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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C09D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C09D |
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管理番号 | 1107880 |
異議申立番号 | 異議2003-73330 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-04-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-19 |
確定日 | 2004-01-05 |
分離された異議申立 | 有 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3454498号「消去性インキ組成物及びこれを用いた水性ボールペン」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3454498号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
特許第3454498号の請求項1〜10に係る発明は、平成10年9月25日に特許出願され、平成15年7月25日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人羽切正治より特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成16年8月10日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 訂正請求は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次の(a)〜(d)のとおりである。 (a)特許請求の範囲の請求項1、2を削除する。 (b)特許請求の範囲の請求項3において、項番号を「請求項1」とする。 (c)特許請求の範囲の請求項4において、項番号を「請求項2」とし、 「請求項1〜3のいずれかに記載」とあるのを「請求項1に記載」と訂正する。 (d)特許請求の範囲の請求項5において、項番号を「請求項3」とし、 「請求項1〜4のいずれかに記載」とあるのを「請求項1又は2に記載」と訂正する。 (e)特許請求の範囲の請求項6において、項番号を「請求項4」とし、 「請求項5記載」とあるのを「請求項3記載」と訂正する。 (f)特許請求の範囲の請求項7において、項番号を「請求項5」とし、 「請求項6記載」とあるのを「請求項4記載」と訂正する。 (g)特許請求の範囲の請求項8において、項番号を「請求項6」とし、 「請求項5〜7のいずれかに記載」とあるのを「請求項3〜5のいずれかに記載」と訂正する。 (h)特許請求の範囲の請求項9において、項番号を「請求項7」とし、 「請求項5〜8のいずれかに記載」とあるのを「請求項3〜6のいずれかに記載」と訂正する。 (i)特許請求の範囲の請求項10において、項番号を「請求項8」とし、「請求項1〜9のいずれかに記載」とあるのを「請求項1〜7のいずれかに記載」と訂正する。 (j)明細書段落番号【0008】、【0009】、及びその全文を削除する。 (k)明細書段落番号【0011】において、「4.上記第1項〜第3項のいずれかに記載」とあるのを「4.上記第3項に記載」と訂正する。 (l)明細書における段落番号【0010】〜【0055】を、段落番号 【0008】〜【0053】に繰り上げる。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項(a)は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項(b)は、先行する請求項の削除により請求項の項番号を繰り上げるものであり、訂正事項(c)〜(i)は、同様に請求項の項番号を繰り上げ、引用している請求項の番号を整合させるものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。さらに、訂正事項(j)、(k)は、発明の詳細な説明の記載を、訂正された特許請求の範囲に整合させるものであり、訂正事項(l)は、段落番号の削除によりそれに続く段落番号を繰り上げるものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項(a)は請求項の削除であり、訂正事項(j)、(k)は発明の詳細な説明の削除された請求項に該当する個所の削除であり、訂正事項(b)〜(i)は請求項の項番号及びそれに伴う引用する項番号の変更であり、訂正事項(l)は単なる段落番号の変更であるから、いずれも新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 ア.本件発明 前述のように上記訂正が認められるから、本件請求項1〜8に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】少なくとも着色剤を含み、かつ、造膜樹脂を含まない水性インキ組成物であって、当該着色剤の平均粒径が2〜7μmであり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下であることを特徴とする水性ボールペン用消去性インキ組成物。 【請求項2】着色剤の含有量がインキ組成物中1〜40重量%である請求項1に記載の消去性インキ組成物。 【請求項3】さらに水溶性高分子を含む請求項1又は2に記載の消去性インキ組成物。 【請求項4】水溶性高分子が多糖類である請求項3記載の消去性インキ組成物。 【請求項5】多糖類が、キサンタンガム、カルボキシルメチルセルロース、グアーガム、プルラン、ラムザンガム、ウエランガム及びサクシノグルカンの少なくとも1種である請求項4記載の消去性インキ組成物。 【請求項6】水溶性高分子の含有量がインキ組成物中0.1〜4重量%である請求項3〜5のいずれかに記載の消去性インキ組成物。 【請求項7】ELD粘度計(3°(R14コーン)0.5rpm(20℃))によるインキ粘度が100〜10000mPa・sである請求項3〜6のいずれかに記載の消去性インキ組成物。 【請求項8】請求項1〜7のいずれかに記載の組成物をインキとして用いた水性ボールペン。」 イ.申立ての理由の概要 特許異議申立人羽切正治は、訂正前の請求項1である、「少なくとも着色剤を含み、かつ、造膜樹脂を含まない水性インキ組成物であって、当該着色剤の平均粒径が2μm以上であり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下であることを特徴とする水性ボールペン用消去性インキ組成物。」に対して、発明の詳細な説明における比較例2は、着色剤の平均粒径が「20.2μm」であり、訂正前の請求項1は比較例2のインキ組成物を技術的範囲に含むものであるのに、表1(本件特許明細書段落【0053】)によれば、比較例2のインキ組成物はインキ流出性、定着性に問題があり、ボールペン用インキとして使用できないものであり、また、訂正前の請求項2における「着色剤の平均粒径が7μm以下であり、かつ、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下である」インキ組成物は、比較例1の平均粒径が「0.03μm」のものを技術的範囲に含むものであるのに、比較例1のインキ組成物は消去性に問題があり、消去性インキとして使用できないものであるから、訂正前の請求項1、2は、いずれも本発明の作用・効果を奏し得ない範囲を含むものであり、さらに、訂正前の請求項4〜10は、請求項1、2を直接又は間接に引用するものであるから、訂正前の請求項1、2、4〜10は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、又は、発明の詳細な説明は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない旨を主張している。 ウ.取消しの理由の概要 当審で通知した取消しの理由は、上記申立ての理由と同趣旨である。 エ.当審の判断 前記訂正により、訂正前の請求項1、2は削除され、さらに、訂正前の請求項4〜10における訂正前の請求項1、2を直接・間接に引用する記載はなくなったので、特許異議申立人の主張は、理由のないものとなった。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件請求項1〜8に係る発明についての特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1〜8に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 消去性インキ組成物及びこれを用いた水性ボールペン (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】少なくとも着色剤を含み、かつ、造膜樹脂を含まない水性インキ組成物であって、当該着色剤の平均粒径が2〜7μmであり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下であることを特徴とする水性ボールペン用消去性インキ組成物。 【請求項2】着色剤の含有量がインキ組成物中1〜40重量%である請求項1に記載の消去性インキ組成物。 【請求項3】さらに水溶性高分子を含む請求項1又は2に記載の消去性インキ組成物。 【請求項4】水溶性高分子が多糖類である請求項3記載の消去性インキ組成物。 【請求項5】多糖類が、キサンタンガム、カルボキシルメチルセルロース、グアーガム、プルラン、ラムザンガム、ウエランガム及びサクシノグルカンの少なくとも1種である請求項4記載の消去性インキ組成物。 【請求項6】水溶性高分子の含有量がインキ組成物中0.1〜4重量%である請求項3〜5のいずれかに記載の消去性インキ組成物。 【請求項7】ELD粘度計(3°(R14コーン)0.5rpm(20℃))によるインキ粘度が100〜10000mPa・sである請求項3〜6のいずれかに記載の消去性インキ組成物。 【請求項8】請求項1〜7のいずれかに記載の組成物をインキとして用いた水性ボールペン。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、新規な消去性インキ組成物及びこれを用いた水性ボールペンに関する。 【0002】 【従来技術】 消去性インキは、紙面上に文字、図面等を筆記した場合、これらの描線を消しゴムで消すことができるという特徴を有するものであり、サインペン等に用いられている。 【0003】 このような消去性インキは従来から知られており、例えば0℃以下の造膜温度もしくは0℃以下のガラス転移温度を有する樹脂、粒子径1〜20μの着色樹脂球状粒子及び水を含有し、インキ粘度5〜35mPa・secであることを特徴とする消去性インキがある(特開平5-279614号)。 【0004】 しかしながら、上記の消去性インキでは、その描線を完全に消去することができず、消去性という点ではなお改善する余地がある。特に、高い筆圧で筆記した場合、その描線が認識できなくなるまで消去することは不可能である。この問題は、特に筆圧が高くなる傾向にあるボールペン用インキとして用いる場合にはより顕著となる。しかも、上記インキをボールペン用インキとして用いようとする場合、インキが十分流出せず、そのままではボールペンに使用することはできない。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 従って、本発明は、特に、高い筆圧で筆記しても比較的容易に消すことができる消去性インキ組成物を提供することを主な目的とする。また、本発明は、水性ボールペン用の消去性インキ組成物、さらにその組成物をインキとして用いた水性ボールペンを提供することをも目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、粒径が一定範囲内に制御された着色剤を含むインキを採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0007】 すなわち、本発明は、下記の消去性インキ組成物及びこれを用いた水性ボールペンに係るものである。 【0008】 3.少なくとも着色剤を含む水性インキ組成物であって、当該着色剤の平均粒径が2〜7μmであり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下であることを特徴とする消去性インキ組成物。 【0009】 4.上記第3項に記載の水性ボールペン用消去性インキ組成物。 【0010】 5.上記第4項に記載の組成物をインキとして用いた水性ボールペン。 【0011】 【発明の実施の形態】 着色剤としては、後記の粒度分布を示すものであれば特に制限されない。すなわち、着色剤の種類としては、公知の水性インキ等で用いられているものを採用することができる。例えば、酸化チタン、カーボンブラック、群青、コバルトブルー、酸化クロム、べんがら、黒鉛等の無機顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントバイオレット19等の有機顔料が使用できる。その他にも、蛍光顔料、蓄光顔料等も用いることができる。また、いわゆるカラー樹脂球も本発明の着色剤として使用できる。カラー樹脂球としては、例えば、樹脂球(アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等)に染料又は顔料を含有させたもの、樹脂球を染料によって着色したもの等が挙げられる。さらに、本発明では、コピー用トナー等も使用できる。これら着色剤は、単独で又は2種以上で用いることができる。この中でも、カラー樹脂球を用いるのが好ましい。 【0012】 本発明において、これら着色剤は次のように粒径制御されていることが必要である。すなわち、着色剤の平均粒径が2μm以上であり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下であること、又は着色剤の平均粒径が7μm以下であり、かつ、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下であることが必要である。 【0013】 特に、本発明では、着色剤の平均粒径が2〜7μm(好ましくは2〜5μm)であり、かつ、粒径1.8μm以下のものが着色剤中1.6重量%以下、粒径7μm以上のものが着色剤中0.5重量%以下(好ましくは0.1重量%以下)の粒度分布に制御されていることが好ましい。この粒度分布の制御については、例えば自然沈降、遠心分離、フィルター濾過等の公知の分級方法によって行うことができる。 【0014】 なお、本発明にいう平均粒径は重量平均粒径を示す。これは、液相沈降法の光透過法(測定装置「CAPA-700」堀場製作所製)により重量累積分布を求め、分布50重量%の粒径を平均粒径として算出した。沈降は遠心分離により行い、着色剤の粒子の比重は真比重を用いて計算した。 【0015】 また、着色剤の形状は、特に制限されず、球状、多角形状、扁平状、繊維状等のいずれであっても良いが、本発明では球状が好ましく、特に真球に近いほど好ましい。 【0016】 着色剤の含有量は、他の成分との関係で適宜設定すれば良く、通常1〜40重量%程度、好ましくは3〜20重量%とすれば良い。40重量%を超える場合は粘度が高くなりすぎてインキの流出性が悪くなり、1重量%未満の場合は十分な着色性能が得られないことがある。 【0017】 本発明の消去性インキ組成物は、さらに水溶性高分子を含んでいても良い。水溶性高分子は、水溶性である限りは天然高分子、合成高分子、半合成高分子等のいずれであっても良く、また公知のゲルインキのゲル化剤として用いられているものもそのまま使用できる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。この中でもキサンタンガム、カルボキシルメチルセルロース、グアーガム、プルラン、ラムザンガム、ウエランガム、サクシノグルカン等の多糖類が好ましく、特に下記一般式で示される多糖類がより好ましい。 【0018】 【化1】 【0019】 (式中、Mはナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属を示し、nは1000〜3000である。) 上記一般式で示される多糖類は、優れたチキソトロピー性、曳糸性、流出性等をインキ組成物に有効に与えることができる。このような特性をもつ多糖類として、例えば「ラムザンガム」(三晶(株)製)等の市販品を用いることができる。この多糖類は、特に優れたチキソトロピー性を有し、インキ組成物に適度な粘性と流出性をより有効に付与することができる。このため、これをボールペン用インキとして用いる場合には、インクタンク内においてはインキ粘度が高いのでペン先からインキ洩れすることがなく、また着色剤の分離もない。その一方で筆記時のボールの回転により剪断力が加わわるとインキ粘度が低下して良好な流出性を発揮する。 【0020】 水溶性高分子の含有量は、他の成分との関係で適宜設定すれば良く、通常0.1〜4重量%程度、好ましくは0.2〜0.6重量%とすれば良い。4重量%を超える場合は粘度が高くなりすぎてインキの流出性が悪くなるおそれがあり、また0.1重量%未満の場合はインキが分離するおそれがある。 【0021】 本発明では、さらに必要に応じて分散剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤、粘度調整剤、pH調整剤等の公知の水性インキで用いられる各種添加剤も適宜配合することができる。、分散剤は、特に着色剤の分散性を高めるものであり、例えば、ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステルソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ等の陰イオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル等の非イオン系界面活性剤等を使用できる。この中でも、陰イオン系界面活性剤が好ましく、特にナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物がより好ましい。分散剤の添加量は、通常0.01〜1重量%程度、好ましくは0.1〜0.5重量%とすれば良い。 【0022】 湿潤剤は、特にインキの乾燥速度を所望の範囲に調整するものである。湿潤剤を添加することにより、保存性、キャップオフ性等をさらに向上させることが可能となる。具体的には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,8-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールもチオジグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ジグリセリン、ソルビット等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテルの他、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が使用できる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が好ましい。湿潤剤の添加量は、通常1〜30重量%程度、好ましくは2〜25重量%とすれば良い。 【0023】 防腐剤・防カビ剤としては、例えばソルビタン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、ベンズイミダゾール系化合物等を使用できる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、特に安息香酸ナトリウム等が好ましい。防腐剤・防カビ剤の添加量は、通常0.2〜3重量%程度、好ましくは0.5〜2重量%とすれば良い。 【0024】 またさらに、本発明では、その効果を妨げない範囲内で造膜樹脂として知られている樹脂類も適宜配合することもできる。樹脂類としては、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム、ラテックス等の天然ゴムが挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム等が好ましい。樹脂類の添加量は、通常10〜30重量%程度、好ましくは15〜25重量%とすれば良い。 【0025】 本発明組成物の溶媒も、公知の水性インキで用いられるものと同様のものを使用でき、例えば水(又は水系溶媒)を使用できる。この場合の水の使用量は、所望の粘度、他の成分の種類・添加量等によって適宜決定すれば良く、通常は総量で60〜95重量%程度、好ましくは70〜80重量%とすれば良い。 【0026】 本発明組成物の粘度は、最終製品の用途等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は100〜10000mPa・s程度、好ましくは500〜5000mPa・sとすれば良い。なお、粘度は、各成分の配合等により適宜調節することができる。本発明におけるインキ粘度は、ELD型粘度計を用い、3°(R14)コーン回転数0.5rpm(20℃)の条件下で測定した値を示す。 【0027】 本発明組成物は、基本的には公知の水性インキの製法と同様にして調製すれば良い。例えば、着色剤及び分散剤以外の成分をまず水に添加した後、粒度分布が調整された着色剤を撹拌しながら徐々に配合すれば良い。着色剤の粒度分布の調整は、顔料、カラー樹脂球等の着色剤に必要に応じて分散剤を添加した後、撹拌しながら水で希釈し、これによって得られた分散液を用いて遠心分離等により分級を行えば良い。 【0028】 本発明組成物は、実質的にあらゆる種類の筆記具、印刷等に適用することができる。筆記具としては、例えばマーカー、サインペン、ボールペン等のいずれにも用いることができる。特に、その優れた消去性からボールペン(水性ボールペン)用としても最適である。 【0029】 本発明の水性ボールペンは、インキとして本発明の消去性インキ組成物を用いるほかは、公知のボールペン用部材を採用すれば良い。例えば、インキ収容管も、公知の材料・大きさのものをそのまま適用できる。インキ収容管の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製パイプ、その他にも金属製パイプが採用できる。また、ボールペンチップについても公知の水性ボールペンで用いられているものと同様の材質・構造を採用できる。 【0030】 ボールペンの組み立ては、公知のボールペン組立方法に従えば良い。例えば、本発明の消去性インキ組成物を、洋白ボールペンチップ(ボール材質:超硬合金、セラミックス等)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管に充填してボールペンレフィールとし、次いで本体にボールペンレフィールを取り付け、尾栓を装着した後、ボールペンレフィールを遠心分離機により管中の空気を除去すれば、本発明の水性ボールペンを得ることができる。 【0031】 【発明の効果】 本発明の消去性インキ組成物は、特に一定範囲に制御された粒度分布を有する着色剤を含んでいるので、良好な定着性を維持しつつ、より優れた消去性を発揮できる。 【0032】 消去性に優れていることから、このインキ組成物で紙等に筆記された描線は消しゴムで容易に消すことができる。特に、高い筆圧で筆記した場合であっても、容易に消すことができる。この点において、本発明インキ組成物は、筆圧が比較的高くなるボールペン用インキとしても最適である。 【0033】 一方、定着性が良好であるので、その描線は手で擦る程度では容易に消えない。他方、筆記された描線の経時的安定性にも優れており、時間の経過とともに消えにくくなるようなことはなく、例えば1ヶ月経過後でも消しゴムで容易に消すことができる。 【0034】 また、本発明の組成物では、造膜樹脂を使用しなくても所定の消去性が得られるので、筆記後における造膜樹脂の変質による消去性の低下、保存時におけるインキ中での造膜樹脂の分離、ペン先での造膜樹脂の固化等の問題を一挙に解決することができる。すなわち、本発明インキ組成物は、経時安定性、保存性、インキ流出性、キャップオフ性等においても優れた効果を発揮することができる。 【0035】 加えて、本発明インキ組成物を水溶性高分子によりゲル化した場合は、これらの、経時安定性、保存性、インキ流出性、キャップオフ性等においてより一層優れた効果が発揮される。従って、従来の消去性インキのように分離・沈降したり、ペン中で目詰まりすることはない。また、インキ流出性も優れているので、描線が途切れるようなこともない。さらには、キャップオフ性においては、造膜樹脂を比較的多く含む従来の消去性インキではペン先で造膜が起こってペンが使用できなくなるのに対し、本発明組成物では、例えば24時間放置した後であっても支障なく筆記することが可能である。 【0036】 このような特徴を有する本発明の消去性インキ組成物は、各種のサインペン用インキ、マーカー用インキ、印刷用インキ等に有用である。殊に、本発明インキ組成物は、ボールペン用インキとしても最適である。 【0037】 【実施例】 以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。 【0038】 実施例1 着色剤(青色樹脂球(綜研化学製、樹脂:アクリル樹脂、染料:スダンブルーB))をデスパーに入れ、希釈分散液とし、3時間撹拌した。得られた分散液を用いて遠心分離により分級を行い、粒径2.5〜4μmの範囲に調整した。一方、水溶性高分子としてラムザンガム0.35重量部、湿潤剤としてエチレングリコール3.5重量部、分散剤としてナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部、防腐剤として安息香酸ナトリウム1重量部を水に溶解させて混合した。この溶液を撹拌しながら、分級された着色剤15重量部を徐々に添加し、添加後も3時間撹拌を行い、インキ組成物を得た。このインキ組成物の水の総量は79.65重量部とした。 【0039】 実施例2 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合としたほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、粒径0.5〜4.5μmを実施例1と同様にして分級し、2μm以下をカットしたものを用いた。 【0040】 着色剤:群青(ブルー02(ホリデーピグメンツ製))10重量部 水溶性高分子:キサンタンガム0.4重量部 湿潤剤:グリセリン5重量部 分散剤:ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 水83.1重量部 実施例3 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合としたほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、平均粒径5.9μmのものを実施例1と同様にして分級し、2.5〜7μmの範囲に調整したものを用いた。 【0041】 着色剤:黒色トナー(MBX-5(積水化学工業製))7重量部 水溶性高分子:ウエランガム2重量部 湿潤剤:ジエチレングリコール7.5重量部 分散剤:ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル0.1重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 水82.4重量部 実施例4 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合とし、さらに樹脂類を添加したほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、平均粒径7.1μmのものを実施例1と同様にして分級し、1.8〜6μmの範囲に調整したものを用いた。 【0042】 着色剤:青色樹脂球(ダイプラコートブルー(大日精化製、樹脂:ウレタン樹脂、顔料:シアニンブルー))10重量部 水溶性高分子:ラムザンガム0.3重量部 湿潤剤:ジエチレングリコール7.5重量部 分散剤:ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.1重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 樹脂類:スチレン-ブタジエンゴム20重量部 水61.1重量部 比較例1 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合としたほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、平均粒径0.03μmのものを用いた。 【0043】 着色剤:カーボンブラック(カーボンブラック#30(三菱化学製))3重量部 水溶性高分子:ラムザンガム0.35重量部 湿潤剤:エチレングリコール10重量部 分散剤:ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 水85.15重量部 比較例2 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合としたほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、平均粒径20.2μmのものを用いた。 【0044】 着色剤:黒色樹脂球(ラブコロール020(大日精化製、樹脂:アクリル樹脂、着色料:カーボンブラック))15重量部 水溶性高分子:キサンタンガム0.4重量部 湿潤剤:グリセリン5重量部 分散剤:ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 水78.1重量部 比較例3 着色剤、水溶性高分子、湿潤剤、防腐剤及び水を下記の配合としたほかは、実施例1と同様にしてインキ組成物を調製した。なお、着色剤の粒度は、平均粒径3.67μm、粒径1.8μm以下のものが5.5重量%、粒径7μmのものが1.4重量%のものを用いた。 【0045】 着色剤:蛍光青色樹脂球(エポカラーFP1050(日本触媒製))15重量部 水溶性高分子:ラムザンガム0.35重量部 湿潤剤:エチレングリコール3.5重量部 分散剤:ナフタレンスルホン酸ソーダホルマリン縮合物0.5重量部 防腐剤:安息香酸ナトリウム1重量部 水79.65重量部 試験例1 各実施例及び比較例で得られたインキ組成物を用いて水性ボールペンを作製した。これら水性ボールペンについて、消去性、定着性、インキ流出性、保存性及びキャップオフ性をそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。なお、各性能は次のようにして調べた。 【0046】 (1)消去性 測色計(「CR-241」ミノルタ製)で測定した測色濃度Yで示す。Yの値が大きいほど消去性が高いことを示す。 【0047】 (2)定着性 水性ボールペンを用いて、上質紙に筆記し、乾燥後に描線を指で擦り、描線の汚れ状態を鉛筆の種類と比較して調べた。鉛筆の筆記荷重は500gとした。○は2H以下の汚れ、△は2H〜2B程度、×は2B以上の汚れをそれぞれ示す。 【0048】 (3)インキ流出性 水性ボールペンを用いて上質紙に筆記した場合におけるインキ流出量(mg/100m)を測定した。 【0049】 (4)保存性 水性ボールペンを50℃で1ヶ月保存した後のインキ分離の有無、インキ流出性(目詰まり、途切れ及び濃度)について調べた。○はインキが全く分離せず、インキ流出性が良好なもの、△は若干インキが分離し、インキ流出性にも問題があるもの、×が全く実用できないほど分離しているものを示す。 【0050】 (5)キャップオフ性 水性ボールペンのキャップを開けたままで1時間放置した後の筆記状態を調べた。○はすぐに書けるもの、△は3文字以内で書けるようになるもの、×は20文字以上でも書けないものをそれぞれ示す。文字は、縦1cm×横1cmの正方形内に「A」を1文字として筆記した。 【0051】 【表1】 【0052】 表1の結果より、着色剤の粒径が所定範囲内に制御されていない比較例1〜3では、消去性、定着性、インキ流出性等のいずれかに問題があった。 【0053】 これに対し、着色剤の粒径が制御されたゲルインキからなる本発明インキ組成物は、消去性に優れるとともにインキ流出性、定着性等においても優れた効果を発揮できることがわかる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-25 |
出願番号 | 特願平10-272015 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(C09D)
P 1 651・ 537- YA (C09D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 千弥子 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
後藤 圭次 井上 彌一 |
登録日 | 2003-07-25 |
登録番号 | 特許第3454498号(P3454498) |
権利者 | 株式会社サクラクレパス |
発明の名称 | 消去性インキ組成物及びこれを用いた水性ボールペン |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 鈴木 活人 |
代理人 | 中野 睦子 |
代理人 | 大月 伸介 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 小原 健志 |
代理人 | 小原 健志 |
代理人 | 中川 博司 |
代理人 | 齋藤 健治 |
代理人 | 藤井 淳 |
代理人 | 大月 伸介 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 藤井 淳 |
代理人 | 舘 泰光 |
代理人 | 関 仁士 |
代理人 | 鈴木 活人 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 舘 泰光 |
代理人 | 関 仁士 |
代理人 | 齋藤 健治 |
代理人 | 中川 博司 |
代理人 | 中野 睦子 |