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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24D
管理番号 1107863
異議申立番号 異議2003-73741  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2004-10-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3447166号「床暖房用温水マット及びその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3447166号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
特許第3447166号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成7年11月30日に特許出願され、平成15年7月4日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について異議申立人住商メタレックス株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月23日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を
「断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる(a-1)床暖房用温水マットであって;上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されており、さらに、上記マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、配管横断路を含む横行部マット板の、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している(a-2)小小根太と、を備え、上記縦行部マット板は、互いに、上記小根太によって分割されており、上記配管横断路を含む横行部マット板に、上記小根太の先端部用の切込み、及び、上記小小根太用切込みが形成されており、各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シートによって全体に一体物となっていることを特徴とする床暖房用温水マット。」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3を
「断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる(b-1)暖房用温水マットの製造方法であって; 上記マットを、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化し、その際、配管横断路を含む横行部マット板に設けた小根太の先端部用の切込み及び分割した縦行部マット板間に小根太を配置し、上記配管横断路を含む横行部マット板の配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように設けた切込みに、マット板の上辺又は下辺にまで達している(b-2)小小根太を配置し、各部のマット板及び小根太を、マット上面に貼り付ける放熱シートによって全体に一体物とすることを特徴とする床暖房用温水マットの製造方法。」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の段落【0012】を
「【0012】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の床暖房用温水マットは、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる(c-1)床暖房用温水マットであって;上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されており、さらに、上記マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、配管横断路を含む横行部マット板の、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している(c-2)小小根太と、を備え、上記縦行部マット板は、互いに、上記小根太によって分割されており、上記配管横断路を含む横行部マット板に、上記小根太の先端部用の切込み、及び、上記小小根太用切込みが形成されており、各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シートによって全体に一体物となっていることを特徴とする。
本発明の床暖房用温水マットの製造方法は、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる(c-3)床暖房用温水マットの製造方法であって;上記マットを、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化し、その際、配管横断路を含む横行部マット板に設けた小根太の先端部用の切込み及び分割した縦行部マット板間に小根太を配置し、上記配管横断路を含む横行部マット板の配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように設けた切込みに、マット板の上辺又は下辺まで達している(c-4)小小根太を配置し、各部のマット板及び小根太を、マット上面に貼り付ける放熱シートによって全体に一体物とすることを特徴とする。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項a-1は、訂正前の請求項1中の「全体に一体物となっている」の記載、及び特許明細書中の「建物の床構造(コンクリートや木組みの床)の上に置かれる。」(段落【0004】)の記載に基づいて、床暖房温水マットの構成を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項a-2は、願書に添付した第1図の記載に基づいて、小小根太の配置構成を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b-1は、訂正前の請求項3中の「全体に一体物とする」の記載、及び特許明細書中の「建物の床構造(コンクリートや木組みの床)の上に置かれる。」(段落【0004】)の記載に基づいて、床暖房温水マットの構成を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b-2は、願書に添付した第1図の記載に基づいて、小小根太の配置構成を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c(c-1〜c-4)は、特許請求の範囲に係る訂正である訂正事項a、bに伴って、発明の詳細な説明との整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項a〜cは、いずれも新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人住商メタレックス株式会社は、次の甲第1〜7号証を提示し、特許第3447166号の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。
甲第1号証:特開平7-190393号公報
甲第2号証:特開平7-42958号公報
甲第3号証:特開平6-300284号公報
甲第4号証:特開平7-269885号公報
甲第5号証:実開平6-40718号公報
甲第6号証:実開平6-51719号公報
甲第7号証:実開平6-18809号公報
(2)本件発明
特許第3447166号の請求項1ないし4に係る発明は、平成16年8月23日けの訂正請求が認められたので、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)。
【請求項1】断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マットであって;上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されており、さらに、上記マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、配管横断路を含む横行部マット板の、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太と、を備え、上記縦行部マット板は、互いに、上記小根太によって分割されており、上記配管横断路を含む横行部マット板に、上記小根太の先端部用の切込み、及び、上記小小根太用切込みが形成されており、各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シートによって全体に一体物となっていることを特徴とする床暖房用温水マット。
【請求項2】 上記横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板が、発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形されていることを特徴とする請求項1記載の床暖房用温水マット。
【請求項3】 断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる暖房用温水マットの製造方法であって; 上記マットを、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化し、その際、配管横断路を含む横行部マット板に設けた小根太の先端部用の切込み及び分割した縦行部マット板間に小根太を配置し、上記配管横断路を含む横行部マット板の配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように設けた切込みに、マット板の上辺又は下辺にまで達している小小根太を配置し、各部のマット板及び小根太を、マット上面に貼り付ける放熱シートによって全体に一体物とすることを特徴とする床暖房用温水マットの製造方法。
【請求項4】 発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形して上記横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板を製造することを特徴とする請求項1記載の床暖房用温水マットの製造方法。
(3)刊行物に記載された発明
甲第1号証(特開平7-190393号公報)には、断熱材(「発泡ポリエチレンフォーム」として記載。)からなり、上表面にループ状の配管溝(「溝」)を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「温水パイプ」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「被覆部材」)と、を備えた建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「暖房装置」)であって、上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分と、それ以外の部分とが一体になって作製されており、さらに、マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太(「小根太片」及び「小根太とは別体の小根太片から構成」、「図8」)と、を備え、マット板及び小根太は、マット上面に張る付けられる放熱シートによって全体に一体物となっている床暖房用温水マットが記載されている。
甲第2号証(特開平7-42958号公報)には、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝(「案内溝」として記載。)を有するマット(「配管用パネル」、「折り返し配管用パネル」)と、このマットの配管溝に敷設される温水配管(「可撓性のパイプ」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「伝熱材」)とを備えた、建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「床暖房用パネル」)であって、上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(「配管用パネル」)と、それ以外の部分(「折り返し配管用パネル」)とに分割して作製されている床暖房用温水マットが記載されている。
甲第3号証(特開平6-300284号公報)には、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝(「溝」として記載。)を有するマット(「温水マット本体」)と、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「温水チューブ」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「アルミシート」)とを備えた、建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「温水マット」)であって、マットの所々に埋め込まれている帯状の小根太を備えたものが記載されている。
甲第4号証(特開平7-269885号公報)には、断熱材からなり、上表面に配管溝(「ガイド溝」として記載。)を有するマット(「断熱用板」)と、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「湯パイプ」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「金属製の放熱板」)と、を備えた建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「床暖房装置」)であって、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分が、互いに小根太(「根太部材」)によって分割されているものが記載されている。
甲第5号証(実開平6-40718号公報)には、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝(「図1(a)」に記載。)を有するマットと、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「温水パイプ」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「アルミニウム箔」)と、を備えた、建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「暖房マット」)であって、マットの所々に小根太(「枕木」)が埋め込まれているものが記載されている。
甲第6号証(実開平6-51719号公報)には、断熱材からなり、上表面に配管溝(「溝」として記載。)を有するマット(「マット本体」)と、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「温水管」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「アルミ箔」)と、を備えた建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「床暖房装置」)であって、マットの所々に小根太(「根太」)が埋め込まれているものが記載されている。
甲第7号証(実開平6-18809号公報)には、断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマット(「基材シート」として記載。)と、このマットの配管溝に敷設された温水配管(「導管」)と、マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シート(「アルミニウム箔」)と、を備えた、建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マット(「軟質床暖房マット」)であって、マットの所々に小根太(「部材」)が切込みにより埋め込まれているものが記載されている。

(4)対比・判断
[本件発明1について]
本件発明1(前者)と甲第1号証記載の発明(後者)とを対比すると、両者は、前者では、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されている(以下、「相違点の構成A」という。)のに対し、後者では、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とは一体に作製されている点で少なくとも相違している。
そこで、上記「相違点の構成A」につき、他の刊行物に記載されているか検討する。
甲第2号証には、確かに、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分と、それ以外の部分とを有するマットが記載されている。
しかし、これらのマットは、放熱シートの上に温水配管を敷設するものであることに加えて、施工現場で各部マットを適宜接合するものであって、本件発明1のように、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されているものとは異なるものでり、この技術を甲第1号証記載の発明に適用しても、直ちに本件発明1を構成することはできない。 また、甲第3号証〜甲第7号証には、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されているとの記載も示唆も見当たらない。
そして、本件発明1は、上記「相違点の構成A」を具備することにより、特許明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
[本件発明2について]
本件発明2は、本件発明1に、横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板が、発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形されているとの発明特定事項を付加し、限定したものである。
したがって、本件発明2は、[本件発明1について]で検討したのと同様、甲各号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
[本件発明3について]
本件発明3(前者)と甲第1号証記載の発明(後者)とを対比すると、両者は、前者では、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化している(以下、「相違点の構成B」という。)のに対し、後者では、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とは一体に作製している点で少なくとも相違している。
そこで、上記「相違点の構成B」につき、他の刊行物に記載されているか検討する。
甲第2号証には、確かに、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分と、それ以外の部分とよりマットを作製する点が記載されている。 しかし、これらのマットは、放熱シートの上に温水配管を敷設するものであることに加えて、施工現場で各部マットを適宜接合するものであって、本件発明3のように、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化しているものとは異なるものでり、この技術を甲第1号証記載の発明に適用しても、直ちに本件発明3を構成することはできない。
また、甲第3号証〜甲第7号証には、マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されているとの記載も示唆も見当たらない。
そして、本件発明3は、上記「相違点の構成B」を具備することにより、特許明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証ないし甲第7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
[本件発明4について]
本件発明4は、本件発明1に、発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形して上記横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板を製造するとの発明特定事項を付加して限定し、製造方法としたものである。 したがって、本件発明4は、[本件発明1について]で検討したのと同様、甲各号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし本件発明4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
床暖房用温水マット及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、 このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、 マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マットであって;
上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、
各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されており、
さらに、
上記マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、
配管横断路を含む横行部マット板の、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太と、
を備え、
上記縦行部マット板は、互いに、上記小根太によって分割されており、
上記配管横断路を含む横行部マット板に、上記小根太の先端部用の切込み、及び、上記小小根太用切込みが形成されており、
各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シートによって全体に一体物となっていることを特徴とする床暖房用温水マット。
【請求項2】 上記横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板が、発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形されていることを特徴とする請求項1記載の床暖房用温水マット。
【請求項3】 断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、 このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、 マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる暖房用温水マットの製造方法であって;
上記マットを、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、
各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、
その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化し、
その際、
配管横断路を含む横行部マット板に設けた小根太の先端部用の切込み及び分割した縦行部マット板間に小根太を配置し、
上記配管横断路を含む横行部マット板の配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように設けた切込みに、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太を配置し、
各部のマット板及び小根太を、マット上面に貼り付ける放熱シートによって全体に一体物とすることを特徴とする床暖房用温水マットの製造方法。
【請求項4】 発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有する金型キャビティーに射出・冷却して成形して上記横行部マット板のうちの曲線溝付きのマット板を製造することを特徴とする請求項1記載の床暖房用温水マットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、床から室内を暖める床暖房に用いられる温水マット及びその製造方法に関する。特には、マットの製造コストを低減することのできる床暖房用温水マット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、従来の温水マットの構造について説明する。
床暖房は、床板(フローリング)や畳の下に敷いた温水マット中の放熱管に温水(一例60℃)を流すことにより、室内を床から暖める方式の暖房である。一般の暖房では暖めにくい室内の底部を有効に暖めることができるので好評であり、近年の住宅向けに多く設置されつつある。
図5は、従来の床暖房用温水マットの構造を示す平面図である。図2は、本来は本発明の床暖房用温水マットの構造を示す模式的断面図であるが、図5の従来の床暖房用温水マットも同様の断面構造を有するので、図2をも参照しつつ説明する。
【0003】
図2に示されているように、発泡ポリエチレン等の断熱材で作られている、温水マット本体とも言うべきマット板5の上表面には、配管溝41が掘り込まれている。配管溝41はほぼU字形断面をしており、その中に放熱管(温水配管)2が敷設されている。放熱管2内には、約60℃の温水が流れる。放熱管2の上表面は、マット板5の上表面とほぼ面一である。放熱管は、架橋ポリエチレン等で作られており可撓性がある。マット板5は所々切り取られたようになっており、ここに小根太7が埋め込まれている。小根太7は、合板製等の帯状の板であり、温水マットを補強する役割と釘打ち部材としての役割の双方を果す。
【0004】
配管溝41を含むマット板5の上表面及び小根太7の上表面には、アルミ箔からなる放熱シート6が貼り付けられている。放熱シート6は、放熱管2内の温水から放出される熱を温水マットの上面に伝えて、温水マットから上方の室内に向けて放熱するためのものである。なお、温水マット1は、建物の床構造(コンクリートや木組みの床)の上に置かれる。温水マット1上には、その室内の種類に応じた床材(フローリング、畳、カーペット)が敷かれる。
【0005】
次に、図5を参照しつつ従来の温水マットの平面的構造について説明する。図5は、上表面の放熱シートをはがした状態である。温水マット101には、図の縦方向に8本の小根太107が入れられている。図の最左端の小根太107は、温水マット101の上辺130からくし歯状に図の下方に延びて、温水マット101の下辺131近くにまで達している。左から2番目の小根太107は、下辺131から上方に延びて上辺130の近くにまで達している。このように、小根太は交互にかみあった2枚のくし歯のように配置されている。
【0006】
温水マット101の表面の、小根太107以外の部分は、マット板103が存在しており、マット板103上にはループ状に放熱管102が敷設されている。すなわち、温水マット101の左半分においては、温水マット101の上辺130中央部に配置されている温水入口ヘッダー119から2本の放熱管102aが出て小根太107間を下辺131方向に延び、小根太107の先端108とマット下辺131との間の配管横断路113を左に進み、さらに小根太107間を上昇し、下降し、最左端の小根太107の左側に出て上昇して、温水マット101の左上隅の折り返し部123に達し、ここでUターンして、マット左辺132の近傍を下に進み、その後配管横断路113を右に進み、さらにその後小根太107を縫うように上昇、下降、上昇して出口ヘッダー121に入っている(放熱管102b)。
【0007】
なお、入口ヘッダー119は、温水入口管115から供給された温水を2本の入側の放熱管102aに分配する。出口ヘッダー121は、2本の出側の放熱管102bからの温水をまとめて温水出口管117に送り出す。小根太107間を小根太107の長手方向に沿って敷設されている放熱管102の部分を縦行部といい、小根太107の先端108とマットの上下辺130、131との間の横断路113に敷設されている部分を横行部という。
【0008】
図5の従来の温水マットの諸元の一例を以下に示す。
マット全体寸法:横幅2,680mm、縦幅1,770mm、厚さ12mm
マット板:発泡ポリエチレン、厚さ12mm
有効放熱面積:4.74m2
放熱管:架橋ポリエチレン管、外径7.2mm、肉厚1.1mm、総延長68m
小根太:合板、幅45mm、厚さ12mm
【0009】
図5の温水マットのマット板103は、従来は一枚物であった。つまり、小根太107の入る部分に、上辺130及び下辺131から中央部に向かって細長い切れ込みが入っているものの、マット板103は全体で一枚につながっていた。そして、マット板103の配管溝加工は、樹脂溶融工具(切削加工におけるエンドミルに相当)を3次元的に動かすことのできるルーターと呼ばれる加工機械(切削加工におけるプラノミラーに相当)で行っていた。すなわち、ルーターのテーブルの上に大きな一枚物の発泡ポリエチレン(又は発泡ポリスチレン)の板を置き、その板に配管溝の深さまで樹脂溶融工具を押し込み、配管溝のループパターンに沿って工具(あるいはテーブル)を動かして配管溝を加工していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法には以下のような問題点があった。
▲1▼ マット板の寸法が大きいため(最大3.3m×2.4m)、それに応じたテーブルを有するルーターを工場に設置する必要があり、高額の設備投資を要していた。
▲2▼ 配管溝を1本ずつルーターで加工するため、生産能率が悪く、かつ加工コストも高かった。
▲3▼ マット板の寸法に合った素材が得られないこともあるので、端材が出る場合には材料歩留が悪かった。
【0011】
本発明は、製造コストを低減できる床暖房用温水マット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の床暖房用温水マットは、 断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、 このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、 マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マットであって; 上記マットは、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製されており、 各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体が一体化されており、 さらに、 上記マットの所々に埋め込まれている帯状の板である小根太と、 配管横断路を含む横行部マット板の、配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上1にくるように配置され、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太と、 を備え、 上記縦行部マット板は、互いに、上記小根太によって分割されており、 上記配管横断路を含む横行部マット板に、上記小根太の先端部用の切込み、及び、上記小小根太用切込みが形成されており、各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シートによって全体に一体物となっていることを特徴とする。
本発明の床暖房用温水マットの製造方法は、 断熱材からなり、上表面にループ状の配管溝を有するマットと、 このマットの配管溝に敷設された温水配管(放熱管)と、 マットの上表面に貼り付けられた、良熱伝導材からなる放熱シートと、を備えた、全体に一体物となって建物の床構造の上に置かれる床暖房用温水マットの製造方法であって; 上記マットを、何本かの配管溝が直線状に並行して配列されている部分(縦行部マット板)と、それ以外の部分(横行部マット板)とに分割して作製し、 各部マット板を組み合わせてその上に放熱管を敷設し、 その後、マット板及び放熱管上に放熱シートを貼り付けることにより全体を一体化し、 その際、 配管横断路を含む横行部マット板に設けた小根太の先端部用の切込み及び分割した縦行部マット板間に小根太を配置し、 上記配管横断路を含む横行部マット板の配管横断路の外側とマット板上辺又は下辺との間において、上記小根太の延長線上にくるように設けた切込みに、マット板の上辺又は下辺まで達している小小根太を配置し、各部のマット板及び小根太を、マット上面に貼り付ける放熱シートによって全体に一体物とすることを特徴とする。
【0013】
マットを何部分かのマット板に分割することにより、マット板の加工(あるいは成形)機械を小型にすることができる。また、並列直線溝のみ存在する部分のマット板は、押し出し成形で最終品を一発成形するか、多工具を有するルーターで一気に溝加工するかにより作製できるので生産能率が向上する。なお後者の多工具ルーター加工の場合、溝は必ずしも直線でなくともよい。
【0014】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下、図面を参照しつつより具体的に説明する。まず、本発明の製造方法を実現するのに適合した床暖房用温水マットの構造について説明する。
図1は、本発明の1実施例に係る床暖房用温水マットの構造を示す平面図である。図2は、図1の温水マットの断面構造を模式的に示す断面図である。図1は、放熱シートを貼る前のマットを上から見た状態である。
【0015】
図2に示されている基本的な断面構造は、従来の温水マットと定性的には変らない。ただし、放熱管のサイズは従来の外径7.2mmよりも大(10mm)となっている。
【0016】
次に図1を参照しつつこの実施例の温水マットの平面的構造を説明する。
図1の温水マット1も、図5の従来の温水マットと同様に、8本の小根太7が縦方向に延びるように配列されている。隣合う小根太7のピッチは303mmで従来の温水マットと同じである。しかし、小根太7の平面的形状は、図5の温水マットとは異なっている。すなわち、図1の温水マット1は、形状の異なる2種類の小根太(両端横断路型小根太7aと片端横断路型小根太7b)を有する。例えば、最左端の小根太7aは、その両端23、25がいずれもマット板内でとどまっており、マットの上辺19又は下辺21にまでは達していない。そして、両小根太の上下端部23、25と、上下辺19、21との間には、配管横断路13aと小小根太9とが存在している。
【0017】
左上隅の配管横断路13aは、マット板(横行部マット板3a)が残っている部分であり、また放熱管2が1本その中央部を通過している。小小根太9は、長さの短い(一例40mm)小根太である。小小根太9は、配管横断路13aの外側と上辺19又は下辺21との間に、小根太7aの延長線上にくるように配置されている。小小根太9は、マット1の上辺19及び下辺21にも釘打ちできる部位が必要との観点から設置されているものである。
【0018】
配管横断路13aの近傍(左脇又は右脇)には、補助小根太11が設置されている。補助小根太11は、厚さと幅が小根太7や小小根太9と同じ(12mm、45mm)で、長さは一例で175mmであり、マットの上下辺19、21から、小根太7に平行にマット内側に延びるように設けられている。補助小根太11は、配管横断路13aの部分の耐圧強度を補強するのが主目的である。すなわち、配管横断路13a上を図の横方向にフローリング材が置かれた場合、そのフローリング材を支える板材がマット1内に必要とされることとなる。特に、左上の1列目、2列目、3列目の小根太7の上部には、横方向に3列つづけて配管横断路13a、13b、13aが存在するので、補助小根太11がもし存在しないと、この3列つづきの配管横断路上にくるフローリング材にかかる荷重が、放熱管2にかかってしまい変形(床沈み)のおそれがでてくる。
【0019】
図1の温水マットの左から2番目の小根太7bは、片端横断路型の小根太である。すなわち、小根太7bの下側はマット下辺21にまで達していて配管横断路がなく、上側は上辺19まで達しておらず、小根太端部27の先に配管横断路13bと小小根太9が存在する。これらの役割は、最左端の小根太7aの場合と同じである。なお、配管横断路13bには、2本の放熱管が通過している。
左から3番目の小根太7aは再び両端横断路型であり、4番目の小根太7bは片端横断路型である。以降、右に向かって、交互に両端横断路型の小根太7aと片端横断路型の小根太7bとが配列されている。
【0020】
図1の温水マット1のマットは、多数のブロックに分割されている。まず上下方向の分割としては、上辺及び下辺の補助小根太11の内側端を結ぶ線(マット板切れ目4)で、中央部の縦行部マット板5と両端部の横行部マット板3とに分けられている。さらに、縦行部マット板5は、小根太7によって左右方向に分割されている。また、横行部マット板3は、補助小根太11や小根太7によって左右方向に分割されている。このように分割されているのは、主にマット板の配管溝加工能率を向上させるという製造合理化の観点からである。なお、各部のマット板及び小根太は、マット上面に貼り付けられる放熱シート(図2の6)によって全体に一体物となる。
【0021】
マットの各ブロックについて図3及び図4をも参照しつつ、具体的に説明する。
図3は、図1の床暖房用温水マットに用いられる各種横行部マット板の平面形状を示す平面図である。図4は、図1の床暖房用温水マットに用いられる縦行部マット板の平面形状を示す平面図である。
図3(a)に示されている横行部マット板3aは、1本溝の配管横断路13aを含むタイプのマット板である。図1の温水マット1では、左上隅等の4カ所に使用されている。横行部マット板3aの左右勝手違いのものが横行部マット板3a´であり、図1の温水マット1には、上辺の左から3番目等の4カ所に使用されている。図3中において、符号51は小小根太用切込み、符号53は小根太の先端部用の切込みである。
【0022】
図3(b)に示されている横行部マット板3bは、2本溝の配管横断路13bを含むタイプのマット板である。図1の温水マット1では、上辺左から2番目等の3カ所に使用されている。図3(e)に示されている横行部マット板3eは、横行部マット板3bの幅をやや広くしたタイプであり、図1の温水マット1では、下辺右隅に使用されている。図3(c)に示されている横行部マット板3cは、図1の温水マット1の上辺右隅に使用されている。図3(d)に示されている横行部マット板3dは、放熱管のUターン部31を含むタイプで、図1の温水マット1の下辺左隅に使用されている。
【0023】
図4に示されているように、縦行部マット板5は2種類しかない。すなわち、縦に直線的に延びる配管溝41を3本有する縦行部マット板5aと、配管溝41を2本有する縦行部マット板5bである。図1の温水マットでは、左端から右に8枚の縦行部マット板5aが用いられており、最右端の1枚のみが縦行部マット板5bである。これらの縦行部マット板5は、いずれも配管溝41が直線かつ平行であるので溝加工が楽である。例えば、発泡樹脂の押し出しや、あるいはルーターを用いた溶融加工によるにしても、ルーターのヘッドをあるピッチで3本設けておいてヘッドを1パスさせるだけで、3本の配管溝41を能率よく加工できる。
【0024】
図1の床暖房用温水マットにおける放熱管の配置について説明する。
図1の温水マット1の放熱管2には、右上隅に温水の入口15及び出口17が近接して設けられている。入口15から行き放熱管2aが延び、小根太7間を縫うように上下に蛇行してマット左下隅のUターン部31に到り、そこから戻り放熱管2bとなって同様にマット右上隅の出口17にまで戻ってくる。具体的には、右上隅からスタートした行き放熱管2aは図の下方向に小根太7bと平行してマットの下辺21近くまで進み(この部分を縦行部33という)、横行部マット板3e部で左方向に90°曲がって配管横断路13bを横方向に通過する(この部分を横行部35という)。つづいて縦行部マット板5a内を上に進み、横行部マット板3a´部でUターンし、小根太7a(右から2本目)に沿って下に進み、横行部マット板3a´部で曲がって配管横断路13aを通って左に進む。そして右から3番目の小根太7bに沿って上に進み横行部マット板3b部の配管横断路13bでUターンし小根太7bに沿って下に進む。その後は同様にして進む。
【0025】
次にマットの製造方法の詳細を説明する。
(1)溶着法:
平行溝マット板については、この溶着法で製造するのが最も生産能率が高い。すなわち、溝の側壁の部分を構成するポリエチレン(又はポリスチレン)の複数の棒状の部材を、溝の底部を構成する薄い一枚のシート(同一材料製)の上に溶着により貼りつける。なお、棒状の部材は押し出し成形した板をスリット加工により作製する。また、溶着の際にも、棒状の部材とシートを同時に押し出して成形することもできる。押し出し加工の諸元の一例は以下のとおりである。
押し出し温度:170℃
押し出し速度:3m/sec
【0026】
(2)同時多溝加工法(ルーター):
加熱した複数のルーターヘッドで発泡ポリエチレン(又は発泡ポリスチレン)を部分的に溶かし、複数列の溝を同時加工する。この際、素材の板は、真空(減圧)チャックテーブルに固定して溝長手方向に送る。諸元例は以下のとおりである。
ヘッド温度:200〜300℃
テーブル送り速度:1〜2m/sec
【0027】
(3)機械加工:
ルーターの替りにエンドミル又はグラインダーで溝を削り取る方法である。その諸元例は以下のとおりである。
切削刃先回転速度:5,000〜6,000rpm
テーブル送り速度:1〜2m/sec
【0028】
(4)型内発泡成形法:
曲線溝マット板を生産能率よく製造できる方法である。発泡剤入りの溶融ポリエチレン(又はポリスチレン)を、曲線溝付きのマット板の形状を有す金型キャビティーに射出・冷却して一発成形する。その諸元例は以下のとおりである。
金型温度:130〜140℃
【0029】
(5)焼き印式型押し付け法:
この方法も曲線溝マット板の溝加工に用いられる。配管溝形状の凹部を有する型を発泡ポリエチレン平板の表面に押し付けて、アールや小根太用切欠きを一発で加工する方法である。溝断面形状がややシャープさに欠ける傾向もあるが、用いることのできる方法の1つである。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の床暖房用温水マット及びその製造方法は以下の効果を発揮する。
▲1▼ 製造あるいは加工するマット板の寸法が小さくてすむので、製造装置が小型のものですむ。
▲2▼ 各部を標準的な形状を有するようにすれば、様々な形状寸法の温水マットを標準部分品の組合せとして作製できる。
▲3▼ 製造しやすいような形状(例えば直線平行溝)の部分に分けて、その形状に合った高能率の生産方法がとれる。
▲4▼ ▲1▼〜▲3▼の結果、温水マットのマット板の製造コストを低減できる。
▲5▼ マットが分割してあるため、小根太のピッチ(一例303mm)が正確に規定できる。
▲6▼ 広い一枚物のマットの場合、ルーター加工中にマットが変形することがあるが、本発明のマットではそのようなことはなく、外形寸法の精度が向上する。
▲7▼ 直線溝部分の長さを変えることにより様々な寸法のマットの生産に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の1実施例に係る床暖房用温水マットの構造を示す平面図である。
【図2】
図1の温水マットの断面構造を模式的に示す断面図である。
【図3】
図1の床暖房用温水マットに用いられる各種横行部マット板の平面形状を示す平面図である。
【図4】
図1の床暖房用温水マットに用いられる縦行部マット板の平面形状を示す平面図である。
【図5】
従来の床暖房用温水マットの構造を示す平面図である。
【符号の説明】
1 温水マット 2 温水配管(放熱管)
3 横行部マット板 4 マット板切れ目
5 縦行部マット板 6 放熱シート
7 小根太 9 小小根太
11 補助小根太 13 配管横断路
15 温水入口 17 温水出口
19 上辺 21 下辺
23、25、27 小根太端部 31 Uターン部
33 縦行部 35 横行部
41 配管溝 51 小小根太用切込み
53 小根太用切込み
101 温水マット 102 放熱管
103 マット板 107 小根太
108 小根太先端 113 配管横断路
115 温水入口管 117 温水出口管
119 入口ヘッダ 121 出口ヘッダ
123 折り返し部 130 マット上辺
131 マット下辺 132 マット左辺
133 マット右辺
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-09 
出願番号 特願平7-334325
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F24D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関口 哲生  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 岡本 昌直
櫻井 康平
登録日 2003-07-04 
登録番号 特許第3447166号(P3447166)
権利者 コーワ化成株式会社
発明の名称 床暖房用温水マット及びその製造方法  
代理人 大橋 弘  
代理人 渡部 温  
代理人 渡部 温  

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