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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1106022
異議申立番号 異議2003-72017  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-10-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-08 
確定日 2004-10-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3376273号「使い捨ておむつ」の請求項1乃至3に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成16年2月17日付け異議の決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成16年(行ケ)第139号、平成16年8月31日判決言渡)があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3376273号の請求項1乃至3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3376273号は、平成10年4月2日に出願され、平成14年11月29日に設定登録がなされたものであり、その後、瀬川忠世より特許異議の申立てがなされ、平成15年10月30日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成16年1月9日付けで特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、その後、平成16年2月17日付けで、特許第3376273号の請求項1乃至3に係る特許を取り消す旨の特許異議申立てについての決定がなされたが、平成16年4月7日に当該決定の取り消しを求める訴え(平成16年(行ケ)第139号)が提出され、その係属中である平成16年6月8日付けで訂正審判の請求(2004年審判第39129号)がなされ、平成16年7月21日にその訂正を認容する旨の審決があり、当該審決は平成16年8月2日に確定した。また、平成16年2月19日付けでした特許異議の申立てについての決定は、平成16年8月31日言渡の判決によって取り消され、さらに、平成16年9月27日に平成16年1月9日付けでした訂正請求は取り下げられた。

2.特許異議申立てについて
2-1.特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、本件特許の請求項1乃至3に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1乃至3に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、従って、上記特許は同法第113条第1項第2号により取り消されるべきものである旨主張し、次の甲第1号証を提出している。
甲第1号証 特開平2-126850号公報

2-2.本件特許発明
本件特許発明は、訂正の容認が確定している2004年審判第39129号の請求書に添付した訂正明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートと両シート間に介在された液保持性の吸収体とを有するおむつ本体、及び該おむつ本体の左右両側縁に連設され、左右一対のサイドフラップ部を具備する使い捨ておむつにおいて、
上記使い捨ておむつの左右両側縁側のそれぞれに、撥水性の材料よりなる不織布からなる1枚の立体ガード形成用シートを配して形成された、左右一対の立体ガードが配されて、該立体ガード形成用シートが上記サイドフラップ部の側縁まで延在しており、
上記立体ガード形成用シートは、その側方基端及び側方先端が、それぞれ上記サイドフラップ部側に位置するように折り返されていると共に、折り返された状態で長手方向両端部をそれぞれおむつの腹側部及び背側部に接着させて配されており、且つおむつのレッグ部側の側縁から上記吸収体の側縁を覆うように配されており、
上記立体ガードは、使い捨ておむつの内方側で上記立体ガード形成用シートを上記サイドフラップ部又は上記おむつ本体に固着して形成された基端部と、上記立体ガード形成用シートを折り返して形成された、おむつ本体の内方側に位置する折曲部と、該折曲部よりも使い捨ておむつの幅方向外方に位置する自由端部とを具備して、上記基端部と上記折曲部との間に位置する下方壁部と、上記折曲部と上記自由端部との間に位置する上方壁部とに区分されており、該折曲部には弾性部材を配さずに、該自由端部には弾性部材を配して、使用時において、上記下方壁部及び上記上方壁部が、おむつ幅方向外方側が上方となるように若干傾斜して起立し、上方に向けて全体としてほぼ直立状に起立するようになされており、
上記下方壁部と上記上方壁部とは、それぞれ表面シートや裏面シートなど他の部材に接着されていない自由部分となされており、
上記サイドフラップ部は、上記裏面シートと上記立体ガード形成用シートとにより形成されており、
上記自由端部においては、上記弾性部材はその周方向全域が上記立体ガード 形成用シートに覆われるように、該立体ガード形成用シートが折り返されており、股下部における上記サイドフラップ部の長さは、上記立体ガードの高さよりも短く、
使用時において、上記立体ガードが起立し且つ上記サイドフラップ部も上記レッグギャザーの作用により上方に向けて起立することにより、該立体ガードと該サイドフラップ部との間にポケット部が形成されるようになされており、
着用者の脚回りに位置するレッグ部にレッグ部弾性部材が配されてレッグギャザーが形成されており、上記基端部は、該レッグ部弾性部材の全長に亘り、該レッグ部弾性部材よりもおむつの内方側に形成されており、
該レッグ部弾性部材は、上記裏面シートと上記不織布からなる1枚の立体ガード形成用シートによって挟持・固定されている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】 上記基端部は、上記おむつ本体における上記吸収体上に位置することを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】 上記サイドフラップ部の長さは、上記立体ガードの高さよりも5〜30mm短いことを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。」

2-3.当審の認定・判断
本件請求項1に係る発明は、少なくとも、「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートと両シート間に介在された液保持性の吸収体とを有するおむつ本体、及び該おむつ本体の左右両側縁に連設され、左右一対のサイドフラップ部を具備する使い捨ておむつにおいて、サイドフラップ部は、上記裏面シートと上記立体ガード形成用シートとにより形成されており」を構成の一部として有するものであり、これにより、「漏れ防止性がより一層向上される」という効果を奏するものである。
一方、上記甲第1号証刊行物には、本件請求項1に係る発明の「立体ガード」と同様な機能を有するバリヤーカフスを設けた紙おむつに関する発明が記載されているものの、甲第1刊行物記載のすべての実施例において、紙おむつのサイドフラップ部は表面シートである透液性シートをその構成の一部に含むのであって、本件請求項1に係る発明の如く、表面シートを含まない、裏面シートと立体ガード形成用シートとにより形成されるサイドフラップ部に関する何等の開示をなすものではない。
ここで、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載される発明とを比較すると、少なくとも、本件請求項1に係る発明が上記構成である「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートと両シート間に介在された液保持性の吸収体とを有するおむつ本体、及び該おむつ本体の左右両側縁に連設され、左右一対のサイドフラップ部を具備する使い捨ておむつにおいて、サイドフラップ部は、上記裏面シートと上記立体ガード形成用シートとにより形成されており」を有する点で、甲第1号証に記載された発明と相違している。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記構成を有することにより、上記効果を奏するものであるから、その点を設計上の事項に属するとすることはできず、しかも、その点が周知技術であるとの証拠も見受けられず、自明な事項であるとも認められない。
したがって、本件請求項1に係る発明を、その構成の一部である「液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートと両シート間に介在された液保持性の吸収体とを有するおむつ本体、及び該おむつ本体の左右両側縁に連設され、左右一対のサイドフラップ部を具備する使い捨ておむつにおいて、サイドフラップ部は、上記裏面シートと上記立体ガード形成用シートとにより形成されており」を開示又は示唆しない甲第1号証に記載された発明に該当するものとすることができないばかりか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
また、本件請求項2に係る発明、及び本件請求項3に係る発明は、請求項1を引用することにより、上記構成をその一部とするものであるから、上記構成を開示又は示唆しない甲第1号証に記載された発明に該当するものとすることができないばかりか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に該当するものとすることができないばかりか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-17 
出願番号 特願平10-90403
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 鈴木 公子
溝渕 良一
登録日 2002-11-29 
登録番号 特許第3376273号(P3376273)
権利者 花王株式会社
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 羽鳥 修  

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