ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K |
---|---|
管理番号 | 1107593 |
審判番号 | 不服2001-3321 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-02-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-03-06 |
確定日 | 2004-11-25 |
事件の表示 | 平成3年特許願第192331号「ヘッドアップディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成5年2月19日出願公開、特開平5-38966号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】本願発明 本願は、平成3年7月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年2月3日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 表示信号出力手段から出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段と前記表示面から出射した情報表示光を所定の方向に投光する光学部材とを備えた情報投光装置と、運転手の前方に設けられ、前方の外界情景を運転手が視認できるように外界情景光を前方から後方に透過させるとともに、前記情報投光装置から投光された情報表示光を運転手が視認できる方向に反射または回折するコンバイナと、を備えた鉄道車両用のヘッドアップディスプレイにおいて、 前記表示信号出力手段は、鉄道車両の速度制限区間の位置およびその区間の制限速度に関する制限速度情報を出力する制限速度情報出力手段と、鉄道車両の現在位置情報を出力する現在位置検出手段と、前記制限速度情報および現在位置情報に基づいて前記鉄道車両の位置が速度制限区間の140〜200m手前の位置に来たときに前記表示面に前記速度制限区間の制限速度を表示するための制限速度表示信号を出力する表示情報信号作成手段とを備えたことを特徴とする鉄道車両用のヘッドアップディスプレイ。」 【2】引用例の記載事項 これに対し、当審における拒絶の理由で引用した実願平1-114355号(実開平3-52769号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。 ・引用例1; 「ところで、鉄道車両または路線バス等においては、操縦者は現在走行している場所の制限速度を認識して安全運転を行う必要がある。」(明細書第4頁第14〜16行) 「本考案は、前述の問題点に鑑み、操縦者が外界の状況に注意を向けたまま、実際の走行速度と制限時速の差を容易に認識できるようにすることを課題とする。…(中略)… 前記課題を解決するために、本考案のヘッドアップディスプレイは、第1図(クレーム対応図)に示す構成を備えている。 第1図に示すヘッドアップディスプレイは、表示信号出力手段Sから出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段Dと前記表示面から出射した情報表示光Lを所定の方向に投光する光学部材Aとを備えた情報投光装置Kと、操縦者の前方に傾斜して設けられ、前方の外界の場景を操縦者が視認できるように前記外界からの光線を前方から後方に透過させるとともに、前記情報投光装置から投光された情報表示光を操縦者が視認できる方向に反射または回折するコンバイナCと、を備えた乗物用のヘッドアップディスプレイにおいて、前記表示信号出力手段Sは、現在走行している場所の制限速度を検出する手段S1と、実際の走行速度を検出する手段S2と、前記制限速度検出手段S1および走行速度検出手段S2からの入力信号に応じて、前記制限速度と走行速度との差を容易に認識できるように表示する情報表示信号を出力する表示信号出力回路S3とを備えたことを特徴とする。」(同第6頁第11行〜第8頁第1行) 「前記制限速度検出手段S1は、図示は省略するが、線路に沿って配設された地上子と、この地上子を電車が通過するときにその地上子から位置情報を受信する車上子と、その受信信号に対応する制限速度情報を記録した制限速度メモリとを備えている。」(同第11頁第6〜11行) 以上の記載、及び、第1〜3図の記載からみて、引用例1には、 「表示信号出力手段Sから出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段Dと前記表示面から出射した情報表示光Lを所定の方向に投光する光学部材Aとを備えた情報投光装置Kと、操縦者の前方に傾斜して設けられ、前方の外界の場景を操縦者が視認できるように前記外界からの光線を前方から後方に透過させるとともに、前記情報投光装置Kから投光された情報表示光Lを操縦者が視認できる方向に反射または回折するコンバイナCとを備えた鉄道車両用のヘッドアップディスプレイにおいて、 前記表示信号出力手段Sは、現在走行している場所の制限速度を検出する手段S1と、実際の走行速度を検出する手段S2と、前記制限速度検出手段S1および走行速度検出手段S2からの入力信号に応じて、前記制限速度と走行速度との差を容易に認識できるように表示する情報表示信号を出力する表示信号出力回路S3とを備えた鉄道車両用のヘッドアップディスプレイ」、 という発明が記載されているものと認められる。 【3】対比・判断 (対比) そこで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「操縦者」、「外界からの光線」は、それぞれ、本願発明の「運転手」、「外界情景光」に相当するから、両者は、 「表示信号出力手段から出力される表示信号に応じた情報が表示される表示面を有する光学的情報表示手段と前記表示面から出射した情報表示光を所定の方向に投光する光学部材とを備えた情報投光装置と、運転手の前方に設けられ、前方の外界情景を運転手が視認できるように外界情景光を前方から後方に透過させるとともに、前記情報投光装置から投光された情報表示光を運転手が視認できる方向に反射または回折するコンバイナと、を備えた鉄道車両用のヘッドアップディスプレイ」、 で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 本願発明の「表示信号出力手段」は、鉄道車両の速度制限区間の位置およびその区間の制限速度に関する制限速度情報を出力する制限速度情報出力手段と、鉄道車両の現在位置情報を出力する現在位置検出手段と、前記制限速度情報および現在位置情報に基づいて前記鉄道車両の位置が速度制限区間の140〜200m手前の位置に来たときに前記表示面に前記速度制限区間の制限速度を表示するための制限速度表示信号を出力する表示情報信号作成手段とを備えたものであるのに対し、 引用例1に記載された発明の「表示信号出力手段」は、現在走行している場所の制限速度を検出する手段S1と、実際の走行速度を検出する手段S2と、前記制限速度検出手段S1および走行速度検出手段S2からの入力信号に応じて、前記制限速度と走行速度との差を容易に認識できるように表示する情報表示信号を出力する表示信号出力回路S3とを備えたものである点。 (相違点の検討) そこで、前記相違点について、以下検討する。 鉄道線路の脇に設置される鉄道車両の「速度制限標識」は、当該標識が設置された地点から当該標識に示される制限速度で走行しなければならないことを鉄道車両の運転手に知らせるものであることは、本願出願前、当業者にとって周知・慣用の事項である。 したがって、鉄道車両の制限速度は、速度制限区間の開始位置より手前の地点で運転手に前もって認識させ、確認させる必要のあることは、当業者にとって技術常識であり、それゆえ、速度制限区間の開始位置に達した地点において、突如、運転者に制限速度を初めて知らせるものでは決してないことも、当業者が当然に予測し得る程度の技術常識である。 なお、運転手に何らかの対応をさせる地点よりも手前の場所で、運転手に当該地点を認識させ、確認させることは、例えば、特開昭63-163210号公報に記載されるように、自動車のカーナビゲーションシステムにおいて、交差点での直進や右左折を指示する場合には、交差点の一定距離だけ手前の地点で直進や右左折を前もって運転手に知らせるものであり、当該交差点に達した時点で、突如、運転手に直進や右左折を知らせるものではないことが周知・慣用の手段であること等を考慮してみれば、ごく普通の技術常識にすぎない。 それゆえ、これらの技術常識に鑑みれば、刊行物1記載の発明のヘッドアップディスプレイにおいて、(現在走行している地点の制限速度を表示する外に、)鉄道車両の位置が速度制限区間の手前の適当な位置に来た時に、制限速度を表示するように構成することは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。 そして、上記速度制限表示を速度制限区間のどの程度手前の位置で表示するかは、車両の運転手が速度制限区間を認識、確認した地点から車両にどのような加減速操作を通常行うか、等によって決定されるものと解されるから、当該「手前の位置」を140〜200m手前の位置にすることは、当業者が実施に際して通常行う実験や体験等を通して、必要に応じて適宜決定し得る設計事項にすぎないものと認められる。 (効果について) そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明及び上記技術常識から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-09-24 |
結審通知日 | 2004-09-28 |
審決日 | 2004-10-12 |
出願番号 | 特願平3-192331 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小椋 正幸、小松 竜一 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 亀井 孝志 |
発明の名称 | ヘッドアップディスプレイ |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 喜多 俊文 |