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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1107657
審判番号 不服2002-23671  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-09 
確定日 2004-11-29 
事件の表示 平成 7年特許願第176545号「遠隔操作装置及び撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月10日出願公開、特開平 9- 9365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年6月19日の出願であって、平成14年7月26日付けの拒絶理由の通知がされ、平成14年11月1日付けで拒絶の査定がなされたところ、拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、本願明細書について、平成14年12月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2.手続補正について
平成14年12月9日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)について、以下のとおり決定する。

[結論]
平成14年12月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件手続補正の内容
本件手続補正は、特許法第17条の2第1項第3号に該当する補正であって、本件手続補正により、
(1)特許請求の範囲については以下のとおり補正するものである。
「【請求項1】
被写体の像を映像信号に変換する撮像装置から送信される上記映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示すると共に、上記撮像装置の所定の動作を制御する制御信号を上記撮像装置に送信することにより上記撮像装置の上記所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置において、
上記遠隔操作装置は、
当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、
上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、
上記動き制御信号を上記撮像装置に送信する送信手段と
を具え、上記撮像装置は上記動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整する
ことを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項2】 省略
【請求項3】
被写体の像を映像信号に変換する撮像装置から送信される上記映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示すると共に、上記撮像装置の所定の動作を制御する制御信号を上記撮像装置に送信することにより上記撮像装置の上記所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置と、上記遠隔操作装置から送信される上記制御信号に基づいて上記所定の動作を実行する上記撮像装置とを有する撮像システムにおいて、
上記遠隔操作装置は、
当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、
上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、
上記動き制御信号を上記撮像装置に送信する送信手段と
を具え、
上記撮像装置は、
上記動き制御信号に応じて上記撮像装置の撮像する方向及び画角を変更する撮像条件変更手段
を具え、上記撮像条件変更手段は、上記撮像装置の撮像する方向及び画角を上記動き制御信号に応じて変更するようにした
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項4】 省略」
(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

(2)発明の詳細な説明については以下のとおり補正するものである。
a)段落番号【0009】について
補正前の「【課題を解決するための手段】 かかる課題を解決するため本発明においては、遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、動き制御信号を送信する送信手段とを有し、上記制御対象物を上記動き制御信号に応じて動かすようにした。」という記載を、本件手続補正により「課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため本発明においては、被写体の像を映像信号に変換する撮像装置から送信される映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示すると共に、撮像装置の所定の動作を制御する制御信号を撮像装置に送信することにより撮像装置の所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置において、遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、動き制御信号を撮像装置に送信する送信手段とを設け、撮像装置は動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整するようにした。」と補正する。
b)段落番号【0010】について
補正前の「また本発明においては、遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、動き制御信号を撮像装置に送信する送信手段とを有し、撮像装置は、動き制御信号に応じて撮像装置の撮像条件を変更する撮像条件変更手段を有し、撮像条件変更手段は遠隔操作装置より送信される動き制御信号に応じて撮像装置の撮像条件を変更するようにした。」という記載を、本件手続補正により「また本発明においては、被写体の像を映像信号に変換する撮像装置から送信される映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示すると共に、撮像装置の所定の動作を制御する制御信号を撮像装置に送信することにより撮像装置の所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置と、遠隔操作装置から送信される制御信号に基づいて所定の動作を実行する撮像装置とを有する撮像システムにおいて、遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、動き制御信号を撮像装置に送信する送信手段とを設け、撮像装置は、動き制御信号に応じて撮像装置の撮像する方向及び画角を変更する撮像条件変更手段を有し、撮像条件変更手段は、撮像装置の撮像する方向及び画角を動き制御信号に応じて変更するようにした。」と補正する。
c)段落番号【0011】について
補正前の「【作用】 遠隔操作装置の動きを検出し、検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成して当該動き制御信号を制御対象物に送信するようにしたことにより、制御対象物を遠隔操作装置の動きに応じて遠隔操作することができる。」という記載を、本件手続補正により「遠隔操作装置の動きを検出し、検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成して当該動き制御信号を撮像装置に送信するようにしたことにより、撮像装置は動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整することができる。」と補正する。
d)段落番号【0012】について
補正前の「遠隔操作装置の動きに応じた動き制御信号を撮像装置の撮像条件変更手段に送信する。撮像条件変更手段は受信した動き制御信号に応じて撮像装置の撮像条件を変更する。これにより、遠隔操作装置の動きに応じて撮像装置の撮像条件を変更することができる。」という記載を、本件手続補正により「遠隔操作装置の動きに応じた動き制御信号を撮像装置の撮像条件変更手段に送信する。撮像条件変更手段は、受信した動き制御信号に応じて撮像装置の撮像する方向及び画角を変更する。これにより、撮像装置の撮像する方向及び画角を動き制御信号に応じて変更することができる。」と補正する。
e)段落番号【0038】について
補正前の「【発明の効果】 上述のように本発明によれば、遠隔操作装置の動きを検出し、検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成して当該動き制御信号を制御対象物に送信するようにしたことにより、制御対象物を遠隔操作装置の動きに応じて遠隔操作することができ、かくして操作性が一段と向上した遠隔操作装置を実現することができる。」という記載を、本件手続補正により「【発明の効果】上述のように本発明によれば、遠隔操作装置の動きを検出し、検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成して当該動き制御信号を撮像装置に送信するようにしたことにより、撮像装置は動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整することができ、かくして操作性が一段と向上した遠隔操作装置を実現することができる。」と補正する。

2.本件手続補正の適否の検討
(1)請求項1の補正について
請求項1の補正は、「制御対象物」について「被写体の像を映像信号に変換する撮像装置」、「上記撮像装置は上記動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整する」と補正し、「制御信号」について「撮像装置の所定の動作を制御する制御信号」と補正し、また、「送信される上記映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示する」という事項を付加するものである。そして、上記各補正については、本願の願書に最初に添付した明細書に「遠隔操作装置2の映像/音声信号受信部2Cは、カメラ一体型VTR3から赤外線信号として送信される映像信号及び音声信号を受信し、受信した映像信号を液晶デイスプレイ2Aに表示すると共に、音声出力部から音声信号を出力する。」(段落番号【0022】)、「一方、図2(B)に示すように、遠隔操作装置2から送信される赤外線信号としての動き制御信号SCONTは姿勢制御装置3に設けられた受信部3Aで受信され、この動き制御信号SCONTは姿勢制御装置3のマイクロコンピユータ(以下、これをマイコンと呼ぶ)3Bに入力される。マイコン3Bは入力された動き制御信号SCONTを解析し、当該動き制御信号SCONTがカメラ一体型VTR4の撮像方向を変更するための制御信号であると判断した場合、解析結果に応じた駆動信号SD を生成し姿勢制御装置3の駆動部3Cに送出する。駆動部3Cはこの駆動信号SD に基づいてカメラ一体型VTR4を回動駆動する。これにより、カメラ一体型VTR3は遠隔操作装置2の動きに応じて回動する」(段落番号【0023】)の記載があり、そして、前記各補正は、「制御対象物」、「制御信号」、「遠隔操作装置」、「送信手段」、「撮像装置」について限定するものであるから、これらの補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)請求項3について
請求項3の補正は、撮像条件変更手段について「撮像装置の撮像条件を変更する撮像条件変更手段」とあるのを「撮像装置の撮像する方向及び画角を変更する撮像条件変更手段」と補正するものであり、そして、上記補正については、本願の願書に最初に添付した明細書に「一方、図2(B)に示すように、遠隔操作装置2から送信される赤外線信号としての動き制御信号SCONTは姿勢制御装置3に設けられた受信部3Aで受信され、この動き制御信号SCONTは姿勢制御装置3のマイクロコンピユータ(以下、これをマイコンと呼ぶ)3Bに入力される。マイコン3Bは入力された動き制御信号SCONTを解析し、当該動き制御信号SCONTがカメラ一体型VTR4の撮像方向を変更するための制御信号であると判断した場合、解析結果に応じた駆動信号SD を生成し姿勢制御装置3の駆動部3Cに送出する。駆動部3Cはこの駆動信号SD に基づいてカメラ一体型VTR4を回動駆動する。これにより、カメラ一体型VTR3は遠隔操作装置2の動きに応じて回動する」(段落番号【0023】)、「またマイコン3Bは、受信部3Aで受信した動き制御信号SCONTがカメラ一体型VTR4の画角を変更するための信号であると判断した場合、解析結果に応じた画角制御信号STWを直接カメラ一体型VTR4に送出する。カメラ一体型VTR4はこの画角制御信号STWに応じて画角を変更する。」(段落番号【0024】)の記載があり、そして、前記補正は、補正前の発明を特定するために必要な事項である「撮像条件変更手段」について限定するものであるから、この補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、本件手続補正における特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)発明の詳細な説明について
上記a)ないしe)の補正は、特許請求の範囲の補正に整合させるためのものと認められるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(4)まとめ
そこで、本件手続補正に係る上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.独立特許要件についての検討
(1)刊行物に記載された発明
a)原査定の拒絶理由において提示され、本願の出願の日前である平成6年3月25日に頒布された特開平6-86151号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「撮像システム及びそれに用いる撮像用機器」の発明に関し図面の記載とともに以下の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ビデオカメラ、カメラ一体型ビデオテープレコーダ(以下、カムコーダという)、電子スチルカメラ等の撮像装置に関するものである。」(2頁左欄42行ないし46行)、
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のビデオカメラにおいては、ビューファインダはビデオカメラ本体と一体に設けられているため、特にプロ用ビデオカメラやカムコーダの場合、ユーザは撮影時にビューファインダに表示された対象物の映像を観察しながら重たいビデオカメラやカムコーダで対象物を追いかけており、かなりの肉体労働を強いられていた。例えば、場合によっては2〜3人がかりでカメラ、電源コードを運びながらの撮影も行われており、機動性が妨げられ労力も必要であった。」(2頁右欄15行ないし25行)、
「【0004】本発明は、前記問題点を解決するために、撮像装置本体とビューファインダを分離し、ビューファインダをメガネ状に構成し、ユーザの視野の動きを撮像装置本体に伝えることにより、撮像装置本体を持つことなく操作を行うことのできる撮像システム及びそれに用いる撮像用機器を提供することを目的とする。」(2頁右欄26行ないし31行)、
「【0005】【課題を解決するための手段】前記問題点を解決するために、本発明は、撮像装置と、撮像装置と分離され、かつ該撮像装置と信号の送受を行うメガネ式のビューファインダ装置と、撮像装置を載置し、かつ水平方向及び垂直方向の角度が変位可能な可動部材とを備え、撮像装置からのビデオ信号をビューファインダ装置に送信すると共に、ビューファインダ装置に設けられた角速度センサによりビューファインダ装置の水平方向及び垂直方向の動きを検出し、撮像装置又は可動部材に設けられた角速度センサにより撮像装置の動きを検出し、ビューファインダ装置の動きと前記撮像装置の動きが1:1となるように可動部材の水平方向及び垂直方向の角度を変位させるように構成した。ここで、メガネ式のビューファインダ装置の「メガネ式」とは、通常のメガネだけではなく、スキー用のゴーグル、レーサー用のヘルメット等、肉眼に対向する部位に光学系を備えるメガネに類似したものも含む。」(2頁右欄32行ないし49行)、
「【0011】図1(c)に示されているように、ビューファインダ装置3は表示部32を片目にセットしたメガネに似た構造をしている。ビデオカメラ1のアンテナ11から送信された信号はビューファインダ装置3のアンテナ31で受信される。受信された信号は表示部32で光信号に変換され、映像となる。表示部32に表示された映像を観察しながらビデオカメラ1の撮影対象物を追いかければ、首が自然と左右上下に回転する。その動きをヘルメット33の先端につけた水平方向角速度センサ34と垂直方向角速度センサ35で検出する。その検出信号はアンテナ31からワイアレスでビデオカメラ1に送信される。この検出信号はビデオカメラ1のアンテナ11で受信され、ビデオカメラ1に内蔵されたコントローラにより水平方向角速度センサ25、垂直方向角速度センサ26の出力信号と照合され、ビューファインダ装置3の動きとビデオカメラ1の動きが1:1になるように第1〜第3部材22〜24の動きを制御する信号が作成される。」(3頁右欄10行ないし27行)、
「【0016】ビューファインダ装置3の水平方向角速度センサ34及び垂直方向角速度センサ35は、それぞれ水平方向角速度センサ25及び垂直方向角速度センサ26と同様に構成されており、各々の出力がコントローラ38に供給される。コントローラ38はマイコンで構成されており、水平方向角速度センサ34及び垂直方向角速度センサ35の出力を基に、ビューファインダ装置3の水平方向及び垂直方向の動きを計算し、所定のフォーマットの信号に変換して伝送回路37に供給する。伝送回路37はコントローラ38の出力を変調し、アンテナ31からビデオカメラ1へ送信する。リモコン操作部36にはビデオカメラ1の水平方向角度及び垂直方向角度を設定するためのボタン、レンズ系12のズーム制御やフォーカス制御を行うためのボタン、撮像素子14の電子シャッタ制御を行うためのボタン等が設けられている。これらのボタンにより入力されたコマンドはコントローラ38により識別されて所定のフォーマットの制御信号に変換され、伝送回路37により変調され、アンテナ31からビデオカメラ1へ送信される。表示部32は液晶ディスプレイにより構成されており、ビデオカメラ1から送信され、アンテナ31により受信され、伝送回路37により復調されたビデオ信号を光信号に変換する。」(4頁左欄19行ないし41行)。
これらの記載およびこの分野の技術常識によれば、刊行物1には、
「被写体の像を映像信号に変換するビデオカメラ1から送信される上記映像信号を受信し当該映像信号を表示部32に表示すると共に、上記ビデオカメラ1の所定の動作を制御する制御信号を上記ビデオカメラ1に送信することにより上記ビデオカメラ1の上記所定の動作を遠隔操作するビューファインダ装置3において、
上記ビューファインダ装置3は、
当該ビューファインダ装置3の動きを検出する水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35と、
ズーム(画角)制御の調整を行うためのボタンを備えたリモコン操作部36と、
上記水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出された上記ビューファインダ装置3の動きを計算すると共に、リモコン操作部36のボタンにより入力されたコマンドを識別し、所定のフォーマットの制御信号に変換するコントローラ38と、
上記フォーマット信号を上記ビデオカメラ1に送信する伝送回路37と
を具え、上記ビデオカメラ1は上記フォーマット信号に応じて撮像する方向を調整する
ビューファインダ装置。」の発明(以下、「引用発明A」という。)が開示されているものと認められる。

b)同じく、本願の出願の日前である平成5年8月27日に頒布された特開平5-219580号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「リモートコントロール装置およびそれを用いた電子機器装置」の発明に関し図面の記載とともに以下の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は電子機器の遠隔操作に有効なリモートコントロール装置に関する。」(2頁左欄17行ないし19行)、
「【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来のリモートコントロール装置は機能の数だけボタンが必要で、そのために、リモートコントロール装置の小型化が簡単にできなかったりする。また、ボタンが多いと使い勝手が悪い場合がある。」(2頁右欄22行ないし27行)、
「【0007】本発明は上記課題に留意し、ボタンが少なく、操作しやすいリモートコントロール装置とそのリモートコントロール装置を用いた電子機器装置を提供することを目的とする。」(2頁右欄28行ないし31行)、
「【0008】【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のリモートコントロール装置は、リモートコントロール装置本体の傾きや、方向を検出する姿勢検出部と、この姿勢検出部の出力によって複数の異なる命令信号を発生することのできる命令信号発生部と、この命令信号発生部の出力に応じて信号を発信できる発信部を備えた構成を有している。」(2頁右欄32行ないし39行)、
「【0009】また、自分の移動した変化方向や移動の速さを検出する動き検出部と、動き検出部の出力によって異なる複数の命令信号を発生することのできる命令信号発生部と、この命令信号発生部の出力に応じて信号を発信できる発信部を備えた構成を有している。」(2頁右欄40行ないし44行)、
「【0011】【作用】上記構成のリモートコントロール装置は、姿勢検出部がリモートコントロール本体の傾きやその方向を検出し、その姿勢に対応し、予め設定された複数の異なる信号から選択された信号が命令信号発生部から発生し、それが発信部から空間信号または有線で出力されるものである。また、動き検出部はリモートコントロール本体の姿勢の変化を検出し、その動きに対応した予め設定された信号が命令信号発生部から発生し、それが発信部から空間信号または有線で出力されるものである。これにより、リモートコントロール装置本体の方向や動きで命令を選択することができるので、リモコンのスイッチを少なくすることが可能であり、また、操作性の向上を同時に図ることのできるものである。」(2頁右欄49行ないし3頁左欄12行)。

(2)対比
本願補正発明と引用発明Aとを対比すると、
a)引用発明Aにおける「ビデオカメラ1」、「ビューファインダ装置3」、「水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35」、及び「伝送回路37」は、本願補正発明における「撮像装置」、「遠隔操作装置」、「動き検出手段」、及び「送信手段」に相当することは明かである。
b)引用発明Aは、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出された上記ビューファインダ装置3の動きを計算し、所定のフォーマット信号に変換するコントローラ38を備えているから、「上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」を備える点で本願補正発明と一致することは明かである。
したがって、本願補正発明と引用発明Aとは以下の点で一致ないし相違する。
[一致点]
被写体の像を映像信号に変換する撮像装置から送信される上記映像信号を受信し当該映像信号を表示部に表示すると共に、上記撮像装置の所定の動作を制御する制御信号を上記撮像装置に送信することにより上記撮像装置の上記所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置において、
上記遠隔操作装置は、
当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、
上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段と、
上記動き制御信号を上記撮像装置に送信する送信手段と
を具え、上記撮像装置は上記動き制御信号に応じて撮像する方向を調整する遠隔操作装置。
[相違点]
ア)動き制御信号を、本願補正発明は「動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段」によって生成するのに対して、引用発明Aは「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」により生成するものの、動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成するか否か明確でない点。
イ)本願補正発明は、「動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整する」のに対して、引用発明Aは、動き制御信号に応じて撮像する方向だけを調整しており、画角の調整(ズーム制御)はリモコン操作部に設けたボタンにより行うようにしている点。

(3)検討
そこで、相違点ア)について検討すると、
引用発明Aは、コントローラ38により、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出されたビューファインダ装置3の動きを計算し、所定のフォーマット信号に変換するものであるから、コントローラ38は、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35の動きを解析し、解析結果に応じた制御信号を生成しているとみるのが自然であり、そうすると、引用発明Aの「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」は、実質的には「動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段」であるとみることができる。そこまでいえない場合であっても、引用発明Aのコントローラ38は、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出されたビューファインダ装置3の動きを計算するものであるから、動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成することは当業者であれば容易に想到し得る程度のものである。
次に、相違点イ)について検討すると、刊行物2には、遠隔操作装置(リモートコントロール装置)のボタンで行っていた操作を、遠隔操作装置本体の傾きや、方向を検出する(動きを検出する)ことによって行う技術が開示されているものと認められ、この技術を画角の調整に適用することに格別の困難性はないから、引用発明Aにおいて「動き制御信号に応じて撮像する方向及び画角を調整する」ようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定により、出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件手続補正における請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであるから、本件手続補正は、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定に基づき却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3. 本願発明について
1.本願発明
平成14年12月9日付けでした手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】制御対象物の所定の動作を制御する制御信号を当該制御対象物に送信することにより上記制御対象物の所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置において、
上記遠隔操作装置は、
当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、
上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段と、
上記動き制御信号を上記制御対象物に送信する送信手段と
を具え、上記制御対象物は上記動き制御信号に応じて動作する
ことを特徴とする遠隔操作装置。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示され、本願の出願の日前である平成6年3月25日に頒布された特開平6-86151号公報(上記刊行物1)には、第2.3.(1)に前示した記載があり、これらの記載およびこの分野の技術常識を考慮すれば、刊行物1には、
「被写体の像を映像信号に変換するビデオカメラ1の所定の動作を制御する制御信号を当該ビデオカメラ1に送信することにより上記ビデオカメラ1の所定の動作を遠隔操作するビューファインダ装置3において、
上記ビューファインダ装置3は、
当該ビューファインダ装置3の動きを検出する水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35と、
上記水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出された上記ビューファインダ装置3の動きを計算し、所定のフォーマットの制御信号に変換するコントローラ38と、
上記フォーマット信号を上記ビデオカメラ1に送信する伝送回路37と
を具え、上記ビデオカメラ1は上記フォーマット信号に応じて撮像する方向を調整する ビューファインダ装置。」の発明(以下、「引用発明B」という。)が開示されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明Bとを対比すると、
a)引用発明Bにおける「被写体の像を映像信号に変換するビデオカメラ1」、「ビューファインダ装置3」、「水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35」、及び「伝送回路37」は、それぞれ本願発明の「制御対象物」、「遠隔操作装置」、「動き検出手段」、及び「送信手段」に相当することは明かである。
b)引用発明Bは、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出されたビューファインダ装置3の動きを計算し、所定のフォーマット信号に変換するコントローラ38を備えているから、「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」を備える点で本願発明と一致することは明かである。
したがって、本願発明と引用発明Bとは以下の点で一致ないし相違する。
[一致点]
制御対象物の所定の動作を制御する制御信号を当該制御対象物に送信することにより上記制御対象物の所定の動作を遠隔操作する遠隔操作装置において、
上記遠隔操作装置は、
当該遠隔操作装置の動きを検出する動き検出手段と、
上記動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段と、
上記動き制御信号を上記制御対象物に送信する送信手段と
を具え、上記制御対象物は上記動き制御信号に応じて動作する
遠隔操作装置。
[相違点]
動き制御信号を、本願発明は「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段」によって生成するのに対して、引用発明Bは「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」により生成するものの、動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成するか否か明確でない点。

4. 検討
そこで、相違点について検討すると、
引用発明Bは、コントローラ38により、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出されたビューファインダ装置3の動きを計算し、所定のフォーマット信号に変換するものであるから、コントローラ38は、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35の動きを解析し、解析結果に応じた制御信号を生成しているとみるのが自然であり、そうすると、引用発明Bの「動き検出手段で検出された遠隔操作装置の動き情報に応じた動き制御信号を生成する手段」は、実質的には「動き検出手段で検出された上記遠隔操作装置の動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成する解析手段」であるとみることができる。そこまでいえない場合であっても、引用発明Bのコントローラ38は、水平方向角速度センサ34、及び垂直方向角速度センサ35で検出されたビューファインダ装置3の動きを計算するものであるから、動き情報を解析し、当該解析結果に応じた動き制御信号を生成することは当業者であれば容易に想到し得る程度のものである。
なお、出願人は、意見書において、「本願発明の特徴は、第1に、『遠隔操作装置の動きを検出して得られる動き情報を解析し、当該解析結果に応じて動き制御信号を生成する』点にあり」、「このように本願発明の上記第1の特徴点では、『遠隔操作装置の動きを検出して得られる動き情報を解析し、当該解析結果に応じて、カメラ一体型VTR4の動きを遠隔操作するのみならず、画角調整のような撮影条件の変更をも行うための動き制御信号を生成する』ようになされている。このような相違に基づいて、本願発明の上記第1の特徴点によれば、『遠隔操作装置の動きを検出して得られる動き情報を解析することにより、当該解析結果に応じて生成する動き制御信号を、単に制御対象物の動きを遠隔操作装置の動きに直接対応させる内容のみならず、制御対象物において制御可能なその他の動きに対応させる内容に設定することができる』といつた効果を得ることができる。」と主張するが、このような効果は、動き制御信号として、画角調整のような撮影条件の変更を行う制御信号を用いた場合のものであって、本願発明は、そのような動き制御信号を、発明を特定するために必要な事項としていないから、かかる主張を採用することはできない。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-05 
結審通知日 2004-10-08 
審決日 2004-10-19 
出願番号 特願平7-176545
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 野元 久道
有泉 良三
発明の名称 遠隔操作装置及び撮像システム  
代理人 田辺 恵基  

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