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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1105916
異議申立番号 異議2003-72280  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-11 
確定日 2004-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3386945号「食品包装用ストレツチフイルム」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3386945号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第3386945号は、平成7年12月14日に出願され、平成15年1月10日にその特許権の設定登録がなされ、その後、浜部康夫及びオカモト株式会社より特許異議の申立てがなされ、それに基づく取消理由通知がなされ、それに対し特許異議意見書とともに、訂正請求書が提出され、さらに、第2回目の取消理由通知がなされ、それに対し、その指定期間内である平成16年7月16日に、第2回目の特許異議意見書とともに、先の訂正請求書を取り下げ、新たに訂正請求書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の訂正
請求項1の
「【請求項1】 下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108 〜5.0×109 dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレツチフイルム。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂」を、
「【請求項1】 下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層の少なくとも一層に超低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムであって、上記混合樹脂層と食品包装用ストレッチフィルムとがいずれも動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108 〜5.0×109 dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレツチフイルム。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)それぞれガラス転移温度が50〜100℃の範囲にある、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂」と訂正する。
訂正事項b:発明の詳細な説明の訂正
b-1、特許明細書の段落【0034】第5行の「(実施例1)」を「(参考例1)」と訂正する。
b-2、特許明細書の段落【0037】第1行の「(実施例2)」を「(参考例2)」と訂正し、第1行及び第6行の「実施例1」を「参考例1」と訂正する。
b-3、特許明細書の段落【0038】第1行の「(実施例3)実施例1で」を「(実施例1)参考例1で」と訂正する。
b-4、特許明細書の段落【0039】第1行の「(実施例4)実施例2で」を「(実施例2)参考例2で」と訂正し、第2行の「実施例3」を「実施例1」と訂正する。
b-5、特許明細書の段落【0040】第1行及び第6行の「実施例1」を「参考例1」と訂正し、第3、4行及び第9行の「実施例3」を「実施例1」と訂正する。
b-6、特許明細書の段落【0041】第1行及び第6行の「実施例3」を「実施例1」と訂正する。
b-7、特許明細書の段落【0042】第3行の「実施例3」を「実施例1」と訂正する。
b-8、特許明細書の段落【0045】の表1及び表2中の「実施例1」を「参考例1」に、「実施例2」を「参考例2」に、「実施例3」を「実施例1」に、「実施例4」を「実施例2」にそれぞれ訂正する。
イ、訂正の適否
訂正事項aは、特許請求の範囲に関する訂正であり、「混合樹脂層の少なくとも一層に超低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムであって」とする訂正は、特許明細書の段落【0028】の記載事項に基づき、「上記混合樹脂層と食品包装用ストレッチフィルムとがいずれも」とする訂正は、同じく段落【0027】の混合物層からなるストレッチフィルム及び他の非塩ビ樹脂層との積層とすることの記載、及び、【0045】の表1の記載に基づくものであり、また、「それぞれガラス転移温度が50〜100℃の範囲にある」とする訂正は、同じく段落【0016】の記載事項に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的としてなされたものと認められる。
上記訂正事項b(b-1〜b-8)は発明の詳細な説明に関する訂正であり、特許請求の範囲の訂正である上記訂正事項aに伴い、特許請求の範囲との整合性を図るための、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められ、上記訂正事項aと同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。
そして、上記訂正事項a及びbは、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、申立て理由の概要
特許異議申立人浜部康夫は、甲第1号証(国際公開第94/17113号パンフレット)、甲第2号証(特開昭62-43443号公報)、参考資料1(特開昭59-15016号公報)及び参考資料2(旭化成株式会社の合成ゴム・エラストマー事業のホームページ)を提出し、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。
特許異議申立人オカモト株式会社は、甲第1号証(国際公開第94/17113号パンフレット)、甲第2号証(特開昭53-8295号公報)、甲第3号証(特開平6-155676号公報)、甲第4号証(特開平4-270745号公報)、甲第5号証(特開平7-300548号公報)、甲第6号証(特開平6-8320号公報)、甲第7号証(特開平5-8356号公報)及び参考資料1(「便覧ゴム・プラスチック配合薬剤」ラバーダイジェスト社、昭和49年10月15日、第129〜143頁)を提出し、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。
イ、訂正明細書の請求項1及び2に係る発明
訂正明細書の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層の少なくとも一層に超低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムであって、上記混合樹脂層と食品包装用ストレッチフィルムとがいずれも動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108 〜5.0×109 dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレツチフイルム。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)それぞれガラス転移温度が50〜100℃の範囲にある、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂
【請求項2】 動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度0℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が1.5×1010dyn/cm2 以下の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の食品包装用ストレッチフイルム。」
ウ、引用刊行物等に記載された事項
当審が通知した第1回目の取消理由に引用された刊行物1〜8及び参考資料1は、次のとおりである。
刊行物1:国際公開第94-17113号パンフレット(1994)(特表平8-505898号公報参照)
(特許異議申立人浜部康夫提出甲第1号証、同オカモト株式会社提出甲第1号証)
刊行物2:特開昭62-43443号公報
(特許異議申立人浜部康夫提出甲第2号証)
刊行物3:特開昭53-8295号公報
(特許異議申立人オカモト株式会社提出甲第2号証)
刊行物4:特開平6-155676号公報
(同甲第3号証)
刊行物5:特開平4-270745号公報
(同甲第4号証)
刊行物6:特開平7-300548号公報
(同甲第5号証)
刊行物7:特開平6-8320号公報
(同甲第6号証)
刊行物8:特開平5-8356号公報
(同甲第7号証)
参考資料1:「便覧ゴム・プラスチック配合薬品」ラバーダイジェスト社、昭和49年10月15日、第129〜143頁
(同参考資料1)
そして、上記刊行物1〜8及び参考資料1には、次のとおりの記載が認められる。
a、刊行物1(頁は特表平8-505898号による)
「1.70〜95モル%のα-オレフィン及び5〜30モル%の環式オレフィンを含むゴム状の、主に非晶質のコポリマーであって、そのガラス転移温度から100℃以上までにおけるゴムの貯蔵弾性率、50℃以下のガラス転移温度、60,000ダルトン以上の重量平均分子量、及び4.0未満の分子量分布を有する、
コポリマー。」(特許請求の範囲請求項1)
「5.少なくとも5MPaの150%歪における応力、30%未満の永久歪、少なくとも300%の破断点伸び、90,000以上のMw、2未満のMWD、及び1又は10Hzの周波数において1から100MPaの間で70℃から150℃の温度範囲においてゴム状態を示す貯蔵弾性率の高くて平らな部分を有する、請求項1乃至4のいずれか1請求項のコポリマー。」(同請求項5)
「可塑化処理されたポリ塩化ビニル(PVC)フィルムの様々な属性については、その優れた光沢及び透明度、引張強さ並びに小さい変形での弾性回復率などを含め、よく知られている。PVCは新鮮な肉の赤い色を保つに十分な酸素透過性を有しており、しかも消費者の手に渡った後でもパッケージの張りを保つのに必要な回復性を有しているので、この材料は肉の包装用オーバーラップ材を選択する際に特に望ましいものである。ただし、食品用及び医療用パッケージからの可塑剤の移動並びに含ハロゲン材を焼却する際の副生物についての懸念が大きくなりつつある。可塑剤含有量の低減又は可塑剤を全く含んでいない代替ポリマー或いはハロゲン焼却生成物を発生しないような代替ポリマーがあれば、PVCよりも有用であるはずである。PVCに匹敵する光沢、透明度及び酸素透過性をもつようなポリオレフィンを経済的に製造することはできるが、そのフィルムは必要とされる弾性回復率を示さない。可塑化剤を使用しなくても、可塑化PVCの引張回復特性とその他の必要条件を併せもつようなオレフィン系ポリマーに対するニーズが存在している。」(第4頁9〜22行)
「本発明によれば、α-オレフィンと環式オレフィンとを、例えば活性化シクロペンタジエニル遷移金属化合物を含んでなる触媒系の存在下で共重合する。極めて驚くべきことに、環式オレフィンを比較的高分子量のコポリマーに特定のモル比率で組込むと、得られるコポリマーが意外にも熱可塑性エラストマーに似た挙動を示し、靭性をもつ一方で柔軟性とレジリエンスをもち、伸長前の状態への回復に関して良好な形状記憶性を併せもち、しかも良好な光学的性質と酸素透過性をもつことが判明した。本発明のコポリマーは、その一つの例示的な実施態様では、可塑化PVCと同様に食品包装用フィルム或いはチューブ材や血液バッグその他の医療用途に使用される。」(第7頁17〜25行)
「図1は、本発明による実施例15の高Mw・低MWDエチレン-ノルボルネンコポリマー(ENB)についての示差機械熱分析(DMTA)のグラフを図示したものである。1Hz(・・・)及び10Hz(---)での貯蔵弾性率、1Hz(・・・)及び10Hz(---)での損失弾性率、1Hz(×××)及び10Hz(○-○-○)でのtan(δ)値をプロットした。」(第8頁22〜26行)
b、刊行物2
「1)粘着付与剤樹脂20〜80重量%と、スチレン系エラストマーあるいはオレフイン系エラストマー80〜20重量%からなる組成物10〜50重量%を、ポリプロピレン樹脂90〜50重量%と混合せしめてなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「一般にポリプロピレン樹脂のガラス転移にもとづくtanδのピークは、通常、-30℃〜25℃前後の範囲内に現われ、tanδの値はこのピーク温度を境に著しく低下し、50℃前後で極小となる。このようなtanδの低下が、おもに40°〜80℃程度の温度領域で使用される製品について、充分な制振効果が得られない主たる理由となつている。
そこで、本発明者らは、低温から高温に至るまでの広い温度範囲で優れた制振性能を有し、かつ、強度特性に優れるポリプロピレン樹脂組成物を得るため鋭意検討した結果、粘着付与剤樹脂とスチレン系エラストマーあるいはオレフイン系エラストマーとの混合組成物をポリプロピレン樹脂にブレンドすることにより得られる新規なポリプロピレン樹脂組成物が、上述の物性を満足し得るものであることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。」(第2頁左上欄9行〜同右上欄7行)
c、刊行物3
「1.ポリオレフィン系樹脂100重量部に熱可塑性ゴム3〜45重量部及び液状粘稠炭化水素0.5〜7重量部を添加した組成物よりなることを特徴とする包装用フィルム。
2.熱可塑性ゴムとしてスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を用いることを特徴とする、特許請求の範囲第1項記載の包装用フィルム。」(特許請求の範囲請求項1及び2)
「本発明は包装用、特に食品包装用フィルムすなわちラップフィルムあるいはストレッチフィルムに関し、さらに詳しくはポリオレフィン系の樹脂をベースにした付着性の改良された包装用、特に食品包装用フィルムに関する。」(第2頁左上欄19行〜同右上欄3行)
「本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂とは………アイソタクチックポリプロピレン(iso-PPと称す)等の重合体およびエチレンとプロピレンの共重合体の1種あるいはこれらの重合体および共重合体より選ばれた2個以上の混合物である。」(第3頁左上欄3〜9行)
d、刊行物4
「【請求項1】 融点が140℃以上でメルトインデックスが1〜10g/10分(230℃)のポリプロピレン系樹脂75〜35重量%と、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物15〜64重量%、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-α-オレフィン共重合体の一方または両方とを1〜50重量%混合してなる樹脂組成物を中間層とし、該中間層の両側に酢酸ビニル含有量8〜25重量%で、メルトインデックス0.2〜8g/10分(190℃)であるエチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分とする層を積層し三層を構成してなるストレンチラップ多層フィルム。」(特許請求の範囲)
e、刊行物5
「【請求項1】 下記の(A)群から選ばれた少なくとも1種よりなる成分50〜95重量%と、下記の(B)群から選ばれた少なくとも1種よりなる成分50〜5重量%とからなることを特徴とするストレッチ包装用フィルム用樹脂組成物。
(A)群
(A-1)………
(A-2)プロピレンと、エチレンおよび/または炭素数4〜8のα-オレフィンとのランダム共重合体であって、エチレンおよび/またはα-オレフィン含有量が4〜19重量%、230℃でのメルトフローレートが1〜10g/10分のプロピレン-エチレン-α-オレフィン、またはプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体樹脂。
(A-3)………
(B)群
(B-1)同一分子内にアルケニル芳香族化合物を主とした重合体ブロックと共役ジエン化合物を主とした重合体ブロックを併せ持つブロック共重合体の水素添加誘導体であって、前者ブロックの割合が5〜70重量%、後者ブロックの割合が95〜30重量%の水素添加ブロック共重合体エラストマー。
(B-2)………
(B-3)………」(特許請求の範囲)
f、刊行物6
「【請求項1】(a)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を10〜60モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜40モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、メルトインデックス(MI)が0.5〜30(g/10min)であるプロピレン系ブロック共重合体 5〜99重量%、
(b)ポリプロピレン 95〜1重量%
よりなるポリオレフィン系フィルム。」(特許請求の範囲)
「本発明において、上記ブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)とを溶融混練する際に他の樹脂、例えば、………石油樹脂、水添スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂、水添スチレン-イソプレン-スチレン樹脂、水添スチレン-ブタジエン樹脂等を得られるフィルムの物性を損なわない範囲内で添加して用いることも可能である。」(第4頁第6欄49行〜第5頁第7欄9行、段落【0031】)
g、刊行物7
「【請求項1】 次の(1)〜(4)の条件を満たす包装用樹脂フィルム
(1)フィルムの肉厚は6〜100ミクロンである。
(2)次式で定義される複屈折ΔnA が0.6×10-3〜8×10-3である。
ΔnA =|nMD-nTD|
(但し、nMDはフィルムの押出方向の屈折率を、nTDはフィルムの幅方向の屈折率を示す。)
(3)フィルムを140℃のシリコンオイル浴中に3分放置したときのフィルムの押出方向の熱収縮率SMDとフィルムの幅方向の熱収縮率STDの比(SMD/STD)が0.65〜1.50である。
(4)直径100mmの円形試料フィルムを展張固定し、その中心に直径20mmの半球を押し込んでフィルムを変形させた後、半球を取り除いた時の100%回復可能な最大歪量が18mm以上である。」(特許請求の範囲請求項1)
「本発明は、食品のストレッチ包装用樹脂フィルム、パレットストレッチ包装用樹脂フィルム、製袋成形用樹脂フィルムに関する。」(第2頁第1欄23〜25行)
「これらオレフィン系樹脂に水添石油樹脂、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、………等の衝撃改良剤をフィルムの透明性を阻害しない程度(0.5〜20重量%)に加えても良い。」(第3頁第4欄17〜23行)
i、刊行物8
「【請求項1】 (A)が低密度ポリエチレン、又はビニルエステル単量体、脂肪族不飽和モノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエステルより選ばれる少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の共重合体、
(B)がVicat軟化点80℃以下の軟質熱可塑性エラストマー、
(C)が結晶性ポリプロピレン、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ-4-メチルペンテン-1、のいずれか、又はこれらの混合重合体から選ばれるものであり、
(A),(B)、結晶性1・2ポリブタジエン、又は軟質のエチレン系共重合体アイオノマー樹脂から選ばれる少なくとも1種の重合体を主体とした表層(S層)を有し、かつ
(A)+(B)+(C)、(A)+(B)、又は(B)+(C)より選ばれる混合組成物を主体として含む少なくとも1層のベース層(SBC層)と、
該(C)より選ばれる重合体を主体として含む少なくとも1層のコア層(H層)と、
該(A),(B)より選ばれる少なくとも一種の重合体を主体として含む、少なくとも1層の補助層(R層:但しR層が前述のS層と隣接する場合、R層はS層に選ばれたものと異なる樹脂である)と、を内層に含む、
少なくとも5層からなる、耐熱・収縮・ストレッチ性に優れた高強度多層フィルム。」(特許請求の範囲)
「成分(B)
次に成分(B)のVSPが80℃以下の軟質、熱可塑性エラストマーとは、………スチレン-共役2重結合ジエン誘導体ブロック共重合エラストマー、該エラストマーの共役2重結合由来の部分の少なくとも1部を水素添加した共重合体、熱可塑性ポリウレタン等から選ばれる少なくとも1種の重合体である。」(第8頁第13欄32〜42行、段落【0048】)
「又更に必要により粘着性付与剤(P剤とする)として例えば脂環族飽和炭化水素系樹脂(水添シクロペンタジエン系樹脂、C9 溜分として環状成分を含む石油樹脂の水添樹脂、etc)、ロジン類、エステル化ロジン類、上記以外の石油樹脂、テルペン系樹脂類を上記に添加しても良い。その好ましい範囲は0.5〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%である。」(第13頁第23欄28〜35行、段落【0085】)
オ、対比・判断
本件発明1と刊行物4に記載された発明とを対比すると、両者は、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体とプロピレン系樹脂を主成分とする混合樹脂層の少なくとも一層にエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムである点で一致し、本件発明1では、混合樹脂層として、それぞれガラス転移温度が50〜100℃の範囲にある、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体を含有するのに対し、刊行物4では、混合樹脂層として、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-α-オレフィン共重合体の一方または両方を含有するものである点(以下、「相違点1」という。)、及び、本件発明1では、混合樹脂層と食品包装用ストレッチフィルムとがいずれも動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108 〜5.0×109 dyn/cm2 、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にある(以下、「本件発明1で特定する動的粘弾性」という。)とするのに対し、刊行物4では、そういったことの記載がない点(以下、「相違点2」という。)で相違するものと認める。
そこで、上記相違点2について検討する。
刊行物2、3、5〜8には、刊行物4と同様に、本件発明1で特定する動的粘弾性についての記載も示唆も認められない。
刊行物1には、本件発明1で特定する動的粘弾性を有する樹脂が記載されているが、その樹脂は、70〜95モル%のα-オレフィン及び5〜30モル%の環式オレフィンを含むゴム状の、主に非晶質のコポリマーであり、本件発明1の食品包装用ストレッチフィルムにおける混合樹脂層とは、樹脂そのものが大きく相違するものである。
また、刊行物4における混合樹脂とも大きく相違するものであり、刊行物1における動的粘弾性を刊行物4の食品用ストレッチフィルムに結びつけることは困難と言わざるを得ない。
そして、本件発明1は、特定する混合樹脂層を有する積層フィルムを使用し、さらに本件発明1で特定する動的粘弾性を有することにより、自動包装機などに使用した場合にフィルムのカット・搬送やラッピングを問題なく行うことができ、底シール性が良好で、またフィルムの張りがよい包装体を得ることができ、非塩ビ系ストレッチフィルムとして従来にない特徴を有するものと認められる。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度0℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が1.5×1010dyn/cm2 以下の範囲にあるとするものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、各特許異議申立人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
食品包装用ストレッチフイルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層の少なくとも一層に超低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフイルムであって、上記混合樹脂層と食品包装用ストレッチフイルムとがいずれも動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E´)が5.0×108〜5.0×109dyn/cm2、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレッチフイルム。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)それぞれガラス転移温度が50〜100℃の範囲にある、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロソ-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂
【請求項2】動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度0℃で測定したフイルムの貯蔵弾性率(E´)が1.5×1010dyn/cm2以下の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の食品包装用ストレッチフイルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品包装用に用いられるストレッチフイルム、特に塩素を含まない材料からなるストレッチフイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から青果物、精肉、惣菜などを軽量トレーに載せてフイルムでオーバーラップする、いわゆるプリパツケージ用のストレッチフイルムとしては、主にポリ塩化ビニル系のものが使用されてきた。これは包装効率がよく、包装仕上がりも綺麗であるなどの包装適性の他、パック後のフイルムを指で押すなどの変形を加えても元に戻る弾性回復力に優れ、また底シール性も良好であり、輸送陳列中にフイルム剥がれが発生しにくいなど、商品価値が低下しないという販売者、消費者の双方に認められた品質の優位性を持っているためである。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし近年、ポリ塩化ビニルのフイルムに対し焼却時に発生する塩化水素ガスや、多量に含有する可塑剤の溶出などが問題視されてきた。このためポリ塩化ビニル系フイルムに代わる材料が種々検討されてきており、特にポリオレフィン系樹脂を用いた構成のストレッチフイルムが各種提案されている。例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVA/ポリブテン-1/EVA、EVA/直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体/EVAなどの構成のストレッチフイルムが提案されている。
【0004】
しかしながら、包装作業性、包装仕上がり、弾性回復力、底シール性といった特性をすべて満足することは難しい。また、スチレン-ブタジエンブロック共重合体水素添加物層の両面にEVAを積層した非塩ビ系ストレッチフイルムも提案されているが(特公平5-59822)、変形に対する弾性回復性が良いという利点はあるものの、包装作業性、包装仕上がり、底シール性などの点で未だ十分とはいえない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、上記諸特性に優れた非塩ビ系ストレッチフイルムを得ることに成功したものであり、その要旨は、下記(A)、(B)および(C)3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×108〜5.0×109dyn/cm2、損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあることを特徴とする食品包装用ストレッチフイルムにある。
(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体
(B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体
(C)プロピレン系樹脂
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明ストレッチフイルムは、(A)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体と、(B)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体、さらに(C)プロピレン系樹脂の3成分を主成分とする混合樹脂層を少なくとも一層有し、フイルム全体として特定の粘弾性特性を有している。
【0007
ここで、(A)成分であるビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体またはその水素添加誘導体は、一般的にゴム弾性を有し柔軟で破れにくく、透明性も良好であるという特性を有しており、またその重合形態などによりビニル芳香族化合物のもつ剛直性と共役ジエンのもつエラストマー性とをバランスさせることにより、本発明の目的を達成するのに適している。
【0008】
ただ、従来のこの種の共重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体やスチレン-イソプレンブロック共重合体が知られており、一部フイルム用途にも用いられているが、これら単独では粘弾性的に本発明には適さない。即ち、従来普通に用いられているこの種の共重合体は、0℃よりもはるかに低温側、通常-50℃近辺にガラス転移温度を有しており、常温では後述する損失正接(tanδ)が極めて小さいからである。
【0009】
そこで本発明においては、(A)成分としては従来普通に用いられる共重合体よりもガラス転移温度を高めたものが好ましく、具体的には-30℃以上、好適には-20℃〜20℃のものが適合しやすい。
【0010】
このような共重合体としては、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比が40/60〜10/90の範囲にあるブロック共重合体であって、共役ジエンブロックのガラス転移温度を通常よりも高めたものが挙げられる。
【0011】
具体的には、共役ジエンにスチレンなどをランダム共重合したブロックを有するもの、あるいは共役ジエンブロックがある濃度勾配を持ってスチレンなどを共重合したテーパードブロックとなったものなどがある。また、共役ジエンブロックとして、3,4-結合比率が高いイソプレンブロックを使用したものも有効である。
【0012】
また本発明においては、その粘弾性特性が適合するものであれば、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合体を用いることもできる。その場合、一般的にはビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重量比は30/70〜60/40の範囲とする。さらにこれら共重合体として、共役ジエンに水素添加したものが特に好適に使用できる。水素添加により、溶融押出などの成形過程における架橋反応を抑制するとともに、後述の(B)成分などを混合した際に(B)成分との相溶性が向上し透明性が維持できる。その面から見て好適な水素添加率は50%以上、好ましくは60%以上である。
【0013】
ここでビニル芳香族化合物としては、スチレンが代表的なものであるが、o-スチレン、p-スチレン、α-メチルスチレンなども用い得る。また共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどがある。
【0014】
ところで(A)成分のビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、特に水素添加誘導体は、ガラス転移温度を常温近くまで高めることは困難であり、それ単独では20℃における貯蔵弾性率(E′)が低く柔らかすぎたり、材料の選択が極めて限られたりして実用上不利になることが多い。そこで本発明においては、実用上所望の粘弾性特性を容易に得られるように、前記の(B)成分と(C)成分を混合する。(B)成分の石油樹脂などは組成物のガラス転移温度を高めて所望の粘弾性特性を達成可能とするものであり、(C)成分のプロピレン系樹脂は(A)(B)成分と混合した場合に透明性を大きく損なうことなく混合物の強度を高めるとともに粘弾性特性を調整するものである。
【0015】
ここで(B)成分のうち石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ-ピネンからのテルペン樹脂やテルペン-フェノール樹脂が、またロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂などが例示できる。上記(B)成分は前記の(A)成分などに混合した場合に比較的良好な相溶性を示すことが知られているが、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。
【0016】
なお、(B)成分は主に分子量により種々のガラス転移温度を有するものが得られるが、本発明に適合し得るのはガラス転移温度が50〜100℃、好ましくは70〜90℃のものである。ガラス転移温度が50℃未満であると、前述の(A)成分と混合した場合に後述の粘弾性特性を得るためには多量に含有させる必要があり、表面へのブリードによる材料やフイルムのブロッキロングを招きやすい。また、フイルム全体としての機械的強度が不足して破れやすく実用上問題になることがある。一方ガラス転移温度が100℃を超えるものでは、(A)成分との相溶性が悪化し、経時的にフイルム表面にブリードし、ブロツキングや透明度低下を招くことがある。
【0017】
上記の理由から、(B)成分は後述の粘弾性特性を達成し得る範囲内で含有量は少ないほうが好ましい。このためには、(A)成分は前記の通り、従来普通に用いられる共重合体よりもガラス転移温度を高めたものが好ましい。
【0018】
ところで、(A)成分のビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体と(B)成分の石油樹脂などの2成分のみでは所定の粘弾性特性を確保きる範囲が狭く、またストレッチフイルムとして十分な強度が得られず、さらにコスト的にも不利である。
【0019】
そこで本発明においては、(C)成分としてプロピレン系重合体を上記(A)+(B)成分に混合する。
【0020】
プロピレン系重合体とは、プロピレンを70モル%以上含有する樹脂であって、ポリプロピレン(単独重合体)、プロピレンとエチレンまたは炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体、またはこれらの混合物を例示することができる。プロピレン含量が70%未満であると結晶性が低すぎて、フイルム全体としての粘弾性特性調整や強度アップを達し得ない。また製膜時の安定性にも欠ける。プロピレン系重合体は一般に、高結晶性で強度も高く、ポリオレフィン系重合体の中では比較的高融点で耐熱性も良好であるが、高結晶性のため伸展時には大きな力を要し、また不均一な伸びしか示さず、これらの特性は混合物になっても残存する。
【0021】
そのため本発明においては、伸びの良いフイルムを得るために、プロピレン系重合体の少なくとも一部に、比較的低結晶性のプロピレン系共重合体を使用するのが好ましい。この場合の共重合体としては、プロピレンにエチレンまたは炭素数4〜12のα-オレフィンを3〜30モル%程度共重合指せたものが好適である。
【0022】
本発明フイルムは、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E′)が5.0×108〜5.0×109(dyn/cm2)の範囲にあり、かつ損失正接(tanδ)が0.2〜0.8の範囲にあるものである。ここでE′が5.0×108dyn/cm2未満であると、柔らかくて変形に対し応力が小さすぎるため、作業性が悪く、パック品のフイルムの張りもなく、ストレッチフイルムとして適さない。また、E′が5.0×109dyn/cm2を越えると、硬くて伸びにくいフイルムになり、トレーの変形やつぶれが生じやすい。
【0023】
またtanδが0.2未満であると、フイルムの伸びに対する復元挙動が瞬間的であるため、フイルムをトレーの底に折り込むまでのわずかな間にフイルムが復元してしまい、フイルムがうまく張れずにしわが発生しやすい。また底部のヒートシール状態も、ストレッチ包装の場合は熱による十分な融着がなされにくいので、包装後、輸送中ないし陳列中に次第に底シールの剥がれを生じやすくなる。
また、tanδが0.8を越えると、包装仕上がりは良好であるものの、塑性的な変形を示し、パック品の外力に対する張りが弱すぎて、輸送中ないし陳列中の積み重ねなどにより、トレー上面のフイルムがたるみ易く、商品価値が低下しやすい。また自動包装の場合には縦に伸びやすいためチャック不良などの問題が生じやすい。tanδの特に好適な範囲は、0.30〜0.60である。
【0024】
またストレッチフイルムは低温時に使用されることもあり、低温特性(特に伸び)が優れていることが望ましいが、そのためには動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度0℃で測定したフイルムの貯蔵弾性率(E′)が1.5×1010dyn/cm2以下の範囲にあることが好ましい。本発明に適合するビニル芳香族化合物/共役ジエン共重合体は、通常のものよりもガラス転移温度が高いものが多いので、低温伸びなどの柔軟性を確保するために上記特性を満たすよう配慮するのが好ましい。
【0025】
そのためには、ビニル芳香族化合物/共役ジエン共重合体のジエン成分の割合や、(A)、(B)、(C)各成分の混合比率などを調整すればよい。
【0026】
本発明のE′、tanδを上記範囲とするには、(A)、(B)、(C)3成分の混合比率を調整するのが最も効果的である。(A)成分に(B)成分を適量混合したものは、一般に常温付近で0.7〜1.5の範囲のtanδを有している。また(C)成分のプロピレン系重合体は一般に0.01〜0.10の範囲のtanδを有しているから、混合物として0.2〜0.8の範囲のtanδを有するようにするには、(A)、(B)、(C)各成分の混合比率を、
(A)成分30〜60重量%
(B)成分10〜40重量%
(C)各成分20〜50重量%
とすればよい。
【0027】
本発明によれば、以上説明した混合物層からなるストレッチフイルムが得られるが、所望により他の非塩ビ材料層と積層することもできる。他の樹脂層としては、ポリオレフィン系重合体や柔軟なスチレン-ブタジエンエラストマなどが挙げられ、これらと積層することにより、フイルムの製膜の安定性や耐ブロッキング性、粘着性、滑り性などを付与することができる。
【0028】
ここで積層材料としてのポリオレフィン系重合体としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(エチレンとα-オレフィンとの共重合体)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アルキルアクリレート共重合体、エチレン-アルキルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、低密度ポリエチレンなどのアイオノマ、プロピレン系エラストマ材料などが好適である。
【0029】
実用上は例えばEVAを好適に使用することができ、このEVAとしては、酢酸ビニル含量が5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、メルトフローレイシヨ(MFR)が0.2〜2g/10分(190℃、2.16kg荷重)のものが強度や柔軟性、フイルム成形加工性などの面で好適である。なお一般に本発明フイルムの厚さは、通常のストレッチ包装用として用いられる範囲、すなわち8〜30μm程度、代表的には10〜20μm程度の範囲にある。
【0030】
本発明フイルムは、押出機から材料を溶融押出し、インフレーシヨン成形またはTダイ成形によりフイルム状に成形することにより得られる。積層フイルムとする場合には多層ダイにより共押出するのが有利である。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(バブル径/ダイ径)は4以上が好ましく、特に5〜7の範囲が好適である。
【0031】
本発明フイルムには、防曇性、帯電防止性、滑り性などの性能を付与するために各種添加剤を添加することができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加物などの界面活性剤を適宜添加することができる。
【0032】
【実施例】
以下実施例により、本発明の効果を明らかにする。なおフイルムの特性・性能は、次の方法により測定、評価した。
1)E′、tanδ
岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロメーターVES-F3を用い、振動周波数10Hz、温度20℃および0℃でフイルムの横方向について測定した。
【0033】
2)ストレッチ包装適性
幅350mmのストレッチフイルムを用い、自動包装機(石田衡器(株)社製ISHIDA・Wmin MK-II)により発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅130mm、高さ30mm)を包装し、表3に示す項目について評価した。また同じフイルムおよびトレーを用いて、手包装機(三菱樹脂(株)社製ダイアラッパーA-105)により包装試験を行った。
3)製膜の安定性
インフレーション製膜設備によりフイルムを成形する際のバブルの安定性を評価した。
【0034】
◎ 極めて安定している
○ 安定している
△ やや不安定である
× 製膜不可
(参考例1)
(A)成分
スチレン20重量%、3,4-結合比率55%のポリイソプレン80重量%からなるスチレン-イソプレン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加誘導体(ガラス転移温度-19℃、以下「HSIS」と略す)
:45重量%
(B)成分
シクロペンタジエン系石油樹脂の水素添加誘導体(ガラス転移温度81℃、軟化温度125℃)
:25重量%
(C)成分
プロピレン-エチレンランダム共重合体(エチレン含量4モル%、230℃におけるMFR=0.5g/10分)
:30重量%
以上3成分からなる混合樹脂組成物100重量部に対し、防曇剤としてジグリセリンモノオレート2.0重量部を溶融混練し、インフレーション成形により厚さ15μmのフイルムを得た。
【0035】
なお、HSIS単体で測定した特性は、
0℃における貯蔵弾性率E′ 2.0×109dyn/cm2
20℃における貯蔵弾性率E′ 2.1×108dyn/cm2
20℃における損失正接tanδ 0.44
ガラス転移温度 -19℃
であった。
またHSISと水素添加石油樹脂の混合物のみで測定した特性は、
0℃における貯蔵弾性率E′ 1.4×109dyn/cm2
20℃における貯蔵弾性率E′ 6.0×108dyn/cm2
20℃における損失正接tanδ 1.20
ガラス転移温度 5℃
であった。
【0036】
またプロピレン系重合体のみで測定した特性は、
0℃における貯蔵弾性率E′ 1.7×1010dyn/cm2
20℃における貯蔵弾性率E′ 9.0×109dyn/cm2
20℃における損失正接tanδ 0.06
ガラス転移温度 -5℃
であった。
【0037】
(参考例2)
参考例1で使用した3種の樹脂の混合比率を、
A成分 35重量%
B成分 25重量%
C成分 40重量%
に変更した以外は参考例1と同様にして厚み15μmのフイルムを得た
【0038】
(実施例1)
参考例1で使用した3種の樹脂の混合組成物を中間層とし、EVA(酢酸ビニル含量15重量%、190℃MFR=2.0g/10分)100重量部に防曇剤としてジグリセリンモノオレートを2.0重量部混練した組成物を表裏層として共押出インフレーション成形により総厚み15μm(2.5μm/10μm/2.5μm)のフイルムを得た。
【0039】
(実施例2)
参考例2で使用した3種の樹脂の混合組成物を中間層とした以外は実施例1と同様にして、総厚み15μm(2.5μm/10μm/2.5μm)のフイルムを得た。
【0040】
(比較例1)
参考例1で用いたHSIS100重量部に防曇剤としてジグリセリンモノオレートを2.0重量部混練した組成物をの中間層とした以外は実施例1と同様にして、総厚み15μm(2.5μm/10μm/2.5μm)のフイルムを得た。
(比較例2)
参考例1で用いたHSISを65重量%、水素添加石油樹脂を35重量%混合した組成物に防曇剤としてジグリセリンモノオレートを2.0重量部混練した組成物を中間層とした以外は実施例1と同様にして、総厚み15μm(2.5μm/10μm/2.5μm)のフイルムを得た。
【0041】
(比較例3)
実施例1で使用した3種の樹脂の混合比率を、
A成分 30重量%
B成分 15重量%
C成分 55重量%
に変更した以外は実施例1と同様にして、総厚み15μm(2.5μm/10μm/2.5μm)のフイルムを得た。
【0042】
(比較例4)
直鎖状エチレン-ブテン-1共重合体(ブテン-1含量14重量%、密度0.905)を中間層として7μm、実施例1で使用したEVA組成物を表裏層として各々4μmとして、総厚み15μm(4/7/4μm)のフイルムを得た。
【0043】
(比較例5)
市販のポリ塩化ビニルストレッチフイルム(厚さ15μm)について評価を行った。
【0044】
これらのフイルムについての特性、性能の測定評価結果を表1〜2に示す。
【0045】
【表1】

【表2】

【表3】

【0046】
実施例のフイルムはいずれも、粘弾性特性が本発明で規定する範囲内にあり、諸特性に優れていることが分かる。
【0047】
【発明の効果】
本発明ストレッチフイルムによれば、自動包装機などに使用した場合にフイルムのカット・搬送やラッピングを問題なく行うことができ、底シール性が良好で、またフイルムの張りがよい包装体を得ることができ、非塩ビ系ストレッチフイルムとして従来にない特徴を有している。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-27 
出願番号 特願平7-325879
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 石井 あき子
佐野 整博
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3386945号(P3386945)
権利者 三菱樹脂株式会社
発明の名称 食品包装用ストレツチフイルム  
代理人 樋口 榮四郎  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  
代理人 田中 宏  

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