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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1107263
審判番号 不服2003-19164  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-01 
確定日 2004-11-17 
事件の表示 特願2000-162235「ネット吊り金具」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月7日出願公開、特開2001-336292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成12年5月31日の出願であって、平成15年8月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成15年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月31日付で手続補正がなされた。

【2】平成15年10月31日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月31日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「ネットを吊り下げるフック部の基端部に取付箇所に止着するための止着部を設け、この止着部を取付箇所にあてがい、止着部の正面側から工具によりネジや釘などの止着部材を取付箇所に止着することで取付箇所に取り付けするネット吊り金具において、前記フック部はU字状のフックに構成し、このフック部の中間から先端側の折り返し部を斜め上方へ向かって折曲することで、前記止着部を前記止着部材によって取付箇所に止着する際の前記工具の作業の支障とならないように、この止着部の真正面を避けた側方位置にフック部を配置し、この止着部に前記取付箇所に対して突き刺す突き刺し部を設け、ハンマーなどで止着部を叩いてこの突き刺し部を取付箇所に突き刺すことで、この取付箇所に止着部を仮止めし得るように構成したことを特徴とするネット吊り金具。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された、特開平11-117539号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】1本の丸棒材を略S字形に曲げて、互いに逆向きの2つのU字形フック部を形成し、互いに逆向きの遊端部の内の一方に、丸棒材を帯板状に加圧成形するとともに取り付け用孔を穿設して成る帯板状取り付け部を構成し、この帯板状取り付け部は、その横断面の巾方向が両U字形フック部を含む仮想平面に対し斜めに傾斜するように構成してある、安全ネット吊り下げ金具。」
「【0007】以上のように構成された吊り下げ金具1は、図1に示すように、フック部4が上向き(正向き)となるように帯板状取り付け部7の外側面7aを梁側面10に当接させて、当該帯板状取り付け部7の取り付け孔9を貫通する釘11により梁側面10に取り付ける。また、図2に示すように、逆向きフック部6が上向き(正向き)となるように、吊り下げ金具1を上下逆向きで前記のように梁側面10に取り付けることもできる。
【0008】何れの場合も、帯板状取り付け部7の外側面7aを梁側面10に当接させたとき、図1Cに示すように吊り下げ金具1は梁側面10から斜め45度に傾斜する姿勢となり、中間直線状部分3は帯板状取り付け部7の正面から横側方にずれて位置することになるので、帯板状取り付け部7の取り付け孔9を利用して固定具11を梁側面10にハンマーで打ち付けるとき、前記中間直線状部分3に邪魔されることはない。」
従って、刊行物には次の発明が記載されていると認められる。
「1本の丸棒材を略S字形に曲げて、互いに逆向きの2つのU字形フック部を形成し、互いに逆向きの遊端部の内の一方に、丸棒材を帯板状に加圧成形するとともに取り付け用孔を穿設して成る帯板状取り付け部を構成し、この帯板状取り付け部は、その横断面の巾方向が両U字形フック部を含む仮想平面に対し斜めに傾斜するように構成することにより、帯板状取り付け部の取り付け孔を利用して固定具を梁側面にハンマーで打ち付けるとき、U字形フック部の中間直線状部分に邪魔されることがない、安全ネット吊り下げ金具。」

(3)対比・判断
補正発明と、上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「帯板状取り付け部」、「固定具」、「ハンマー」、及び「安全ネット吊り下げ金具」は、補正発明の「止着部」、「釘などの止着部材」、「工具」、及び「ネット吊り金具」に相当するから、両者は、
「ネットを吊り下げるフック部の基端部に取付箇所に止着するための止着部を設け、この止着部を取付箇所にあてがい、止着部の正面側から工具により釘などの止着部材を取付箇所に止着することで取付箇所に取り付けするネット吊り金具において、
前記止着部を前記止着部材によって取付箇所に止着する際の前記工具の作業の支障とならないように、この止着部の真正面を避けた側方位置にフック部を配置した、ネット吊り金具。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:フック部が、補正発明は、U字状のフックであって、その中間から先端側の折り返し部を斜め上方へ向かって折曲したことで止着部の真正面を避けた側方位置に配置したものであるのに対し、刊行物記載の発明は、略S字形に曲げた互いに逆向きの2つのU字形フックを形成したものであって、その一端に形成した止着部(帯板状取り付け部)に対し、その横断面の巾方向が両U字形フック部を含む仮想平面に対し斜めに傾斜させたことで止着部の真正面を避けた側方位置に配置させたものである点
相違点2:補正発明は、止着部に取付箇所に対して突き刺す突き刺し部を設け、ハンマーなどで止着部を叩いてこの突き刺し部を取付箇所に突き刺すことで、この取付箇所に止着部を仮止めし得るように構成したものであるのに対し、刊行物記載の発明は、そのような仮止めし得る突き刺し部を有していない点

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
刊行物記載の発明は、上記のとおり、吊り金具を上下逆向きでも取付個所に取り付けることができるように略S字形に曲げて互いに逆向きの2つのU字形フック部を形成したものであるが、上下逆向きで使用することが必要でない場合には、補正発明のように単にひとつのU字状部分を設ければよいことが当業者に明らかであるから、フック部を単なるU字状のフックとすることは、当業者が使用態様等に配慮して適宜なし得る設計変更にすぎない。
また、フック部を止着部の真正面を避けた側方位置に配置させる構成として、補正発明のように、フックの中間から先端側の折り返し部を斜め上方へ向かって折曲した構成とすることも、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。

<相違点2について>
金具の止着部に、ハンマーなどで叩いて取付箇所に突き刺して仮止めし得る突き刺し部を設けることは、原査定においても備考として言及しているように、実願昭59-197678号(実開昭61-116692号)のマイクロフィルム、実公昭61-33148号公報等にみられるとおり、従来周知の技術である。そして、補正発明がそのような周知技術を採用した点に格別の技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜採用し得る設計的事項にすぎない。

そして、補正発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、上記刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成15年10月31日付手続補正が上記のとおり却下されたので、平成15年5月6日付手続補正書により補正された明細書、及び、図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】ネットを吊り下げるフック部の基端部に取付箇所に止着するための止着部を設け、この止着部を取付箇所にあてがい、止着部の正面側から工具によりネジや釘などの止着部材を取付箇所に止着することで取付箇所に取り付けするネット吊り金具において、前記フック部は、前記止着部を前記止着部材によって取付箇所に止着する際の前記工具の作業の支障とならないように、この止着部の真正面を避けた側方位置に配置し、この止着部に前記取付箇所に対して突き刺す突き刺し部を設け、ハンマーなどで止着部を叩いてこの突き刺し部を取付箇所に突き刺すことで、この取付箇所に止着部を仮止めし得るように構成したことを特徴とするネット吊り金具。
【請求項2】(記載を省略)
【請求項3】(記載を省略)」
(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)

(2)引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記【2】(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明から「フック部」の限定事項である「U字状のフックに構成し、このフック部の中間から先端側の折り返し部を斜め上方へ向かって折曲する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が上記【2】(3)に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-06 
結審通知日 2004-09-09 
審決日 2004-10-04 
出願番号 特願2000-162235(P2000-162235)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04G)
P 1 8・ 575- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也南澤 弘明小島 寛史  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 新 井 夕起子
田 中 弘 満
発明の名称 ネット吊り金具  
代理人 吉井 剛  
代理人 吉井 雅栄  

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