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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1105999
異議申立番号 異議2002-72583  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-23 
確定日 2004-10-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3276361号「ネットワークファクシミリ装置及びファクシミリ通信方法」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3276361号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3276361号の請求項1乃至8に係る発明についての出願は、平成10年9月29日に出願した特願平10-274920号の一部を平成11年9月9日に新たな特許出願した特願平11-255250号の一部を、さらに平成13年1月26日に新たな特許出願したものであって、平成14年2月8日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その請求項1乃至8に係る特許について、異議申立人キャノン株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年5月19日に訂正請求がなされ、その訂正請求は平成16年8月6日付の訂正請求取下書によって取り下げられた。

2.特許異議の申立てについて
2-1.申立の理由の概要
特許異議申立人キャノン株式会社は、特許第3276361号の請求項1乃至8に係る発明の特許に対して、証拠として、甲第1号証(秘伝HTML,CGI,PerlによるWebプログラミング)、甲第2号証(特開平10-173890号公報)、甲第3号証(特開平5-14580号公報)、甲第4号証(特開平8-307702号公報)、甲第5号証(特開平3-289756号公報)を提出し、本件請求項1乃至8に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

2-2.本件発明
特許第3276361号の請求項1乃至8に係る発明は、特許公報の特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 電話回線を介して画情報を送受信するファクシミリ通信手段と、前記ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積手段と、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成するリスト生成手段と、前記受信リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出するWWWサーバー手段と、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送する制御手段とを具備し、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにしたネットワークファクシミリ装置。
【請求項2】 電話回線を介して画情報を送受信するファクシミリ通信手段と、前記ファクシミリ通信手段にて送信する画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積手段と、蓄積された画情報の蓄積リストと当該蓄積リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する蓄積リストファイルを文書構造記述言語により生成するリスト生成手段と、前記蓄積リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出するWWWサーバー手段と、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ送信のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ送信する制御手段と、を具備し、前記蓄積リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにしたネットワークファクシミリ装置。
【請求項3】 電話回線を介して画情報を送受信するファクシミリ通信手段と、ネットワークを介して通信するネットワーク通信手段と、前記ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積手段と、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成するリスト生成手段と、前記受信リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出するWWWサーバー手段と、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送し、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信する制御手段とを具備し、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにしたネットワークファクシミリ装置。
【請求項4】 電話回線を介して画情報を送受信するファクシミリ通信手段と、ネットワークを介して通信するネットワーク通信手段と、前記ファクシミリ通信手段にて送信する画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積手段と、蓄積された画情報の蓄積リストと当該蓄積リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する蓄積リストファイルを文書構造記述言語により生成するリスト生成手段と、前記蓄積リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出するWWWサーバー手段と、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ送信のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ送信し、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信する制御手段とを具備し、前記蓄積リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにしたネットワークファクシミリ装置。
【請求項5】 ファクシミリ通信手段が電話回線を介して受信した画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積し、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択した画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成し、前記受信リストファイルを要求のあった端末に送出して、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送することを特徴とするファクシミリ通信方法。
【請求項6】 ファクシミリ通信手段にて送信する画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積し、蓄積された画情報の蓄積リストと当該蓄積リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する蓄積リストファイルを文書構造記述言語により生成し、前記蓄積リストファイルを要求のあった端末に送出して、前記蓄積リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ送信のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ送信することを特徴とするファクシミリ通信方法。
【請求項7】 ファクシミリ通信手段が電話回線を介して受信した画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積し、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成し、前記受信リストファイルを要求のあった端末に送出して、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送し、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信することを特徴とするファクシミリ通信方法。
【請求項8】 ファクシミリ通信手段にて送信する画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積し、蓄積された画情報の蓄積リストと当該蓄積リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する蓄積リストファイルを文書構造記述言語により生成し、前記蓄積リストファイルを要求のあった端末に送出して、前記蓄積リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ送信のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ送信し、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報をネットワーク通信手段からメール送信することを特徴とするファクシミリ通信方法。」

2-3.刊行物に記載された発明
当審が平成15年3月18日付けで通知した取消理由で引用した刊行物は、刊行物1(秘伝 HTML、CGI、PerlによるwebプログラミングP293-316)、刊行物2(特開平10-173890号公報)、刊行物3(特開平5-14580号公報)、刊行物4(特開平8-307702号公報)、刊行物5(特開平3-289756号公報)である。

2-3-1.刊行物1(秘伝 HTML、CGI、PerlによるwebプログラミングP293-316)
(a)「Webに基づいたファックスゲートウェイには、現行のスタンドアロンやネットワークパッケージが提供していない、多くの優れた点があります。
+多くの場所からの管理。すなわち、インターネット接続とWebブラウザがあればどこからでも、ファックスの送信、受信、管理、あるいは印刷ができます。」(295頁第13行〜第17行)
(b)「ファックス管理画面
ファックス管理画面のユーザーインターフェースには、受信したファックスのリストと、管理者がこれを処理するためのオプションが必要です。」(297頁第29行〜第31行)
(c)「HTMLを使うと、複数選択が可能なリストやオプションのコマンドボタンを作り出すためのコードが書けます。Webにリストを配布することもできます。」(298頁第14行〜第15行)
(d)「ファックスの受信:MGETTY
gettyに相当するファックス受信プログラムを作成するのはCGIの本来の機能では無いため、本書の範囲を越えています。幸いにも、mgettyというすでに利用できるアプリケーションがあります。これは、Gert Doering氏によって作られたmgetty+sendfaxのパッケージの一部です。Class 2、すなわち2.0ファックスモデムでグループ3のファックを受け取ることができます。」(299頁第1行〜第6行)
(e)「ファックスの変換:G3toGIF.PL
最初のスクリプトはg3togif.plです。G3ファックスをmgettyを使ってGIFファイルに変換します。GIFファイルに変換してしまえば、グラフィックス対応のあらゆるWebブラウザで表示することができます。」(299頁第12行〜第15行)
(f)「さて、ファックスの一覧表を作るためには、ファックスディレクトリを読むサブルーチンが必要です。サブルーチンread_dirはlsの出力からのデータの流れをオープンします。オプション-ltはロング形式の一覧出力であること、時刻の逆順に並べることを意味しています:
sub read_dir {
open (FAXDIR,”ls -lt $FAXDIR/. |”);
出力行は構成要素ごとに分けられます。各行に対して、日付、時刻、ファイル名はすべて選択可能なHTMLフォームリストの<OPTION>として送られます。」(304頁第21行〜第29行)
(g)「ファックス転送オプション
管理画面にファックス転送のための[Forwarding]ボタンを作成し、受信したファックスをだれか別の人にファックスできるようにします。ユーザーにファックス番号を入力させ、GIFファイルを逆にG3に変換し、sendfaxを使ってファックスを送信します(sendfaxの詳細と送付状の作成については、Chapter 19「見積り作成システム」を参照してください)。」(316頁第1行〜第5行)
(h)「電子メールオプション
このオプションは比較的簡単に追加できます。ユーザーは管理画面で、電子メールアドレスを入力し、ファックスを選択し、E-Mailボタンをクリックします。オプションプログラムは、GIFファイルをMIMEアタッチメントとして、指定された電子メールアドレスに送信します。」(316頁第6行〜第10行)
と記載されている。

2-3-2.刊行物2(特開平10-173890号公報)
(a)「【0017】本実施の形態においては、FAXサーバ10は、WWWサーバを利用して実現されている。このように、本実施の形態においてはWWWサーバの機能を利用してリモート操作可能なファクシミリ装置が実現されているため、クライアントとしては、WWWブラウザを利用することが可能となる。
【0018】図1に示されているように、本実施の形態に係るFAXサーバ10は、ハイパーテキストトランスポートテキストデーモン(httpd)のプログラムが稼動している。このhttpd12が稼動していることにより、WWWサーバとしての機能を果たしている。
【0019】FAXサーバを利用するクライアントとしては、WWWブラウザの機能を有する装置であればどのようなものでも利用可能である。例えば、パーソナルコンピュータやPDA(パーソナルデジタルアシスタント)などに備えられているWWWブラウザの機能を利用し、FAXサーバ10にアクセスすることが可能である。このクライアントのWWWブラウザの機能を単にブラウザ100と呼ぶ。
【0020】クライアントは、このブラウザ100を用いてFAXサーバ10のhttpd12に対し、接続要求を行う(URL(ユニフォームリソースロケータ)指示)。ここで、クライアントはWWWサーバに対する接続の要求をする際のURLとしてFAXサーバ10のURLを指示することにより、FAXサーバ10の機能を利用することが可能となる。ブラウザ100を介して指示されたURLの内容にしたがって、httpd12は、FAX送信画面をブラウザ100(クライアント上で稼働している)に送信する。このFAX送信画面はHTML(ハイパーテキストマークアップランゲージ)で記述されている。このFAX送信画面は、httpd12がHTMLファイル14からHTMLで記述されたファイルを取り出し、ブラウザ100に返送することにより行われる。クライアント上で稼働しているブラウザ100は返送されてきたHTMLのファイルに基づき、ユーザに対しFAX送信画面を表示する。このようなFAX送信画面の例が図2に示されている。
【0021】この図2に示されているように、本実施の形態におけるFAXサーバ10はクライアントに対し、HTMLを用いることにより文書名やパス名などのパラメータの設定を行わせるのである。具体的には、図2に示されているように、ユーザはブラウザ100によって表示されたFAX送信画面において、文書名、パス名、FAX番号、カバーシートの有無、解像度、更にそのファクシミリに付すべきコメントを、それぞれ入力することが可能である。」(刊行物2、段落【0017】〜【0021】)
(b)「【0023】また、図2に示されているように、各種のパラメータを設定した後、ユーザは送信ボタン30を押下(クリック)することにより、実際にファクシミリの送信動作を行わせることができる。なお、図2に示されている画面にはリセットボタン32も備えられており、このリセットボタン32をユーザがクリックすることにより、文書名などの各種パラメータの値をリセットすることが可能である。
【0024】ユーザが送信ボタン30をクリックすると、ブラウザ100から文書名などのパラメータがhttpを用いてFAXサーバ10に送信される。パラメータが送信されてくると、このFAXサーバ10上で稼働しているhttpd12はFAXサービスを起動し、ブラウザ100から送信されてきたパラメータの内容をこのFAXサービスに送付する。」(刊行物2、段落【0023】、【0024】)
(c)「【0025】本実施の形態において特徴的なことは、このFAXサービスの機能がCGIプログラムで実現されていることである。CGI(コモンゲートウェイインターフェース)プログラムは、WWW上で起動され動作を行うプログラムであり、標準プログラムと呼ばれる場合もある。このCGIプログラム16は、httpd12から送付されたパラメータの内容(ユーザが入力した内容)を解析する。そして、その解析内容に基づき、カバーシートがある場合にはそのカバーシート上へ文書名、コメントを入力し、またパラメータに基づきファクシミリの解像度を指定する。これらのカバーシートの使用の有無や、解像度はFAX送信部分に送付される。FAX送信部分は、図1に示されているようにFAXフォーマット生成/送信部20と、FAX通信部22とから構成される。これらFAXフォーマット生成/送信部20及びFAX通信部22は既存のソフトウエアがそのまま利用可能である。
【0026】FAXフォーマット生成/送信部20は、CGIプログラム16からの解像度などの指定に基づきいわゆるFAXフォーマットを生成する。このFAXフォーマットの生成の際には、送信対象である文書が文書ファイル18から取り出されて利用される。生成されたFAXフォーマットはFAX通信部22に送信される。FAX通信部22はファクシミリの送信先のファクシミリ装置を電話回線を通じて呼び出し、FAXフォーマットの送信を行う。FAX送信の結果はFAX通信部22からFAXフォーマット生成/送信部20に報告される。FAXフォーマット生成/送信部20はこのファクシミリの送信結果をCGIプログラム16に返送する。この送信結果の返送は図1においてBで示されている。このFAXの送信結果の値は、「OK」や「NG」である。FAXの送信が成功裏に終了すれば値は「OK」であり、FAXの送信の相手先が話し中などによりFAXの送信が失敗した場合には値は「NG」となる。CGIプログラム16はこのFAX送信結果をHTMLを通じてブラウザ100に対し報告する。クライアントはこのブラウザ100の画面を見ることによりファクシミリの送信が成功したか否かを知ることが可能である。」(刊行物2、段落【0025】、【0026】)
(d)「【0045】以上述べたように、本実施の形態によればリモート操作可能なファクシミリ装置を、既存のWWWのメカニズムにより実現している。その結果、既存のWWWブラウザからファクシミリの送信指示が可能となる。更に、図2などに説明したようにファクシミリ送信画面は、サーバ上のHTMLで記述されているため、処理すべき機能が変更されたり、新たな処理機能が追加された場合においてもサーバ側のHTMLを変更するだけで対応可能であり、クライアント側では何らプログラムの変更は必要とならない。」(刊行物2、段落【0045】)
(e)「【0047】【発明の効果】以上述べたように、第1に、本発明によれば、クライアントの要求に応じ所定の文書を外部のファクシミリ装置に送信するため、クライアントは利用者で文書をもっていない場合においてもファクシミリの送信を行うことが可能である。特に、クライアントの近傍にあるファクシミリ装置を指定することにより、所望の文書を利用者の近傍に存在するファクシミリ装置から取り出すことが可能となる。」(刊行物2、段落【0047】)
(f)上記の記載より刊行物2には次のことが記載されている。
「文書が蓄積されている文書ファイル18と、
HTML(ハイパーテキストマークアップランゲージ)で記述され、文書名、パス名、FAX番号、カバーシートの有無、解像度、更にそのファクシミリに付すべきコメントを、それぞれ入力することが可能であるFAX送信画面を記憶しているHTMLファイル14と、
httpd12が稼動していることにより、WWWサーバとしての機能を果し、CGIプログラム16によりFAXサービスの機能を実現し、FAX送信部分としてFAXフォーマット生成/送信部20と、FAX通信部22とが設けられているFAXサーバ10とから構成され、
クライアントは、クライアント上で可動しているブラウザ100を用いてFAXサーバ10のhttpd12に対し、接続要求を行い、
httpd12は、ブラウザ100を介して指示されたURLの内容にしたがって、FAX送信画面をHTMLファイル14からHTMLで記述されたファイルを取り出し、ブラウザ100(クライアント上で稼働している)に送信し、
クライアント上で稼働しているブラウザ100は返送されてきたHTMLのファイルに基づき、ユーザに対しFAX送信画面を表示し、
ユーザはブラウザ100によって表示されたFAX送信画面において、文書名、パス名、FAX番号、カバーシートの有無、解像度、更にそのファクシミリに付すべきコメントを、それぞれ入力し、各種のパラメータを設定した後、ユーザは送信ボタン30を押下(クリック)することにより、実際にファクシミリの送信動作を行わせることができ、
そのファクミリの送信動作は、CGIプログラム16が、httpd12から送付されたパラメータの内容(ユーザが入力した内容)を解析してFAX送信部分に送付し、FAXフォーマット生成/送信部20が、CGIプログラム16からの指定に基づき、送信対象である文書が文書ファイル18から取り出し、FAXフォーマットを生成し、生成されたFAXフォーマットはFAX通信部22に送信され、FAX通信部22はファクシミリの送信先のファクシミリ装置110を電話回線を通じて呼び出し、FAXフォーマットの送信を行うことを特徴とするもの。」

2-3-3.刊行物3(特開平5-14580号公報)
(a)「【0007】【実施例】以下、添付図面を参照して本発明に係る好適な実施例を詳細に説明をする。図1は、本実施例に係るファクシミリ装置(以下、装置という)全体の構成を示すブロック図である。同図において、CPU1は、ROM2に格納された制御プログラムに従い、本装置全体の制御を行ない、RAM3にはワークや制御データが一時的に保存される。また、イメージメモリ4は画像データをハンドリングするためのメモリであり、画像変換部5では解像度、紙サイズ、符号化方式を変換処理する。
【0008】本装置では、原稿(画像)は画像読取り部(スキャナ)6にて読み取られ、画像記録部(プリンタ)7にてプリント出力される。また、回線制御部8にて、本装置と通信網との通信手順が制御され、ホストコンピュータ15と装置との通信手順は、対ホストi/f部9にて制御される。尚、ここでは、インターフェースとしてSCSIを採用している。
【0009】ファイル管理部10では、ファクシミリ装置内で作成されるドキュメント(文書)の管理を行ない、その文書は記憶装置11に蓄積される。ファクシミリ装置としてのオペレーションは、操作部12にて行なう。尚、上記回線制御部8と網、対ホストi/f部9とホストコンピュータ15とは、それぞれ専用ケーブル13,14にて接続される。」(刊行物3、段落【0007】〜【0009】)
(b)「【0048】[ファイル情報要求コマンド処理]
本コマンドは、ファクシミリ装置内に管理されたファイルの情報をホストコンピュータに通知させるために用いられる。本実施例では、ファイル情報を要求するときに3種類のコマンド種別を用意し、それらに対応した情報をホストコンピュータに通知させる。図19に、それらのコマンドについて示す。
【0049】コマンド種別が「ファイルID一覧要求」の場合は、情報としてファクシミリ装置内に管理されたファイルのIDの一覧を通知する。「個別ファイル情報要求」の場合は、所定のファイルID、ページ番号を同時に指定し、図20に示すようなファイル情報をホストに通知する。また、「最新ファイル情報要求」の場合は、最後に作成されたファイルのファイル情報を、図20に示した形態でホストコンピュータに通知する。
【0050】尚、ファイル情報要求コマンドは、スキャナコマンド、イメージメモリコマンド、通信コマンドに対して用意されているが、コマンド種別が「最新ファイル情報要求」の場合は、それぞれ読み取り要求コマンド、データライトコマンド、受信要求コマンド(ポーリング受信コマンドを含む)を実行したときに作成された最新のファイルの情報について通知する。
【0051】コマンドの処理としては、図7-4のステツプS705で本コマンドと判断したならば、ステツプS760で、先に述べたコマンド種別に応じたファイル情報をホストコンピュータへ送出し、ステツプS771で正常ステータスを送出して処理を終了する。」(刊行物3、段落【0048】〜【0051】)
(c)「【0056】[セッションオープンコマンド処理]
本コマンドは、所定の相手端末に対して発呼処理し、セッションレイヤまでの通信手順を制御するためのものである。図8-1のステツプS801で本コマンドと判断したならば、ステツプS820で、ホストコンピュータから指定されたアドレス情報、端末特性、端末能力情報を用いて発呼処理する。ステツプS821で、処理結果としてRSSPを受信し、正常に発呼処理が終了していると判断されれば、ステツプS823で正常ステータスの送出を行なう。しかし、ステツプS821でRSSNを受信する等、end-to-endでセッションレイヤまで接続できなかった場合は、ステツプS822で確認ステータスの送出を行ない処理を終了する。」(刊行物3、段落【0056】)
(d)「【0063】[送信要求コマンド]
本コマンドは、所定の文書ファイルを相手端末に送信させるためのコマンドである。尚、送信文書ファイルはあらかじめファクシミリ内部にファイル化されていることを前提とする。また、送信要求を受けるにあたり、本実施例においては2つの形態がある。1つ発呼送信要求であり、他の1つはセッションモード送信要求である。それぞれの処理の詳細については後述するが、大きな違いは発呼処理を含むか否かという点である。」(刊行物3、段落【0063】)
(e)「【0072】図9は、発呼送信処理を示す詳細フローチヤートである。同図において、ステツプS1001で、装置の状態として発呼送信ができるか否かを確認し、通信回線がビジー等でその処理ができない状態ならば、ステツプS1002で確認ステータスを送出して、その処理を終了する。一方、ステツプS1001でのステータス確認の結果、発呼送信が可能と判定されると、ステツプS1003で一旦ディストネクトして論理的にホストコンピュータとの接続を解放し、ストップコマンド等を受けつけられる状態にする。そして、ステツプS1004において、ホストコンピュータから指定されたアドレス情報に基づき発呼処理をして、相手側とセッションレイヤまでの接続処理を行なう。
【0073】ステツプS1005で相手側と正常に接続できたか否かを判断し、正常に接続できないと判断されたならば、ステツプS1006でリセレクト処理を行なってホストコンピュータとの論理的接続を行ない、続くステツプS1007で確認ステータスの送出を行なって処理を終了する。ステツプS1005での判断の結果、相手側と正常に接続できたときは、ステツプS1008で、セッションレイヤまでの接続が終了後、ホストコンピュータから指定されたドキュメントの送信処理を行なう。そして、ステツプS1009でドキュメント送信処理結果が異常と判断されれば、ステツプS1010へ進み、正常であればステツプS1012に進む。」(刊行物3、段落【0072】〜【0073】)

2-3-4.刊行物4(特開平8-307702号公報)
(a)「【0062】特に、図7Aは、クライアント領域101内に表示されたインボックス120を示す図である。インボックスはスピードバー104のボタン104aに対応して表示されたか、あるいはメニューバー102の「ファイル」メニュー項目から呼び出されたプルダウンメニューから「インボックス」命令を選択した結果として表示されたかのどちらかである。図7Aから分かるように、スキャン文書画像、受信ファクシミリ画像だけでなく他のウィンドウズアプリケーションによって作成された文書画像などの、ファクシミリマネージャーに入ってくるファイル全てのリスト121がインボックス120にはある。標準では、リストは、最も最近に受け取った文書から古い文書というように時間順に並べられている。ユーザはリストから項目を選択し、前述したように、項目をドラッグ&ドロップでコンテナバー105のコンテナアイコンのひとつに入れることができる。
【0063】リスト121の各文書に対して、インボックス120は文書の種類(例えば、文書が保存画像文書か受信ファクシミリ文書かエンベロープ文書かどうか)をアイコンで示し、その他に文書の状態、文書が作成された日時、送信者および文書の名前、文書のページ数を表示する。リスト121のコラムヘッダはボタンになっており、ユーザはそれを押すことにより、文書を種類、状態、日時、発信者名、文書名、およびページ数でソートすることができる。ボタンを連続して押すことにより、2次ソートを行なうこともできる。すなわち、始めに「状態」を押し、その次に「日時」を押すことにより、リスト121は状態でソートされたあとに日時によってソートされる。
【0064】インボックス120にはさらに情報ボックス122があり、リスト121で選択された項目に関する更に詳しい情報を表示している。インボックス120にはさらに微小表示領域124があり、リスト121で選択された文書を縮小表示する。縮小表示は文書の第1ページの縮小版であり、ページ領域125を操作することにより、ユーザは複数ページの文書を拾い読みすることができる。すなわち、縮小表示領域124があることにより、リスト121で選択された文書を特定するための視覚的手がかりをユーザは得ることができる。さらに、ダブルクリック等により縮小表示領域124を選択することにより、選択された文書が自動的に表示器105fに供給され、文書が縮小サイズよりも大きく表示される。表示に関しては、後ほど図17とともにさらに詳しく述べる。
【0065】インボックスウィンドウズ120において文書が選択されなければ、ファクシミリ、プリント、保存のアイコン(それぞれ105b、105c、105d)を利用することはできない。文書を選択することでこれらのアイコンを使用することができるようになる。保存アイコンに項目がドラッグ&ドロップされると、標準ウィンドウズ「セイブ・アズ」が開き、ファイル名および保存先を問われる。文書をプリントアイコン105cにドラッグ&ドロップすると、選択された文書がプリントされる。最後に、ファクシミリアイコン105dにドラッグ&ドロップを行なうと、ファックス送信対話画面が開き、受信ファックスの転送やスキャン画面の送信を容易に行なうことができる。プリントおよびファックスは、他で述べたように、インタフェース通信モジュールと協調して行なわれる。」(刊行物4、段落【0062】〜【0065】)

2-3-5.刊行物5(特開平3-289756号公報)
(a)「該電子メール発信装置19は画像データと個人識別番号とを分離し(ステップS15)、次いで該画像データを電子メール用のフォーマットに変換する(ステップS16)。なお、該変換の詳細は、後で説明する。次に、該個人識別番号に対応する電子メールアドレスを前記第5図のテーブルから求め、該電子メール用アドレスに変換後の画像データを送る動作をする(ステップS17)。」(刊行物5、4頁右下欄6〜14行)

2-4.対比・判断
2-4-1.請求項1について
請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)と刊行物2に記載の発明とを対比すると、
刊行物2の「FAX通信部」は、下記の点を除いて本件発明1の「ファクミリ通信手段」に、
刊行物2の「文書ファイル」は、下記の点を除いて本件発明1の「蓄積手段」に、
刊行物2の「HTML(ハイパーテキストマークアップランゲージ)」は、本件発明1の「文書構造記述言語」に、それぞれ相当し、
刊行物2のものも、httpd12が稼動していることにより、WWWサーバとしての機能を果しているから、下記の相違点はあるものの本件発明1のWWWサーバー手段に相当するものが有り、
刊行物2のものも、ユーザが文書名、FAX番号を入力して送信ボタンを押すと、実際のファクシミリの送信動作を行うものであり、また、文書名を入力することは画情報を選択していることでもあり、さらに、全体的に制御をされているのであるから、下記の相違点はあるものの本件発明1の制御手段に相当するものがあり、
また、全体として、ネットワークに接続されたファクシミリ装置であるともいえるから、
両者は、次の点で一致している。
「電話回線を介して画情報を送受信するファクシミリ通信手段と、
画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積手段と、
要求のあった端末に文書構造記述言語により生成されたファイルを送出するWWWサーバー手段と、
前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送する制御手段と
を具備し、選択された画情報を、指示ボタンで転送指示を行えるようにしたネットワークファクシミリ装置。」
次の各点で相違する。
(相違点)
(相違点1)
蓄積手段が、本件発明1では、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積するのに対して、刊行物2では、文書ファイルが、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積することについては記載されていない点。
(相違点2)
本件発明1では、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択された画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成するリスト生成手段が設けられているのに対して、刊行物2には、HTMLで記述されたFAX送信画面については記載されているが、リスト生成手段については記載されていない点。
(相違点3)
WWWサーバー手段が、本件発明1では、受信リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出するWWWサーバー手段であるのに対して、刊行物2では、WWWサーバー手段に相当するものはあるが、ただ、httpd12がFAX送信画面ファイルを接続要求のあったクライアントのブラウザ100に送出し、ブラウザ100からFAX送信パラメータを受けているだけであり、本件発明1のようなWWWサーバー手段については記載されていない点。
(相違点4)
制御手段が、本件発明1では、端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送するのに対して、刊行物2では、ユーザがFAX送信画面上で文書名、FAX番号を入力して送信ボタンを押すと、実際のファクシミリの送信動作により、指定したFAX番号の宛先へ、文書名を入力したことにより選択された画情報がFAX送信部からファクシミリ転送されるのであって、本件発明1のように、端末で受信リスト中から画情報が選択され、指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出し、端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、指定された宛先番号へ選択された画情報をファクシミリ転送するのではない点。
(相違点5)
本件発明1が、受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、指示ボタンで転送指示を行えるのに対して、刊行物2では、送信対象の文書を文書ファイルから取り出してファクシミリ転送している点。

上記相違点を検討する。
(相違点1)について
一般的に、ファクシミリ装置において、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積装置を設けることは周知のことであるから、刊行物2の文書ファイルに、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積するようにすることは当業者が容易に考えられることである。
(相違点2)について
ファクシミリの受信リストの一覧表リストを作成して表示し選択することは、例えば、刊行物1、3、4等に示されているように周知のことである。とくに、刊行物3においては、ファクミリ装置内に管理されたファイルのIDの一覧をホストコンピュータに通知していることが記載されている。また、リスト一覧から必要なものを選択して用いることは普通に行われており、受信リスト一覧からも選択を行うものであるから、その選択を実行するために必要なボタン等を設けることも当然のことであると考えられる。
刊行物2のように、HTMLの記述で表現するものがあれば、周知である受信リストと、そのリストから選択するためボタンとを表示するための画面を、HTMLの記述で表現したファイルを生成するための手段を設けて生成することは当業者が容易に考えられることである。
(相違点3)(相違点4)について
ファクシミリ装置においても、ファクシミリ装置に蓄積されているファイルのリスト一覧を表示し、その中から選択して、ファクシミリ送信等の操作を行うことは周知のことである。
刊行物2では、リストから文書名を選択することなく、ユーザ自身がFAX送信画面に直接文書名を入力しているが、これを、文書ファイルに記憶されているファイルの一覧リストを先に送ってもらって、そのリスト一覧の中から、文書名を選択した後に、FAX送信画面に移り、FAX番号を入力して、文書を転送することは、当業者ならば容易に想像がつくことである。
そのようなことを行わせるために、本件発明1のように、WWWサーバー手段で、受信リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出し、制御手段で、端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送するようにすることは当業者が容易に考えられることである。
(相違点5)について
刊行物2においては、送信対象の文書をクライアントの端末には送信していないから、クライアント側では送信対象の文書の画情報を表示していないから、上述のように刊行物2ではリストで選択をしていない点を除いては、選択された画情報を表示することなく、送信ボタンで転送指示を行っている。
したがって、受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、指示ボタンで転送指示を行うようにすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

2-4-2.請求項2について(本件発明2)
本件発明2と、刊行物2とを比較すると、上記相違点1〜5に加えて次の点で相違する。
(相違点6)
本件発明2は、本件発明1の「受信リスト」、「受信リストファイル」を、「蓄積リスト」、「蓄積リストファイル」としたものであり、その点で刊行物2と相違している。
上記相違点検討すると、
(相違点6)について
上記刊行物3には、図20には、ファイルの種類として、スキャナよりインプットしたファイル、ホストより転送されたメモリに格納したファイル、FAX受信ファイルと記載されているから、蓄積装置に蓄積するファイルをFAXで受信したファイルのみではなく、蓄積ファイルとすることは格別のことではない。
したがって、上記、請求項1で述べた同じ理由において、受信リスト、受信リストファイルを、蓄積リスト、蓄積リストファイルとして、上記相違点1〜5の判断のとおり、本件発明2は当業者が容易に考えられたものである。

2-4-3.請求項3について(本件発明3)
本件発明3と、刊行物2とを比較すると、上記相違点1〜5に加えて次の点で相違する。
(相違点7)
本件発明3は、ネットワークを介して通信するネットワーク通信手段を設けて、端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信する制御手段を具備しているのに対して、刊行物2には、そのようなことは記載されていない点。
上記相違点7について検討すると、
(相違点7)について
ネットワークファクシミリ装置に電子メールをするための手段を設けることは周知のことであり(例えば、刊行物5等を参照。)、刊行物2において、文書ファイルのファクシミリ転送に加えて、電子メールでの転送を行うことは当業者が当然予測することである。
したがって、刊行物2に、ネットワークを介して通信するネットワーク通信手段を設けて、端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信するようにすることは当業者が容易に考えられることである。
したがって、本件発明3は、上記各刊行物のものより当業者が容易に考えられたものである。

2-4-4.請求項4について(本件発明4)
本件発明4と、刊行物2とを比較すると、上記相違点1〜7の点で相違している。
しかし、上記相違点については、上述したように、当業者が容易に考えられることであるから、本件発明4は、上記各刊行物に基づいて当業者が容易に考えられたものである。

2-4-5.請求項5について(本件発明5)
刊行物2に記載された発明は装置として表現されているが、これを方法として表現し得ることは自明であって、単なる表現上の問題にすぎない。
また、請求項5乃至8(本件発明5乃至8)については、本件発明1乃至4を方法の発明で記載したものであり、装置と方法の発明である点で、それぞれの相違点は多少異なるが、本質的には同じであり、下記のように、本件発明5乃至8は、上記各刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

本件発明5と刊行物2に記載の発明とを対比し、検討する。
両者は、次の点で一致している。
「画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積し、文書構造記述言語により生成されたファイルを要求のあった端末に送出して、選択された画情報を、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送することを特徴とするファクシミリ通信方法。」
下記の点で相違する。
(相違点8)
本件発明5では、ファクシミリ通信手段が電話回線を介して受信した画情報をファイル名を付けて蓄積手段に蓄積するのに対して、刊行物2では、文書ファイルが、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積することについては記載されていない点。
(相違点9)
本件発明5では、蓄積された画情報の受信リストと当該受信リスト中から選択した画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成するのに対して、刊行物2には、HTMLで記述されたFAX送信画面については記載されているが、受信リストと当該受信リスト中から選択した画情報の転送指示を行う指示ボタンとを1つの画面で表示する受信リストファイルを文書構造記述言語により生成することについては記載されていない点。
(相違点10)
本件発明5では、前記受信リストファイルを要求のあった端末に送出し、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出しているのに対して、刊行物2では、HTMLで記述されたFAX送信画面を要求のあった端末に送出し、文書名、FAX番号を入力して送信の指示をしているが、そのような動作を行わせる前に、本件発明5のように、受信リストファイルを端末に送出し、受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出することはしていない点。

上記相違点を検討すると、
(相違点8)について
一般的に、ファクミリ装置において、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積する蓄積装置を設けることは周知のことであるから、刊行物2の文書ファイルに、ファクシミリ通信手段で受信した画情報をファイル名を付けて蓄積するようにすることは当業者が容易に考えられることである。
(相違点9)について
ファクスの受信リストの一覧表リストを作成して表示し選択することは、例えば、刊行物1、3、4等に示されているように周知のことである。とくに、刊行物3においては、ファクミリ装置内に管理されたファイルのIDの一覧をホストコンピュータに通知していることが記載されている。また、リスト一覧から必要なものを選択して用いることは普通に行われており、受信リスト一覧からも選択を行うものであるから、その選択を実行するために必要なボタン等を設けることも当然のことであると考えられる。
刊行物2のように、HTMLの記述で表現するものがあれば、周知である受信リストと、そのリストから選択するためボタンとを表示するための画面を、HTMLの記述で表現したファイルを生成することは当業者が容易に考えられることである。
(相違点10)について
刊行物2においては、送信対象の文書をクライアントの端末には送信していないから、クライアント側では送信対象の文書の画情報を表示していないから、選択をした画情報を表示することなく、転送することは格別のことでない。
また、ファクミリ装置において、ファクシミリ装置に蓄積されているファイルのリスト一覧を表示し、その中から選択して、ファクシミリ送信等の操作を行うことは周知のことである。
たしかに、刊行物2では、リストから文書名を選択することなく、ユーザ自身がFAX送信画面に直接文書名を入力している。しかし、この刊行物2において、文書ファイルに記憶されているファイルの一覧リストを先に送ってもらって、そのリスト一覧の中から、文書名を選択した後に、FAX送信画面に移り、FAX番号を入力して、文書を転送することは、当業者ならば容易に想像がつくことである。
そのようなことを行わせるために、本件発明5のように、受信リストファイルを要求のあった端末に送出して、前記受信リスト中から選択された画情報を表示することなく、前記指示ボタンで転送指示を行えるようにし、前記指示ボタンが選択されると宛先番号を入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から宛先番号を指定して送信指示を受けると、ファクシミリ転送のための処理を実行して指定された宛先番号へ選択された画情報を前記ファクシミリ通信手段からファクシミリ転送するようにすることは当業者が容易に考えられることである。

2-4-6.請求項6について(本件発明6)
本件発明6と刊行物2に記載の発明とを対比すると、上記相違点8〜10に加えて、次の点で相違する。
(相違点11)
本件発明6は、本件発明5の「受信リスト」、「受信リストファイル」を、それぞれ「蓄積リスト」、「蓄積リストファイル」としたものであり、その点で刊行物2と相違している。
上記相違点検討すると、
(相違点11)について
上記刊行物3には、図20には、ファイルの種類として、スキャナよりインプットしたファイル、ホストより転送されたメモリに、格納したファイル、FAX受信ファイルと記載されているから、蓄積装置に蓄積するファイルをFAXで受信したファイルのみではなく、蓄積ファイルとすることは格別のことではない。
したがって、上記、請求項5で述べた同じ理由において、受信リスト、受信リストファイルを、蓄積リスト、蓄積リストファイルとして、上記相違点8〜10の判断のとおり、本件発明6は当業者が容易に考えられたものである。

2-4-7.請求項7について(本件発明7)
本件発明7と、刊行物2とを比較すると、上記相違点8〜10に加えて次の点で相違する。
(相違点12)
本件発明7は、指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出し、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報を前記ネットワーク通信手段からメール送信するのに対して、刊行物2には、そのようなことは記載されていない点。
上記相違点12について検討すると、
(相違点12)について
ネットワークファクシミリ装置に電子メールをするための手段を設け、電子メールの送受信を行うことは周知のことであり(例えば、刊行物5等を参照。)、刊行物2において、文書ファイルのファクシミリ転送に加えて、電子メールでの転送を行うことは当業者が当然予測することである。
したがって、刊行物2に、電子メール送受信の機能を持たせて、指示ボタンが選択されると宛先番号又は電子メールアドレスを入力するためのファイルを端末に送出すると共に、前記端末から電子メールアドレスを指定して送信指示を受けると、メール送信のための処理を実行して指定された電子メールアドレスへ選択された画情報をネットワーク通信手段からメール送信するようにすることは当業者が容易に考えられることである。
したがって、本件発明7は、上記各刊行物のものより当業者が容易に考えられたものである。

2-4-8.請求項8について(本件発明8)
本件発明8と、刊行物2とを比較すると、上記相違点8〜12の点で相違している。
しかし、上記相違点は、上記に述べたように、当業者が容易に考えられることであるから、本件発明8は、上記各刊行物に基づいて当業者が容易に考えられたものである。

2-5.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至8に係る発明は、上記刊行物1〜5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至8に係る発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-30 
出願番号 特願2001-18888(P2001-18888)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 堀井 啓明後藤 和茂  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
井上 信一
登録日 2002-02-08 
登録番号 特許第3276361号(P3276361)
権利者 パナソニックコミュニケーションズ株式会社
発明の名称 ネットワークファクシミリ装置及びファクシミリ通信方法  
代理人 高柳 司郎  
代理人 坂口 智康  
代理人 木村 秀二  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

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