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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03M
管理番号 1107726
審判番号 不服2003-7503  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-01 
確定日 2004-12-02 
事件の表示 平成 7年特許願第280138号「データ通信装置、符号化装置及び復号化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-130263〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月27日の出願であって、その請求項2に係る発明は、平成16年7月12日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「タイムフレーム当たり一定のデータ量が出力されるように音声データを圧縮処理する音声圧縮部と、画像データをほぼ一定の圧縮率によって圧縮処理する画像圧縮部とを有した圧縮手段と、前記音声圧縮部の音声出力データと前記画像圧縮部の画像出力データを多重化する多重化手段と、前記多重化手段からの出力データを記録し、この記録したデータを再生する第1記録再生手段とを有し、
前記第1記録再生手段は、前記多重化手段からの出力データのレートに基づくレートで前記出力データを記録し、通信回線の伝送レートで前記記録したデータを再生し、再生したデータを前記通信回線へ送出することを特徴とする符号化装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例記載の発明
これに対して、当審における平成16年5月6日付け拒絶の理由に引用した特開平3-195286号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

イ)「特許請求の範囲
1.テレビ電話機に、映像信号をデータ圧縮するコーダ(20)と、該コーダの出力を記憶する第1の記憶部(24)と、データ圧縮された受信データを記憶する第2の記憶部(25)と、該第2の記憶部(25)の読出しデータを伸長するデコーダ(21)と、制御部(23、26)を設け、
伝送すべき映像信号を前記コーダによりデータ圧縮して第1の記憶部に書込み、
相手または自分からの要求で前記第1の記憶部のデータを読出して回線へ送出し、
相手側では受信データを第2の記憶部へ書込み、それを読出し、デコーダにより伸長して映像信号を再生することを特徴とする一時蓄積型テレビ電話方式」(第1頁左下欄第4行〜第18行)

ロ)「第2図に本発明の実施例を示す。テレビ電話機10にはマイク(送話器)11、スピーカ(受話器)14、テレビカメラ12、テレビモニタ(CRTディスプレイ)13も付属する。音声も送るので、マイク11が出力する音声信号AIはコーダ15で符号化し、映像信号VIとの同時性をとるための遅延回路19を介してフレームメモリ24へ送り、映像信号と共に該メモリへ格納する。」(第3頁左上欄第2行〜第9行)

ハ)「またフレームメモリ24内の映像書込み領域の各アドレスを逐次発生する。電話機10のカメラ出力VIはA/D変換され、高能率符号化されるが、こうして圧縮された情報がフレームメモリ24の上記各アドレスへ逐次書込まれる。またマイク出力AIもA/D変換され、符号化され、情報圧縮されて、フレームメモリ24内の音声書込み領域内の各アドレスへ逐次書込まれる。この書込みアドレスも制御部23が発生するが、図では簡単に映像用と共通のADDで表わしている。
書込み終了は一定時間後またはフレームメモリ24が一杯になったとき、等とる。圧縮データの量は原情報の性質によって変わるから、この点では後者の方がメモリを充分に活用する合理的な方法である。」(第3頁右上欄第11行〜左下欄第6行)

ニ)「メモリ24の映像、音声読出しデータは多重化器27で多重化され、同期信号SYNを加えられて、回線l1を通して電話機50へ送られ、電話機50では分離器28aにより映像、音声、同期信号SYNに分離される。」(第3頁右下欄第1行から第5行)

以上の記載を総合すると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「音声信号をA/D変換し、符号化し、情報圧縮したデータを記憶し、映像信号をデータ圧縮するコーダからの出力データを記憶し、この記憶したデータを読出すフレームメモリと、フレームメモリの映像、音声読出しデータを多重化する多重化器とを有し、多重化器からの出力データを、回線へ送出する符号化装置」が記載されている。

当審における拒絶の理由に引用した特開昭50-127504号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
イ)「すなわち符号の発生率が時間に対して一様でない。これを伝送速度の一様な伝送路に適合させるためには、適当なバッファメモリを用いて速度変換を行い、伝送速度と一様にする必要がある。一方、受信側では同様のバッファメモリを用いて、元の速度に変換し、復号を行う。」(第2頁左上欄第19行〜右上欄第4行)

上記引用例2には、出力データを通信回線の伝送レートに適合させるために、「記録再生手段は、出力データのレートで出力データを記憶し、通信回線の伝送レートで、前記記録したデータを再生し、再生したデータを前記通信回線へ送出すること」が記載されている。

周知例1(安田 浩編著 マルチメディア符号化の国際標準 丸善株式会社 平成3年6月30日の第84頁〜第102頁、第86頁図4.2、第158頁〜第178頁、第204頁〜第208頁、第205頁図10.1参照)には、音声コーデックとして、CCITT勧告H.200/AV250シリーズG.722、映像コーデックとして、H.261を用いること、H.261は、動き補償フレーム間予測を行い、その予測誤差を8×8のブロックサイズでDCTしたあと、符号化する映像符号化であることが記載されているから、「CCITT勧告G.722に従った音声圧縮部と、画像データを動き補償フレーム間予測により圧縮処理する画像圧縮部とを有した圧縮手段」(以下、「周知技術1」という。)は、周知である。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、
引用例1記載の発明の「音声信号をA/D変換し、符号化し、情報圧縮」は、本願発明の「音声データを圧縮処理」に相当し、引用例1記載の発明の「映像信号をデータ圧縮」は、本願発明の「画像データを圧縮処理」に相当するから、引用例1記載の発明が、「音声データを圧縮処理し、画像データを圧縮処理する圧縮手段」を有することは明らかである。
引用例1記載の発明の「フレームメモリの映像、音声読出しデータを多重化する多重化器」は、フレームメモリの映像、音声読出しデータは圧縮手段の出力データであるから、引用例1記載の「多重化器」と本願発明の「多重化手段」は、「音声出力データと画像出力データを多重化する多重化手段」である点で一致する。

したがって、両者は、「音声データを圧縮処理し、画像データを圧縮処理する圧縮手段と、圧縮手段の音声出力データと画像出力データを多重化する多重化手段を有する符号化装置」の点で、一致し、以下の点で、相違する。

a.圧縮手段が、本願発明では、タイムフレーム当たり一定のデータ量が出力されるように、音声データを圧縮処理する音声圧縮部と、画像データを、ほぼ一定の圧縮率によって圧縮処理する画像圧縮部とを有したものであるのに対して、引用例1記載の発明では、音声データと画像データについて、どのように圧縮処理するかについては、明らかでない点。

b.本願発明では、第1記録再生手段が、「多重化手段からの出力データを記録し、この記録したデータを再生する第1記録再生手段を有し、この第1記録再生手段が、多重化手段からの出力データのレートに基づくレートで前記出力データを記録し、通信回線の伝送レートで前記記録したデータを再生し、再生したデータを前記通信回線へ送出」しているのに対して、引用例1記載の発明では、多重化手段からの出力データを通信回線へ送出しているが、多重化手段の出力と通信回線の間に、記録再生手段を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
相違点aについて
画像データをほぼ一定の圧縮率により圧縮処理することは、実際、いかなる圧縮処理をするのか不明確であるので、本願明細書の記載を参酌すると、【0026】段には、「符号化制御器3aは、従来の如くタイムフレーム内のデータの情報量を一定とするよう圧縮率を大きく可変するのではなく、ほぼ一定の画質を維持するよう圧縮率を小さく可変する(図7の(e)を参照)。即ち、図7の(d),(e),(f)に示すように、動きの激しい部分は情報量を多くし、逆に動きの少ない部分の情報量を削減するよう制御する。」との記載があるから、本願発明の「画像データを、ほぼ一定の圧縮率による」圧縮処理は、「ほぼ一定の画質を維持するよう圧縮率を小さく可変する、即ち、画像データを、動きの激しい部分は情報量を多くし、動きの少ない部分の情報量を削減する」圧縮処理である。
CCITT勧告G.722に従った音声圧縮部と、画像データを動き補償フレーム間予測により圧縮処理する画像圧縮部とを有した圧縮手段は、周知技術1で示されるように周知であり、CCITT勧告G.722に従った音声圧縮部から、本願明細書の【0032】段に説明されているように、タイムフレーム当たり一定のデータ量が出力されることになり、動き補償フレーム間予測をすることは、画像データを動きの激しい部分は情報量を多くし、動きの少ない部分の情報を削減することになるから、引用例1に記載された発明の圧縮手段を、音声データを圧縮処理するCCITT勧告G.722に従った音声圧縮部と、画像データを動き補償フレーム間予測により圧縮処理する画像圧縮部とを有した圧縮手段を用いて、音声データをタイムフレーム当たり一定のデータ量が出力されるように圧縮処理し、画像データを動き補償フレーム間予測により、ほぼ一定の画質を維持するよう圧縮率を小さく可変する、即ち、動きの激しい部分は情報量を多くし、動きの少ない部分の情報を削減するように、すなわち、画像データをほぼ一定の圧縮率によって圧縮することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

相違点bについて
引用例1の発明の多重化手段の出力データは、通信回線へ送出させるものであるから、この出力データを通信回線の伝送レートに適合させるために、引用例2に記載された発明の記録再生手段を多重化手段と通信回線の間に設けて、記録再生手段が、多重化手段からの出力データのレートに基づくレートで前記出力データを記録し、通信回線の伝送レートで前記記録したデータを再生し、再生したデータを前記通信回線へ送出することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求項2に係る発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明、周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-01 
結審通知日 2004-10-05 
審決日 2004-10-19 
出願番号 特願平7-280138
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 研一  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 吉田 隆之
望月 章俊
発明の名称 データ通信装置、符号化装置及び復号化装置  
代理人 橋本 剛  
代理人 志賀 富士弥  

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