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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L 審判 全部申し立て 発明同一 H01L |
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管理番号 | 1107885 |
異議申立番号 | 異議2003-71429 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-05-28 |
確定日 | 2004-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3388836号「半導体製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、 次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3388836号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 特許第3388836号の請求項1に係る発明は、平成5年10月21日に特許出願され、平成15年1月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、高橋学より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月27日に訂正請求がなされたものである。 【2】訂正の適否についての判断 【2-1】訂正の内容 訂正事項a;【特許請求の範囲】の【請求項1】を、 「気相生長反応によりウェーハ表面に薄膜を生成する成膜工程を有する半導体製造方法に於いて、前記成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で、反応ガスとしてSiH4ガスのみを用いて反応温度650℃以下及び反応圧力0.5Torr以下の条件で、PolySi膜を生成することを特徴とする半導体製造方法。」と訂正する。 訂正事項b;段落【0011】の【課題を解決するための手段】を、 「本発明は、気相生長反応によりウェーハ表面に薄膜を生成する成膜工程を有する半導体製造方法に於いて、前記成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で、反応ガスとしてSiH4ガスのみを用いて反応温度650℃以下及び反応圧力0.5Torr以下の条件で、PolySi膜を生成する半導体製造方法に係るものである。」と訂正する。 【2-2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 [1]上記訂正事項aは、 訂正前の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「成膜工程」について、「8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で」という構成要件を具体的に限定したものである。 そして、「8インチφのウェーハ」を処理することについては、本件出願当初明細書(以下、「本件明細書」という)の段落【0008】に記載され、「ウェーハを水平姿勢で多段に保持し」については、段落【0006】に記載され、また、「ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で」については、段落【0008】及び段落【0010】の記載からして、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で処理することが目的であり、かつ、段落【0015】及び段落【0019】に、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で実用上充分な膜の均一性が得られたことが記載されている。 したがって、「8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で」という限定は、本件明細書に記載された事項に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、かつ、新規事項の追加にはあたらず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 [2]上記訂正事項bは、 上記【2-1】段落における訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るものであって、本件明細書に記載された事項に基づくものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、かつ、新規事項の追加にはあたらず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 【2-3】まとめ 上述のとおりであるから、上記【2-1】段落に記載した訂正事項a,bからなる訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、その訂正を認める。 【3】特許異議申立て理由の概要 特許異議申立人 高橋学は、次の甲第1〜5号証を提示し、 本件の請求項1に係る発明は、前記甲第1〜3号証に記載された発明、若しくは、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できた発明であり、その特許は、特許法第29条第1項第3号、若しくは、同条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきであるとしている。 さらに、本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に特許出願され、本件特許出願後に出願公開された甲第4号証に記載された発明であり、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものであるとしている。 甲第1号証;特開昭55-113318号公報 甲第2号証;特開平2-128418号公報 甲第3号証;特開昭62-229931号公報 甲第4号証;特願平2-404668号の出願当初の明細書及び図面(特開平6-13566号公報を援用) 甲第5号証;特開昭51-120666号公報 【4】本件特許発明 本件については、上記【2】段落で示したようにその訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「気相生長反応によりウェーハ表面に薄膜を生成する成膜工程を有する半導体製造方法に於いて、前記成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で、反応ガスとしてSiH4ガスのみを用いて反応温度650℃以下及び反応圧力0.5Torr以下の条件で、PolySi膜を生成することを特徴とする半導体製造方法。」である。 【5】上記甲各号証の記載内容 [1]甲第1号証には、 「半導体装置とその製造法」に関する発明が開示されており、その第3図及び第2頁左下欄第7〜10行に、 「反応管内にSiH4ガスを導入しその気圧を0.5Torrに保持しながら570℃に加熱し、SiH4の熱分解反応を60〜70分行ないアモルファス状態のポリSi層3を形成する」と記載されている。 [2]甲第2号証には、 「半導体装置の製造方法」に関する発明が開示されており、その第1頁左欄第5〜9行に、 「モノシラン(SiH4)を反応ガスとする減圧気相成長法において、540℃〜580℃の範囲の成長温度をもって、多結晶シリコン膜を単結晶シリコン層表面に直接堆積する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法」と記載され、 第3頁左上欄第5〜8行に、 「但し、ポリシリコン膜の成長条件としては、SiH4を反応ガスとして用い、また反応ガス圧を0.2Torr、反応ガス流量50SSCMとして共通にし、成長温度のみ変えて行う」と記載されている。 [3]甲第3号証には、 「蒸着方法」に関する発明が開示されており、その第2頁左下欄第20行〜同頁右下欄第14行に、 「上記装置を使用する場合には、チューブ1を約630℃に加熱し、まずルーツポンプ、そして次にターボポンプを使用して、0.1パスカル以下、即ち0.8mTorr以下の圧力を送る。次に、1.0cc/分の流量でチューブ1内にSiH4をブリードし、・・・チューブ1内の圧力を0.25〜1パスカル、即ち2.5〜10mTorrに維持する。・・・1パスカルのシラン圧力に対応する、上記方法を適用して、基体に蒸着したポリシリコン膜の粒径は」と記載されている。 [4]甲第4号証には、 「半導体素子の製造方法」に関する発明が開示されており、その第2頁第1欄第2行〜同頁第2欄第13行に、 「・・・SiH4を、0.05Torrから1.0Torrの圧力で温度550℃から600℃で減圧CVD法により、上記下部電極となるポリシリコンの膜厚を160nm以下に形成し、・・・・・温度550℃から600℃、SiH4の圧力を0.05Torrから1.0Torrでポリシリコン膜厚を160nm以下に形成して」と記載されている。 [5]甲第5号証には、 「半導体装置の製造方法」に関する発明が開示されており、その第2頁左下欄第9〜11行に、 「半導体基板(1)表面にてSiH4を650℃程度で熱分解させ、これによって厚さ1μ程度のポリSi層(3)を低温成長させ」と記載されている。 【6】特許異議申立てに対する当審の判断 本件発明における、「成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で(所望の反応条件で)PolySi膜を生成する」という構成に関しては、甲第1〜3号証及び甲第5号証にはなんらの記載も示唆もない。 そして、本件発明は、前記の構成により、「大径のウェーハに成膜する場合に、間隙を大きくすることなく、成膜を行えるので反応室内でのウェーハの実装密度が増大し、ウェーハ処理の生産性が向上すると共に構成物の大型化、装置の大型化を防止でき、装置の製造コストの低減を図り得る」という、明細書記載の作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明が、甲第1〜3号証のいずれかに記載された発明であるとは認められず(特許法第29条第1項第3号に該当せず)、また、甲第1〜3号証及び甲第5号証の記載内容を組み合わせることにより、当業者が容易に想到できたものとも認められない(特許法第29条第2項の規定に該当せず)。 さらに、本件発明における、前記した「成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で(所望の反応条件で)PolySi膜を生成する」という構成は、甲第4号証にもなんらの記載も示唆もない。 したがって、本件発明が、甲第4号証に記載された発明と同一であるとは認められない(特許法第29条の2に該当せず)。 【7】むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 気相生長反応によりウェーハ表面に薄膜を生成する成膜工程を有する半導体製造方法に於いて、前記成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で、反応ガスとしてSiH4ガスのみを用いて反応温度650℃以下及び反応圧力0.5Torr以下の条件で、PolySi膜を生成することを特徴とする半導体製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、半導体製造方法、特に半導体製造工程の1つであるウェーハ表面に各種薄膜を生成する半導体ウェーハの成膜方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 シリコン半導体製造工程に於いて、酸化及び化学気相生成法によるPolySi膜、SiO2膜、Si3N4膜、その他の薄膜の生成が行われる。 【0003】 斯かる工程を行うものとして縦型拡散(酸化)CVD装置が広く用いられている。 【0004】 図1に於いて縦型拡散(酸化)CVD装置の概略を説明する。 【0005】 反応管1はヒータ2に囲まれた状態で設置され、前記反応管1内部には反応ガス導入管3により反応ガス4が導入され、又排気ガス6は排気管5より排出される様になっている。 【0006】 前記反応管1の下方にはボートエレベータ7が設けられ、該ボートエレベータ7の昇降アーム8にボートキャップ9を介してボート10が乗載される。該ボート10にはウェーハ11が水平姿勢で多段に装填され、ウェーハ11が装填されたボート10を前記ボートエレベータ7が前記反応管1内に装入する様になっている。ボート10の装入状態ではボートキャップ9下端の炉口蓋12が前記反応管1下端を気密に閉塞する。 【0007】 前記ヒータ2で反応管1内を所定温度に加熱し、ボート10を介してウェーハ11を反応管1内に装入し、前記反応ガス4を導入してウェーハ11の表面に薄膜を生成している。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 前記した縦型拡散(酸化)CVD装置でウェーハを処理する場合、ウェーハが6インチφの場合のボートが保持するウェーハのピッチは4.76mm、又8インチφの場合のボートが保持するウェーハのピッチは6.35mmとなっており、この間隙以下の条件で膜生成は実施されていない。 【0009】 これは、ウェーハに成膜した膜厚の均一性、均質性がウェーハの性能に大きく影響し、狭隘な間隙は成膜品質を損なうことから上記したウェーハ間隙が最小限のものとなっている。更に、ウェーハ径が大きくなればなる程、ウェーハ間の間隙は大きくならざるを得ず、近年のウェーハ大型化に伴いウェーハ処理室に於ける実装密度は増々小さくなってきており、一度に処理し得るウェーハ枚数が減少している。処理枚数を増やそうとすると、反応室の高さを高くすることとなり反応管、ヒータ、ボート、ボートエレベータ等関連構造物も大きくなり、製作コストの高騰を招くこととなる。 【0010】 本発明は斯かる実情に鑑み、ウェーハの装填ピッチを増大させることなく、大径のウェーハの処理を行える様にしたものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明は、気相生長反応によりウェーハ表面に薄膜を生成する成膜工程を有する半導体製造方法に於いて、前記成膜工程では8インチφのウェーハを水平姿勢で多段に保持し、ウェーハの間隔を6.35mmより小さくした状態で、反応ガスとしてSiH4ガスのみを用いて反応温度650℃以下及び反応圧力0.5Torr以下の条件で、PolySi膜を生成する半導体製造方法に係るものである。 【0012】 【作用】 反応律速で成膜を行うと、膜均一性がよく大径のウェーハを近接させた状態で成膜処理をしても実用上充分な膜均一性が得られる。 【0013】 【実施例】 以下、図面を参照しつつ本発明の一実施例を説明する。 【0014】 ウェーハ表面への成膜の態様として反応律速、輸送律速とがある。反応律速は温度が低い領域での成膜態様であり、反応速度(成膜速度)が小さく、ウェーハ全面への反応ガス供給が足りていて、言わば反応温度で膜の生成速度が決定され、又輸送律速は温度の高い領域での成膜態様であり、成膜速度が大きく、ウェーハ周辺に対してウェーハの中心側はガスが足りない状態になり、膜厚が薄くなる。この様に反応温度で生成速度が決まらず、反応ガスの供給(輸送)状態で生成速度(特にウェーハ中心側)が決まる。 【0015】 ここで発明者は、成膜速度とウェーハ内の膜均一性を実験により求めた。この結果を図2に於いて示す。図2で示した結果は8インチφウェーハで、ウェーハ間隔ピッチを5.2mmとした場合のデータである。図2に於いて、成膜速度は反応温度を下げるか、反応圧力を下げるかによって減少し、反応温度を下げると、アレニウスプロットにより反応律速の状態に移行する。又、反応圧力を下げると、アレニウスプロットに示したグラフの傾きが変わり、同じ温度でも反応律速の状態に移行する。これは、反応圧力を下げるとガス濃度が稀薄になり、成膜速度が落ち、又、分子の移動速度が上がり、ガスの輸送速度が上がる為である。 【0016】 成膜速度を増大させると成膜の均一性が比例的に悪くなっていき、成膜速度が20オングストローム/minを越えると輸送律速の影響が顕著になり、15オングストローム/minに満たない範囲では反応律速の影響が支配的になると共に輸送律速の影響が小さくなる。 【0017】 膜の均一性は±2%以内であれば実用上支障ないことが分かっており、成膜速度15オングストローム/minに満たない範囲で成膜をすればよい。 【0018】 尚、SiH4ガスを用いたPolySi膜生成の場合は、反応温度650℃、反応圧力0.5Torr以下で反応律速の支配的な成膜条件となり、該成膜条件で成膜した膜の均一性が1%〜2%であり、実用上充分であることを確認している。 【0019】 以上述べた様に、成膜条件を限定することで、ウェーハ間隙が小さくても実用上充分な膜の均一性が得られる。 【0020】 【発明の効果】 以上述べた如く本発明によれば、大径のウェーハに成膜する場合に、間隙を大きくすることなく、成膜を行えるので反応室内でのウェーハの実装密度が増大し、ウェーハ処理の生産性が向上すると共に構成物の大型化、装置の大型化を防止でき、装置の製造コストの低減を図り得るという優れた効果を発揮する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 縦型半導体製造装置の一例を示す説明図である。 【図2】 成膜速度と膜均一性の関係を示す線図である。 【符号の説明】 1 反応管 2 ヒータ 3 反応ガス導入管 4 反応ガス 5 排気管 6 排気ガス 7 ボートエレベータ 8 昇降アーム 9 ボートキャップ 10 ボート 11 ウェーハ 12 炉口蓋 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-09-09 |
出願番号 | 特願平5-285609 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
P 1 651・ 161- YA (H01L) P 1 651・ 113- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田中 永一 |
特許庁審判長 |
池田 正人 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 川真田 秀男 |
登録日 | 2003-01-17 |
登録番号 | 特許第3388836号(P3388836) |
権利者 | 株式会社日立国際電気 |
発明の名称 | 半導体製造方法 |
代理人 | 三好 祥二 |
代理人 | 三好 祥二 |