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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1107169 |
審判番号 | 不服2001-16887 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-09-20 |
確定日 | 2004-11-11 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第236786号「光ファイバー、光ファイバープローブ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月31日出願公開、特開平10- 82791〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成8年9月6日の出願であって、その請求項1-10に係る発明は、平成12年10月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】化学エッチングにより一端が先鋭化されて多段階の傾斜面に変化される光ファイバーであって、 二酸化ゲルマニウム(GeO2)添加石英(SiO2)からなり、ナノメートル単位の直径を有する第1のコアと、 この第1のコアの外周側に設けられ、純粋石英(SiO2)からなるミクロンメートル単位の直径を有する第2のコアと からなる2重構造のコアをもつことを特徴とする光ファイバー。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶理由で引用された国際公開第95/33207号パンフレット(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (記載事項A) 「本発明は、光を伝搬させるコアと、このコアを覆ってコア内を伝搬する光を遮光するクラッドとからなり、光を入出力するための先鋭部を有する光ファイバ及びその製造方法に関する。」(1頁4〜6行) (記載事項B) 「また、本発明の第40実施例に係る光ファイバの製造方法では、屈折率の異なる2種類のコア172,173とクラッド174を有するダブルコアの光ファイバ171をエッチングして、上述の図31に示す光ファイバを形成する。 上記光ファイバ171は、クラッド174が純石英からなり、コア172,173が酸化ゲルマニウムを添加した石英からなる。コア172,173の酸化ゲルマニウムの添加率は、それぞれ0.9モル%、0.2モル%となっており、内側のコア172の方が酸化ゲルマニウムの添加率が高くなっている。 そして、このような光ファイバ171を緩衝フッ酸液中で10時間程度エッチングする。このような緩衝フッ酸液中では、クラッド174のエッチング速度がコア173より速いため、図85に示すように、クラッド174が先にエッチングされてコア173がクラッド174から徐々に露出し、露出したコア173が側面からもエッチングされて先鋭化されて先細り部176が形成される。 また、このような緩衝フッ酸液中では、コア173のエッチング速度がコア172より速いため、上記先細り部176の先端においてコア173が先にエッチングされてコア172がコア173から徐々に露出し、露出したコア172が側面からもエッチングされて先鋭化されて突出部177が形成される。」(84頁11行〜85頁6行) 3.対比 本願発明と刊行物1に記載のものとを対比すると、刊行物1に記載の「先細り部176」及び「突出部177」は、本願発明の「多段階の傾斜面」を形成しているから、両者は、 (一致点) 「化学エッチングにより一端が先鋭化されて多段階の傾斜面に変化される光ファイバーであって、 二酸化ゲルマニウム(GeO2)添加石英(SiO2)からなる第1のコアと、この第1のコアの外周側に設けられる第2のコアとからなる2重構造のコアをもつことを特徴とする光ファイバー」 である点で一致し、次の点で相違している。 <相違点1> 「第2のコア」の材質が、本願発明では、「純粋石英(SiO2)」であって、二酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加されないのに対し、刊行物1に記載のものでは、「第1のコア」に比べて添加率は低いものの二酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された「二酸化ゲルマニウム(GeO2)添加石英(SiO2)」である点。 <相違点2> 本願発明では、「第1のコア」及び「第2のコア」の直径について、それぞれ、「ナノメートル単位」、「ミクロンメートル単位」としているのに対し、刊行物1に記載のものでは直径の大きさの程度については明記されていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 <相違点1>について 光ファイバにおいて、クラッドの材質として「F添加SiO2」を選択しつつ、コアを二重構造とし、内側コアは「二酸化ゲルマニウム(GeO2)」を添加した「二酸化ゲルマニウム(GeO2)添加石英(SiO2)」とするものの、外側コアは「純粋石英(SiO2)」とし「二酸化ゲルマニウム(GeO2)」を添加しないようにすることでコア全体としての「二酸化ゲルマニウム(GeO2)」の添加量を下げ、使用波長域における伝送損失の低減を図ることは、本願出願前周知の技術的事項であるところ(例えば、特開平5-155639号公報の【従来の技術】の欄を参照)、刊行物1に記載のものも「光ファイバ」に関するものであり、その使用波長域によっては伝送損失の低減が課題となり得る以上、刊行物1に記載のものに上記周知の技術的事項を採用し、「第2のコア」を「二酸化ゲルマニウム(GeO2)」を添加しない「純粋石英(SiO2)」とすることは、当該光ファイバにおいて伝搬させようとする光の波長域や当該光ファイバにおける伝送損失の低減の必要性等を勘案して当業者が容易になし得ることと認められる。 <相違点2>について 本願発明の「ミクロンメートル単位」、「ナノメートル単位」との記載はどの程度のサイズを表すのかはっきりしないところであるが、プローブ用光ファイバーに関する発明ついて記載した刊行物1にも、コア径を3.4ミクロンメートルとすることが随所に記載(例えば、16頁10〜16行の記載を参照)されており、これも「ミクロンメートル単位」と言えるので、二重コア構造の光ファイバーである上記刊行物1に記載のものにおいて、コア最外径に相当する「第2のコア」の直径を「ミクロンメートル単位」とすることは自明である。 その際、その内側にある「第1のコア」の直径(乃至は「第2のコア」の直径に対する径比)をどの程度とするかは、当該光ファイバにおいて伝搬させようとする光の波長域と二酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された「第1のコア」との干渉作用の程度や当該光ファイバープローブにおいて実現しようとする伝送効率の程度等を勘案して当業者が適宜に決定し得べき事項である。さらに、「第2のコア」の直径が「ミクロンメートル単位」であれば、その内側にある「第1のコア」の直径は、数百ナノメートル程度、あるいは、それ以上であってもよく、これらもナノメートルで表現されている以上、「ナノメートル単位」ということができ、刊行物1に記載のものにおける「第1のコア」及び「第2のコア」の直径を、それぞれ、「ナノメートル単位」、「ミクロンメートル単位」とすることは当業者にとって容易であるとともに、何ら格別の数値限定であるとも認められない。 なお、請求人は、審判請求書において、原査定の拒絶理由に引用された引用文献4(本審決における「刊行物1」)は、コアの周りにクラッドが設けられた2層構造の光ファイバーの先端をエッチングして2段テーパ構造とするものであって、本願発明のように2重コア構造の光ファイバーの先端を先鋭化することについて開示あるいは示唆するものでない旨主張しているが、2重コア構造の光ファイバーの先端を先鋭化することが刊行物1に記載されていることは、「2.引用刊行物」に記載したとおりである。 また、請求人は、本願発明の「ナノメートル単位の直径を有する第1のコア」は波長サイズよりも小さいため光を閉じ込めるコアとして機能せず、コアに数百〜千ナノメートルの波長の光を閉じ込め伝送するという光ファイバーの概念において、その存在は意味を持たない旨主張しているが、そもそも、本願発明において「第1のコアの直径は波長サイズより小さい」というのは請求項の記載に基づかない主張であるし、かえって、「第1のコア」の直径は「ナノメートル単位」と規定しており、数百ナノメートルであっても、「ナノメートル単位」ということができ、そうすると、「第1のコア」の直径と伝送する光の波長が同程度の場合や前者の方が大きいケースも含まれるから、本願発明において「第1のコアの直径は波長サイズより小さい」と言うことができないことになる。 よって、請求人の審判請求書における主張は採用することができない。 5.むすび したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-09-13 |
結審通知日 | 2004-09-14 |
審決日 | 2004-09-27 |
出願番号 | 特願平8-236786 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順、▲高▼見 重雄、山口 剛 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
長井 真一 菊井 広行 |
発明の名称 | 光ファイバー、光ファイバープローブ及びその製造方法 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 伊賀 誠司 |
代理人 | 小池 晃 |