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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B09B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B09B |
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管理番号 | 1105940 |
異議申立番号 | 異議2002-73156 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-12-24 |
確定日 | 2004-09-08 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3303907号「有機性廃棄物のメタン発酵法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3303907号の訂正後の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.訂正の適否について (1)訂正の内容 本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、 訂正事項a:特許請求の範囲に 「【請求項1】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該有機性廃棄物中の難生物分解性夾雑物を分離して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物のメタン発酵法。 【請求項2】前記脱離液は、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液であるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水であることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物のメタン発酵法。 【請求項3】前記酸発酵工程では、比重の高い夾雑物を底部から引き抜くことを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物のメタン発酵法。」とあるのを 「【請求項1】有機性廃棄物である生ごみを酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該酸発酵工程流出液から生ごみ中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法。 【請求項2】前記脱離液は、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液であるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水であることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法。」と訂正する。 訂正事項b:明細書段落【0004】に「上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該有機性廃棄物中の難生物分解性夾雑物を分離して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物のメタン発酵法としたものである。前記メタン発酵法において、脱離液としては、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液を用いるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水を用いることができ、前記酸発酵工程では、比重の高い夾雑物を底部から引き抜くのが良い。」とあるのを「上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物である生ごみを酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該酸発酵工程流出液から生ごみ中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法としたものである。前記メタン発酵法において、脱離液としては、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液を用いるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水を用いることができる。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (イ)訂正事項aは、訂正事項a-1:【請求項1】の第1行、第5行及び【請求項2】の第3行に「有機性廃棄物」とあるのを「有機性廃棄物である生ごみ」と訂正する、訂正事項a-2:【請求項1】に「混合攪拌し、易生物分解性有機物」とあるのを「混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物」と訂正する、訂正事項a-3:【請求項1】の第4行に「有機性廃棄物中」とあるのを「酸発酵工程流出液から生ごみ中」と訂正する、訂正事項a-4:【請求項1】の第4行に「分離して」とあるのを「分離除去して」と訂正する、訂正事項a-5:【請求項3】を削除する、に細分することができるので、細分して検討する。 訂正事項a-1は、明細書段落【0005】の記載に基づいて、「有機性廃棄物」をその下位概念である「有機性廃棄物である生ごみ」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項a-2は、明細書段落【0005】の記載に基づいて、【請求項1】に「比重の高い夾雑物を底部から引き抜き」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項a-3は、「有機性廃棄物」をその下位概念である「生ごみ」に限定すると共に、難生物分解性夾雑物を分離する対象が「酸発酵工程流出液」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、前者は明細書段落【0005】に記載され、後者は、難生物分解性夾雑物を分離するのは酸発酵工程であることが明細書段落【0004】に、その処理対象は酸発酵槽の流出液であることが明細書段落【0005】にそれぞれ記載されているから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項a-4は、明細書段落【0003】の記載に基づいて、単に分離から分離除去と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項a-5は、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 (ロ)訂正事項bは、訂正事項aの訂正に伴い明細書の記載を整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 (ハ)また、上記訂正事項a〜bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 2.異議申立てについて 2-1.本件発明 上記1.に記載したとおり、訂正は認められるから、本件請求項1〜2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、適宜「請1発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】有機性廃棄物である生ごみを酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該酸発酵工程流出液から生ごみ中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法。」 2-2.刊行物に記載された発明 刊行物1:特開平3-238091号公報 刊行物1には、請求項1に「廃水を酸発酵槽に供給し、該廃水に含有される有機物を酸発酵することにより低分子化合物を生成せしめた後、酸発酵処理水を固液分離し、その分離水をメタン発酵する、メタン発酵処理方法」が記載され、さらに、第2頁右下欄第12〜16行に酸発酵槽内を混合撹拌すること、第3頁左下欄下2行〜右下欄第3行にメタン発酵処理水を酸発酵槽に送ることがそれぞれ記載されているから、これらの記載を請1発明の記載に則して整理すると、「有機性廃水中の有機物を酸発酵することにより低分子化合物を生成せしめたのちにメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵処理では、メタン発酵処理水を注入して混合撹拌し、有機物を低分子化したのちに、該酸発酵処理水から固形分を分離除去して、分離水をメタン発酵する、有機性廃水のメタン発酵法」という発明(以下、適宜「刊1発明」という)が記載されていると云える。 刊行物2:THIRD INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON ANAEROBIC DIGESTION(Copyright 1983)第123〜158頁 刊行物2には、第134頁第1〜7行及びFig.5bの記載から、「液化-酸生成反応槽内の固体残渣を除去する」ことが記載されていると云える。 刊行物3:JOURNAL Water pollution control FEDERATION Vol.47 No.1(1975)第30〜45頁 刊行物3には、第31頁FIGURE 1の記載から、「酸生成槽の底部から槽内液を引き抜いてセパレーターで固液分離し、分離した固形分を一部循環し残部は系外へ排出する」ことが記載されていると云える。 刊行物4:Fifth International Symposium on Anaerobic Digestion POSTER-PAPERS(Copyright 1988)第809〜812頁 刊行物4には、第809頁下9行〜第810頁第4行及びFIG.1の記載から、「加水分解反応槽とメタン反応槽で構成される実験装置で果物と野菜の廃棄物の混合物を負荷して実験する」ことが記載されていると云える。 2-3.対比・判断 (1)本件請求項1に係る発明について 請1発明と刊1発明とを対比すると、刊1発明の「酸発酵処理水」は請1発明の「酸発酵工程流出液」に相当し、請1発明の嫌気性消化工程はメタン発酵であるから刊1発明の「メタン発酵処理水」は請1発明の「嫌気性消化工程からの脱離液」に相当し、刊1発明の酸発酵処理水中の「固形分」は微生物を用いた酸発酵処理で分解していない有機性廃水中の固形分であるから請1発明の「難生物分解性夾雑物」に相当する。よって、両者は、「有機性廃棄物を酸発酵したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、該酸発酵工程流出液から有機性廃棄物中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行う、有機性廃棄物のメタン発酵法」において一致するが、先ず次の点で両者は相違する。 相違点:請1発明は被処理物が生ごみであり、酸発酵工程において比重の高い夾雑物を底部から引き抜いているのに対し、刊1発明は被処理物が有機性廃水であり、酸発酵工程において比重の高い夾雑物を底部から引き抜いていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 刊行物2に液化-酸生成反応(請1発明の「酸発酵」に相当する)槽内の固体残渣を除去することが記載されているが、固体残渣が比重が高いことや底部から引き抜くことは記載乃至示唆されていない。 刊行物3に、酸生成(請1発明の「酸発酵」に相当する)槽の底部から槽内液を引き抜くことが記載されているが、ここでの引き抜きは槽内液全体であって、比重の高い夾雑物を引き抜くことは記載乃至示唆されていない。 刊行物4に、被処理物として果物と野菜の混合廃棄物を用いて実験したことが記載されているが、生ごみは魚滓等を含むものであるから果物と野菜の混合廃棄物と同一視することはできず、装置も加水分解反応槽と酸発酵ではないものである。 さらに、刊行物1〜4には固形分乃至固体残渣の認識はあるが、その中に被処理物中の比重の高いものが混在していることは認識されておらず、したがって、固形分中の比重の高いものを個別に分離するという技術思想は記載乃至示唆されていない。 よって、請1発明の構成である、生ごみのメタン発酵における酸発酵工程において比重の高い夾雑物を底部から引き抜く点は刊行物1〜4の記載から導き出すことができない。 そして、請1発明はその点により、比重の高いもの、例えば、金属食器、瀬戸物、砂等が混在している生ごみを、分離器等の前処理工程を大幅に簡略化して、メタン発酵処理できるという明細書記載の作用効果を奏するものである。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、請1発明が刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 (2)本件請求項2に係る発明について 本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明を引用して更に限定するものであるから、上記(1)と同じ理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)また、その他の異議申立理由及び証拠は、本件請求項1〜2に係る発明の特許を取り消すべき理由として採用することができない。 3.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1ないし2に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に訂正後の本件請求項1ないし2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 有機性廃棄物のメタン発酵法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 有機性廃棄物である生ごみを酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該酸発酵工程流出液から生ごみ中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法。 【請求項2】 前記脱離液は、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液であるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水であることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、有機性廃棄物のメタン発酵法に係り、特に、生ごみ等の夾雑物を含有する有機性廃棄物を嫌気性消化してメタン発酵させる方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、生ごみ等の有機物は、ほとんどが他の一般ごみと共に焼却、埋立処分されている。しかし、近年、ごみの減量化、再資源化のため、一部では家庭向けコンポスターの普及促進、厨芥の分別収集、コンポスト化等の努力が行われている。また、最近、西欧で普及している生ごみのメタン発酵法が、経済的で環境にやさしい方法として日本でも技術導入され、また技術開発が行われている。 従来から生ごみのメタン発酵において、生ごみは比較的易生物分解性のため多量のバイオガスを発生できるので、高率的なエネルギー回収を行うことができることが知られている。 しかしながら、生ごみ中には通常多量の夾雑物、例えば軟質、硬質プラスチック製容器包装、紙製容器包装、食器、金属が含有されている。このためメタン発酵を行う前処理工程として、破袋装置、粗大異物の手選別、夾雑物自動分離装置、金属除去用磁選装置、破砕装置等の様々な装置、及びこれらの装置を連結する搬送装置が必要であり、そのため、装置構成、操作が煩雑となり、円滑な前処理操作が困難となるとともに、装置の建設費用も高額となる等の問題があった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、特別な装置を用いることなく、簡単な手段で夾雑物を分離・除去できる有機性廃棄物のメタン発酵法を提供することを課題とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物である生ごみを酸発酵工程で可溶化したのちに、嫌気性消化工程でメタン発酵を行うメタン発酵法において、前記酸発酵工程では、嫌気性消化工程からの脱離液を注入して混合攪拌し、比重の高い夾雑物を底部から引き抜き、易生物分解性有機物を可溶化したのちに、該酸発酵工程流出液から生ごみ中の難生物分解性夾雑物を分離除去して、該可溶化液を嫌気性消化工程に導入し、メタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物である生ごみのメタン発酵法としたものである。 前記メタン発酵法において、脱離液としては、嫌気性消化工程から引き抜いたままの脱離液を用いるか、又は該脱離液を脱水分離した分離水を用いることができる。 【0005】 【発明の実施の形態】 次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。 図1は、本発明のメタン発酵法を実施するための工程図の一例である。 図1において、有機性廃棄物である生ごみ1は袋を破袋装置2で破られた後、酸発酵槽3でメタン発酵脱離液11あるいはその脱離液を脱水した脱水分離水14とともに混合・攪拌され、夾雑物が洗浄され、また可溶化によって生ごみ有機物が可溶化分解されて、夾雑物との分離が促進される。金属食器、瀬戸物、砂等の比重の高い夾雑物4は酸発酵槽3の底部に枕積され、随時引き抜かれる。酸発酵槽流出液5はスクリーン等の夾雑物分離装置6で夾雑物7が分離され、分離水8はメタン発酵する嫌気性消化槽9に導入され、流入液中の有機物は嫌気的条件下でバイオガス10に分解される。バイオガスは脱硫装置を経由してガスタンクに貯留され、用途に応じて利用される。メタン発酵する嫌気性消化槽9は機械攪拌あるいはガス攪拌が行われる。メタン発酵脱離液11は脱離液脱水工程12に導入され、脱水汚泥13と脱水分離水14に分離され、脱水分離水14はさらに公知の水処理技術によって処理される。 【0006】 酸発酵槽3には、蒸気等を注入して水温を50〜55℃で運転するとともに、脱水分離水14の滞留日数を1〜5日とするとよい。これによって生物学的な酸発酵が進行してSSが可溶化し、発酵が円滑に進行する。 酸発酵槽に注入する希釈水(脱離液11あるいは及び分離水14)量は、酸発酵槽3の攪拌装置の種類によって異なるが、例えば攪拌装置としてスクリュー攪拌機が設置されている場合は、固形物濃度として10〜15%程度になるように注入するとよい。 夾雑物分離装置6としてスクリーンを用いた場合は経済的な分離が可能であるが、まだ含水率が高いのでスクリュープレス等の脱水機15で脱水し、脱水分離水16は酸発酵槽3あるいは嫌気性消化槽9に導入するとよい。夾雑物7の脱水を脱水機15を省略して脱離液脱水機12を利用してもよいが、脱水分離水14中に夾雑物7に同伴して可溶化した有機物が混入するので、分離水14の水処理工程の負荷が高くなる。 【0007】 嫌気性消化槽9への流入液は、水温55℃程度、滞留日数10〜15日で有機物がガス化する。 脱水工程12において、含水率の低い脱水汚泥13を得るためには、汚泥脱水用ポリマーをSSの1.0%程度注入し、従来の脱水装置である遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレス等の脱水機によって、含水率80数%以下、好ましくは70%前後にすることが望ましい。消化汚泥の性状がよければ、ポリマーの注入量は減少あるいは無添加にすることができる。 次に、図2に本発明のメタン発酵法を実施するための他の工程図を示す。 図1と相違する点は、図2では夾雑物分離装置6として、脱水能力の高いスクリュープレス脱水機を用いており、夾雑物を低含水率の脱水物として排出することができるので、図1の脱水機15を省略することができ、装置構成を簡単化することができる。この場合、水量負荷が高くなるので、スクリュープレス脱水機6は図1のスクリュープレス脱水機15よりも大型になる。 【0008】 図3に、本発明のメタン発酵法を実施するためのもう一つの工程図を示す。 図3は、固液分離装置6を、例えば酸発酵槽流出液5の分離脱水用のスクリュープレス6とメタン発酵脱離液11の脱水工程用スクリュープレス6を兼用させた方法のフローである。この場合、固液分離の時間帯を調整してスクリュープレスを利用するが、スクリュープレスは流入する被脱水物に対応して、回転速度、脱水物出口のクリアランス(開口)の開度等を調整すればよい。また、メタン発酵脱離液11の脱水に際しては、脱水用のポリマーが必要になることが多いので、適宜ポリマー注入量を確認するためのテーブルテストを行っておくとよい。 【0009】 【実施例】 以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。 実施例1 図1の工程図に従って生ごみをメタン発酵させた処理例について述べる。 生ごみ(1): 5t/日、 破袋機(2): 簡易破砕機、 酸発酵槽(スクリュー攪拌設備付帯、沈澱物排出管付帯)3、 有効容積 : 10m3、 水温 : 55℃、 脱水分離水注入量(14): 4m3/日、 滞留日数 : 2日 夾雑物分離装置(6):スクリーン(回転ドラム式、目開き1.0mm)、 処理量 : 14.0m3/日、 分離夾雑物量: 0.5m3/日、 【0010】 嫌気性消化槽(スクリュー攪拌設備付帯)(9)、 有効容積 : 50m3、 水温 : 55℃、 滞留日数 : 10日 メタン発生量: 110m3/日、 脱離液脱水機(12):スクリュープレス脱水機、 カチオンポリマー注入量(汚泥用):対SS 0.3〜1.0%、 処理量 : 13.5m3/日、 処理水量 : pH 7〜7.5、 SS 310〜750mg/リットル、 BOD 600〜900mg/リットル 夾雑物脱水機(15):スクリュープレス脱水機、 処理量 : 0.5m3/日、 【0011】 実施例2 次に本発明を、図2の工程図で行った処理例について述べる。 生ごみ(1): 5t/日、 破袋機(2): 簡易破砕機、 酸発酵槽(酸発酵槽、スクリュー攪拌設備付帯、沈澱物排出管付帯)(3)、 有効容積 : 10m3、 水温 : 55℃、 脱水分離水注入量(14): 4m3/日、 滞留日数 : 2日 夾雑物分離装置(6):スクリュープレス脱水機、 処理量 : 14.0m3/日、 分離夾雑物量: 0.1m3/日、 【0012】 嫌気性消化槽(スクリュー攪拌設備付帯)(9)、 有効容積 : 50m3、 水温 : 55℃、 滞留日数 : 10日 メタン発生量: 115m3/日、 脱離液脱水機(12):スクリュープレス脱水機、 カチオンポリマー注入量(汚泥用):対SS 0.3〜1.0%、 処理量 : 13.9m3/日、 処理水量 : pH 7.0〜7.5、 SS 330〜720mg/リットル、 BOD 700〜900mg/リットル 【0013】 (処理結果) 実施例1、2のいずれの方法によっても、夾雑物のトラブルを発生することなく、円滑なメタン発酵を行うことができた。 また、従来の前処理工程で使用していた乾式の回転式夾雑物除去装置の夾雑物除去率は、70%程度であったが、本発明では、図1の方式では約85%、図2の方式では約90%の夾雑物除去率を達成することができた。 【0014】 【発明の効果】 本発明によれば、有機性廃棄物中の夾雑物の除去にあたり、次のような効果を奏することができる。 (a)簡単な方法で、自動機械分離機よりも高率の夾雑物の除去を行うことができる。 (b)夾雑物を除去するための、前処理工程の構成(分離機械、搬送装置等)を大幅に簡略化することができる。そのため、比較的用地面積に制限のある敷地でも、メタン発酵施設の建設が可能となり、建設費用も低額になる。 (c)前記前処理工程が簡略化したために、点検箇所が少なくなり、機械的な故障箇所の減少も期待できる。 (d)煩雑で不衛生な夾雑物除去操作を著しく省力化でき、作業環境も大幅に改善することができる。 (e)機械数を減少することにより、前処理工程における機械駆動電力量を削減できるので、経済的な処理を行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のメタン発酵法を実施するための一例を示す工程図。 【図2】 本発明のメタン発酵法を実施するための他の例を示す工程図。 【図3】 本発明のメタン発酵法を実施するためのもう一つの例を示す工程図。 【符号の説明】 1:生ごみ、2:破袋装置、3:酸発酵槽、4:夾雑物(比重の高い)、5:酸発酵槽流出液、6:夾雑物分離装置、7:夾雑物、8:分離水、9:嫌気性消化槽、10:バイオガス、11:メタン発酵脱離液、12:脱離液脱水機、13:脱水汚泥、14:脱水分離水、15:脱水機、16:分離水 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-19 |
出願番号 | 特願平9-251495 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B09B)
P 1 651・ 113- YA (B09B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
西村 和美 野田 直人 |
登録日 | 2002-05-10 |
登録番号 | 特許第3303907号(P3303907) |
権利者 | 株式会社荏原製作所 |
発明の名称 | 有機性廃棄物のメタン発酵法 |
代理人 | 松田 大 |
代理人 | 松田 大 |