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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1107120
審判番号 不服2004-2577  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-09 
確定日 2004-11-11 
事件の表示 平成10年特許願第127576号「流動弁付きタンク」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月26日出願公開、特開平11-324060〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
出願 平成10年 5月11日
拒絶理由通知 平成15年 3月27日 (起案日)
手続補正 平成15年 5月21日 (受付日)
拒絶査定 平成16年 1月 6日 (起案日)
審判請求 平成16年 2月 9日 (受付日)
手続補正 平成16年 3月 3日 (受付日)
【2】平成16年3月3日受付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月3日受付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 底部にフロート弁を備えたタンクと、該フロート弁の2次側に連通した流動弁とを備えてなり、該流動弁は該タンク内の満水位よりも下方に配置されている流動弁付きタンクにおいて、該流動弁を該タンクの内部のみに配置し、該流動弁を遠隔操作する遠隔操作部材を備えており、該流動弁は、水路に設けられたシート部と、該シート部に着座する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するスプリングとを備え、前記遠隔操作部材は、前進することにより先端側で該弁体を押圧して該弁体を該シート部から離反させるインナケーブル及び該インナケーブルが進退可能に挿通されたアウタケーブルよりなるプッシュプルケーブルと、該インナケーブルを前進位置及び後退位置の2位置にのみ停止させるインナケーブル停止手段とを備えたことを特徴とする流動弁付きタンク。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「弁体を押圧して」について「前進することにより先端側で」との限定を付加し、同じく「該シート部から離反させる」を「該弁体を」との限定を付加し、同じく「ケーブル」について「インナケーブル及び該インナケーブルが進退可能に挿通されたアウタケーブルよりなるプッシュプル」との限定を付加し、同じく「ケーブル停止手段」について「インナ」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本願出願前に頒布された刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-98671号(実開平2-23077号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。
「1、洗浄タンク内適所に溢水管を立設せしめ、該溢水管の、下方部に流動水導管の一端を連通し、該流動水導管の他端を、前記洗浄タンクの底部に開口した流動水導入口を有する開閉弁体と連通せしめ、該流動水導入口と流動水導管との流路の途中に開閉弁を設け、該開閉弁を開閉する操作手段を、適宜の伝達手段を介して、洗浄タンクの水位設定手段による設定水位よりも上方部に位置する側壁に設けた構造の凍結防止式便器洗浄タンク。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)、
「「考案が解決しようとする課題」・・・そこで、実公昭53-50279号公報の様に、洗浄タンクの内方底部近くに流動水導管を設けて、フロート弁座を備えた排水具の上記フロート弁座下方側面にその先端を連結し、その末端もしくは途中に開閉弁を設け、洗浄タンクの外部から開閉弁を操作することができるように構成した凍結防止式便器洗浄タンクがあるが、・・・シールを完全にしなければならなかった。
「課題を解決するための手段」本考案は、かかる如き状況に鑑みて従来の要望を満足させるためになされたものであり、特別に開閉弁取付用の孔をタンクの下方に穿設しないで、タンク上方に通常穿設せられている左右の給水孔を選択的に使用して残った余剰給水孔に開閉弁取付用の器具を設け・・・該溢水管の、水位設定手段による設定水位よりも下方部に流動水導管の一端を連通し、該流動水導管の他端を、前記洗浄タンクの底部に開口した流動水導入口を有する開閉弁体と連通せしめ、該流動水導入口と流動水導管との流路の途中に開閉弁を設け、該開閉弁を開閉する手段を適宜の伝達手段を介して洗浄タンクの前記設定水位よりも上方部に位置する周壁に設けた構造の凍結防止式便器洗浄タンクとなしたものである。
「作用」したがって、凍結の心配される冬期に於いては、開閉弁の開閉手段を操作して開閉弁を開け、流動水導入口から流動水導管への流路を連通させ、よって洗浄タンク内の水は少量ずつ溢水管を介して図示しない便器へと流出するものとなり、水を流動せしめて凍結を防止することができる。更に洗浄タンク内の水が流出して水位が下がると、水位設定手段としてのフロートが自重で下降しボールタップを開いて洗浄タンク内へ給水を開始し、設定水位に到達するとフロートが浮上してボールタップを閉じて給水を止めるものとなる。また、凍結の心配のない時には、開閉弁を開閉する操作手段を操作して開閉弁を閉じ、よって流動水の流出を停止し、通常の凍結を考慮しないでも良い場合に用いる汚物等を洗い流すための洗浄タンクとして使用に供することができるものとなる。」
(第3頁第8行〜第6頁第4行)、
「(第1実施例)第1図乃至第3図には本考案の第1実施例を示し、・・・洗浄タンク1内適所に溢水管2を立設せしめ、該溢水管2の、後述する水位設定手段3による設定水位3による設定水位W.Lよりも適宜寸法下方部位(溢水管2の底部近傍)に流動水導管4の一端4Aを連通するために溢水管2・・・該流動水導管4の他端4Bを、前記洗浄タンク1の底部に位置せられた開閉弁体6の側面に水密に螺着せられたホースニップル7に差し込んで連通し、前記開閉弁体6の上方側面に開口した流動水導入口6Aと流動水導管4との流路の途中に開閉弁8を設けており、該開閉弁8を開閉する操作手段9を伝達手段10’としての軸10を介して洗浄タンク1の前記設定水位W.Lよりも上方部に位置する側壁1Aに設けており、開閉弁8は軸10の下端に設けられた径小部に座金11、パッキン12、座金13及びこれらを前記軸10の先端に螺設せられた雄螺子にて螺合せしめるロックナット14とからなり、底部に圧縮コイルスプリング15が配されて開閉弁8を常時上方へ付勢しており、開閉弁8に固着せられて上方へ延出した伝達手段10’としての軸10は洗浄タンク1の上方側壁1Aに開口せられた給水孔のうちボールタップ17の取着されていない・・・余剰給水口16Bにシールパッキン18を介してフランジ付きナット19にて固着せられた流動金具20内にて上下に摺動自在に支持された摺動体21に係合せられている。又、軸10の外周部には前記流動金具20の底部に螺着せられたスリーブナット22のソケット部22Aに螺着せられた接続パイプ23が設けられており、該接続パイプ23の下端にはソケット24が接着せられるとともに該ソケット24の差し込まれたスリーブナット22がブッシュ25を介して前記開閉弁体6の上端に螺着せられている。又、前記流動金具20は軸10と係合した可動体21の摺動する縦方向と直交する水平方向に延出した水平部20Bの先端に雄螺子20Aが設けられており前記洗浄タンク1の側壁1Aに穿設せられた余剰給水孔16Bに挿通せられてフランジ付きナット19で螺着せられて開閉弁体6と一体化せられた操作手段9となされており、水平に延出した流動金具20の水平部20Bには内部に雌ねじ26が設けられており、該雌ねじ26に操作軸27の雄ねじ27Aが螺着せられ、該操作軸27は先端が円錐状のテーパ部27Bとなされて前記可動体21の一側に切欠き形成せられた凹所21Aの底部傾斜面21Bと当接しており、操作軸27の外方端にスプライン嵌合して回り止めせられるとともに止め螺子28によって固着されたハンドル29をたとえば止め螺子28を包覆せしめて外観上美麗になすとともにハンドル29の操作方向を表示した表示板30の表示通り回動させて、操作軸27を回動し、よって流動金具20の雌ねじ26と螺合せられた操作軸27は進退するものとなり、操作軸27の先端に位置するテーパ部27Bに押圧せられた可動体21は圧縮コイルスプリング15の圧縮力と相まって上下摺動し、(操作軸27を前進させて可動体21を下降させると、圧縮コイルスプリング15が圧縮されて開閉弁を開閉弁体6の弁座6Bに近づけ、操作軸17を後退させると可動体21は圧縮コイルスプリング15に押圧されて上昇し、開閉弁と弁座との隙が広くなる。)よって開閉弁8のパッキン12と開閉弁体6の弁座6Bとの離間距離を可変できるものとなされている。したがって、凍結の心配される冬期に於いては、開閉弁8を適宜量開いて流動水導入口6Aより流動水導管4、溢水管2を介して図示しない便器へ少量の水を流出させるために、開閉手段9としてのハンドル29を所定の方向に回転させ、よって、操作軸27を回転させて雄螺子27Aを後退させ先端のテーパ部27Bを後退させれば該テーパ部27Bに当接している可動体21は下方の開閉弁体6の内部に位置する圧縮コイルスプリング15の付勢力によって押圧され、よって開閉弁8を開閉弁体6の弁座6Bより上昇離間させ、該離間した隙から洗浄タンク1内の水が少量ずつ流動水導管4、溢水管2、図示しない便器へと流出するものとなる。したがって、水に流動を生じせしめ凍結を防止できるものとなる。」(第6頁第7行〜第10頁第16行)、
「また、凍結の心配のない時にはハンドル29を回して操作手段9としての操作軸27を前進させ先端のテープ部27Bにて、可動体21の傾斜部21Bを圧縮コイルスプリング15の押圧力に抗して押し下げ、開閉弁8のパッキン12を開閉弁体6の弁座6Bに当接せしめて開閉弁8を閉じ、よって水の流出を停止し、通常の洗浄タンクとして汚物などの洗浄用として使用に供することができるものとなる。尚、洗浄タンク1内の水位は水位設定手段3によって設定水位W.Lとなるようにフロ-ト31の上下動に応じて吸水.停止を繰り返すものであり、溢水管に取着せられた流動水導管4の位置はフロート31が下がってボールタップ17が開口して給水する水位よりも下方であれば、流動水導管4より流れた水によって洗浄タンク内の水位が・・・流動水導管4の溢水管2への接続位置はなるべく下方にあることが望ましい。」(第11頁第5〜第12頁第10行)。
刊行物1には、上記「考案が解決しようとする課題」に記載された「洗浄タンクの内方底部近くに流動水導管を設けて、フロート弁座を備えた排水具の上記フロート弁座下方側面にその先端を連結し、その末端もしくは途中に開閉弁を設け」及び第1、2図を参照すると「底部にフロート弁座を備えた洗浄タンク」であることは当業者に自明な事項であり、また「課題を解決するための手段」に記載された「該溢水管の、水位設定手段による設定水位よりも下方部に流動水導管の一端を連通し、該流動水導管の他端を、前記洗浄タンクの底部に開口した流動水導入口を有する開閉弁体と連通せしめ、該流動水導入口と流動水導管との流路の途中に開閉弁を設け、該開閉弁を開閉する手段を適宜の伝達手段を介して洗浄タンクの前記設定水位よりも上方部に位置する周壁に設けた」との事項及び第1図を参照すると「開閉弁体6を該洗浄タンク1の内部のみに配置」すること、及び「開閉弁体6は洗浄タンク1の満水位よりも下方に配置されている開閉弁体6」であることも当業者に自明な事項である。
また、本願補正発明において「フロート弁の2次側」とは、フロート弁装置42のシート部46よりも下流側を意味しており(段落【0017】)、刊行物1記載のものも開閉弁体6からの流路は溢水管2を介してフロート弁の下流に連通している。
そうすると、上記記載、対応する図面及び当業者の技術常識を参酌すると、刊行物1の第1実施例には
「底部にフロート弁を備えた洗浄タンク1と、該フロート弁の2次側に連通した開閉弁体6とを備えてなり、該開閉弁体6は洗浄タンク1内の満水位よりも下方に配置されている開閉弁体6付き洗浄タンク1において、該開閉弁体6を該洗浄タンク1の内部のみに配置し、該開閉弁体6を遠隔操作する伝達手段10’を備えており、該開閉弁体6は、流路に設けられた弁座6Bと、該弁座6Bに当接する開閉弁8と、該開閉弁8を弁座6Bに当接する方向と反対方向に付勢する圧縮コイルスプリング15とを備え、前記伝達手段10’は上昇することにより先端側で該開閉弁8を該弁座6Bから離間させる軸10及び該軸10が上下摺動可能に挿通された接続パイプ23よりなり、該軸10を上昇位置及び押し下げ位置に停止させる操作手段9とを備えた開閉弁体6付き洗浄タンク1。」の発明が記載されていると認められる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-180203号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。
「【請求項2】洗浄水タンクにボールタップ及び便器本体への流路を開閉する排水栓を備え、前記洗浄水タンクの全体を被覆するケーシングを設けた水洗式便器において、前記洗浄水タンクに前記排水栓の開閉によらず前記便器本体と連通している排水流路を備えると共に該排水流路と連通する凍結防止弁を設け、該凍結防止弁は、その頂点部を前記洗浄水タンク内の満水水位よりも低くすると共に一端を前記排水流路に連通させた接続管と、該接続管の他端に連通し上端を前記接続管の頂点部とほぼ同一または該頂点部よりも低くして開放したハウジングと、該ハウジング内に収納され前記上端の開放部を浮力によって閉じるフロートと、前記フロートを押し下げて前記ハウジングの開放部の流路を開く操作手段とを備え、前記操作手段は、前記ハウジング側に設けた弾性手段によって上側に付勢された操作ロッドと、前記ケーシングとの間に設けられ前記操作ロッドを拘束して前記フロートを開弁状態に維持するロック機構とを備え、更に前記操作ロッドの操作端を前記ケーシング内部に位置させてなる水洗式便器における凍結防止構造。」、
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、洗浄水タンクを備えた水洗式便器に係り、特に寒冷時での洗浄水の凍結を防止するようにした凍結防止構造に関する。」、
「【0013】
【作用】ハウジングの上端開放部は接続管の頂点部よりも低いので、フロートが一旦下がって上端開放部の流路を開いた後であって再びフロートが上昇して閉じると、水は逆接続管の頂点部からハウジングの中までを満水にし、フロートは浮力によって上端開放部を閉じる。このため、洗浄水タンクの水位が下がって凍結防止弁のフロートの着座レベルよりも低くなっても、フロートはこの着座状態を維持し、排水流路からの水の放出を阻止する。
【0014】
操作手段によってフロートを押し下げると、ハウジングの上端開放部が開き、満水水位に比べて低いレベルにある接続管の上端部との間のヘッド差によって洗浄水タンクからの水が接続管を経由して排水流路へ送り込まれ、ここから便器本体側へ放出されて洗浄水が流動化される。このとき、ボールタップによって洗浄水タンク内の水位は満水水位に維持されるので、洗浄水の便器本体側への放出による流動化は継続され、ボールタップの上流側及び便器本体の洗浄水排出部までの流路内の洗浄水の凍結が防止される。」、
「【0029】
隔壁2dには操作ロッド14が貫通する取付け孔2eを開けると共に同心上に円弧状の係合孔2fを設ける。一方、操作ロッド14の上端には回転操作用の摘み14bを設け、その下端には係合孔2fの中に差し込み可能な突起14cを円周方向に突き出して設ける。
【0030】
操作ロッド14はコイルスプリング13によって図3において上に付勢され、通常の場合では図4の(a)に示すように操作ロッド14の下端はフロート11に突き当たらないレベルに保持される。このとき、操作ロッド14の上端は図5に示すように突起14cが係合孔2fから上に抜けた位置にある。
【0031】
更に、ケーシング2の上端面であって操作ロッド14の摘み14bの上方には開閉自在な蓋2gを設ける。この蓋2gは一端をヒンジ2hによってケーシング2に接合され、他端の下面をケーシング2の裏面に設けたスプリング2kに突き当てたものである。そして、蓋2gを軽く下に押すとスプリング2iの反発力によってヒンジ2h回りに回動して開くことができ、閉じるときは緩やかにスプリング2iの上に被せることで図示の姿勢を保つことができる。
【0032】
以上の構成において、操作ロッド14が図3に示すようにコイルスプリング13によって上に付勢され、定常位置を保っている期間では、フロート11はハウジング10から接続管12の間に溜まっている水によって図4の閉弁位置に保たれる。したがって、排水栓8が閉じているときも開いているときも、凍結防止弁9は閉弁状態に維持され、洗浄水タンク5から便器本体1側への水の流出はない。
【0033】
凍結の恐れがある場合には、蓋2gを開いて操作ロッド14の摘み14bを押し下げる。これにより、摘み14bの下端の突起14cが係合孔2fの中に入り込み(図6の(a))、この時点で図6の(b)に示すように操作ロッド14を時計方向に回転させると、突起14cが隔壁2dの下面側に潜り込む。そして、摘み14bから指先を外すと、操作ロッド14はコイルスプリング13の付勢力によって突起14cが隔壁2dに突き当たり、これらの間の接合によって操作ロッド14の回動が阻止される。
【0034】
以上の操作により、操作ロッド14の下端は図4の(b)に示すように貫通孔10aを抜けてフロート11を押し下げこれをパッキン10bから離して流路を開く。一方、洗浄水タンク5内の水位はボールタップ6bによって図3の一定水位に維持され、この水位は逆U字状の接続管12の頂点部よりも高い。したがって、洗浄水タンク5内及び接続管12内のそれぞれのヘッド差によって、洗浄水タンク5内の水がハウジング10から接続管12を越えてオーバーフロー管7へ流出し、排水筒5aを経由して便器本体1側に供給される。」。

(3)対比・判断
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「洗浄タンク1」は、本願補正発明の「タンク」に、同様に、「開閉弁体6」は「流動弁」に、「伝達手段10’」は「遠隔操作部材」に、「流路」は「水路」に、「弁座6B」は「シート部」に、「圧縮コイルスプリング15」は「スプリング」に、「当接」は「着座」に、「開閉弁8」は「弁体」に、「離間」は「離反」に、「上下摺動」は「進退」に、「上昇位置及び押し下げ位置」は「前進位置及び後退位置」に、「操作手段9」は「停止手段」に、各々相当し、刊行物1記載の発明の「接続パイプ23」は「軸10」を進退可能に挿通し、その外側を覆うものであるから、アウタ部材であり、「軸10」は、アウタ部材に覆われ移動することにより先端側で弁体をシート部から離反、着座させるものであるからインナ部材であるという点で本願補正発明のインナケーブル、アウタケーブルと共通するものであるから、両者は、
「底部にフロート弁を備えたタンクと、該フロート弁の2次側に連通した流動弁とを備えてなり、該流動弁は該タンク内の満水位よりも下方に配置されている流動弁付きタンクにおいて、該流動弁を該タンクの内部のみに配置し、該流動弁を遠隔操作する遠隔操作部材を備えており、該流動弁は、水路に設けられたシート部と、該シート部に着座する弁体と、該弁体に作用するスプリングとを備え、前記遠隔操作部材は、移動することにより先端側で該弁体を移動して該弁体を該シート部から離反させるインナ部材及び該インナ部材が進退可能に挿通されたアウタ部材と、該インナ部材を前進位置及び後退位置に停止させるインナ部材停止手段とを備えた流動弁付きタンク。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]本願補正発明は、弁体を着座方向に付勢するスプリングを備え、遠隔操作部材は、前進することにより弁体を押圧して該弁体を該シート部から離反させるインナケーブル及び該インナケーブルが進退可能に挿通されたアウタケーブルよりなるプッシュプルケーブルと、該インナケーブルを前進位置及び後退位置の2位置にのみ停止させるインナケーブル停止手段とを備えるのに対し、刊行物1記載の発明はそのような構成ではない点。

上記相違点について検討する。
[相違点]について
刊行物2に、凍結防止弁9(本願補正発明の「流動弁」に相当)付き洗浄水タンク5(本願補正発明の「タンク」に相当)において、ハウジング10のパッキン10bが設けられている部分(本願補正発明の「シート部」に相当)に着座するフロート11(本願補正発明の「弁体」に相当)は、浮力によって上端開放部を閉じ、フロート11を操作ロッド14の下端(本願補正発明の「先端側」に相当)により押し下げ(本願補正発明の「押圧」に相当)、パッキン10bからフロート11を離反させることにより流路が開かれる点が記載されており、弁体とシート部を離反させる手段として、押圧によるか、後退によるかは、弁体を移動させる手段の選択肢の一つとして、当業者が適宜選択し得る程度の設計事項にすぎず、押圧により離反させようとする場合に、弁体を閉じるときに、弁体が着座方向に浮力により付勢されている点が刊行物2に記載されているように、そのような弁体として機能するように、スプリングの付勢方向を弁体が着座する方向となるように構成することも当業者が当然考慮すべき単なる設計事項にすぎない。
また、刊行物2には、操作ロッド14(本願補正発明の「遠隔操作部材」に相当)の摘み14bを押し下げ(本願補正発明の「前進」に相当)、時計方向に回転させると、操作ロッド14の先端側でフロート11を押圧して、フロート11をパッキン10bから離反させる操作ロッド14と、操作ロッド14を拘束してフロート11を開弁状態に維持する位置(本願補正発明の「前進位置」に相当)及び操作ロッド14の下端は、フロート11に突き当たらないレベルに保持される位置(本願補正発明の「後退位置」に相当)の2位置にのみ停止させるロック機構(本願補正発明の「停止手段」に相当)が記載されており、この機構を刊行物1記載の発明に適用することは、刊行物1、2記載のものが、共に凍結を防止する流動弁を備えたタンクという同一技術分野に属するものであるから、何ら格別の困難性はなく、更に、一般的に遠隔操作部材として、インナケーブル及び該インナケーブルが進退可能に挿通されたアウタケーブルよりなるプッシュプルケーブルを用いることは、周知慣用技術にすぎないから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用する際に、遠隔操作部材として、周知慣用技術を用いて、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。
さらに、本願補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明、及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2記載の発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
(1)本願発明
平成16年3月3日受付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年5月21日受付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、請求項1には、
「【請求項1】 底部にフロート弁を備えたタンクと、該フロート弁の2次側に連通した流動弁とを備えてなり、該流動弁は該タンク内の満水位よりも下方に配置されている流動弁付きタンクにおいて、該流動弁を該タンクの内部のみに配置し、該流動弁を遠隔操作する遠隔操作部材を備えており、該流動弁は、水路に設けられたシート部と、該シート部に着座する弁体と、該弁体を着座方向に付勢するスプリングとを備え、前記遠隔操作部材は、該弁体を押圧して該シート部から離反させるケーブルと、該ケーブルを前進位置及び後退位置の2位置にのみ停止させるケーブル停止手段とを備えたことを特徴とする流動弁付きタンク。」(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)と記載されている。

(2)本願出願前に頒布された刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「【2】.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「【2】.(3)」で検討した本願補正発明から「弁体を押圧して」の限定事項である「前進することにより先端側で」との構成を省き、同じく「該シート部から離反させる」の限定事項である「該弁体を」との構成を省き、同じく「ケーブル」の限定事項である「インナケーブル及び該インナケーブルが進退可能に挿通されたアウタケーブルよりなるプッシュプル」との構成を省き、同じく「ケーブル停止手段」の限定事項である「インナ」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「【2】.(3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2記載の発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-02 
結審通知日 2004-09-07 
審決日 2004-09-27 
出願番号 特願平10-127576
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E03D)
P 1 8・ 121- Z (E03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 青山 敏
南澤 弘明
発明の名称 流動弁付きタンク  
代理人 重野 剛  

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