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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1107218
審判番号 不服2002-974  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-17 
確定日 2004-11-11 
事件の表示 平成 4年特許願第308661号「感光性エレメントの巻芯のリサイクル方法及び同方法を使用したラミネート方法並びに装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 6月 3日出願公開、特開平 6-156882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成4年11月18日の出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成14年2月15日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項3に係る発明は、次のとおりである。
「感光性エレメントから剥離した保護フィルムを保護フィルム巻き取り用巻芯に巻き取り乍ら感光層を基板にラミネートするラミネート装置において、巻き込んだ状態の保護フィルムから保護フィルム巻き取り用巻芯の抜き出しを容易にするために前記保護フィルム巻き取り用巻芯を、保護フィルムを巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成して設けると共に、当該保護フィルム巻き取り用巻芯は保護フィルムの巻き込みに使用可能に設け、前記感光性エレメントを巻き出し終えた巻芯を再度感光性エレメントを巻く巻芯としてリサイクル可能に設けたことを特徴とするラミネート装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭62-135340号公報(以下、「第1引用例」という。)には、次の記載がある。
(ア)「本発明は、薄膜張付装置に関するものであり、特に、基板の表面に薄膜を張り付ける薄膜張付装置に適用して有効な技術に関するものである。」(公報第1頁左欄末行〜同頁右欄第2行)
(イ)「第1図に示すように、遮光性樹脂フィルム、感光性樹脂層及び遮光性樹脂フィルムの3層構造からなる積層体1は、供給ローラ2に連続的に巻き回されている。供給ローラ2の積層体1は、剥離ローラ3で、遮光性樹脂フィルム(保護膜)1Aと、一面(接着面)が露出された感光性樹脂層及び遮光性樹脂フィルムからなる積層体1Bとに分離される。分離された遮光性樹脂フィルム1Aは、巻取ローラ4により巻き取られるように構成されている。」(公報第2頁下右欄第9〜18行)
(ウ)「このように構成される薄膜張付装置は、前述した各構成により、搬送ローラ16で搬送される絶縁性基板17の両面(又は片面)の導電層上に、積層体1Bを熱圧着ラミネートするようになっている。積層体1Bは、遮光性樹脂フィルム1Aが剥離された感光性樹脂層の接着面と導電層面とが接着するように、絶縁性基板17に熱圧着ラミネートされるように構成されている。」(公報第3頁上右欄第18行〜同頁下左欄第5行)
(エ)さらに、第1図より、積層体1が供給ローラ2から巻き出される点が認められる。
上記(ア)〜(エ)の記載を総合すると、上記第1引用例には、
「積層体1から分離した遮光性樹脂フィルム(保護膜)1Aを巻取ローラ4に巻き取り乍ら感光性樹脂層を絶縁性基板17にラミネートするラミネート装置において、積層体1は、供給ローラ2から巻き出されるとともに、分離された遮光性樹脂フィルム1Aは、巻取ローラ4により巻き取られるラミネート装置。」の発明が記載されているものと認める。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭60-53271号(実開昭61-168069号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、次の記載がある。
(オ)「この考案は端材となる塩ビシートの巻取り等に用いるシート巻取装置に関するものである。」(明細書第1頁第12、13行)
(カ)「この考案は、巻取り完了後に巻心筒を抜き取ることができて、巻心筒を消費しないシート巻取装置を提供することを目的とする。」(明細書第2頁第7〜9行)
(キ)「分割したシート2a〜2cのうちの第1図の手前に示すシート2cは端材となるものであり、回転駆動装置となるモータ8の回転軸9に、巻心筒10(第2図,第3図)を介して巻取られる。巻心筒10は、周方向の一箇所をスリット11で割ったものであり、塩化ビニル材等の弾性を有する材料からなり、モータ8の回転軸9の巻心筒嵌合部材12に圧入状態に嵌合する。すなわち、巻心筒10は、自然状態では巻心筒嵌合部材12よりも若干小径である。」(明細書第3頁第9〜19行)
(ク)「巻心筒10を巻心筒嵌合部材12に嵌合させ、モータ8の駆動により巻心筒10にシート2cを巻取る。巻取り終了後、巻心筒10を出力軸9から抜く。これにより、巻心筒10は原径に弾性で戻り、シート巻取体6の内周との間に隙間ができる。そのため、巻心筒10を抜き取り、端材となるシート巻取体6のみを処理することができる。したがって、従来のように巻心筒となる紙管を消費することがなく、経済的である。」(明細書第4頁第1〜9行)
上記(ク)の記載により、巻心筒10は、シート2cを巻き込んだ状態時の径から縮径可能であることは明らかであるので、上記(オ)〜(ク)の記載を総合すると、上記第2引用例には、
「端材となるシート巻取体から巻心筒10の抜き出しを容易にするために巻心筒10を、シート2cを巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成する」技術的事項が記載されているものと認める。
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭59-163504号(実開昭61-78174号)のマイクロフィルム(以下、「第3引用例」という。)には、次の記載がある。
(ケ)「この考案は、包装用塩化ビニルシート等の端材を巻取る巻取装置に関するものである。」(明細書第1頁第11、12行)
(コ)「端材は、着脱フランジを取付けて巻取軸が拡がった状態で巻取られる。端材を抜取る時は、着脱フランジを取外すので巻取軸が縮み、巻取軸と巻取った端材の間に隙間ができ、端材だけを簡単に抜取ることができる。」(明細書第3頁第13〜17行)
上記(コ)の記載により、巻取軸は、端材を巻き込んだ状態時の径から縮径可能であることは明らかであるので、上記(ケ)、(コ)の記載を総合すると、上記第3引用例には、
「端材の抜き出しを容易にするために巻取軸を、端材を巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成する」技術的事項が記載されているものと認める。

3.対比
本願発明と第1引用例に記載の発明を対比すると、後者の「積層体1」、「分離」、「遮光性樹脂フィルム(保護膜)1A」、「巻取ローラ4」、「感光性樹脂層」及び「絶縁性基板17」は、前者の「感光性エレメント」、「剥離」、「保護フィルム」、「保護フィルム巻き取り用巻芯」、「感光層」及び「基板」に相当する。
してみると、両者は、
「感光性エレメントから剥離した保護フィルムを保護フィルム巻き取り用巻芯に巻き取り乍ら感光層を基板にラミネートするラミネート装置。」である点で一致し、次の点で相違している。
〈相違点1〉
本願発明は、「巻き込んだ状態の保護フィルムから保護フィルム巻き取り用巻芯の抜き出しを容易にするために前記保護フィルム巻き取り用巻芯を、保護フィルムを巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成して設ける」のに対し、第1引用例記載の発明は、分離された遮光性樹脂フィルム1Aは、巻取ローラ4により巻き取られるものの、巻取ローラ4は縮径可能に構成されてはいない点。
〈相違点2〉
本願発明は、「保護フィルム巻き取り用巻芯は保護フィルムの巻き込みに使用可能に設け、感光性エレメントを巻き出し終えた巻芯を再度感光性エレメントを巻く巻芯としてリサイクル可能に設けた」のに対し、第1引用例に記載の発明は、分離ローラ4は遮光性樹脂フィルム1Aの巻き込みに使用可能に設け、積層体1を巻き出し終えた供給ローラ2を再度積層体1を巻く巻芯としてリサイクル可能に設けたとの明記がない点。

4.相違点の判断
〈相違点1〉について
一般に、巻取軸に巻き取られた巻取体の抜き出しを容易にするために、巻取軸の外径を縮径可能にすることは周知技術(必要であれば、特開昭63-306147号公報、実願昭51-58313号(実開昭52-148099号)のマイクロフィルム、特開昭50-21176号公報参照)であって、第2引用例にも「端材となるシート巻取体から巻心筒10の抜き出しを容易にするために巻心筒10を、シート2cを巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成する」技術的事項が、さらに第3引用例にも「端材の抜き出しを容易にするために巻取軸を、端材を巻き込んだ状態時の径から縮径可能に構成する」技術的事項が記載されているものと認める。
そして、第2引用例に記載の「巻心筒10」及び第3引用例に記載の「巻取軸」と本願発明の「保護フィルム巻き取り用巻芯」は、不要となったシート体を巻き取るものである点で共通しているので、上記相違点1に係る事項は、第2引用例及び第3引用例に記載された各技術的事項に示唆されているものと認める。
ここで、第1引用例に記載された技術と第2引用例及び第3引用例に記載された技術は、シート巻き取りに関する技術分野で共通しており、第1引用例に記載の技術に第2引用例及び第3引用例に記載の技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えない以上、第1引用例に記載の発明の「保護フィルム巻き取り用巻芯」に関して、上記第2引用例及び第3引用例に記載の各技術的事項を適用して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
〈相違点2〉について
一般に、それぞれの機能を有するローラを再度それぞれの機能を有するローラとして使用することは普通に考えられることであるので、第1引用例に記載された発明においても、巻取ローラ4を分離された遮光性樹脂フィルム1の巻き込みに使用可能に設け、供給ローラ2を再度積層体1の巻芯として使用することは、何等格別なものではなく、普通の使用形態である。
してみると、上記相違点2に係る「保護フィルム巻き取り用巻芯は保護フィルムの巻き込みに使用可能に設け、感光性エレメントを巻き出し終えた巻芯を再度感光性エレメントを巻く巻芯としてリサイクル可能に設けた」ことは、表現が多少異なるとしても上記第1引用例記載のものの普通の使用形態に過ぎず、格別なものとは認められない。
よって、第1引用例に記載された発明において、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願発明の効果は、第1〜3引用例に記載されたものから、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、第1〜3引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-07 
結審通知日 2004-09-14 
審決日 2004-09-27 
出願番号 特願平4-308661
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 溝渕 良一
山崎 豊
発明の名称 感光性エレメントの巻芯のリサイクル方法及び同方法を使用したラミネート方法並びに装置  
代理人 三好 秀和  

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