• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1107515
審判番号 不服2003-21122  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2004-11-25 
事件の表示 平成 6年特許願第120959号「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月12日出願公開、特開平 7-327131〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年6月2日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「映像信号を画像処理可能な形に変換する映像信号処理部と、
上記映像信号処理部で処理された映像信号が自然画像信号である場合に画像のグラデーションを重視した画像処理を施すことにより、記録装置の記録形式に適した画像データを作成する第1の画像処理部と、
上記映像信号処理部で処理された映像信号がアニメーション画像信号である場合に画像の輪郭の鮮鋭度を重視した画像処理を施すことにより、上記記録装置の記録形式に適した画像データを作成する第2の画像処理部と、
上記映像信号処理部に入力される映像信号が自然画像信号かアニメーション画像であるかによって上記第1、第2の画像処理部の一方を選択する選択手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-274546号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「2.特許請求の範囲
映像信号を印画する印画装置において、入力画像信号に対するフイルタリングを選択するためのデジタルフイルタ選択手段と、前記デジタルフイルタ選択手段により選択された、デジタルフイルタに基ずき入力画像信号を補正する画像処理手段を具備し、前記画像処理手段において処理された画像を印画することを特徴とする印写装置。」(1頁左欄4〜11行)
イ 「[発明が解決しようとする課題]
しかし従来例では、アナログ的なロ-パスフイルタや、高域強調であるために回路動作かく温度、湿度etcにより)アナログ的に変動するという問題が有り、また入力画像に応じた画質向上のための処理を外部より選択することができないという問題を有していた。
本発明は上記のような問題を解決するもので、その目的とするところはデジタルフイルタを外部より選択可能とすることにより、画像に応じてデジタルフイルタをユ-ザ-が選択でき、且つ安定した画像処理をおこなうことができる記録装置を提供することにある。」(1頁右欄3〜15行)
ウ 「第2図は本発明によるシステムの概略図である。201はRGB映像信号、202は水平同期信号、203は垂直同期信号、204はRGB選択回路、205はA/D変換器、206は数ライン分のラインメモリ、207はデジタルフイルタ処理部、2071はスム-ジングフイルタ、2072はメジアンフイルタ、2073はラプラシアンを用いた高域強調フイルタ、208はサンプリングクロツク発生部、209はメモリアドレス制御部、210は中央処理部CPU、211はデジタルフイルタ選択スイツチ、212はガンマテ-ブルを有する印画処理部、213は駆動回路を有するラインヘツドである。
入力されたRGB信号201はRGB選択回路204に入力され、印画順に従つて1色ずつ選択された後、A/D変換器205に入力される。たとえば、印画順がイエロ-、シアン、マゼンタであるとすれば、色選択はそれぞれの補色であるブル-、レツド、グリ-ンの順になる。また、水平同期信号202と垂直同期信号203はCPU210と印画処理部212に入力される。CPU210は印画開始走査線を認識し、サンプリングクロツグ発生部208とメモリアドレス制御部209に、制御信号を送る。サンプリングクロツク発生部208はCPU210の制御信号にしたがつて、サンプリングクロツクを発生させ、A/D変換器205に送る。A/D変換器205においてデジタルデ-タ化された映像信号は、ラインメモリ206にいったん書き込まれる。ラインメモリ206の書込制御信号は、アドレス制御部209により行われる。一方、CPU210はデジタルフイルタ選択スイツチ211を認識し、外部より選択されたデジタルフイルタに従つて、デジタルフイルタ処理部207内の2071から2073までのいずれかのフイルタ、または複数のフイルタ処理を実行するようにデジタルフイルタ処理部207に制御信号を送る。」(2頁左上欄10行〜同左下欄6行)
これら記載事項及び第2図によると、引用刊行物には「映像信号を印画する印画装置において、入力画像信号に対するフイルタリングを選択するためのデジタルフイルタ選択手段と、前記デジタルフイルタ選択手段により選択された、デジタルフイルタに基づき入力画像信号を補正する画像処理手段を具備し、前記画像処理手段において処理された画像を印画することを特徴とする印画装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。引用発明の目的は、「画像に応じてデジタルフイルタをユ-ザ-が選択でき、且つ安定した画像処理をおこなうこと」(上記2.イ参照。)にあるから、これを「画像処理装置」としてとらえることができ、してみるとこの画像処理装置の出力は印画されるためのものであるから「記録装置の記録形式に適した画像データを作成する」ことは自明であり、また、引用発明は映像信号を入力するものであるからその後の画像処理のために「映像信号を画像処理可能な形に変換する映像信号処理部」を有することも自明である。
すると、両者は、
「映像信号を画像処理可能な形に変換する映像信号処理部と、上記映像信号処理部で処理された映像信号に画像処理を施すことにより、記録装置の記録形式に適した画像データを作成する画像処理手段と、画像処理手段の画像処理を選択する選択手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。」
である点で一致しているが、下記の点で相違する。

(相違点)
本願発明の画像処理手段が、映像信号処理部で処理された映像信号が自然画像信号である場合に画像のグラデーションを重視した画像処理を施す第1の画像処理部と映像信号処理部で処理された映像信号がアニメーション画像信号である場合に画像の輪郭の鮮鋭度を重視した画像処理を施す第2の画像処理部からなるのに対し、引用発明の画像処理手段は選択されたデジタルフィルタに基づき入力画像信号を補正するものであり、これに対応して、本願発明の選択手段が、映像信号処理部に入力される映像信号が自然画像信号かアニメーション画像であるかによって上記第1、第2の画像処理部の一方を選択する選択手段であるのに対し、引用発明の選択手段は画像処理手段のデジタルフィルタを選択するものである点。

4.当審の判断
上記(相違点)について検討すると、引用発明は、入力画像に応じた画質向上のための処理を外部より選択することができないという問題に対処するためになされたものであり(上記2.イ参照。)、引用発明において入力画像に応じて画像処理を選択することが示唆されていると言える。してみると、本願出願前に、写真については階調性(グラデーション)を重視し、線画については鮮鋭度を重視した処理を行うことが当業者の周知技術であった(必要ならば、特開平3-219774号公報2頁左下欄4行〜同右下欄6行参照。)ことを考慮すれば、引用発明を具体化して、入力画像が写真か線画であるかによって画像処理を選択すべく、引用発明の選択手段及び画像処理手段を設計することは当業者が容易になし得ることである。
なお、上記周知技術における「写真」は人工的に作画されるものではなく、自然の被写体を「写す」ものであることは自明のことであるから本願発明の「自然画」に相当するものである。また、上記周知技術における「線画」としては、直接的には文書中における「イラスト」が一般的であるが、これを動画化したものは「アニメーション」と言えるから、映像信号すなわち動画を対象とした引用発明において、これを「アニメーション」と言い換えることは表現上の問題にすぎない。
そして、本願発明の「アニメーション」が動画化したイラストを排除していると認めるべき理由もないから、上記のとおり引用発明を周知技術の考慮の下に具体化することにより、本願発明が容易に得られるというべきである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-22 
結審通知日 2004-09-28 
審決日 2004-10-12 
出願番号 特願平6-120959
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
深沢 正志
発明の名称 画像処理装置  
代理人 國分 孝悦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ