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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B28B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B28B
管理番号 1105959
異議申立番号 異議2002-72495  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-09 
確定日 2004-08-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3287274号「セラミックグリーンシートの製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3287274号の訂正後の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3287274号は、平成9年9月9日に特許出願され、平成14年3月15日にその特許の設定登録がなされ、その後、株式会社ヒラノテクシードから特許異議の申立てがあり、取消理由が通知されたところ、その指定期間内である平成15年7月22日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、
訂正事項a:特許請求の範囲に
「【請求項1】圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、前記第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、前記スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータを用意し、セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムを用意し、前記第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、前記スラリー流路を通して、前記第2のスラリー室まで供給するとともに、前記第2のスラリー室の前記開口の周縁部に前記キャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記キャリアフィルムを前記開口に沿って移動させることによって、前記キャリアフィルム上に前記セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートを成形する、各工程を備える、セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】 前記第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーは、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものである、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項3】 前記キャリアフィルム上に成形される前記セラミックグリーンシートの厚みが10μm以下である、請求項1または2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。」とあるのを
「【請求項1】圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、前記第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、前記スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータを用意し、セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムを用意し、前記第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、前記スラリー流路を通して、前記第2のスラリー室まで供給するとともに、前記第2のスラリー室の前記開口の周縁部に前記キャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記キャリアフィルムを前記開口に沿って移動させることによって、前記キャリアフィルム上に前記セラミックスラリーからなる厚みが5μm以下のセラミックグリーンシートを成形する、各工程を備える、セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】 前記第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーは、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものである、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。」と訂正する。
訂正事項b:明細書段落【0009】の「厚みが10μm以下」を「厚みが10μm以下、さらには5μm以下」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、訂正事項a-1:【請求項1】に「前記セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートを成形する」とあるのを「前記セラミックスラリーからなる厚みが5μm以下のセラミックグリーンシートを成形する」と訂正する、訂正事項a-2:【請求項3】を削除する、に細分することができるので、細分して検討する。
上記訂正事項a-1は、明細書段落【0007】の記載に基いて、成形するセラミックグリーンシートの厚みを「厚みが5μm以下」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項a-2は、請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項bは、訂正事項a-1の訂正に伴うものであり、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正a-1〜bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)まとめ
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.申立て理由の概要
特許異議申立人株式会社ヒラノテクシードは、証拠方法として甲第1〜4号証を提出し、次の理由1〜2により、本件請求項1〜3に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。
理由1:本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
理由2:本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
4.本件発明
上記2.に記載したとおり、訂正請求は容認できるから、訂正後の本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、前記第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、前記スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータを用意し、セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムを用意し、前記第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、前記スラリー流路を通して、前記第2のスラリー室まで供給するとともに、前記第2のスラリー室の前記開口の周縁部に前記キャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記キャリアフィルムを前記開口に沿って移動させることによって、前記キャリアフィルム上に前記セラミックスラリーからなる厚みが5μm以下のセラミックグリーンシートを成形する、各工程を備える、セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】 前記第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーは、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものである、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。」
以下、適宜「請1〜2発明」と云う。
5.甲第1〜4号証の記載内容
甲第1号証(特公平6-223号公報)
(a)「【請求項1】バッキングロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドを配し、前記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、パッキングロールの下周面をノズルヘッドの前方から後方へ走行するウェブに塗工するリップコータ型塗工装置において、ノズルヘッドの上面には、縦断面円弧型のドクタ-エッジが設けられ、ノズルヘッドの内部の幅方向には、第1液溜め室が設けられ、第1液溜め室とドクターエッジの前方に位置するノズルヘッドの上面との間には、流出路が設けられ、ノズルヘッドの前部には、バッキングロールの下周面へ向かってウェブ走行用の間隙を残して液溜め壁が立設され、バッキングロールの下周面、液溜め壁、ドクターエッジ及びノズルヘッドの上面とより第2液溜め室が形成され、前記第2液溜め室は、流出路の出口より前方に脹まして流出路の容積より大きく形成されているとともに、縦断面円弧型のドクターエッジの刃先に接近するほど容積が、次第に小さくなることを特徴とするリップコータ型塗工装置。」(請求項1)
(b)「ウェブ(F)は塗工液が満された第2液溜め室(32)を通過してドクターエッジ(18)まで送行し、ドクターエッジ(18)の刃先による線圧によって塗工液が塗工される。この場合に、塗工液が狭い流出路(28)を通過することにより塗工液の圧力が均一化され、また、第2液溜め室(32)は流出路(28)の出口(28a)より前方に脹まして流出路(28)の容積より大きく形成しているため、第2液溜め室(32)内部を大気の圧力より高い基準圧力に保持し易く、そのため、ウェブ(F)が液溜め壁(30)とバッキングロール(12)との間隙から第2液溜め室(32)内部に搬入される際に、第2液溜め室(32)内部に空気が侵入することなく、それにより、塗工層に気泡が生じることがない。」(第4頁左欄第30〜41行)
(c)「塗工液供給手段から第1液溜め室へ圧送された塗工液は、狭い流出路を通過することによりその圧力が均一化され、」(第5頁左欄第21〜23行)
甲第2号証(特開平8-276414号公報)
(d)「一方向に走行する可撓性支持体上に ドクターブレード法でセラミック粉、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を含むセラミック塗料を塗布してグリーンシートを成形し、」(第2頁左欄第23〜26行)
(e)「 比較のため、ドクターブレードを用い、セラミック粉体の体積比が25%であるセラミック塗料により、3μm及び10μmのグリーンシートを成形した。」(第6頁左欄第5行〜右欄第1行)
甲第3号証(特開平5-63325号公報)
(f)「この複合体塊5を、らいかい機を用いて粉砕(ステップ6)し、その粉砕物を390メッシュのふるいで約40μm以上の粗大な粒子を取り除く分級(ステップ7)を行い、平均粒径4μmの粉末を得る。その粉末粒子は、アルミナ粒子の1部あるいは全部が硼珪酸ガラスで包まれた複合体粒子8となっている。次に、スラリー化するには、重量比で、複合体粒子100、ブチラール樹脂6(有機バインダ)、可塑剤3、溶剤60の割合で採取し、これらをボールミルで混合してスラリーを製造する(ステップ9)。 ついで、それらのスラリーを、ドクターブレード法により、ポリエステルフィルム上に塗布して、厚さ0.2mmのグリーンシートを製造する(ステップ10)。」(第3頁右欄第25〜38行)
甲第4号証(特開平7-17769号公報)
(g)「このセラミック泥奬物を剥離性の支持体上に塗布し、これを加熱して乾燥させた後、支持体から剥離してグリーンシートを得る。」(第2頁左欄第29〜32行)
(h)「特に、薄層のグリーンシート(例えば10μm 以下)を得るために、より微細な粒径のセラミック粉末(例えば粒径が1μm 以下)を用いるのが好ましい。」(第4頁右欄第23〜26行)
6.対比判断
6-1.申立て理由1について
甲第1号証には、上記摘示事項(b)に「ドクターエッジが下流側になる方向に送行されるウェブへの塗工層の形成方法」が記載され、また、上記摘示事項(a)に「ノズルヘッドの内部に第1液溜め室が設けられ、第1液溜め室とノズルヘッドの上面との間には流出路が設けられ、バッキングロールの下周面、液溜め壁、ドクターエッジ及びノズルヘッドの上面とより、流出路の容積より大きな第2液溜め室が形成された、リップコータ型塗工装置を用いて、バッキングロールの下周面を走行するウェブに塗工する」こと、さらに、上記摘示事項(c)に第1液溜め室へ圧送された塗工液は狭い流出路を通過することが、それぞれ記載されているから、これらを請1発明の記載に則して整理すると、バッキングロールの下周面が第2液溜め室を形成しているからノズルヘッドに着目すると第2液溜め室のバッキングロール側は外部に向く開口が形成されていると云え、さらに、バッキングロールの下周面を走行するウェブはバッキングロールにより第2液溜め室の前記開口の周縁部に圧接されて、前記開口を閉じることは明らかであるから、「圧送される塗工液を受ける第1液溜め室と、前記第1液溜め室に連通しかつ第1液溜め室より狭い断面を有する流出路と、前記流出路に連通しかつ流出路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2液溜め室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、リップコータ型塗工装置を用意し、塗工するためのウェブを用意し、第1液溜め室に圧送された塗工液を、前記流出路を通して、前記第2液溜め室まで供給するとともに、前記第2液溜め室の前記開口の周縁部に前記ウェブを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記ウェブを前記開口に沿って移動させることによって、前記ウェブ上に塗工する、塗工層の形成方法」という発明(以下、適宜「甲1発明」という)が記載されてると云える。
そこで、請1発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「第1液溜め室」は請1発明の「第1の室」、同じく、「流出路」は「流路」、「第2液溜め室」は「第2の室」、「リップコータ型塗工装置」は「コータ」、「ウェブ」は「キャリアフィルム」に、それぞれ相当し、請1発明はドクターエッジを用いて移動するキャリアフィルム上にセラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートを成形しているから、上位概念的には塗工による成形であり、セラミックグリーンシートはキャリアフィルム上の塗工層と云えるから、両者は「圧送される原料を受ける第1の原料室と、前記第1の原料室に連通しかつ第1の原料室より狭い断面を有する原料流路と、前記原料流路に連通しかつ原料流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2の原料室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、コータを用意し、原料からなる塗工層をその上で成形するためのキャリアフィルムを用意し、前記第1の原料室に圧送された原料を、前記原料流路を通して、前記第2の原料室まで供給するとともに、前記第2の原料室の前記開口の周縁部に前記キャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記キャリアフィルムを前記開口に沿って移動させることによって、前記キャリアフィルム上に前記原料からなる塗工層を成形する、各工程を備える、塗工方法」である点で一致し、先ず、下記の点で相違している。
相違点:請1発明は原料としてセラミックスラリーを用い、セラミックグリーンシートを製造するのに対し、甲1発明は塗工液を用いて塗工層を形成するものであり、甲第1号証には塗工液としてセラミックスラリーを用いること、および、塗工層をウェブから剥離することを前提としたグリーンシート等の半製品を製造することについては記載乃至示唆されていない点。
そこで、上記相違点について検討すると、甲1発明の塗工層の形成方法をセラミックグリーンシートの製造に適用することが周知慣用技術ないしは自明の事項とは認められず、さらに、請1発明はその構成により明細書記載の作用効果を奏するものである。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、請1発明が甲第1号証に記載された発明であるとすることができない。
6-2.申立て理由2について
6-2-1.本件請求項1に係る発明について
請1発明と甲1発明とを対比すると、上記6-1.に記載したとおりであるから、上記相違点について甲第2〜4号証の記載を検討する。
甲第2号証には、上記摘示事項 (d)、(e)より「一方向に走行する可撓性支持体上にドクターブレード法でセラミック粉、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を含むセラミック塗料(請1発明の「セラミックスラリー」に相当する)を塗布して3μmのグリーンシートを成形する」ことが記載されていると云えるが、ここでのドクターブレード法はセラミック塗料を自重によって支持体上に供給する(明細書段落【0006】)ものであって、甲1発明の圧送された塗工液をウェブ上に塗工するものとは形式及び構造が異なるものである。また、甲第4号証には、上記摘示事項(g)より、「セラミック泥奬物(請1発明の「セラミックスラリー」に相当する)を剥離性の支持体上に塗布した後、剥離してグリーンシートを得る」ことが従来技術として記載されているが、具体的な塗布装置および塗布方法を教示するものではなく、さらに、甲第4号証記載の発明は特定のバインダー樹脂を用いることを特徴としているから、特定のリップコータ型塗工装置を用いた塗工層の形成を特徴とする甲1発明とは課題の共通性がない。
してみると、甲第1号証に塗工液としてセラミックスラリーを用い、塗工層をウェブから剥離することを前提とした半製品であるグリーンシートを製造することが示唆されておらず、さらに、甲第1号証と甲第2号証記載の塗工乃至塗布方法は形式及び構造が異なり、また、甲第1号証と甲第4号証記載の発明とは課題の共通性がないから、甲第1号証に甲第2号証または甲第4号証記載のものを組み合わせる動機付けがない。
また、甲第3号証には粉砕物から粗大粒子を取り除いてセラミックスラリーを製造することが記載されているのみである。
そして、請1発明は、上記構成を採用することにより、「厚み…5μm以下といった薄いセラミックグリーンシートであっても、高い品質で、かつ高スピードで成形することが可能」(明細書段落【0036】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、請1発明が甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
6-2-2.本件請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は請求項1に係る発明を引用し、前記した請1発明の発明特定事項を有するものであるから、請求項2に係る発明も、前項と同じ理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
7.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セラミックグリーンシートの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、前記第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、前記スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、前記開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータを用意し、
セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムを用意し、
前記第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、前記スラリー流路を通して、前記第2のスラリー室まで供給するとともに、前記第2のスラリー室の前記開口の周縁部に前記キャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、前記ドクターエッジが下流側になる方向に前記キャリアフィルムを前記開口に沿って移動させることによって、前記キャリアフィルム上に前記セラミックスラリーからなる厚みが5μm以下のセラミックグリーンシートを成形する、各工程を備える、セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】 前記第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーは、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものである、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、セラミックグリーンシートの製造方法に関するもので、特に、キャリアフィルムによって裏打ちされた状態でセラミックグリーンシートを製造するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】たとえば積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品を製造する場合、セラミックグリーンシートを積層することが行なわれるが、積層セラミック電子部品の小型化あるいは薄型化を図りながら、高性能化を図るためには、セラミックグリーンシートを薄層化することが有効である。
【0003】他方、セラミックグリーンシートは機械的に軟弱である。したがって、上述のように薄層化された場合、その機械的強度を補うため、可撓性のキャリアフィルムが用意され、このキャリアフィルム上でセラミックグリーンシートを成形することが行なわれ、さらに、このようにキャリアフィルムによって裏打ちした状態のまま、セラミックグリーンシートを以後のいくつかの工程において取り扱うことも行なわれている。
【0004】従来、上述のように、キャリアフィルム上でセラミックグリーンシートを成形するため、(1)ドクターブレード法、(2)マイクログラビアロール法、(3)リバースロール法などが用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した(1)ないし(3)の方法は、いずれも解決されるべき問題がある。(1)の方法は、比較的簡単な構造で安価な設備しか必要としない点で有利であるが、得られたセラミックグリーンシートの厚みのばらつきが比較的大きく生じ、また、空気の取込みやピンホール等も生じやすい。そのため、たとえば10μm以下の厚みのセラミックグリーンシートを十分な品質で得ることが困難である。
【0006】(2)の方法では、たとえば10μm以下の厚みのセラミックグリーンシートの成形も可能であるが、高速回転するグラビアロール部での空気の巻き込みが起こりやすく、また、グラビアロールの撓みの問題から幅の広いセラミックグリーンシートの成形が困難である。(3)の方法では、(1)の方法と同様、得られたセラミックグリーンシートの厚みのばらつきが大きく、かつピンホールも発生しやすい。そのため、たとえば10μm以下のセラミックグリーンシートの成形への適用は、実用上、困難である。また、各ロールの逆回転部において、セラミックスラリーに強い剪断力が働くため、セラミックスラリーの状態によって、得られるセラミックグリーンシートの品質が変化しやすく、また、逆回転部で空気の巻き込みが起こりやすい。したがって、成形スピードを高めることが困難である。
【0007】また、(1)ないし(3)の方法では、いずれも、キャリアフィルムに対してセラミックスラリーを付与する部分に向かって、直接、セラミックスラリーを供給するので、この供給のためのポンプにたとえば脈動などが生じた場合、これがそのままセラミックグリーンシートの品質に影響を及ぼす、という問題もある。そこで、この発明の目的は、上述の問題を解決し、たとえば10μm以下、より好ましくは5μm以下といった厚みのセラミックグリーンシートを高速でかつ高品質で製造できる、セラミックグリーンシートの製造方法を提供しようとすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法では、上述の技術的課題を解決するため、圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータが用意されるとともに、セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムが用意される。そして、第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、スラリー流路を通して、第2のスラリー室まで供給するとともに、第2のスラリー室の開口の周縁部にキャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、ドクターエッジが下流側になる方向にキャリアフィルムを開口に沿って移動させることによって、キャリアフィルム上にセラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートを成形することが行なわれる。
【0009】この発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法において、第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーは、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものであることが好ましい。また、この発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、キャリアフィルム上に成形されるセラミックグリーンシートの厚みが10μm以下、さらには5μm以下であるとき、有利に適用される。
【0010】
【発明の実施の形態】上述したようなこの発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法を実施するため、図1ないし図6にそれぞれ示す製造装置を用いることができる。これら製造装置は、共通して、圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成され、第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、スラリー流路を通して、第2のスラリー室まで供給するようにされた、スラリーコータを備える。さらに、これら製造装置は、セラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートをその上で成形するためのキャリアフィルムを第2のスラリー室の開口の周縁部に圧接させることによって当該開口を閉じるとともに、ドクターエッジが下流側になる方向にキャリアフィルムを移動させるように、キャリアフィルムを保持するためのキャリアフィルム保持部材を備えている。
【0011】図1は、この発明の一実施形態によるセラミックグリーンシートの製造方法を説明するためのもので、セラミックグリーンシートの製造を実施している状態にある製造装置の第1の例を断面図で図解的に示している。図1に示すように、製造装置1は、セラミックスラリー2をキャリアフィルム3上に付与し、それによって、キャリアフィルム3上でセラミックグリーンシート4を成形しようとするもので、スラリーコータ5とキャリアフィルム保持部材としてのバッキングロール6とを備えている。
【0012】スラリーコータ5は、矢印7で示すように圧送されるセラミックスラリー2を受ける第1のスラリー室8と、第1のスラリー室8に連通しかつ第1のスラリー室8より狭い断面を有するスラリー流路9と、スラリー流路9に連通しかつスラリー流路9より広い断面を有するとともに外部に向く開口10が形成された第2のスラリー室11とを備えている。開口10の周縁部であって、その一側縁に沿うように、ドクターエッジ12が形成されている。
【0013】このスラリーコータ5において、第1のスラリー室8に圧送されたセラミックスラリー2は、スラリー流路9を通して、第2のスラリー室11まで供給される。このように、第1のスラリー室8から第2のスラリー室11にまでセラミックスラリー2を供給するにあたり、断面の比較的狭いスラリー流路9を通すことによって、第2のスラリー室11の内部圧力を高くかつ一定に保つことが容易になる。
【0014】なお、第1のスラリー室8に圧送されるセラミックスラリー2は、当該セラミックスラリー2に含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものであることが好ましい。そのため、たとえば、このようなセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を確実に捕集できる絶対濾過フィルタが用いられ、このフィルタによって濾過したセラミックスラリーのみが、セラミックスラリー2として、第1のスラリー室8に供給される。
【0015】他方、バッキングロール6は、キャリアフィルム3をその周面上に配置しながら、このキャリアフィルム3を第2のスラリー室11の開口10の周縁部に圧接させることによって開口10を閉じるように位置している。より特定的には、第2のスラリー室11の開口10は上方に向いており、バッキングロール6の周面の下方に向く部分上にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。キャリアフィルム3は、ガイドロール13を介してバッキングロール6の周面へ供給され、バッキングロール6が矢印14方向に回転されることによって、ドクターエッジ12が下流側になる方向に移動される。
【0016】このような構成の製造装置1において、セラミックスラリー2は、第1のスラリー室8に圧送され、次いで、スラリー流路9を通して、第2のスラリー室11まで供給される。他方、バッキングロール6の周面上に配置されたキャリアフィルム3は、第2のスラリー室11の開口10を閉じながら、バッキングロール6の回転に従って、第2のスラリー室11の開口10に沿って移動する。したがって、キャリアフィルム3がドクターエッジ12を通過するとき、ドクターエッジ12によって及ぼされる圧力によって、第2のスラリー室11内のセラミックスラリー2が均一な膜厚をもってキャリアフィルム3に付与される。このようにして、キャリアフィルム3上において、セラミックスラリー2からなるセラミックグリーンシート4が成形される。
【0017】以上のように、この実施形態によれば、キャリアフィルム3へのセラミックスラリー2の付与部分において、セラミックスラリー2に剪断力があまり働かないため、セラミックスラリー2の粘性に影響されず、安定した成形を行なうことができる。また、空気の巻き込みを生じないので、問題なく成形スピードを高めることができる。
【0018】また、セラミックスラリー2を加圧した状態でキャリアフィルム3上に付与するため、得られたセラミックグリーンシート4において、ピンホールなどの欠陥を少なくすることができる。また、ドクターエッジ12をたとえば硬質金属などで構成することにより、グラビアロールにおけるような撓みの問題を解消でき、したがって、得ようとするセラミックグリーンシート4の幅が広くても、これを均一な品質で成形することができる。
【0019】また、第1のスラリー室8と第2のスラリー室11との間に、断面の比較的狭いスラリー流路9が設けられているので、第2のスラリー室11においては、第1のスラリー室8に供給されるべきセラミックスラリー2を圧送するためのポンプの脈動などの不整の影響を受けにくくすることができ、第2のスラリー室11の内部圧力を高くかつ一定に保つことが容易になる。
【0020】これらのことから、従来、量産規模での成形が困難とされていた、厚み10μm以下、さらには5μm以下のセラミックグリーンシート4であっても、幅の広いものが、高い品質で、かつ高スピードで成形することが可能になる。なお、セラミックグリーンシート4の厚みは、バッキングロール6とドクターエッジ12との間隔を変更したり、第2のスラリー室11の内圧を変更したりすることにより、調整することができる。また、用いるセラミックスラリー2の粘度、比重、濃度等によっても、セラミックグリーンシート4の厚みを調整することができる。
【0021】また、図1に示す製造装置1によれば、キャリアフィルム3をその周面上に配置するバッキングロール6を備えているので、このバッキングロール6によって、キャリアフィルム3を第2のスラリー室11の開口10の周縁部に圧接させて当該開口10を閉じる状態に安定的に維持できるとともに、バッキングロール6の回転によってキャリアフィルム3を所望のごとく移動させることができる。
【0022】以下に、この発明の効果を確認するため実施した実験例について説明する。積層セラミックコンデンサのための平均粒径0.4〜0.5μmの範囲にあるセラミック粉末、溶媒および有機バインダを、それぞれ所定量ずつ秤量し、媒体攪拌ミルを用いて混合しかつ分散させることによって、セラミックスラリーを得た。
【0023】得られたセラミックスラリーを、そこに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を確実に捕集するため、絶対濾過フィルタによって濾過した。このように調製されたセラミックスラリー2を、図1に示したスラリーコータ5の第1のスラリー室8に供給すべく、ポンプにて圧送するとともに、キャリアフィルム3の移動スピードを一定としたまま、バッキングロール6とドクターエッジ12との間隔およびポンプの流量を調整することによって、第2のスラリー室11内のセラミックスラリー2の圧力が200〜600mmAq程度になるように設定し、その状態で、キャリアフィルム3上にセラミックスラリー2を付与した。
【0024】このように付与されたセラミックスラリー2は、キャリアフィルム3上でそのまま乾燥されることによって、厚み5μmのセラミックグリーンシート4とされた。他方、比較例として、同じセラミックスラリーを用いながら、マイクログラビアロール法にて処理し、厚み5μmのセラミックグリーンシートを成形した。
【0025】このようにして得られた、この発明の実施例に係るセラミックグリーンシートと比較例に係るセラミックグリーンシートとのそれぞれについて、密度(g/cm3)、厚みのばらつき(%)、および、100cm2の面積内に存在する直径5μm以上のピンホールの数を測定するとともに、これらセラミックグリーンシートをそれぞれ用いて製造した積層セラミックコンデンサのショート不良率(%)、およびIR(絶縁抵抗)不良率(%)を測定した。以下の表1には、これらの測定結果が示されている。
【0026】
【表1】

【0027】表1からわかるように、実施例は、比較例と比較して、セラミックグリーンシートの密度、厚みのばらつき、および、ピンホールの数、ならびに、積層セラミックコンデンサのショート不良率、およびIR不良率のすべての点において、優れた結果を示している。図2ないし図6は、セラミックグリーンシートの製造を実施している状態にある製造装置の第2ないし第6の例をそれぞれ断面図で図解的に示している。これらの図面に示した製造装置は、図1に示した製造装置1に備える要素に対応する多くの要素を備えており、したがって、これら対応する要素には、図1で用いた参照符号を用いることにより、重複する説明は省略する。
【0028】図2に示した製造装置21では、第2のスラリー室11の開口10は図による右下方向に向いており、バッキングロール6の周面の左上方に向く部分上にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。また、ドクターエッジ12は、第1および第2のスラリー室8および11ならびにスラリー流路9を形成するハウジング部材22とは別体のたとえば中心角約270度の略扇形の断面を有するドクターエッジ部材23の一部をもって形成されている。このような構成によれば、得ようとするセラミックグリーンシート4の幅が広くても、これを均一な品質で成形することを可能にすべく、ドクターエッジ12において撓みが実質的に生じないようにすることを、ハウジング部材22に拘束されることなく、ドクターエッジ部材23の断面形状や材料の選択等によって容易に実現することができる。
【0029】図3に示した製造装置31では、第2のスラリー室11の開口10は下方に向いており、バッキングロール6の周面の上方に向く部分上にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。図4に示した製造装置41では、第2のスラリー室11の開口10は図による右方向に向いており、バッキングロール6の周面の左方に向く部分上にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。また、第2のスラリー室11の容積は、比較的小さくされている。
【0030】図5に示した製造装置51では、キャリアフィルム保持部材として、バッキングロールが用いられず、代わりに、2つの保持ロール52および53が用いられる。2つの保持ロール52および53は上下に並ぶように配置され、これら保持ロール52および53がそれぞれ矢印54および55方向に回転することによって、キャリアフィルム3は、保持ロール52および53間で上方へ向かって移動される。
【0031】他方、第2のスラリー室11の開口10は図による右方向に向いており、保持ロール52および53間にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。図6に示した製造装置61においても、キャリアフィルム保持部材として、バッキングロールが用いられず、代わりに、2つの保持ロール62および63が用いられる。2つの保持ロール62および63は左右に並ぶように配置され、これら保持ロール62および63がそれぞれ矢印64および65方向に回転することによって、キャリアフィルム3は、保持ロール62および63間で図による左方向へ向かって移動される。
【0032】他方、第2のスラリー室11の開口10は上方に向いており、保持ロール62および63間にあるキャリアフィルム3によって、この開口10が閉じられている。
【0033】
【発明の効果】このように、この発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法によれば、圧送されるセラミックスラリーを受ける第1のスラリー室と、第1のスラリー室に連通しかつ第1のスラリー室より狭い断面を有するスラリー流路と、スラリー流路に連通しかつスラリー流路より広い断面を有するとともに外部に向く開口が形成された第2のスラリー室とを備え、開口の一側縁に沿ってドクターエッジが形成された、スラリーコータが用いられ、第1のスラリー室に圧送されたセラミックスラリーを、スラリー流路を通して、第2のスラリー室まで供給するとともに、第2のスラリー室の開口の周縁部にキャリアフィルムを圧接させることによって当該開口を閉じ、その状態で、ドクターエッジが下流側になる方向にキャリアフィルムを開口に沿って移動させることによって、キャリアフィルム上にセラミックスラリーからなるセラミックグリーンシートを成形することが行なわれるので、以下のような効果が奏される。
【0034】まず、キャリアフィルムへのセラミックスラリーの付与部分において、セラミックスラリーに剪断力があまり働かないため、セラミックスラリーの粘性に影響されず、安定した成形を行なうことができる。また、空気の巻き込みを生じないので、問題なく成形スピードを高めることができる。また、セラミックスラリーを加圧した状態でキャリアフィルム上に付与するため、得られたセラミックグリーンシートにおいて、ピンホールなどの欠陥を少なくすることができる。
【0035】また、第1のスラリー室と第2のスラリー室との間に、断面の比較的狭いスラリー流路が設けられているので、第2のスラリー室においては、第1のスラリー室に供給されるべきセラミックスラリーを圧送するためのポンプの脈動などの不整の影響を受けにくくすることができ、第2のスラリー室の内部圧力を高くかつ一定に保つことが容易になる。
【0036】これらのことから、従来、量産規模での成形が困難とされていた、厚み10μm以下、さらには5μm以下といった薄いセラミックグリーンシートであっても、高い品質で、かつ高スピードで成形することが可能になり、これを積層セラミック電子部品に適用すれば、特性の安定化、小型化を図ることができる。この発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法において、第1のスラリー室に圧送されるセラミックスラリーとして、当該セラミックスラリーに含まれるセラミック粉末の平均粒径の10倍以上の凝集粒子を予め除去したものを用いると、このような凝集粒子がセラミックグリーンシート内に混入してセラミックグリーンシートの適正な成形を妨げることを防止できるので、より薄いセラミックグリーンシートの成形に一層有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態によるセラミックグリーンシートの製造方法を説明するためのもので、セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第1の例を図解的に示す断面図である。
【図2】セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第2の例を図解的に示す断面図である。
【図3】セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第3の例を図解的に示す断面図である。
【図4】セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第4の例を図解的に示す断面図である。
【図5】セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第5の例を図解的に示す断面図である。
【図6】セラミックグリーンシートの成形を実施している状態にある製造装置の第6の例を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
1,21,31,41,51,61 セラミックグリーンシートの製造装置
2 セラミックスラリー
3 キャリアフィルム
4 セラミックグリーンシート
5 スラリーコータ
6 バッキングロール
8 第1のスラリー室
9 スラリー流路
10 開口
11 第2のスラリー室
12 ドクターエッジ
52,53,62,63 保持ロール
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-05 
出願番号 特願平9-243592
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B28B)
P 1 651・ 113- YA (B28B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近野 光知  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
登録日 2002-03-15 
登録番号 特許第3287274号(P3287274)
権利者 株式会社村田製作所
発明の名称 セラミックグリーンシートの製造方法  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 富田 克幸  
代理人 中村 哲士  
代理人 蔦田 正人  

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