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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C21D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C21D
管理番号 1105972
異議申立番号 異議2003-71159  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-08-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-02 
確定日 2004-08-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3341611号「建築用降伏強度制御鋼板の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3341611号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1、手続の経緯
本件特許第3341611号は、平成9年1月30日の特許出願に係るものであって、平成14年8月23日に特許権の設定の登録がされたものであり、その後、株式会社神戸製鋼所より特許異議の申立てがなされた。
そこで、当審より特許取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月8日に訂正請求がなされ、当審より特許異議申立人に対して審尋がなされ、回答書が提出されたものである。

2、訂正請求について
2-1、訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項A
本件特許の願書に添付した明細書(以下、単に「明細書」という。)の特許請求の範囲において、
「【請求項1】C :0.04〜0.18wt.%、Si:0.05〜0.8 wt.%、Mn:0.2 〜1.7 wt.%、および、Al:0.07wt.%以下を含有し、
更に、下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素
Ti:0.03wt.%以下(0を含む)、Nb:0.05wt.%以下(0を含む)、V :0.1wt.%以下(0を含む)、Cu:0.7wt.%以下(0を含む)、Ni:0.7wt.%以下(0を含む)、Cr:1.3wt.%以下(0を含む)、および、Mo:0.8wt.%以下(0を含む)、を含有し、
残り:Feおよび不可避不純物
からなる鋼片に対し、粗圧延および950℃以下の温度域から開始される制御圧延からなる熱間圧延を施し次いで加速冷却することによって、建築用降伏強度制御鋼板を製造する工程において、
前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなく、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことを特徴とする、建築用降伏強度制御鋼板の製造方法。」を、
「【請求項1】C :0.04〜0.18wt.%、Si:0.05〜0.8 wt.%、Mn:0.2 〜1.7 wt.%、および、Al:0.07wt.%以下を含有し、
更に、下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素
Ti:0.03wt.%以下(0を含む)、Nb:0.05wt.%以下(0を含む)、V :0.1wt.%以下(0を含む)、Cu:0.7wt.%以下(0を含む)、Ni:0.7wt.%以下(0を含む)、Cr:1.3wt.%以下(0を含む)、および、Mo:0.8wt.%以下(0を含む)を含有し、
残り:Feおよび不可避不純物
からなる鋼片に対し、粗圧延および950℃以下の温度域から開始される制御圧延からなる熱間圧延を施し、次いで加速冷却することによって建築用降伏強度制御鋼板を製造する、リバース圧延による厚板圧延工程において、前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことを特徴とする、建築用降伏強度制御鋼板の製造方法。」に訂正する。
(2)訂正事項B
明細書の段落【0018】において、「建築用降伏強度制御鋼板を製造する工程において、前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなく、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことに特徴を有するものである。」とあるを、「建築用降伏強度制御鋼板を製造する、リバース圧延による厚板圧延工程において、前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことに特徴を有するものである。」に訂正する。
(3)訂正事項C
明細書の段落【0026】において、「次いで、1秒間経過後に、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2′間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行い、」とあるを、「次いで、1秒間経過後に、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2′間に矢印方向にリバースパスさせて、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行い、」に訂正する。
(4)訂正事項D
明細書の段落【0029】において、「その1は、1段目のデスケーリング直後に、圧下を加えることなく圧延機に通すことによって、スケールの取れ残り部分があっても、それが仕上圧延ロールによって粉砕され、圧着されることがないためである。」とあるを、「その1は、1段目のデスケーリング直後に、圧下を加えることなく圧延機に通すことによって、スケールの取れ残りがあっても、取れ残りスケールが仕上圧延ロールによって粉砕されることがなく、従って、取れ残りスケールが圧延面に圧着されることがないためである。」に訂正する。

2-2、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項Aは、特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「建築用降伏強度制御鋼板を製造する工程」を「建築用降伏強度制御鋼板を製造する、リバース圧延による厚板圧延工程」に訂正しようとするとともに、訂正前の「再び圧下を施すことなく、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程」を「再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程」に訂正しようとするものであるが、前者の訂正は、【図2】〜【図3】に示され、明細書の段落【0022】〜【0027】で説明されているデスケーリングパターンについての記載、及び【表3】〜【表4】の板厚のデータに基づいて、鋼板を製造する工程をリバース圧延による厚板圧延工程に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、後者の訂正は、省略されていた記載を補うもので明りょうでない記載の釈明に該当する。そして、訂正事項Aの訂正は、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。
訂正事項Bは、明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載と整合するように訂正するものであるから、この訂正は、明りょうでない記載の釈明に該当する。
訂正事項Cは、明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載において、誤記の部分を削除するものであるから、この訂正は誤記の訂正に該当する
訂正事項Dは、明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載をより明瞭にしたものであるから、この訂正は明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、これら訂正事項B〜Dは、いずれも、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。

2-3、まとめ
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する同法第126条第2〜3項の規定に適合するものであるから、当該訂正を認める。

3、特許異議の申立てについて
3-1、本件発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許に係る発明(以下、「本件発明」という)は、前記訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの、すなわち前記「2-1、訂正の内容」の「(1)訂正事項A」において記載したとおりのものである。

3-2、申立ての理由及び当審の取消理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜3号証を提出し、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(申立て理由1)、また、本件特許の明細書には記載不備が存在するから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである(申立て理由2)と主張している。
そして、当審において通知した取消理由は、申立て理由1、2と同趣旨のものである
(以下、「取消理由1、2」という)。

3-3、引用刊行物の記載事項
当審が通知した取消理由に引用された刊行物1〜3(特許異議申立人が提出した甲1〜3号証に対応する)には、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1:特開昭59-153513号公報
厚鋼板の2次スケールの除去に関し次のように記載されている。
「1 厚鋼板の圧延過程で850℃以上の、圧延パス時において・・・高圧水を、鋼板表面に30秒以内の時間間隔にて2回にわたり噴射することを特徴とする厚鋼板の2次スケールの除去方法。」(特許請求の範囲)
「厚板ミルでの厚鋼板の製造において、・・・ このスケール性欠陥が発生するのは、・・・2次スケールが圧延時にロールとの間に噛込むことによるスケール疵・・・であり、従って最終圧延前におけるデスケーリング時に、その2次スケールを完全に除去する必要がある。」(第1頁左下欄第16行〜左下欄第4行)
「この発明は、2次スケールの完全なデスケーリングを実現することによりスケール模様のない表面が美麗な厚鋼板の製造を可能ならしめることを目的とするものである。」(第2頁左上欄第3〜6行)
「デスケーリングの高圧水噴射を2回にわたって、つまり最終圧延直前の噛出しと、最終圧延パスの噛込みとに際して実施することを試み、この発明の目的が有利に達成されることを見出した。」(第2頁左上欄第12〜16行)
「第3図にこの発明に従いデスケーリングとして・・・・高圧水噴射を、5秒間の時間間隔を置いて2回行った場合のスケール模様の発生率を示すように、スケールはく離性が非常によくスケール模様の発生率が大幅に減少している。」(第2頁左下欄第5〜9行)
「実際の厚板ミルデスケーリング装置により、・・・最終ミルデスケーリング使用パスの前パスでミルデスケーリング装置を噛み出し側で作動して2次スケールを浮かし、ひきつづき噛み込み側で再作動させ2次スケールを完全にはく離させる方法を工程化させた。・・・デスケーリング間隔は、・・・5秒であった。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第9行)

(2)刊行物2:特公平7-115060号公報
鋼材の脱スケール方法に関し次のように記載されている。
「【特許請求の範囲】【請求項1】 高温鋼材の表面に生成する2次スケールの脱スケール方法において、鋼材表面に25〜80kgf/cm2 の噴射圧力で材料単位面積当たり4l/m2 以上の水量を噴射し、この下流で鋼材表面の水を排除して復熱させ、次いでこの鋼材表面に135〜170kgf/cm2 の噴射圧力で材料単位面積当たり18〜50l/m2 の水量を噴射することを特徴とする鋼材の脱スケール方法。」
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は熱間圧延工程において鋼材の表面に生成する2次スケールの脱スケール方法に関するものである。」
「【0002】【従来の技術】鋼材のスケールには、材料の加熱中に生成する1次スケールと、これを除去したのち圧延中に生成する2次スケールとがあり、いずれも圧延後における表面疵の原因となるので、鋼材の圧延前に除去することが必要とされている。」
「【0004】・・・
本発明は2段の低圧水流ジェット方式により定量的に安定した鋼材の脱スケール方法を提供するものである。」
「【0006】【作用】・・・第1段目のデスケーリング(以下デスケという)を低圧水流ジェット化することとし、この下流で鋼材表面の水を排除して十分に復熱させ、次いでこの鋼材表面に135〜170kgf/cm2 の噴射圧力で鋼材表面の温度変化を生じさせ、適正なクラックを発生させるとともに、剥離及びスケールを飛散させてスケール模様の発生を皆無にするデスケ方法を完成した。・・・・・」
「【0007】【実施例】図3に示す熱間圧延装置において粗バー10を第1デスケ11、第2デスケ12により脱スケール1〜7段の圧延スタンドを熱延し、コイラー14に巻取った。」

(3)刊行物3:特公平5-63525号公報
「重量パーセントで、C :0.03〜0.20%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.50〜2.50%、Al:0.005〜0.1%を基本成分とし、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cu:0.50%以下、V:0.10%以下、:Ti0.10%以下、Nb:0.10%以下の強度改善元素群をこの範囲内で1種または2種以上含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を、900〜1200℃で加熱し、熱間圧延において900℃からAr3の間で仕上板厚に対して30%以上の累積圧下を施し、その後空冷し、鋼板表面温度がAr3-20℃〜Ar3-80℃の間から・・・冷却を開始し、鋼板温度が350〜600℃の間で冷却を停止することを特徴とする低降伏比非調質鋼の製造方法。」(特許請求の範囲2)が記載されている。

4、対比・判断
4-1、取消理由1について
本件発明は、リバース圧延による厚板圧延工程において、鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、すなわち、待機時間を1秒以上設けた連続する2段のデスケーリング工程を、制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において少なくとも1回以上行うものであり(請求項1参照)、これにより、圧延後の鋼板の表面が、主に均一な黒灰スケールで覆われたものになり、鋼板表面のスケール層厚がほぼ一定であるために、加速冷却後の降伏強度のバラツキ(3σYS)を30MPa以下に抑えることができるという作用効果を奏するものである(段落【0031】参照)。
これに対し、刊行物1には、厚板ミルでの厚鋼板の製造、すなわちリバース圧延による厚板圧延工程において、待機時間を5秒とした連続する2段のデスケーリングを、制御圧延の最終圧延直前の噛出しと、最終圧延パスの噛込みとに際して行うことにより、スケール模様のない表面が美麗な厚鋼板の製造を可能ならしめることが記載されているが(前記摘記した記載参照)、本願発明のように、連続する2段のデスケーリング工程を制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間に行い、加速冷却後の鋼板の降伏強度のバラツキを抑えることについては記載されていない。
また、刊行物2には、復熱工程を間にはさんだ2段の低圧水流ジェット方式によるデスケーリングを7段の連続仕上圧延機の前で行って、スケール模様の発生を皆無にするデスケ-リング方法が記載されているが(前記摘記した記載参照)、その方法をリバース圧延による厚板圧延工程に適用できることについては記載されておらず、圧延に次いで行われる加速冷却後の鋼板の降伏強度のバラツキを抑えることについても記載されていない。
さらに、刊行物3には、所定の鋼成分の鋼を制御圧延し、加速冷却して低降伏比非調質鋼を製造する方法について記載されているが、制御圧延に関連して行われるデスケーリングについては何も記載されていない。
以上のように、刊行物1〜3のいずれにも、リバース圧延による厚板圧延工程において、前記本件発明のような2段のデスケーリング工程を行って、制御圧延に次いで行われる加速冷却後の鋼板の降伏強度のバラツキを抑えることについては記載されておらず、また、刊行物2に仕上げ圧延の前にデスケーリングをすることが記載されていても、その記載は、リバース圧延による厚板圧延工程において、加速冷却後の降伏強度のバラツキが抑えられることを何ら示唆するものではないから、刊行物1、2に記載のものを組み合わせたとしても、当業者が本件発明を容易に想到できるものではない。
そうすると、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由1によって本件特許を取り消すことはできない。

4-2、取消理由2について
取消理由2は、本件特許の明細書には、「圧下を加えることなく圧延機に通すことによって、スケールの取れ残り部分があっても、それが仕上圧延ロールによって粉砕され」(段落【0029】)と記載されており、圧下を加えることなくスケールの取れ残り部分を粉砕するためには特別の態様で圧延機を通さなければならないから、請求項1の「前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し」という事項は、発明を明確に特定するものではないというものである。
しかしながら、引用された「それが仕上圧延ロールによって粉砕され」は、その次の文である「・・・ることがないためである。」につながることは明白であるから、上記記載の意味は、スケールの取れ残り部分があっても、それが仕上圧延ロールによって粉砕されることがないというものである。しかも、段落【0029】の記載は、上記のように「スケールの取れ残りがあっても、取れ残りスケールが仕上圧延ロールによって粉砕されることがなく、」に訂正された。
したがって、圧下を加えることなく圧延機に通す際に、特別の態様が求められるものではないから、請求項1に記載の上記事項に何ら不明確な点は存在しない。
そうすると、本件特許の明細書の記載に不備があるものではないから、取消理由2によっても本件特許を取り消すことはできない。

5、むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
建築用降伏強度制御鋼板の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C :0.04〜0.18wt.%、
Si:0.05〜0.8wt.%、
Mn:0.2〜1.7wt.%、および、
Al:0.07wt.%以下を含有し、更に、
下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素、
Ti:0.03wt.%以下(0を含む)、
Nb:0.05wt.%以下(0を含む)、
V :0.1wt.%以下(0を含む)、
Cu:0.7wt.%以下(0を含む)、
Ni:0.7wt.%以下(0を含む)、
Cr:1.3wt.%以下(0を含む)、および、
Mo:0.8wt.%以下(0を含む)
を含有し、
残り:Feおよび不可避不純物
からなる鋼片に対し、粗圧延および950℃以下の温度域から開始される制御圧延からなる熱間圧延を施し、次いで加速冷却することによって建築用降伏強度制御鋼板を製造する、リバース圧延による厚板圧延工程において、
前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことを特徴とする、建築用降伏強度制御鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築、土木用等に使用され、高精度の応力設計が必要とされる、溶接構造用の低降伏比を有する高張力鋼であって、降伏強度のバラツキが小さい、建築用降伏強度制御鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大地震発生時における建築物の安全性確保の観点から、柱の降伏に先行して梁を降伏させることにより地震エネルギーを吸収して、柱の崩壊を防止する終局耐力設計法が、建築物等の構造物に適用され始められている。
【0003】
地震エネルギーを十分に吸収させるためには、地震発生時に鋼材が大きく変形し得ることを必要とし、そのためには、鋼材が低降伏比であることが要求されている。更に、設計者の意図通りに、柱の降伏に先行して梁を降伏させるためには、鋼材の降伏強度のバラツキが小さいことが要求されている。
【0004】
引張り強度が490MPa以上の低降伏比高張力鋼板の製造方法としては、生産性を損なわないように、オンラインにおいて、制御圧延および加速冷却を行う方法が、一般的に行われている。
【0005】
熱間圧延によって製造された鋼板には、加熱時に生成した1次スケールおよび熱間圧延中に生成した2次スケールの一部が、熱間圧延の途中で行われるデスケーリングにおいて十分に除去されずに鋼板の表面に残存し、鋼板の表面にスケール層厚の不均一が生じて、スケールむらが発生することがある。
【0006】
オンラインで行われる、制御圧延し次いで加速冷却する鋼板の製造工程においては、上述したスケールむらが原因となって、加速冷却停止時に冷却むらが発生し、鋼板強度のバラツキを大にしている。このように強度のバラツキが大きい鋼板を建築物に使用すると、地震発生時に、設計者の意図通りに柱および梁が降伏せず、その結果、建築物が崩壊するに至る危険性が大きい。
【0007】
加熱時に生成した1次スケールは、粗圧延機の入側に配置されたハイドロリックスケールブレーカ(HSB)による高圧水の噴射によって除去され、また、圧延時に生成した2次スケールは、粗圧延機および仕上圧延機の各々の入側に配置されたハイドロリックスケールブレーカ(HSB)による高圧水の噴射によって除去される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の特に2次スケールの除去技術に関しては、デスケーリングの際における高圧水の干渉や滞留むらのために、十分にスケール除去が行われない場合があり、鋼板の表面にスケールむらが形成されたまま圧下される結果、鋼板の強度等、鋼板の特性値にバラツキなどが生ずる問題を引き起こしている。
【0009】
上述したスケールの制御に関する問題を解決するために、特開平7-48622号公報には、圧延終了後、直ちに鋼板を700〜800℃の温度域まで水冷して、2次スケールの生成を制御する方法(以下、先行技術という)が開示されている。しかしながら、先行技術によっては、これを実施するために、制御圧延の場合、粗圧延機と仕上圧延機との間に鋼板を均一に水冷する設備等を設置しなければならず、そのために膨大な設備コストが必要になる。
【0010】
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、鋼板の表面にスケールむらが生ぜず、引張り強度490MPa以上、降伏比80%以下、同一鋼板内の降伏強度のバラツキの指標として、降伏強度の変動幅3σ(σは標準差、以後「3σYS」という)が30MPa以下の低降伏比高張力鋼板である、建築用降伏強度制御鋼板を製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した観点から、鋼板表面にスケールむらが生ずることなく、これによって、引張り強度が490MPa以上、降伏比が80%以下そして降伏強度のバラツキ3σYSが30MPa以下の、特性値にバラツキのない、低降伏比高張力鋼板である、建築用降伏強度制御鋼板の製造方法を開発すべく、鋭意研究を重ねた。
【0012】
本発明者らは、先ず、鋼板の表面に生ずるスケールむらについて詳細に観察した。その結果、鋼板の表面に生ずるスケールむらは、厚さが20μm以上の微粉状の赤スケールと、均一で密着性に優れた厚さ10μm以下の薄い黒灰スケールとからなっていることがわかった。
【0013】
赤スケールの生成は、鋼板の高温圧延時におけるデスケーリングの際の高圧水の干渉や滞留によって部分的に残留した厚いスケールに起因する。この残留した厚いスケールは、圧延により粉砕されてその表面積が増大し、これが酸化されることによって、より一層厚く成長する。このように成長した厚い赤スケールが表面に残存する鋼板を圧延すると、厚い赤スケール層に起因してスケールむらが生ずる。
【0014】
表1の化学成分組成を有するA鋼を制御圧延し次いで加速冷却を施した、板厚50mmの鋼板の、表面から8分の1の厚さ(t/8)の部分および表面から4分の1の厚さ(t/4)の部分における、降伏強度に及ぼすスケール形態の影響を調査した結果を図1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
図1から明らかなように、厚い赤スケールが生成したt/8およびt/4の部分の鋼板の降伏強度は、メタル地に比べて50〜60MPaと大きく低下している。これに対し、薄い黒灰スケールが生成した部分の鋼板の降伏強度は、メタル地よりも10MPa程度の僅かな低下に止まった。
【0017】
このことより、加速冷却された鋼板に赤スケールを含むスケールむらが形成されていると、その影響が強度のバラツキという形で表れ、その範囲は、鋼板表面のみならず、表面から4分の1の厚さ(t/4)の部分にまで及ぶことから、加速冷却時の降伏強度のバラツキを抑えるためには、赤スケールを除去する必要があることがわかった。
【0018】
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、C:0.04〜0.18wt.%、Si:0.05〜0.8wt.%、Mn:0.2〜1.7wt.%、および、Al:0.07wt.%以下を含有し、更に、下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素、Ti:0.03wt.%以下(0を含む)、Nb:0.05wt.%以下(0を含む)、V:0.1wt.%以下(0を含む)、Cu:0.7wt.%以下(0を含む)、Ni:0.7wt.%以下(0を含む)、Cr:1.3wt.%以下(0を含む)、および、Mo:0.8wt.%以下(0を含む)、を含有し、残り:Feおよび不可避不純物からなる鋼片に対し、粗圧延および950℃以下の温度域から開始される制御圧延からなる熱間圧延を行い次いで加速冷却することにより、建築用降伏強度制御鋼板を製造する、リバース圧延による厚板圧延工程において、前記鋼片を、圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなくデスケーリングを行うために圧延機に通す工程、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことに特徴を有するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の方法において、鋼片の化学成分組成を上述した範囲に限定した理由につき説明する。
(1)C:
Cは、鋼板の強度を確保するために0.04wt.%以上含有させることが必要である。しかしながら、C含有量が0.18wt.%を超えると、溶接性が著しく劣化する。従って、C含有量は0.04〜0.18wt.%の範囲内に限定すべきである。
(2)Si:
Siは、脱酸剤として0.05wt.%以上含有させることが必要である。しかしながら、Si含有量が0.8wt.%を超えると、溶接性および延性、靱性が劣化する。従って、Si含有量は0.05〜0.8wt.%の範囲内に限定すべきである。
(3)Mn:
Mnは、強度および靱性の向上のために0.2wt.%以上含有させることが必要である。しかしながら、Mn含有量が1.7wt.%を超えると、焼き入れ性が著しく上昇し、溶接時における。割れ感受性が高くなる。従って、Mn含有量は、0.2〜1.7wt.%の範囲内に限定すべきである。
(4)Al:
Alは脱酸剤として添加する元素である。しかしながら、Al含有量が0.07wt.%を超えると鋼の清浄性を低下させ、溶接部の靭性が劣化する。従って、Al含有量は、0.07wt.%以下に限定すべきである。なお、脱酸作用は、Siでも代用が可能なために、下限値は特に限定しない。
(5)Ti、Nb、V、CrおよびMo:
Ti、Nb、V、CrおよびMoは、何れも鋼の強度向上に寄与する元素である。従って、その少なくとも1つを必要に応じて添加する。しかしながら、Ti含有量は0.03wt以下に、Nb含有量は0.05wt.%以下に、V含有量は0.1wt.%以下に、Cr含有量は1.3wt.%以下に、そして、Mo含有量は0.8wt.%以下に、それぞれ限定すべきである。Ti、Nb、V、CrおよびMoの含有量が上記範囲を超えると、溶接性および靭性の劣化を招く。
(6)Cu:
Cuは強度を確保する上で有効な元素である。しかしながら、Cu含有量が0.7wt.%を超えると、熱間圧延時の割れの発生原因になる。従って、Cu含有量は0.7wt.%以下に限定すべきである。
(7)Ni:
Niも強度を確保する上で有効な元素であり、且つ、Cuによる熱間圧延時の割れ発生を防止する作用を有している。しかしながら、Ni含有量が0.7wt.%を超えると、その効果が飽和する。従って、Ni含有量は0.7wt.%以下に限定すべきである。
【0020】
上記化学成分組成の鋼片に対し、従来の建築用低降伏比高張力鋼板と同様の圧延条件で、粗圧延および950℃以下の温度域から開始される制御圧延からなる熱間圧延を行い次いで加速冷却する。この発明においては、上記熱間圧延に際し、鋼片を圧下を施すことなくデスケーリングするのみで圧延機に通し、次いで、前記デスケーリングしてから1秒以上経過した後に、再び圧下を施すことなく、または、圧下を施すと共にデスケーリングを行うために圧延機に通す工程を、前記制御圧延の直前または前記制御圧延初期のパス間において、少なくとも1回以上行うことが必要である。以下にこの点について説明する。
【0021】
制御圧延初期において、鋼板に対し図2に示すデスケーリングパターンによってデスケーリング処理を施した。即ち、1対の仕上圧延ロール2、2´の入側および出側に、鋼板1の表面および裏面に向けて高圧水を噴射するためのスプレーヘッダ3,4を設け、1対の仕上圧延ロール2、2´間において、鋼板1のフォワードパスおよびリバースパスを行いながら、鋼板1の進行方向に応じて、スプレーヘッダ3,4の何れかにより、鋼板1の表面に高圧水を噴射し、鋼板1に対しデスケーリングを施した。上述したデスケーリング処理は、以下に示す▲1▼〜▲6▼の6種類のデスケーリングパターンによって行った。
【0022】
デスケーリングパターン▲1▼
比較のための、従来法のデスケーリングパターンであって、図2(a)に示すように、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行った。
【0023】
デスケーリングパターン▲2▼
比較のためのデスケーリングパターンであって、図2(b)に示すように、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、間隔をおくことなく直ちに鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行った。
【0024】
デスケーリングパターン▲3▼
本発明方法のデスケーリングパターンであって、図3(a)に示すように、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行った。
【0025】
デスケーリングパターン▲4▼
本発明方法のデスケーリングパターンであって、図3(b)に示すように、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、2秒間経過後に、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行った。
【0026】
デスケーリングパターン▲5▼
本発明方法のデスケーリングパターンであって、図3(c)に示すように、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1を仕上圧延ロール2、2間に矢印方向にフォワードパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して3段目のデスケーリングを行った。
【0027】
デスケーリングパターン▲6▼
本発明方法のデスケーリングパターンであって、図3(d)に示すように、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にフォワードパスさせながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して1段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して2段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1に圧下を施すことなく仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ3から鋼板1の表面に高圧水を噴射して3段目のデスケーリングを行い、次いで、1秒間経過後に、鋼板1を仕上圧延ロール2、2´間に矢印方向にリバースパスさせて、鋼板1に対し所定の圧下率による圧下を施しながら、スプレーヘッダ4から鋼板1の表面に高圧水を噴射して4段目のデスケーリングを行った。
【0028】
上述したデスケーリングパターンによってデスケーリングを施した鋼板の表面上に発生した赤スケール発生率を図4に示す。図4から明らかなように、本発明方法によるデスケーリングパターン▲3▼〜▲6▼によってデスケーリングを施した場合には、鋼板の表面上に発生した赤スケール発生率は0であった。
【0029】
これは、以下に述べる2つの効果によるものである。即ち、その1は、1段目のデスケーリング直後に、圧下を加えることなく圧延機に通すことによって、スケールの取れ残りがあっても、取れ残りのスケールが仕上圧延ロールによって粉砕されることがなく、従って、取れ残りのスケールが鋼板面に圧着されることがないためである。そして、その2は、デスケーリング間に待機時間を1秒以上設けたことにより、スケール層とメタルとの温度差を利用して取れ残ったスケール中に亀裂を発展させ、2段目のデスケーリングでスケールを完全に除去することができるためである。
【0030】
図5に、上述したデスケーリングパターンによって、デスケーリングを施した鋼板の平均降伏強度、平均降伏比および降伏強度のバラツキ(3σYS)を示す。なお、引張り試験値は、ランダムに採取した10本の平均値で示した。
【0031】
図5から明らかなように、本発明方法によるスケーリングパターン▲3▼〜▲6▼によってデスケーリングを施した場合には、鋼板の表面が、主に均一な黒灰スケールで覆われており、鋼板表面のスケール層厚がほぼ一定であるために、加速冷却後の降伏強度のバラツキ(3σYS)を30MPa以下に抑えることができた。
【0032】
上述したことから、この発明においては、鋼片に対する熱間圧延を、デスケーリングするのみで圧下をせずに圧延機に通し、1秒以上経過させた後に、再び、デスケーリングのみまたはデスケーリングと共に圧下を行って圧延機に通す工程を、制御圧延直前および制御圧延初期のパス間で少なくとも1回以上行い、このような熱間圧延を行った後に、加速冷却することが必要であり、これによって降伏強度のバラツキを大幅に低減させることが可能になる。
【0033】
【実施例】
次に、この発明の方法を実施例により、比較例と対比しながら更に説明する。表2に示した、この発明の範囲内の化学成分組成を有する鋼を溶製し、軽圧下プロセスを含む連続鋳造によってスラブに調製した。
【0034】
【表2】

【0035】
次いで、上記スラブを粗圧延後、表3に示す条件で熱間圧延し次いで加速冷却する際に、制御圧延の初期のパス間において、図3に示す、前述した本発明方法によるデスケーリングパターン▲3▼〜▲6▼または図2に示す比較方法によるデスケーリングパターン▲1▼〜▲2▼によってデスケーリングを施し、本発明鋼板A1〜A4、B1〜B4、C1,C2、D1、E1、F1、G1,G2、H1およびI1、および、比較鋼板A5,A6、B6,B6、C3、D2、E2、F2、G3、H2およびI2を調製した。
【0036】
【表3】

【0037】
このようにして調製された本発明鋼板および比較鋼板の各々について、その表面性状、平均降伏強度、平均引張り強度、平均降伏値および降伏強度のバラツキ(3σYS)を調べ、その結果を表4に示した。なお、引張り試験片(JIS 14A号)としては、赤スケール、灰スケールおよびメタル地下の板厚t/4からL方向にそれぞれ4本ずつ採取した。引張り試験値は、ランダムに採取した10本の平均値で示した。
【0038】
【表4】

【0039】
表3および表4から明らかなように、制御圧延の初期に、本発明法のデスケーリングパターン▲3▼〜▲6▼によりデスケーリングを施した後、加速冷却して調製した本発明鋼板A1〜A4、B1〜B4、C1,C2、D1、E1、F1、G1,G2、H1およびI1においては、その表面性状が、薄く均一な黒灰スケールであり、平均降伏比が80%以下で、且つ、降伏強度のバラツキ(3σYS)が30MPa以下であり、低降伏比で且つ降伏強度のバラツキが小さかった。
【0040】
これに対し、制御圧延の初期に、比較法のデスケーリングパターン▲1▼、▲2▼によりデスケーリングを施した後、加速冷却して調製した比較鋼板A5,A6、B6,B6、C3、D2、E2、F2、G3、H2およびI2の場合には、その表面性状が、厚い赤スケールを含むスケールむらが存在しており、平均降伏比は80%以下であるが、降伏強度のバラツキ(3σYS)は43〜98であって、大きかった。
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の方法によれば、鋼板の表面にスケールむらが生ぜず、引張り強度490MPa以上、降伏比80%以下であって、しかも、降伏強度のバラツキ(3σYS)が30MPa以下の優れた特性を有する、高精度の応力設計が必要とされる溶接構造用高張力鋼板としての建築用降伏強度制御鋼板を経済的に製造することができる、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
降伏強度に及ぼすスケール形態の影響を示す図である。
【図2】
従来法のデスケーリングパターンを示す図である。
【図3】
本発明法のデスケーリングパターンを示す図である。
【図4】
デスケーリングパターン別の赤スケール発生発生面積率を示す図である。
【図5】
デスケーリングパターン別の鋼板の平均降伏強度、平均降伏比および降伏強度のバラツキを示す図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2,2´ 圧延ロール
3 スプレーヘッダ
4 スプレーヘッダ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-04 
出願番号 特願平9-17122
審決分類 P 1 651・ 537- YA (C21D)
P 1 651・ 121- YA (C21D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 中村 朝幸
特許庁審判官 平塚 義三
綿谷 晶廣
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3341611号(P3341611)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 建築用降伏強度制御鋼板の製造方法  
代理人 安田 敏雄  
代理人 石川 泰男  
代理人 石川 泰男  

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