• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01F
審判 全部申し立て 発明同一  B01F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01F
審判 全部申し立て 特174条1項  B01F
管理番号 1107847
異議申立番号 異議2001-72056  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-27 
確定日 2004-09-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3130751号「オゾン水製造方法及び装置」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3130751号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3130751号の請求項1〜9に係る発明についての出願は、平成7年1月30日に特許出願され、平成12年11月17日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされ、その後株式会社ディスク、株式会社ササクラ、西塚保遠より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月17日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持することを特徴とするオゾン水製造方法。」を、
「【請求項1】放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することを特徴とするオゾン水製造方法。」に訂正する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項5、9を削除する。
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項6〜8を、項数を繰り上げ、請求項5〜7と訂正する。
エ.訂正事項d
段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持することとしたものである。また、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四沸化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御することとしたものである。さらに、本発明では、加圧状態のオゾンガスを多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けることとしたものであり、また、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四沸化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸膜内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けることとしたものである。本発明の中空糸膜内の水圧は、オゾンガス圧より0.1kg・f/cm2 以上高くするのがよい。」を、
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することとしたものである。また、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御することとしたものである。さらに、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けることとしたものである。本発明の中空糸膜内の水圧は、オゾンガス圧より0.1kg・f/cm2 以上高くするのがよい。」と訂正する。
オ.訂正事項e
請求項2、請求項5、段落【0002】、【0007】、【0008】、【0009】、【0014】、【0019】及び【0022】の「四沸化」を「四弗化」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aに関連する記載として、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを用いること、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することは、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0006】及び【0011】にそれぞれ記載されていた事項である。そうすると、上記訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内において、使用する加圧状態のオゾンガスを放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスに、また、オゾン水製造方法を処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御する方法に、それぞれ限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項bは、請求項5、9を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。また、訂正事項c、dは訂正事項a、bに対応して、項数を繰り上げたり、記載を一致させるためのものであって、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。さらに、訂正事項eは誤記の訂正に該当する。そして、訂正事項b〜eのいずれも、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許第3130751号の請求項1〜7に係る発明(以下それぞれを、「本件発明1〜7」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項2】放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御することを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項3】前記水圧は、オゾンガス圧より0.1kg・f/cm2以上高くすることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン水製造方法。
【請求項4】前請求項1、2又は3記載のオゾン水製造方法において、オゾン水を非製造時には、オゾン発生機入口から中空糸膜出口に至るガス配管内をドライガスでパージしておくことを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項5】放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸膜内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けたことを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項6】前記ポンプは、無段階可変速制御方式のポンプであり、中空糸膜上流に流量計及び圧力計を設け、これらからの出力信号値を演算回路で処理して制御する制御機構を設けたことを特徴とする請求項5記載のオゾン水製造装置。
【請求項7】前記オゾン濃度制御機構は、中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計と、該濃度計での測定値を処理する演算回路と、処理した値に基づいて放電型オゾン発生機の放電電圧を変化させる電圧可変装置とからなることを特徴とする請求項5記載のオゾン水製造装置。」

4.刊行物記載の発明
(1)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された特開平3ー188988号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(イ)「第2図において、純度の低下した超純水13をポンプ14、バルブ15、圧力計16、流量計17を介して、オゾン・・・溶解装置27に導入する。該オゾン23・・・を溶解した水」(第4頁右上欄8行〜12行)、
(ロ)「第6図に示すように、ガス透過膜33により膜を介してオゾン23・・・を溶解させるならば、該オゾン・・・中の微粒子等の不純物を除去できる・・・。ここで、前記ガス透過膜は酸素、窒素、水素、蒸気等のガスを透過し水を透過しない膜であり、一方に水を通水し、他方をガスで加圧するが、膜の素材としては・・・ポリ四弗化エチレン系・・・等の多孔質の疎水性膜を挙げることができる。・・・前記ガス透過膜は使用するガスの種類によりその素材を選択すれば良く、オゾン23を含有するガスを用いる場合では、ポリ四弗化エチレン系の膜が好ましい。」(第4頁左下欄13行〜同頁右下欄10行)、
(ハ)「限外ろ過装置の下流に圧力計16及びバルブ15を設ける。通常、半導体製造装置の入口圧は2kg/cm2であり、15及び16にて最適圧力に調整する。」(第5頁右上欄14行〜17行)、
(ニ)「第9図中のガス透過膜33は、ポリ四弗化エチレン系の中空系であり、膜面積0.85m2、膜本数6500本のモジュールを用いた。このガス透過膜33の一方に被処理水を通水し、他方にオゾン濃度を500ppmのオゾン化空気を0.2kg/cm2、50Nーml/minで通気した。」(第6頁左上欄10行〜15行)
と記載され、また、第6図には、
(ホ)「ガス透過膜33の内側にオゾン23を、ガス透過膜33の外側に超純水13を流すこと」が示されている。
これらの摘記事項、及び、第2図、第6図、第9図の記載からみて、刊行物1には、
「加圧状態のオゾンガス23をポリ四弗化エチレン系の中空系のガス透過膜33の内側に供給して、該ガス透過膜33を介して、ガス透過膜外側の被処理水13に溶解する、不純物を除去したオゾン水製造方法」の発明(以下、「刊行物1記載の発明A」という。)、及び、
「加圧状態のオゾンガス23を、ポリ四弗化エチレン系の多孔質中空系のガス透過膜33の内側に供給して、該ガス透過膜33を介して、ガス透過膜外側の被処理水13に溶解するオゾン水製造装置において、該中空系のガス透過膜33の上流に流量計17、水圧を制御する、圧力計16及びバルブ15、並びにポンプ14を設け、不純物を除去したオゾン水製造装置」の発明(以下、「刊行物1記載の発明B」という。)が、それぞれ記載されているものと認められる。

(2)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された実公昭59ー33461号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
(ヘ)「本考案は・・・疎水性多孔質中空糸を用いた気液接触炭酸ガス溶解装置と、該飲料水を該中空糸の内部又は外部へ炭酸ガスの圧力以上で供給する手段と、炭酸ガスを該中空糸の外部又は内部へ加圧供給する手段を有する飲料水への炭酸ガス溶解装置である。本考案に使用する中空繊維は、・・・ポリテトラフルオルエチレンなどの結晶性ポリマー・・・が好ましい。これらの高分子からなる中空繊維は、疎水性、耐薬品性、耐熱性に優れ極めて微細な互に連続した空孔を中空繊維壁に多数有する中空繊維状多孔質膜であって」(第2欄8行〜23行)、
(ト)「炭酸ガスは中空糸の多孔膜を通して中空糸内部を流れる飲料水へ供給される。」(第3欄13行〜15行)、
(チ)「本考案に於ては、疎水性多孔質膜を界して水相側の圧力をガス相と同等又はそれ以上に保たなければならない。万一ガス相の圧が水相より高くなると膜を通して水相側にガスが気泡として浸入し」(第3欄21行〜24行)
と記載されている。
これらの摘記事項からみて、刊行物2には、
「加圧状態の炭酸ガスを、ポリテトラフルオルエチレンからなる中空繊維状多孔質膜を介して飲料水に溶解するに際して、中空繊維状多孔質膜に飲料水を通し、中空繊維状多孔質膜内側の水圧をガス圧と同等又はそれ以上に維持して、気泡の混入を防止すること」が記載されているものと認められる。

(3)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された特開平5ー23553号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
(リ)「膜式気体溶解法によって液体に気体を溶解させる場合、・・・液体の溶解気体濃度を高くするためには、気体圧力を高くすることが有利である。しかしながら、例えば、液体圧力を常圧に保ち、気体圧力を次第に上げてゆくと、最初は液体中に気泡が発生しない状態で気体が溶解するが、気体圧力を更に上げると少量の気泡が膜表面より発生し出し、さらに圧力を上昇させると、ついには多量の気泡が発生するいわゆる散気状態となる。」(第4欄19行〜28行)と記載されている。

(4)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された特開平6ー31286号公報(以下、「刊行物4」という。)には、
(ヌ)「オゾナイザで発生させたオゾンガスと水とを混合させて、オゾン水処理槽に供給するオゾン水を製造する装置において、上記処理槽に、オゾン水のオゾン濃度を計測する濃度センサを設けると共に、このセンサからの計測値に基づいて上記オゾナイザへの電力を位相制御して処理槽内のオゾン水濃度を所定の値に維持する制御器を設けたものである。」(第2頁左欄47行〜同頁右欄3行)、
(ル)「図1〜図3において、1はオゾン水製造装置を示し、このオゾン水製造装置1は、圧縮機2からの空気から酸素を取り出す酸素発生装置3が接続されたオゾナイザ4と、そのオゾナイザ4からのオゾンガスと水とを混合させてオゾン水を生成するオゾンガス溶解装置5とから主に構成されている。・・・オゾナイザ4は、放電により酸素をオゾンガスにするもので、その放電電圧を変えると発生するオゾンガス量が増減するようになっている。・・・その発生したオゾンガスがポンプ6により加圧されてからオゾンガス溶解装置5の気液接触機構7に供給される。」(第2頁右欄20行〜32行)、
(ヲ)「処理槽10には、・・・オゾン水の濃度センサ13が接続されている。濃度センサ13は、・・・槽10内のオゾン水のオゾン濃度を計測し、この計測値を・・・電流信号に変換し、これを制御器14の支持調節計15(「指示調節計15」の誤記と認められる。)に出力するように構成されている。・・・制御器14は、センサ13からの信号と設定値の信号とを比較演算する指示調節計15と、上記オゾナイザ4への電力を指示調節計15からの制御出力(信号)に基づいて位相制御する電力調整器16とからなる。・・・電力調整器16は、オゾナイザ4に接続されその商用電源電圧を調整する」(第2頁右欄49行〜第3頁左欄21行)
と記載されている。
これらの摘記事項及び【図1】〜【図2】の記載からみて、刊行物4には、
「オゾナイザ4で発生させた加圧状態のオゾンガスをオゾンガス溶解装置5で水に溶解してオゾン水を製造するに際して、オゾンガス溶解装置5の下流に設けたオゾン水の濃度センサ13と、該濃度センサ13での計測値を処理する指示調節計15と、処理した値に基づいてオゾナイザ4の放電電圧を変化させる電力調整器16とからなり、オゾン水中のオゾン濃度をオゾンガス量により放電電圧を変化させて制御する制御器14を設け、オゾン水濃度を所定値に保つこと」が記載されているものと認められる。

(5)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された社団法人化学工学協会編、新版化学工学辞典、丸善株式会社、昭和49年5月30日発行、第347頁(以下、「刊行物5」という。)の「パージ purge」の項に、
(ワ)「装置または流路に新しく流体を送入する場合,・・・他の不活性流体によってそれまで流れていた流体を追出す操作をいう。この操作は二流体の混合による反応あるいは爆発などの悪影響を防止するために行なわれる。したがって,反応装置の使用開始時ならびに終了時,あるいは間欠操作の切換え時になどに行なわれる。」と記載されている。

(6)当審で通知した取消しの理由で引用し、本件特許の出願前国内で頒布された実公昭63ー18478号公報(以下、「刊行物6」という。)には、
(カ)「可変速給水装置では、ポンプ速度制御信号出力部よりの出力の回転速度指令信号たとえば0〜10Vをうけて、ポンプの回転速度を変化させ、吐出側に圧力センサをもうけるなどして給水圧力を一定にたもつなどの制御をおこなうことが一般的である。」(第2欄2行〜7行)と記載されている。

5.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明Aとを対比すると、後者の「オゾンガス23」は前者の「オゾンガス」に、後者の「被処理水13」は前者の「被処理水」に、それぞれ相当する。また、後者の「ポリ四弗化エチレン系の中空系のガス透過膜33」は、膜面積0.85m2、膜本数6500本のモジュールからなるものであるから(上記の摘記事項(ニ)を参照)、前者の「中空糸膜」に相当する。
してみれば、両者は、
「加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造法」で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】前者は、放電型オゾン発生機で発生させたオゾンガスを用いるのに対して、後者は、オゾンガスの発生源について明らかではない点。
【相違点2】前者は、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持するのに対して、後者は、被処理水を中空糸膜内側に通すものではなく、また、水圧とガス圧との関係が明らかではない点。
【相違点3】前者は、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御するのに対して、後者は処理水中のオゾン濃度の制御について明らかではない点。
上記相違点1〜3につき、以下検討する。
【相違点1、3について】
刊行物4記載の「オゾナイザ4」は、「放電により酸素をオゾンガスにするもの」であるから(上記の摘記事項(ル)を参照)、本件発明1の「放電型オゾン発生機」に、刊行物4記載の「オゾン水」は本願発明1の「処理水」に、それぞれ相当するから、刊行物4には、「放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをオゾンガス溶解装置5を介して被処理水に溶解してオゾン水を製造するに際して、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス量に基づき制御すること」が記載されているものと認められる。
そして、本願発明1のように、処理水に供給するオゾンガス濃度を高く又は低くすることは、刊行物4記載のように、処理水中に供給するオゾンガス量を多く又は少なくすることに他ならず、また、刊行物4記載の発明は、刊行物1記載の発明Aと同じく、「オゾン水の製造」という技術分野に属するものである。
してみれば、刊行物1記載の発明Aに刊行物4記載の発明を組み合わせ、相違点1、3に係る事項を本願発明1のように設けることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。
【相違点2について】
加圧状態のガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解させるに際して、被処理水を中空糸膜内側に通すこと、また、中空糸膜内側の水圧をガス圧と同等又はそれ以上に維持して、気泡が混入しないように設けることは、刊行物2に記載されている。
そして、刊行物2記載の発明は、刊行物1記載の発明Aと同じく、「ガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解させる」技術に属するものであって、「膜式気体溶解法によって液体に各種気体を溶解させる場合、気体圧力が高すぎると、気泡が発生する」という課題のあることは、刊行物3に記載されているように、本件特許の出願前周知の事項であることも考慮すると、刊行物1記載の発明Aに、刊行物2記載の発明を組み合わせ、被処理水を中空糸膜内側に通すとともに、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持するように設けることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件発明1の「被処理水中に気泡ならびに不純物を含まず」(本件特許明細書の【発明の効果】を参照)との作用効果は、刊行物1記載の発明A及び刊行物2記載の発明から、本件発明1の「一定の濃度のオゾン水を・・・供給することが出来る」(本件特許明細書の【発明の効果】を参照)との作用効果は、刊行物4記載の発明から、それぞれ当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明A、及び、刊行物2、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と刊行物1記載の発明Aとを対比すると、後者も、中空糸膜がポリ四弗化エチレン系のものであるから、両者は、「加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法」で一致し、上記相違点1、2に加えて、下記の点で相違する。
【相違点4】前者は、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御するのに対して、後者は、処理水中のオゾン濃度の制御について明らかではない点。
相違点1、2については、すでに検討したとおりである。
そこで、相違点4につき検討するに、オゾンガスを被処理水に溶解させてオゾン水を製造するに際して、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス量に基づき放電電圧を変化させて制御し、オゾン水濃度を一定に保つことは、刊行物4に記載されている。
そして、本願発明2のように、処理水に供給するオゾンガス濃度を高く又は低くすることは、刊行物4記載のように、処理水中に供給するオゾンガス量を多く又は少なくすることに他ならず、また、刊行物4記載の発明は、刊行物1記載の発明Aと同じく、「オゾン水の製造」という技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明Aの相違点4に係る構成を、刊行物4記載の発明を組み合わせ、本件発明2のように設けることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件発明2の作用効果は、本件発明1と同様に、刊行物1記載の発明A、及び、刊行物2、4記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明2は、刊行物1記載の発明A、及び、刊行物2、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の構成に欠くことができない事項に加えて、「水圧をオゾンガス圧より0.1kg・f/cm2以上高くすること」を、その発明の構成に欠くことができない事項とするものであるが、刊行物1記載の発明Aが、上記「水圧をオゾンガス圧より0.1kg・f/cm2以上高くする」との事項を備えていることについて明らかではない。
しかしながら、中空糸膜内側の水圧をガス圧と同等又はそれ以上に維持して、気泡が混入しないように設けることは、上述したとおり、刊行物2に記載されており、してみれば、刊行物1記載の発明Aに刊行物2記載の発明を組み合わせるに際して、気泡の混入防止効果を勘案しながら水圧とオゾンガス圧との最適関係を求め、本件発明3のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本件発明3は、刊行物1記載の発明A、及び、刊行物2、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1〜3の構成に欠くことができない事項に加えて、「オゾン水を非製造時には、オゾン発生機入口から中空糸膜出口に至るガス配管内をドライガスでパージしておくこと」を、その発明の構成に欠くことができない事項とするものであるが、刊行物1記載の発明Aが、上記パージについての事項を備えていることについて明らかではない。
ところで、流体送入の終了時等に不活性流体でパージすることは、刊行物5に記載されているように(上記の摘記事項(ワ)を参照)、流体を送入する装置、管路の技術分野において既知の事項であると認められるから、流体を送入する装置、管路の技術分野に属する刊行物1記載の発明Aに、上記既知の事項を組み合わせ、本件発明4のように設けることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明4の「オゾン発生器放電部の劣化、系内への不純物混入を防止しガス側での不純物増加を制御する。」(本件特許明細書の段落【0012】参照)との作用効果は、刊行物5記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明4は、刊行物1記載の発明A、及び、刊行物2、4、5記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5と刊行物1記載の発明Bとを対比すると、両者は、
「加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、水圧及び流量を制御するとともに、該中空糸膜の上流にポンプを設けた、オゾン水製造装置」で一致し、相違点1、2に加えて、下記の点で相違する。
【相違点5】前者は、被処理水の水圧及び流量をポンプで制御するのに対して、後者は、被処理水の水圧及び流量をバルブで制御する点。
【相違点6】前者は、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けるのに対して、後者は、処理水中のオゾン濃度の制御について明らかではない点。
相違点1、2については、既に検討したとおりであるので、以下、相違点5、6について検討する。
【相違点5について】
水の圧力及び流量の制御をポンプで行うことは、例えば、刊行物6にも示されているように、本件特許の出願前に周知の事項である。
してみれば、刊行物1記載の発明Bにおいて、被処理水の水圧及び流量の制御を、バルブに換えてポンプで行うように設けることは、当業者が容易になし得る程度の事項である。
【相違点6について】
オゾンガスを被処理水に溶解させてオゾン水を製造するに際して、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス量に基づき放電電圧を変化させて制御する制御機構を設け、オゾン水濃度を一定に保つことは、刊行物4に記載されている。
そして、本願発明5のように、処理水に供給するオゾンガス濃度を高く又は低くすることは、刊行物4記載のように、処理水中に供給するオゾンガス量を多く又は少なくすることに他ならず、また、刊行物4記載の発明は、刊行物1記載の発明Bと同じく、「オゾン水の製造」という技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明Bの相違点6に係る構成を、刊行物4記載の発明を組み合わせて、本件発明5のように設けることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件発明5の作用効果は、刊行物1記載の発明B、及び、刊行物2、4記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明5は、刊行物1記載の発明B、及び、刊行物2、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5の構成に欠くことができない事項に加えて、「ポンプは、無段階可変速制御方式のポンプであり、中空糸膜上流に流量計及び圧力計を設け、これらからの出力信号値を演算回路で処理して制御する制御機構を設けたこと」を、その発明の構成に欠くことができない事項とするものである。
ところで、刊行物1記載の発明Bも、「中空糸膜33の上流に流量計17、圧力計16」を設けるものであり、水圧及び流量を制御するバルブを備えているから、「流量計17及び圧力計16からの出力信号値を演算回路で処理して水圧及び流量を制御する制御機構」を設けているというべきである。
してみれば、本件発明6と刊行物1記載の発明Bとは、
「加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、水圧及び流量を制御するとともに、該中空糸膜の上流にポンプを設けた、オゾン水製造装置」で一致し、相違点1、2、5、6に加えて、以下の点で相違する。
【相違点7】前者のポンプが無段階可変速制御方式のものであるのに対して、後者のポンプが無段階可変速制御方式のものか否かが明らかでない点。
ところで、水圧を一定に保持するための無段階可変速制御方式のポンプは、刊行物6に記載されている。
してみれば、水圧等を制御するためのポンプを使用する刊行物1記載の発明Bにおいて、該ポンプとして刊行物6記載の発明の無段階可変速制御方式のものを用いる程度のことは、当業者が容易に想到し得ることであり、しかも、それによる作用効果は、刊行物1記載の発明B及び刊行物6記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明6は、刊行物1記載の発明B、及び、刊行物2、4、6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明5の構成に欠くことができない事項に加えて、「オゾン濃度制御機構は、中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計と、該濃度計での測定値を処理する演算回路と、処理した値に基づいて放電型オゾン発生機の放電電圧を変化させる電圧可変装置とからなること」を、その発明の構成に欠くことができない事項とするものであるが、刊行物1記載の発明Bが、オゾン濃度制御機構を備えていることについて明らかではない。
ところで、オゾンガスを被処理水に溶解させてオゾン水を製造するに際して、「オゾンガス溶解装置5の下流に設けたオゾン水の濃度センサ13と、該濃度センサ13での計測値を処理する指示調節計15と、処理した値に基づいてオゾナイザ4の放電電圧を変化させる電力調整器16とからなり」、被処理水中のオゾン濃度を制御する機構を設け、オゾン水濃度を所定値に保つことは、刊行物4に記載されている。
そして、刊行物4記載の「オゾン水の濃度センサ13」は、本件発明7の「オゾン水濃度計」に、「濃度センサ13での計測値を処理する指示調節計15」は、本件発明7の「濃度計での測定値を処理する演算回路」に、「オゾナイザ4の放電電圧を変化させる電力調整器16」は、本件発明7の「放電型オゾン発生機の放電電圧を変化させる電圧可変装置」に、それぞれ相当するものであって、刊行物4記載の発明は、刊行物1記載の発明Bと同じく、「オゾン水の製造」という技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明Bに、刊行物4記載の発明を組み合わせて、本件発明7のようなオゾン濃度制御機構を設けることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件発明7の作用効果は、刊行物1記載の発明B、及び、刊行物2、4、6記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件発明7は、刊行物1記載の発明B、及び、刊行物2、4、6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜7は、いずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜7についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オゾン水製造方法及び装置
(57)【特許請求の範囲】
「【請求項1】 放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項2】 放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御することを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項3】 前記水圧は、オゾンガス圧より0.1kg・f/cm2以上高くすることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン水製造方法。
【請求項4】 前請求項1、2又は3記載のオゾン水製造方法において、オゾン水を非製造時には、オゾン発生機入口から中空糸膜出口に至るガス配管内をドライガスでパージしておくことを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項5】 放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸膜内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けたことを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項6】 前記ポンプは、無段階可変速制御方式のポンプであり、中空糸膜上流に流量計及び圧力計を設け、これらからの出力信号値を演算回路で処理して制御する制御機構を設けたことを特徴とする請求項5記載のオゾン水製造装置。
【請求項7】 前記オゾン濃度制御機構は、中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計と、該濃度計での測定値を処理する演算回路と、処理した値に基づいて放電型オゾン発生機の放電電圧を変化させる電圧可変装置とからなることを特徴とする請求項5記載のオゾン水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、オゾン水の製造に係り、特に、精密機械、電子工業、医薬・食品工業に用いられる高純度オゾン水を製造するための方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水中にオゾンを溶解させたオゾン水の製造技術は、食品・医薬品工業あるいは医療分野などで用いられ、用途は殺菌水を主としている。製造装置としては、オゾン発生機に放電型、水電解型のものを用い、発生させたオゾンガスを▲1▼曝気法、▲2▼ラインミキサー或いはエゼクターによる混合溶解法、▲3▼多孔質硝子製あるいはチタン短繊維燃結体製のフィルタや親水化処理したポリ四弗化エチレンの膜を用いた散気フィルタ法などによって溶解させるものが知られている。更には、水電解型オゾン発生機の電解槽の陽極室に、被処理水を直接送り込みオゾンと接触させオゾン水を製造する方法や、中空糸モジュール形状の散気フィルタをエゼクタとして利用する方法も提示されている。
【0003】
しかし、従来技術は何れも食品等の殺菌水としての用途を重視したものであり、オゾン水中の不純物量より、寧ろオゾン水濃度を高めることを主眼としている。従来技術の曝気法、エゼクタ法などで高濃度オゾン水を製造する場合、被処理水中に気泡としてガスを散気させるため、水圧よりガス圧を高くすることを特徴としているものが多い。また、散気膜として利用している膜の孔径は、散気効率を重視するため数μm〜10μmと孔径の大きなものを用いている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術では高濃度のオゾン水は得られるものの、放電型オゾン発生機を用いた場合、放電体周辺の部材から重金属等の微粒子が発生し、そのガスを直接被処理水に散気することになり、水中の不純物濃度が増加する。また上記の従来技術では被処理水中に微細気泡が残存し、電子工業、精密機械加工分野などでオゾン水を利用した場合、処理表面上にムラを生じる原因と成り好ましくない。この様な微細気泡を混入させないためには、水側圧力、流量を一定に制御する必要がある。
【0005】
また、ユースポントまで配管で送水する場合や電子工業分野のRCA洗浄槽に給水し、他の薬品と混合して使用する場合、圧力、流量を一定に維持することが必須と成る。従来の曝気法やエゼクタ法ではガス圧より水圧を下げて利用するため、水側の流量、圧力を制御することが難しく、製造したオゾン水をポンプを介して送水する必要がある。そのためポンプ自体の耐久性、オゾンによる部材からの不純物の溶出などの問題を生じ、精密洗浄あるいは電子工業用には使用することが困難である。
そこで本発明では、上記のような問題点を解決し、被処理水中に微細気泡ならびに不純物を含まず、なおかつ、濃度及び流量、圧力を一定に制御した高純度オゾン水製造方法及び装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき制御することとしたものである。
また、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造方法において、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度に基づき放電電圧を変化させて制御することとしたものである。
さらに、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解するオゾン水製造装置において、該中空糸膜の上流に中空糸膜内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御するポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により放電電圧を変化させて制御する制御機構を設けることとしたものである。
本発明の中空糸膜内の水圧は、オゾンガス圧より0.1kg・f/cm2以上高くするのがよい。
【0007】
上記装置において、中空糸膜上流に流量計及び圧力計を設け、これらからの出力信号値を演算回路で処理して前記無段階可変速制御方式のポンプを制御する制御機構を設けるのがよい。また前記オゾン濃度制御機構は、中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計と、該濃度計での測定値を処理する演算回路と、処理した値に基づいて放電型オゾン発生機の放電電圧を変化させる電圧可変装置とで構成するのがよい。
このように、本発明では、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解する際、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を中空糸膜上流に設けた無段階可変速制御方式のポンプで制御することにより、被処理水への微細気泡及び不純物の混入を防止し、なおかつオゾン水濃度を中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計で測定し、その値に基づきガス濃度を変化させて一定制御するものである。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
このオゾン水製造装置に用いるガス溶解膜としては、本出願人が先に提案している酸素、窒素等のガスを透過し、水を透過しない膜であり、ポリ四弗化エチレン系の多孔質の疎水膜であり、その孔径分布が0.01〜1.0μmを中心とする膜を用いる(特開平3-188988)。また、膜の構造は中空糸であり、図1のその構造の概要図に示すように、中空糸の内側を水が流れ、外側をガスが流れるものである。
図2は、本発明の高純度オゾン水製造装置のフローの説明図である。
図2において、被処理水1は、ポンプ3、流量計4、圧力計5を介して中空糸膜6に下向流で通水し、中空糸膜出口側で処理水を分岐して、オゾン水濃度計7に導入してオゾン水濃度を測定する。ガスは、原料ガスである酸素ガス9、窒素ガス13を別途、あるいは混合ガスを放電型オゾン発生機22に導入しオゾンガス10を発生させ、中空糸膜外側に上向流で通気し、排ガス14は下流に設けたオゾンガス分解塔19で処理する構成から成るものである。
【0009】
上記のポンプ3は無段階可変速制御方式であり、動圧軸受を用い機械的接触が一切なく、ポンプ内部からの微粒子の発生を抑えたものでありかつ、接液部の材質に高純度セラミックス及び四弗化樹脂を用い金属イオンの溶出を防止したものを用いることが好ましい。このポンプの可変速制御は、ポンプと中空糸膜入口間に設けた発信機付の流量計4及び圧力計5からの信号値をシーケンサ等の演算回路21で処理してポンプ回転数を変えるPDI制御を行ない、水圧を中空糸膜出口でガス側圧力より0.1kg・f/cm2以上高く維持し、中空糸膜を介してガスを水に溶す際、ガスが気泡として混入することを防止する。
【0010】
次にオゾン発生機22は、沿面放電方式、無声放電方式の何れも使用できるが、好ましくは放電部分をトレンチ型構造とし、セラミックスコーティングの電極と誘電体にサファイアを採用した無声放電と沿面放電の複合放電式の発生機を用い、発生するガス中に微粒子、金属不純物などを含まず、10vol%以上の高濃度オゾンガスを安定して発生するものであり、シーケンサ等の演算回路21からの外部信号により放電電圧を制御してガス濃度を可変出来るものが良い。
このオゾン発生機22に原料ガスであるO2ガス9、N2ガス13を99:1の組成比で1.0kg・f/cm2以上、好ましくは1.5kg・f/cm2程度の加圧下で供給し、オゾンガス10としたものを中空糸膜外側に通気し、膜を介してガスを被処理水側に拡散溶解させる。
【0011】
図1に示すように中空糸膜へのガスの通気方向は水の流れに対し、順流、向流何れでも良いが、オゾン水とオゾンガス間の濃度勾配を有効に利用するため、好ましくは向流方式とし、中空糸膜下部より上向流で通気してガスを溶解させる。
オゾンガス濃度とオゾン水濃度の関係を図3に示す。オゾン水濃度はガス濃度に対し直線的に正比例しオゾン水濃度を制御するパラメーターとしてガス濃度は最も好ましいものである。実際のオゾン水濃度制御は中空糸膜出口で分岐したオゾン水の一部を紫外線吸収方式等のオゾン水濃度計に通水して濃度を測定し、その値をシーケンサ等の演算回路で処理したのち、必要に応じてオゾン発生機の放電電圧を変更し、オゾンガス濃度を変化させてオゾン水濃度を制御する。
【0012】
次に中空糸膜を出た排ガスは、後段の排ガス分解塔19においてオゾンを分解して酸素ガスとしたのち、ガス圧調整弁20をへて装置系外に排出される。
また、装置を停止している間は排ガス分解塔下流に設けたガス開放弁20を開けガス側圧力を大気圧とするか、あるいは加圧状態でガス、パージ弁17、及びパージガス流量調節器18を介してN2、O2ガスなどドライガスをパージガスとしてオゾン発生機入口より供給し、オゾン発生機放電部の劣化、系内への不純物混入を防止しガス側での不純物増加を制御する。このガス量は0.1〜0.5Nl/min以上であれば良い。
【0013】
【作用】
本発明によれば、膜を介してガスを溶解する際、被処理水の水圧をポンプにより一定流量、一定圧力としガス圧より高く維持することで水側への気泡としてのガスの混入を抑え、ガスからの不純物の持ち込みを防止し、なおかつオゾン水濃度はオゾン水濃度計測定値に基づく供給ガス濃度可変制御方式により一定に維持し、一定流量、一定圧力、一定濃度の高純度オゾン水を製造することが出来る。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
この実施例では図2のフロー説明図に従がう装置を用いた。
図2のガス溶解膜6はポリ四弗化エチレン系の中空糸であり、膜面積1.0m2、膜本数100本のモジュールを用いた。
オゾン発生機22は沿面、無声の複合放電型オゾン発生機を用い、原料ガスは酸素9、窒素ガス13を99:1の比で混合したものを1.5kg・f/cm2で流量調節器11、12、15、16を介して2.0Nl/minでオゾン発生機に供給し、約260mg/NL(W/V)のオゾンガスを発生させ溶解膜に通気した。
送水ポンプ3には動圧軸受型の無段階可変速制御方式で、吐出し量30L/min、全揚程22mのものを用いた。
オゾン水濃度計7には紫外線吸収方式のものを用いた。
【0015】
被処理水及びガスの流れを図2で説明する。まず、被処理水1である超純水をポンプ3、発信機付流量計4及び圧力計5を介して中空糸膜6の内空側に通水する。その際、被処理水の流れ方向はガスの流れに対し向流とするため、中空糸膜上部より入り下部に向う下向流とし、一方、ガスはオゾン発生機22にて発生させたオゾンガス1を中空糸膜の外空側に上向流で通気し、膜を介してオゾンを被処理水に溶解させた。製造したオゾン水2は、更に水圧調整弁8を介してユースポイントに送水した。その際、被処理水の流量は1.0m3/h±1%の誤差に、水圧は2.00±0.05kg・f/cm2と成るようポンプ3及び水圧調整弁8を用いて制御した。ポンプ3はシーケンサ21で処理したのち、ポンプ回転数を変化させる方式を採用した。
【0016】
オゾン水濃度制御は、中空糸膜出口よりオゾン水を一部分岐してオゾン水濃度計7に通水し、計測値をシーケンサ21で演算処理したのち、その値に基づきオゾン発生機22の放電電圧を変え発生オゾンガス濃度を変化させてオゾン水濃度を制御する方式を採用した。運転時の目標オゾン水濃度は7mg/L as O3とし、図3のガス濃度とオゾン水濃度の関係式から初発ガス濃度を245mg/NL(W/V)に設定し、オゾン水製造開始より5分間隙でオゾン水濃度測定値により上述の濃度制御を行なった。
【0017】
図4に原水とした超純水の装置入口圧の変動と装置出口側オゾン水の水圧、流量の変動、更にオゾン水濃度の経時変化を示す。装置入口水圧は図4のごとく1.7kg・f/cm2から2.1kg・f/cm2まで変動しているが、装置出口水圧は目標値2.0kg・f/cm2に対し誤差0.05kg・f/cm2程度、また流量は目標値1.0m3/hに対し、誤差0.005m3/h程度であり誤差率1%以内に収まっている。オゾン水濃度も製造開始3分後には、ほぼ目標値7mg/L as O3に達し、5分後には7.25mg/L as O3と成り、その値により濃度制御を加えたのちは、ほぼ7mg/L as O3を維持し、一定圧力、一定流量、一定濃度のオゾン水が得られた。
表1に原水とした超純水、製造したオゾン水の水質分析結果を示す。
【0018】
【表1】


【0019】
表1において、Na、Mg等の金属類は原水と同等であり、何れも検出限界以下である。また、TOC、微粒子も原水とした超純水と同等レベルの数値を示し不純物の増加は認められない。陰イオンでは、F-、NO3-イオンが若干増えているが、F-イオンはポリ四弗化エチレンの配管等から溶出したものであり、また、NO3-イオンは原料ガス中に窒素ガスを含むため、オゾン発生時の放電により窒素酸化物と成り、その一部が被処理水中に溶けてNO3-イオンと成ったものである。何れも数ppb程度であり、不純物量としては極めて微量である。
【0020】
実施例2
次に、本発明のオゾン水製造装置の出口ユースポイントに、半導体ウェハー洗浄装置を接続した場合を、図5のフローの概略説明図を用いて説明する。
図5において、オゾン水製造装置23を出たオゾン水は下流のウェハー洗浄装置25に供給され、最終的に石英製洗浄槽27の下部より流入し、上部よりオーバー・フローしながらウェハー洗浄を行う。なお、オゾン水製造装置の起動及び洗浄装置へのオゾン水供給は、洗浄装置側からの起動信号をオゾン水製造装置で受ける自動運転を行った。
【0021】
図6に、原水とした超純水の装置入口圧の変動と装置出口側オゾン水の水圧、流量及びオゾン水濃度の経時変化ならびに運転シーケンスを示す。装置入口圧は、図6のごとく1.7kg・f/cm2から2.15kg・f/cm2まで変動しているが、運転時の装置出口水圧は2.2kg・f/cm2を中心に0.05kg・f/cm2の誤差範囲に収り、流量は目標値である1.0m3/hに対し、変動範囲は0.005m3/h程度であり、誤差率1%以内に収っている。運転時、装置出口水圧が2.2kg・f/cm2を中心としているのは、洗浄装置側の配管、バルブ類のオリフィス、洗浄槽での背圧が0.2kg・f/cm2前後掛るためである。
また、オゾン水濃度経時変化を見ると、濃度制御操作を2分間毎に設定しているため、第1回目では運転開始より4分後に、第3回目の運転では2分後及び4分後に制御操作が行なわれ、ほぼ7mg/L as O3のオゾン水を製造し供給出来ることが分る。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のオゾン水製造装置は、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスをポリ四弗化エチレン系の中空糸膜を介して被処理水に溶解する際、中空糸膜内側の水圧をガス圧より高く維持することにより、また、その維持する手段として中空糸膜上流に無段階可変速制御方式のポンプを用い、更にオゾン水濃度を中空糸膜下流に設けたオゾン水濃度計を介して制御することにより、被処理水中に微細気泡ならびに不純物を含まず、なおかつ一定の濃度のオゾン水を一定圧力、一定水量で供給することが出来る。
本発明は、高純度の水質を要求する電子工業、医薬品工業等に用いられるプロセス用水、殺菌水、洗浄用水に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のオゾン水製造装置に用いる中空糸膜の構造概要図。
【図2】
本発明を詳しく説明するためのフローの説明図。
【図3】
オゾンガス濃度とオゾン水濃度の関係を示すグラフ。
【図4】
本発明のオゾン水製造装置を単独使用した際の装置入・出口の水圧、流量及びオゾン水濃度の経時変化を示すグラフ。
【図5】
オゾン水製造装置出口側に半導体ウェハー洗浄装置を接続して使用した実施例2のフローの説明図。
【図6】
図5のフローで使用した場合の装置入・出口の水圧、流量及びオゾン水濃度の経時変化を運転シーケンスと併記したグラフ。
【符号の説明】
1:原水(被処理水)2:オゾン水、3:ポンプ、4:発信機付流量計、5:発信機付圧力計、6:中空糸膜、7:オゾン水濃度計、8:水圧調整弁、9:O2ガス、10:オゾンガス、11、12:O2ガス流量調節器、13:N2ガス、14:排ガス、15、16:N2ガス流量調節器、17:ガスパージ弁、18:パージガス流量調節器、19:排ガス分解塔、20:ガス圧調整弁、21:制御部、22:オゾン発生機、23:オゾン水製造装置、24:洗浄装置入口・ドレン弁、25:ウェハー洗浄装置、26:ウェハー、27:石英洗浄槽、28:石英洗浄槽入口弁、19、32:薬液タンク、30、33:薬液供給ポンプ、31、34:薬液供給弁
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-01-04 
出願番号 特願平7-31866
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B01F)
P 1 651・ 113- ZA (B01F)
P 1 651・ 161- ZA (B01F)
P 1 651・ 55- ZA (B01F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 氏原 康宏
栗田 雅弘
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3130751号(P3130751)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 オゾン水製造方法及び装置  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 松田 大  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 松田 大  
代理人 内田 亘彦  
代理人 韮澤 弘  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 白井 博樹  
代理人 三枝 英二  
代理人 藤井 淳  
代理人 米澤 明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ