖房装置の吹出し温度を表示するため、設定条件を変更した項目(上記の例ではシャワー)以外の他の項目についての情報も同時に確認することができる。」(7頁7行〜同15行)こと、
「この実施例は、液晶ディスプレイ素子3が第5図に示すように拡大表示部7と表示すべき項目数と同数で特定の項目に関する情報を表示する三つの縮小表示部、すなわち、第1、第2及び第3縮小表示部8、9、10を備えている。その他の構成は第1図に示した第1の考案の実施例と同様である。上記の構成を有する実施例の状態表示装置においては、縮小表示部8〜10が所定の各項目(シャワー、浴槽、暖房装置)についての情報を表示する一方で、例えばシャワーについての設定条件を湯温37℃から42℃に変更すると、第5図に示すように、拡大表示部7が変更した項目であるシャワーについての最新の情報を拡大表示する。これにより、操作者は、変更前と、変更後の設定条件を同時に知ることが可能となり、より微妙な調整を確実に行うことが可能になる。なお、ある項目について設定条件を変更した場合、拡大表示部7に先に表示された情報は各項目についての所定の縮小表示部8〜10に転送されて縮小表示される。」(8頁13行〜9頁12行)こと、
が記載されている。

甲第2号証(特開平9-170802号公報)には、空気調和機の運転条件を設定するワイヤレス式リモートコントロール装置に関して、図面とともに、
「リモートコントロール装置の機能は多様化の一途をたどり、表示内容はますます増える傾向にある。ただし、液晶表示部の大きさには限りがあるため、表示内容の増加は相対的な表示面積の縮小を招き、表示が小さくて見にくいというなどの不具合を生じている。」(段落【0003】)こと、
「【0034】つぎに、上記の構成の作用を説明する。
(1)一覧表示
キー操作がないとき、図3に示すように、運転モード、設定温度、風量等の各種運転条件の基本パターン情報が表示部2で一覧表示される。基本パターン情報としては、予め定められた標準的な運転条件に対応するもの、また前回の運転で設定された運転条件に対応するものなど、いずれでもよい。
【0035】(2)拡大表示
一覧表示の状態で運転切換キー11が操作されると、その運転切換キー11に対応する運転条件のパターン情報として、たとえば冷房運転モードを表わす”冷房”という文字パターン情報が図4に示すように一覧表示に換わり拡大表示される。拡大表示される運転モードは、運転切換キー11の操作ごとに切換えられる。確認キー23が操作されると、そのとき表示されている運転モードが確定する。【0036】確定から所定時間が経過すると、図5に示すように、運転モードの拡大表示といっしょに、キー操作に対応しない設定温度、風量等の他の運転条件の基本パターン情報が縮小表示される。」(段落【0034】〜【0036】)こと、
「【0039】(3)現在時刻とタイマー時刻の並列表示
図3の一覧表示がなされるているとき、タイマー切キー17が操作されると、
図7に示すように、時計形の一対の画像パターンが一覧表示に換わり表示部2で表示される。表示される両画像パターンのうち、一方(左側)の画像パターンは現在時刻のアナログ表示を担うもので、指針部分が現在時刻に合わせて動く。他方(右側)の画像パターンはタイマー切時刻(運転停止時刻)のアナログ表示を担うもので、指針部分がタイマーキー18の操作に応じて動く。……【0043】……図9に示すように、現在時刻のデジタル表示とタイマ切時刻(またはタイマ入時刻)のデジタル表示を一画面で行うようにしてもよい。運転開始後は、図10に示すように、砂時計の画像パターンを表示し、砂時計の砂部分をタイマー残時間に合わせて徐々に消すとともに、砂時計の画像パターンの下方にタイマー残時間を逐次にデジタル表示する。
【0044】(4)確認表示
運転中などに確認キー23が操作されると、図11に示されるように、設定されている全ての運転条件が所定時間ずつ順次に拡大表示される。」(段落【0039】〜【0044】)こと、
が記載されている。

甲第3号証(特開平4-84945号公報)には、超音波診断装置における作動条件を断層像と共にモニタ画面に表示する方法に関して、
「(1)作動条件を変更するのに伴って新たな作動条件パラメータが入力されたときに所定の時間作動するタイマを作動させ、このタイマが作動している間は入力された新たな作動条件パラメータを強調表示にて超音波断層画像と同時に表示すると共に、タイマの作動が停止したときには新たな作動条件パラメータの強調表示を通常表示に復帰させて超音波断層画像と同時に表示することを特徴とする超音波診断装置の作動条件表示方法。」(特許請求の範囲(1))
が記載されている。

甲第4号証(特開平5-208062号公報)には、表示面にパチンコ遊技をを映像的に表示して遊技を行う映像式パチンコ遊技機に関して、図面とともに、「拡大選択ボタン20は、拡大映像を表示される条件が成立したときに、映像表示器12に拡大映像を表示させるか否かを選択するもので、拡大選択ボタン20が操作されているときには、上記条件が成立したときに映像表示器12に拡大映像が表示され、逆に拡大選択ボタン20が操作されていないときに上記条件が成立しても拡大映像が表示されず、通常映像がそのまま継続して表示される。」(段落【0010】)こと、
が記載されている。

(4)対比・判断
・本件発明1について
本件発明1は、少なくとも以下の構成要件(a)を具備している。
(a)「上記第2の表示領域は、設定内容に変更がないときには、上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容以外の第2の設定内容を常時表示し、設定内容が変更されたときに、その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成であること」

そこで、この構成要件(a)について検討する。
甲第1号証に記載された「拡大表示部7」(本件発明1の「第2の表示領域」に相当する)に常時表示される内容は、第2図ないし第4図、第5図に示されるように、「縮小表示部8〜10」(本件発明1の「第1の表示領域」に相当する)に表示された設定条件を変更した場合に、その縮小表示部8〜10に表示される設定条件の内容を転送して表示するものであるから、「拡大表示部7」の設定内容と「縮小表示部8〜10」の設定内容は同じものであり、本件発明1のように「上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容以外の第2の設定内容を常時表示し」たものとは認められないし、また、設定条件を変更したときには、拡大表示部7に変更内容を表示しているものであるから、本件発明1の構成要件である「その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成」が示されているものとは認められない。
甲第2号証に記載されたものは、液晶表示部2を、本件発明1のような「第1の表示領域」と「第2の表示領域」とにしたものとは認められないから、第2の表示領域についての本件発明1の、「その後再び上記常時表示に戻る」という構成もなく、甲第2号証には、本件発明1の構成要件(a)の記載は認められない。
甲第3号証に記載されたものは、超音波診断装置のモニタ画面の表示技術であって、空気調和機用ワイヤレスリモコンの表示装置ではないうえに、そのモニタ10の画面を本件発明1のように、設定内容の異なる「第1の表示領域」、「第2の表示領域」とするものではないから、本件発明1の構成要件(a)の記載は認められない。
甲第4号証に記載されたものは、映像式パチンコ遊技機の表示画面に関する技術であって、空気調和機用ワイヤレスリモコンの表示装置ではないうえに、その映像表示器12を本件発明1のように、設定内容の異なる「第1の表示領域」、「第2の表示領域」とするものではないから、本件発明1の構成要件(a)の記載は認められない。

そして、甲第1号証ないし甲第4号証に記載されたものを総合的に検討しても、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

・本件発明2について
本件発明2は、少なくとも以下の構成要件(b)を具備している。
(b)「上記操作部の操作により設定された設定内容を確認するための設定内容確認ボタンを有し、この設定内容確認ボタンが操作されたとき、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した後、設定内容を所定時間毎に順次表示し、前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせること」

そこで、この構成要件(b)について検討する。
甲第2号証には、確認キー23が設けられているものの、液晶表示部2は、本件発明2のような「第1の表示領域」と「第2の表示領域」とを設けたものではないから、本件発明2のように「設定内容確認ボタンが操作されたとき、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した」ものとは認められないし、また、設定内容を所定時間毎に順次表示する構成についても、本件発明2のように「前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせること」の構成についての記載もされていないから、甲第2号証には、本件発明2の構成要件(b)の記載は認められない。
甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載されたものには、設定内容確認ボタンの構成が示されいないので、本件発明2の構成要件(b)の構成が示されているとは認められない。

そして、甲第1号証ないし甲第4号証に記載されたものを総合的に検討しても、本件発明2は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び本件発明2についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1及び本件発明2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機用ワイヤレスリモコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記第2の表示領域は、設定内容に変更がないときには、上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容以外の第2の設定内容を常時表示し、設定内容が変更されたときに、その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成であることを特徴とする空気調和機用ワイヤレスリモコン。
【請求項2】 空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記操作部の操作により設定された設定内容を確認するための設定内容確認ボタンを有し、この設定内容確認ボタンが操作されたときに、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した後、設定内容を所定時間毎に順次表示し、前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせることを特徴とする空気調和機用ワイヤレスリモコン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機の運転を遠隔制御する空気調和機用ワイヤレスリモコンに係り、特に空気調和機の運転モードの種々の設定内容を液晶等で表示する表示部の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の空気調和機用ワイヤレスリモコン(以下リモコンという)は各種操作ボタンの押圧操作により、空気調和機の種々の運転モードを設定し、その設定内容通りに空気調和機の運転を遠隔制御する一方、その設定内容を液晶等の表示部に表示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では空気調和機の機能拡大等に伴って運転モードの設定内容を示す項目が増加しているので、その設定内容を表示する液晶表示部の大型化を招き、リモコン自体の大型化とコストアップを招いている。
【0004】
一方、液晶表示部の大型化を防止する場合には多くの設定内容を示す文字等の表記が小さくなり、見えにくくなるという課題がある。
【0005】
そこで本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、表示部の大型化を招かずに視認性の向上とコスト低減とを共に図ることができる空気調和機用ワイヤレスリモコンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記第2の表示領域は、設定内容に変更がないときには、上記第1の表示領域で表示される第1の設定内容外の第2の設定内容を常時表示し、設定内容が変更されたときに、その変更内容を所定時間拡大文字または拡大記号により表示し、その後再び上記常時表示に戻る構成であることを特徴とする。
【0007】
【0008】
【0009】
この発明によれば、設定内容が変更されたときに変更後の設定内容を第2の表示領域で強調して表示するので、その設定内容の変更をユーザーに喚起して視認性をさらに向上させることができる。
また、基本的な設定内容以外の所定の設定内容については第2の表示領域で常時表示するので、この設定内容を第1の表示領域で表示する必要がない。したがって、その分、第1の表示領域の表示スペースを節約することができるので、第1の表示領域の表記を拡大して視認性を向上させることができる。』
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
請求項2記載の発明は、空気調和機本体の運転を遠隔制御するための操作部と、この操作部の操作により設定された上記運転の設定内容を表示する表示部とを有する空気調和機用ワイヤレスリモコンにおいて、上記表示部は、上記設定内容のうち所定の基本的な設定内容を示す文字や記号を予め決められた位置に固定表示する第1の表示領域と、設定内容が変更されたときに、変更後の設定内容を強調表示する第2の表示領域とを具備し、上記操作部の操作により設定された設定内容を確認するための設定内容確認ボタンを有し、この設定内容確認ボタンが操作されたときに、上記第1の表示領域で表示されている表示内容を上記第2の表示領域で拡大して表示した後、設定内容を所定時間毎に順次表示し、前記所定時間を表示する設定内容によって異ならせることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、設定内容に応じて拡大表示の継続時間を異ならせるので、重要な設定内容は表示時間を長くし、それ以外の詳細な内容の表示時間を短くすれば、設定内容確認に掛かる時間を短くすることができる。
【0020】
【0021】
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図8を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、これらの図中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態に係る空気調和機1の全体構成を示す斜視図である。この空気調和機1は室内機2に室外機3を冷媒配管4により接続して構成され、室内機2の受信部5に、ワイヤレス式のリモコン6から制御信号を赤外線等で送信することにより、空気調和機1の運転を制御信号の指令通りに遠隔制御するようになっている。
【0024】
室内機2は後板本体7に装着される前面パネル8の前面上部に吸込口9を、前面下部に空調空気の吹出口10をそれぞれ形成している。吹出口10には左右風向調節板10aと上下風向調節板10bとを揺動自在に設けている。室外機3は例えばその前面に吹出口11を、その背面と側面とに吸込口12をそれぞれ形成している。
【0025】
図2はこのように構成される空気調和機1の冷凍サイクル図であり、この空気調和機1はコンプレッサ13、四方弁14、室外ファン15を具備した室外熱交換器16、膨張弁17、室内ファン18を具備した室内熱交換器19を図1でも示す冷媒配管4によりこの順に順次接続して冷媒を可逆的に循環させる冷凍サイクルを構成している。なお、図2中、符号20は室温を検出する室温センサーである。
【0026】
この冷凍サイクルは四方弁14の切換操作により冷媒を図中実線矢印方向に循環させることにより冷房運転され、図中破線矢印方向に循環させることにより暖房運転される。
【0027】
図3は上記リモコン6の外観正面図であり、このリモコン6は細長偏平角筒状のリモコンケース21の正面一端部上に液晶表示部22を、その図中やや下方に操作部23をそれぞれ配設している。
【0028】
操作部23は、押す毎に運転と停止とを繰り返して選択する反転スイッチボタンの運転/停止ボタン24、昇温用温度設定ボタン25、降温用温度設定ボタン26、健康除湿(ドライ)運転ボタン27、クリアボタン28、冷房や暖房,ドライ等の基本的運転モードを押す毎に順次切り換える運転切換ボタン29、風向設定ボタン30、風量設定ボタン31、安眠運転ボタン32、リセットボタン33、基本設定復帰モードと操作内容記憶モードを選択する選択手段である基本モード切換ボタン34、空気清浄運転を選択するためのエアーランドリーボタン35、設定内容確認ボタン36、入タイマーボタン37、切タイマーボタン38、タイマー時刻設定ボタン39、タイマー予約ボタン40等をそれぞれ具備している。なお、図3中、符号41はリモコン6の電源である電池である。
【0029】
図4はこのリモコン6の液晶表示部22の拡大正面図である。この液晶表示部22はリモコン操作部23の操作により設定された空気調和機1の運転モードの各種設定内容を液晶で表示するものであり、図中コの字状に配設された第1の表示領域42と、この第1の表示領域42のコ字状開口部内に配設された矩形状の第2の表示領域43とを有する。
【0030】
第1の表示領域42は基本的な運転モード等所定の設定内容が表示される部分であり、予め決められた文字や記号が印刷された液晶パターンからなり基本的な運転モードが表示される運転モード表示部42aと、タイマーの入る時刻とタイマーの切れる時刻とがそれぞれ表示されるタイマー時刻表示部42bと、風量等が表示される風量表示部42cと、空気調和機1の運転電流が表示される運転電流表示部42dとを有する。
【0031】
運転モード表示部42aは運転切換ボタン29が押圧される毎に、例えば自動(運転)→冷房(運転)→ドライ(運転)→暖房(運転)→自動(運転)と順次切り換えてサイクリックに表示される部分である。
【0032】
タイマー時刻表示部42bは、入タイマーボタン37,切タイマーボタン38,タイマー時刻設定ボタン39およびタイマー予約ボタン40の所定操作により、運転停止中の空気調和機1の運転を開始させる時刻と、運転中の空気調和機1の運転を停止させる時刻とが表示される部分である。
【0033】
風量表示部42cは風量設定ボタン31の押圧毎に、自動→しずか→微風→弱風→強風→自動と順次切り換えてサイクリックに表示する部分であり、微,弱,強風は例えば文字ではなく、小中大3つのブロック状体表記の個数の多少により表示されるようになっている。
【0034】
一方、第2の表示領域43は、ドットマトリクス状の液晶パターンからなり、リモコンの表示プログラムにより、表示内容を切り換えるようになっており、第1の表示領域42で表示される設定内容以外の設定内容、例えば設定温度を第1の表示領域42の表示よりも大きい文字等で常時表示する。そして、使用者によりリモコンが操作されて、第1の表示領域42で表示される基本的運転モード等が切り換えられた場合には、その切り換えられた設定内容に表示切り換し表示されるが、その後は再び設定温度が常時表示される。
【0035】
例えば図5(A)に示すように、基本的運転モードが冷房(運転)に切り換えられると、第1の表示領域42の運転モード表示部42aに冷房の文字が表示されると共に、その冷房の文字よりも大きい冷房の文字が第2の表示領域43に所定時間(例えば3秒間)点滅表示される。
【0036】
そして、その所定時間経過後は図5(B)に示すように再び設定温度(例えば24℃)等を表示するノーマル表示に戻り、以後、このノーマル表示が次の切換表示まで続行される。
【0037】
図6(A)はこれと同様に例えば風量を微風に切り換えた場合の液晶表示部22の表示例を示している。この場合は第1の表示領域42の風量表示部42cに、風量の文字と、微風を表わす1個の小ブロック状体表記42c1とを表示すると共に、第2の表示領域43に、大きな書体で微風という文字を所定時間点滅表示する。
【0038】
そして、所定時間後は図5(B)に示すように再び設定温度(例えば24℃)等を表示するノーマル表示に戻り、以後このノーマル表示が次の切換表示まで続行される。
【0039】
したがって、運転モードの設定内容が変更されると、その変更内容が第1の表示領域42に表示されると共に、第2の表示領域43にも所定時間表示され、しかも大きく表示されるので、その設定内容の変更をユーザーは容易に知ることができる。つまり、液晶表示部22の視認性が向上する。
【0040】
そして、第2の表示領域43は設定内容確認ボタン36が押圧されたときには、そのときまでに設定されている設定内容が1つずつ所定時間毎に順次表示され、最後にノーマル表示に戻るようになっている。
【0041】
図7(A)〜(C)はこのような場合の第2の表示領域43の表示例を示している。すなわち、設定内容確認ボタン36が押圧されると、図7(A)に示すように第2の表示領域43に、これまでに設定されている種々の設定内容の例えば冷房の大きな文字がまず所定時間表示される。
【0042】
次に、図7(B)に示すように冷房の文字に代えて微風の大きな文字が所定時間表示され、その後図7(C)に示すように、再び設定温度(24℃)を示すノーマル表示に戻る。
【0043】
したがって、第2の表示領域43の大きな文字によりこれまでに設定されている設定内容を確認することができる。
【0044】
そして、第2の表示領域43は、図8(A),(B)に示すように、例えばエアーランドリーボタン35が押圧されて空気清浄運転が設定されたときに、その空気清浄運転をイメージする図形、例えば室内機2が多数の点で示す塵埃を吸い込む前後の状態を示す複数の図面を時系列で順次表示することにより動画的に表示するようになっている。
【0045】
したがって、空気清浄運転等の特殊なメリット運転の機能や作用効果等をユーザーに容易、かつ強くアピールすることができる。
【0046】
なお、上記実施例では、設定内容確認ボタン36の押圧後に所定時間毎に設定内容を順次表示しているが、設定内容の種類に応じて表示時間を異ならせてもよく、例えば基本的運転モードの表示時間を長くし、それ以外の設定内容を短くすることにより、設定内容の確認に掛かる時間を短くすることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、空気調和機の運転モードの設定内容を第1の表示領域と第2の表示領域とによりそれぞれ表示するので、全設定内容を第1の表示領域のみで表示する場合にはそれらの設定内容を示す表記が小さくなって視認性が低下するのを防止することができる一方、全設定内容を第2の表示領域のみで表示する場合にはこの第2の表示領域の大型化を招いてリモコン自体の大型化とコストが増大するのを防止することができる。
【0048】
また、設定内容が変更されたときには、その変更内容を第2の表示領域でも表示するので、その設定内容の変更をユーザーに喚起して視認性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施形態に係る空気調和機の全体構成を一部切り欠いて示す外観斜視図。
【図2】
図1で示す空気調和機の冷凍サイクル図。
【図3】
図1で示すリモコンの全体を示す正面図。
【図4】
図1で示すリモコンの液晶表示部の拡大正面図。
【図5】
図4で示すリモコンの液晶表示部による表示の一例を示し、(A)は冷房運転に切り換えられたときの表示の一例を示す表示部の正面図、(B)は同図(A)の表示後に切り換えられるノーマル表示の一例を示す表示部の正面図。
【図6】
図4で示すリモコン表示部による表示の一例を示し、(A)は微風運転に切り換えられたときの表示の一例を示す表示部の正面図、(B)は同図(A)の表示後に切り換えられるノーマル表示の一例を示す表示部の正面図。
【図7】
(A),(B),(C)は設定内容確認ボタンが押圧されたときの表示の一例を時系列で示すリモコン表示部の正面図。
【図8】
(A),(B)は空気清浄運転のイメージを第2の表示領域により動画的に表示する場合の表示の一例をそれぞれ示すリモコン表示部の正面図。
【符号の説明】
1 空気調和機
6 リモコン
22 リモコンの液晶表示部
42 第1の表示領域
43 第2の表示領域
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-03 
出願番号 特願平9-182809
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 荘司 英史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
登録日 2003-02-28 
登録番号 特許第3403320号(P3403320)
権利者 東芝キヤリア株式会社
発明の名称 空気調和機用ワイヤレスリモコン  
代理人 関口 俊三  
代理人 波多野 久  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 宮田 金雄  
代理人 関口 俊三  
代理人 波多野 久  

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