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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01G |
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管理番号 | 1107911 |
異議申立番号 | 異議2003-71564 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2003-10-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-06-16 |
確定日 | 2004-09-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3398147号「屋上の緑化方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3398147号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3398147号の請求項1ないし3に係る発明は、平成14年4月9日に特許出願され、平成15年2月14日にその特許権の設定登録がなされ、その後、箭内正人より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月20日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1ないし3を、 「【請求項1】 容器の中で植物を栽培し、栽培後、栽培した前記植物を収納した前記容器を施工場所である屋上へ複数運搬し、前記植物を収納した前記容器を前記屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、 前記容器の設置部位は屋上に設けられた水貯留部内で、 前記水貯留部は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、 前記容器は底部に複数の開口部を設け、 前記水貯留部内で、前記容器は脚部で立設すると共に、前記規定液面と前記容器の底部との間に空気が位置するように構成され、前記容器は植物を収納し、 栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の前記脚部、前記底部に複数の開口部を有する前記容器で対応する ことを特徴とする屋上の緑化方法。 【請求項2】 容器は底部に複数の開口部を設けると共に、前記底部より突出した複数の脚部を備え、前記開口部より前記容器の外へ伸びる植物の根を切断する ことを特徴とする請求項1記載の屋上の緑化方法。 【請求項3】 容器は合成樹脂で成形され、 屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられている ことを特徴とする請求項1記載の屋上の緑化方法。」と訂正する。 (なお、アンダーラインは訂正個所を示す。以下同様。) (2)訂正事項b 明細書の段落番号【0003】を、 「【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、請求項1記載の屋上の緑化方法は、容器の中で植物を栽培し、栽培後、栽培した前記植物を収納した前記容器を施工場所である屋上へ複数運搬し、前記植物を収納した前記容器を前記屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、前記容器の設置部位は屋上に設けられた水貯留部内で、前記水貯留部は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、前記容器は底部に複数の開口部を設け、前記水貯留部内で、前記容器は脚部で立設すると共に、前記規定液面と前記容器の底部との間に空気が位置するように構成され、前記容器は植物を収納し、栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の前記脚部、前記底部に複数の開口部を有する前記容器で対応するものである。」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、「栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の前記脚部、前記底部に複数の開口部を有する前記容器で対応する」という事項を追加し、本件請求項1に係る発明を特定する事項を更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上記訂正事項bは、上記訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記訂正事項a、bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3-1.本件発明 本件特許第3398147号の請求項1ないし3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものである(上記「2-1.訂正の内容」の「(1)訂正事項a」参照。)。 3-2.引用刊行物に記載された事項 当審で通知した取消の理由で引用した、特開平11-318243号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)、特開昭60-47617号公報(同甲第1号証)、及び、実願昭57-155677号(実開昭59-59738号)のマイクロフィルム(同甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。 (1)特開平11-318243号公報(以下、「刊行物1」という。) (1-a)「【発明が属する技術分野】本発明は、ビルの屋上・・・など特に人工地盤に敷設して、芝生等の地被植物・・・などを育成する潅水用植栽マットに関する。」(2頁1欄22〜25行) (1-b)「【発明が解決しようとする課題】本発明は・・・人工地盤等の上面における潅水用植栽を可能にすると共に既存の建物にも容易に適用でき、敷設、撤去に多大の労力、時間やコストを要せず、且つ水枯れや根腐れの心配がない潅水用植栽マットを提供することを目的とする。」(2頁2欄11〜16行) (1-c)「【0013】また、マットフレームの底部と貯水槽の水位最上レベルとの間に空間を有する構成とした場合、・・・マットフレームの底部に穿設した開口穴は酸素吸収穴となり、植物の根に酸素が供給されて成育を良くする。」(2頁2欄47行〜3頁3欄2行) (1-d)「【0014】そして、植栽マット内の余剰水は、植栽用マットのセルの底部近傍又は脚部の端部近傍或いはその両者に設けた通水手段により貯水槽に流出して貯水される。セル内の植物育成材が水不足となった場合には、貯水槽の水を通水手段により吸水して植物育成材に導くことになる。」(3頁3欄5〜10行) (1-e)「【0019】マットフレーム2及び貯水槽3の材質としては、合成樹脂製のものが良好であり、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレンなどが用いられ、真空成型、ブロー成型、射出成型、押し出し成型などの成型方法で形成される。」(3頁3欄34〜38行) (1-f)「【0022】 灌水用植栽マット1を敷き詰めるには、例えば敷設面11の所望箇所に貯水槽3を連設し、貯水槽3内にマットフレーム2を配設して収納する。」(3頁4欄4〜6行) (1-g)「【0023】隣接する貯水槽3相互の連結構成は特に例示しないが、貯水槽3の隣接側面上端部相互に略逆U字形の連結部材を嵌着して連設する、或いは鉤状の係合部分を各貯水槽3の隣接側面上端部相互に一体形成し、その相互を係合して敷設することにより連設するなど適宜である。」(3頁4欄11〜16行) (1-h)「【0024】また、貯水槽3相互間の通水については特に図示しないが、貯水槽3の隣接する側面上端部の適宜位置に、所要深さの凹溝や切り欠き等の通水溝を形成することにより対応できる。」(3頁4欄17〜20行) (1-i)「【0025】そして、灌水用植栽マット1を使用するに際しては、マットフレーム2の各セル4内において、少なくとも中空である脚部7の通水口9の上部に、土壌流出を防止するための不織布・ネット・チュール等のフィルターを敷設し、植物生育の培地となる客土・軽量人工土壌などの植物育成材をセル4に詰め込む。植物育成材には各種の種子を撒く、種子シートを載置する、或いは芝生などの地被植物・草木を植栽する。」(3頁4欄21〜28行) (1-j)「【0026】一方、貯水槽3にはホースなどにより給水し、給水された水は貯水レベルを規定する。そして、上記通水溝まで貯水槽3に貯水されると、隣接する貯水槽3に通水溝を介して水が流入し、順次各貯水槽3に所定量の水が貯水される。」(3頁4欄31〜35行) (1-k)「【0028】従って、灌水用植栽マット1は、貯水槽3によって植物育成材の潅水を低レベルに保つことができ、植物の根腐れを防止することが可能となる。一方において、貯水槽3は植物育成材への水分補給源となって水枯れの心配がなくなり、種子・植物の育成に大きく貢献し管理も容易となる。」(3頁4欄49行〜4頁5欄4行) (1-l)「【0037】尚、セル4の底部4bに鎖線示の如く、通水口9とは別に安全増しのための排水或いは通気の為の開口穴14を設けることは適宜である。この構成は他の実施形態についても同様である。」(4頁5欄48行〜6欄1行) 上記(1-a)(1-b)(1-f)(1-i)及び(1-k)等の記載からみて、灌水用植栽マット1のマットフレーム2を屋上に敷き詰め、マットフレーム2の中で植物を育成することにより、屋上を緑化させることができることは明らかであり、また、植物を育成中のマットフレーム2は、植物を収納しているということができる。 また、上記(1-h)及び(1-j)等の記載からみて、通水溝は、貯水槽3内の液面を規定する機能を有し、複数連設して敷設された貯水槽3のうち最外側に位置する貯水槽3の、隣接する貯水槽3のない側の側面の通水溝からは、前記規定液面を超えた水が外部へ排水されるものと認められる。 したがって、上記(1-a)〜(1-l)の記載を含む刊行物1の記載及び図面の記載からみて、 刊行物1には、 「合成樹脂で形成されたマットフレーム2の中で植物を育成し、前記植物を収納した前記マットフレーム2を屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、前記マットフレーム2の設置部位は屋上に複数連接して敷設された貯水槽3内で、前記貯水槽3は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、前記マットフレーム2は底部に複数の開口穴14を設け、前記貯水槽3内で、前記マットフレーム2は底部4bより突出した複数の脚部7で立設すると共に、前記規定液面と前記マットフレーム2の底部4bとの間に空気が位置するように構成され、前記マットフレーム2は植物を収納している屋上の緑化方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)特開昭60-47617号公報(以下、「刊行物2」という。) (2-a)「芝等の植物の育成地でパレットに土等を入れ、芝等の植物が十分に育成するまで育成する育成工程と、この育成工程で十分に育成された芝等の植物をパレットごと栽培地へ移送し、」(1頁左下欄5〜8行) (2-b)「パレット6は・・・合成樹脂材・・・で上部が拡開状に開口されたパレット本体14と、このパレット本体14に形成した多数個の孔5とから構成されている。」(2頁右下欄5〜9行) (2-c)「十分にパレット内で育成された芝は・・・ゴルフ場のティーグランド、グリーン・・・各種の建物の屋上や室内・・・等に設置しても良い。」(3頁右下欄下から2行〜4頁左上欄4行) (2-d)「本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。 (1)専門家が芝等の植物を育成することのできる場所で十分に育成するまで育成させた後、根切り等の難しい作業をすることなく移動させて栽培地に移植させることができる。したがって、芝等の植物を効率よく育成することができるとともに、移植に際し、根切り等を行わないでできるので移植後も根付けに対する処置の必要がなく、確実に育てることができる。 (2)パレットで芝等の植物を育成したものをパレット毎移動させるので、移動が容易にでき、かつ移動中に芝等の植物を痛めるのを効率よく防止できる。 (3)パレットで芝を育成したものをティーグランド等の傷みやすい場所に設置された場合、芝が傷むとパレットごと他の芝の傷んでいないものと交換して常に最適な芝の状態のもので使用することができる。 (4)芝の育成されたパレットを並べることにより芝生にできるので、ティーグランドやグリーンを1日でもって他の種類の芝生のものにかえたり、形状の異なるもの等にかえることができ、従来のようにサブグリーン等で1年がかりで作りかえたりする必要がなく経済的である。 (5)パレットごと育成地より栽培地に移送でき、栽培地でパレットを埋設するだけで移植ができるので、移植に際し専門家でなくても簡単にできる。」(4頁左上欄下から8行〜右上欄末行) 上記(2-a)及び(2-d)の記載からみて、植物をパレット内で十分に育成した後、十分に育成した前記植物を前記パレットごとティーグランドやグリーン等の栽培地へ移送し、設置するものであるから、上記(2-c)の記載における、ゴルフ場のティーグランド、グリーン、各種の建物の屋上や室内等への、十分にパレット内で育成された芝の設置は、パレットごと行われることは明らかである。 したがって、上記刊行物2には、植物をパレット内で十分に育成した後、十分に育成した前記植物を前記パレットごと屋上へ移送し前記屋上に設置する点、が記載されていると認められる。 (3)実願昭57-155677号(実開昭59-59738号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。) (3-a)「Pは緑化用パレットで、このパレットPは・・・合成樹脂で以て・・・浅いトレー状に一体成形したもので、・・・上記底部1は、・・・多数の孔6・6・・・を設けて成る。」(3頁7〜15行) (3-b)「芝Gを入れたパレットP・・・の多数を予め所定寸法に設定、整地したティグランド上に並列して敷設する。芝と芝との芝目には砂にてメジ締めをし、ローラにて転圧した後、十分に散水してメジを締めつけるだけで、施工は完了し、張付けた芝はパレットPの各孔から根を出してティグランドに芝を簡単に張付けることができる。」(4頁下から5行〜5頁3行) (3-c)「芝の傷んだ箇所ができると、その芝を含むパレットを持ち上げて回転さすと、パレットの孔6,7の孔縁の角で、芝の根が簡単に切れて取外すことができる。そして、新たな芝を入れた別のパレットをその場所に載置するか、又は他の並列したパレットを順次上述と同様にして芝の根切をして移動さすことにより、芝の発育をより一層促進さすようにした後、空いた箇所に新たな芝を入れた別のパレットを載置するものである。」(5頁10〜19行) (3-d)「本考案に係るパレットは・・・屋上・・・等の簡易緑化も可能である。」(6頁6〜9行) 3-3.対比・判断 i.本件請求項1に係る発明について 本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と引用発明を対比する。 引用発明の「マットフレーム2」、「育成」、「敷設された」、「貯水槽3」、「開口穴14」は、それぞれ、本件発明1の「容器」、「栽培」、「設けられた」、「水貯留部」、「開口部」に相当するから、 両者は、 「容器の中で植物を栽培し、前記植物を収納した前記容器を屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、前記容器の設置部位は屋上に設けられた水貯留部内で、前記水貯留部は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、前記容器は底部に複数の開口部を設け、前記水貯留部内で、前記容器は脚部で立設すると共に、前記規定液面と前記容器の底部との間に空気が位置するように構成され、前記容器は植物を収納している屋上の緑化方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉 本件発明1では、「栽培後、栽培した植物を収納した容器を施工場所である屋上へ複数運搬し、」「栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の脚部、底部に複数の開口部を有する前記容器で対応する」のに対して、引用発明では、そうではない点。 上記相違点について検討する。 上記刊行物2には、植物をパレット内で十分に育成した後、十分に育成した前記植物を前記パレットごと屋上へ移送し前記屋上に設置する点、が記載され、この記載は、育成時、移送時及び設置時、共に同一のパレットで対応することを意味しており、刊行物2に記載の「十分に育成」、「移送」及び「設置」は、それぞれ、本件発明1の「栽培」、「運搬」及び「施工」に相当すると認められ、刊行物2に記載の「パレット」は、植物を育成したり移送したりするものである点で、「容器」といえる。そうすると、引用発明において、屋上以外の場所で、脚部、底部に複数の開口穴14(開口部)を有するマットフレーム2(容器)の中で植物を十分に育成(栽培)し、育成(栽培)後、育成(栽培)した前記植物を収納した前記マットフレーム2(容器)を屋上へ複数運搬し、育成(栽培)時、移送(運搬)時及び設置(施工)時、共に同一の脚部、底部に複数の開口穴14(開口部)を有する前記マットフレーム2(容器)で対応するようにして、上記相違点に係る本件発明1を特定する事項とすることは、引用発明に上記刊行物2に記載された発明を適用して当業者が容易に想到し得ることと認められる。 そして、上記相違点によって奏せられる効果は、引用発明の脚部、底部に複数の開口穴14(開口部)を有するマットフレーム2(容器)によって奏せられる効果及び上記刊行物2に記載された発明によって奏せられる効果と比較して格別顕著なものとも認められず、本件発明1全体としての効果も、引用発明及び上記刊行物2に記載された発明によって奏せられる効果と比較して格別顕著なものとも認められない。 したがって、本件発明1は、引用発明及び上記刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 ii.本件請求項2に係る発明について 本件請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件発明1を引用し、「容器は底部に複数の開口部を設けると共に、前記底部より突出した複数の脚部を備え、前記開口部より前記容器の外へ伸びる植物の根を切断すること」との限定事項を付加したものであり、本件発明1は、引用発明及び上記刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。 上記限定事項のうち、本件発明2が本件発明1と相違する点は、「底部より突出した複数の脚部を備え」ること、及び、「開口部より容器の外へ伸びる植物の根を切断すること」であるが、前者の事項は引用発明も備えている。また、後者の事項は、上記刊行物3に、パレットPの各孔から出た芝の根を切ることにより、芝の発育をより一層促進する点、が記載され((3-c)参照。)、上記刊行物3に記載の「パレットP」及び「孔」は、それぞれ、本件発明2の「容器」及び「開口部」に相当するから、引用発明に上記刊行物3に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 そして、本件発明2の効果は、引用発明、上記刊行物2及び3に記載された発明によって奏せられる効果と比較して格別顕著なものとも認められない。 したがって、本件発明2は、引用発明、上記刊行物2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 iii.本件請求項3に係る発明について 本件請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)は、本件発明1を引用し、「容器は合成樹脂で成形され、屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられていること」との限定事項を付加したものであり、本件発明1は、引用発明及び上記刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項について検討する。 上記限定事項のうち、「容器は合成樹脂で成形され」ている点は、引用発明も備えているように周知の事項である。 次に、上記限定事項のうち、「屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられていること」について検討する。上記刊行物3に、「芝Gを入れたパレットP・・・の多数を予め所定寸法に設定、整地したティグランド上に並列して敷設する。芝と芝との芝目には砂にてメジ締めをし、ローラにて転圧した後、十分に散水してメジを締めつける」と記載され((3-b)参照。)、該芝と芝との芝目は、合成樹脂で成形したパレットP(容器)とパレットP(容器)との接合部が位置する所でもあり((3-a)及び第4図参照。)、砂にてメジ締めをすることにより該砂は該接合部を覆うものと認められるから、上記刊行物3に記載の「芝目にメジ締めをした砂」は、本件発明3の「覆い部材」に相当する。そうすると、本件発明3の「屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられていること」は、引用発明に上記刊行物3に記載された発明を適用して、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 そして、上記限定事項によって奏せられる「屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆い部材で覆うため、合成樹脂製の容器の劣化を防ぐことができる」という効果は、引用発明において、砂にてメジ締めをすることにより必然的に奏せられることとなり、本件発明3全体としての効果は、引用発明、上記刊行物2及び3に記載された発明によって奏せられる効果と比較して格別顕著なものとも認められない。 したがって、本件発明3は、引用発明、上記刊行物2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 3-4.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 屋上の緑化方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 容器の中で植物を栽培し、栽培後、栽培した前記植物を収納した前記容器を施工場所である屋上へ複数運搬し、前記植物を収納した前記容器を前記屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、 前記容器の設置部位は屋上に設けられた水貯留部内で、 前記水貯留部は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、 前記容器は底部に複数の開口部を設け、 前記水貯留部内で、前記容器は脚部で立設すると共に、前記規定液面と前記容器の底部との間に空気が位置するように構成され、前記容器は植物を収納し、 栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の前記脚部、前記底部に複数の開口部を有する前記容器で対応する ことを特徴とする屋上の緑化方法。 【請求項2】 容器は底部に複数の開口部を設けると共に、前記底部より突出した複数の脚部を備え、前記開口部より前記容器の外へ伸びる植物の根を切断する ことを特徴とする請求項1記載の屋上の緑化方法。 【請求項3】 容器は合成樹脂で成形され、 屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられている ことを特徴とする請求項1記載の屋上の緑化方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】本発明は、屋上の緑化方法に係り、特に、屋上を簡易に緑化させることができる屋上の緑化方法に関する。 【0002】 【従来の技術と発明が解決しようとする課題】最近、ヒ-トアイランド現象を軽減するために、屋上を緑化させる緑化方法が考えられている。 この緑化方法にあっては、予め植物栽培業者が植物を栽培し、栽培後、栽培した植物を設置場所である屋上に運搬する際、栽培した植物を運搬用の容器の大きさに合うように切らなければならないと共に、切った植物を運搬用の容器に移し替えて屋上に運搬しなければならず、更に、屋上において、植物を植える作業をも必要で、施工が非常に面倒であるという問題点が生じた。 本発明は、上述した問題点を除去するようにした屋上の緑化方法を提供するものである。 【0003】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の屋上の緑化方法は、容器の中で植物を栽培し、栽培後、栽培した前記植物を収納した前記容器を施工場所である屋上へ複数運搬し、前記植物を収納した前記容器を前記屋上に敷き詰めて前記屋上を緑化させるものであり、前記容器の設置部位は屋上に設けられた水貯留部内で、前記水貯留部は規定液面を超えた水を外部へ排水されるもので、前記容器は底部に複数の開口部を設け、前記水貯留部内で、前記容器は脚部で立設すると共に、前記規定液面と前記容器の底部との間に空気が位置するように構成され、前記容器は植物を収納し、栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の前記脚部、前記底部に複数の開口部を有する前記容器で対応するものである。 【0004】 【0005】また、請求項2記載の屋上の緑化方法は、請求項1記載の屋上の緑化方法において、容器は底部に複数の開口部を設けると共に、前記底部より突出した複数の脚部を備え、前記開口部より前記容器の外へ伸びる植物の根を切断することができる。 【0006】 【0007】また、請求項3記載の屋上の緑化方法は、請求項1記載の屋上の緑化方法において、容器は合成樹脂で成形され、屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられているものである。 【0008】 【0009】 【実施例】本発明の一実施例の屋上の緑化方法を図面を参照して説明する。 図1及び図2において、Aは屋上緑化装置で、屋上緑化装置Aは、植物Pを収納した容器1を複数屋上100に敷き詰めて屋上100を緑化させるものである。 容器1に収納される植物Pは、例えば、丈が低く、高低温、乾湿に強い芝、セダム類(ベンケイソウ科マンネングサ属で、例えば、メキシコマンネングサ)が望ましく、植物Pは、容器1の底部1aに当接したシ-トSの上に位置する土壌Dに根を張るようになって、容器1に収納されている(図3参照)。 【0010】容器1は、底部1aより突出した複数の脚部1bを備え、容器1の脚部1bは、内部に空間を有すると共に、上方に開放した上方開放部1cを備えた中空体であり、上方開放部1cは、少なくとも、容器1の底部1aの隅部に設けられている(図4、図6、図7及び図9参照)。 この上方開放部1cの外周には突起1dが設けられ、図6及び図7に示すように、シ-トSで上方開放部1cを覆うと共に、シ-トS(シ-トSは、例えば、不織布で形成されている。)は、容器1の底部1aの隅部の上方開放部1cの外周に設けた突起1dに係止している。 このように、シ-トSは、容器1の底部1aの隅部の上方開放部1cの外周に設けた突起1dに係止しているため、シ-トSがシ-トSの上の土壌Dの重みにより脚部1bの中空体に落ち込むことを防止することができる。 【0011】また、図8に示すように、容器1の運搬時(例えば、車の荷台での運搬時)、容器1を垂直方向に複数積層し、垂直方向に隣り合う上の容器1の脚部1bを隣り合う下の容器1に当接させ(当接部位は、例えば、底部1aより突出した突起部1e)、上の容器1の底部1aの下方に下の容器1の植物Pが位置している。 このように容器1の運搬時、植物Pを収納した容器1を垂直方向に複数積層した状態で運搬でき、運搬スペ-スを取らず、しかも、植物Pを収納した容器1を設置部位(例えば、屋上)にそのまま、複数置いて、より望ましくは、図1に示すように、屋上100に複数敷き詰めるため、屋上100を簡易に緑化させることができる。 【0012】容器1の運搬時(例えば、車の荷台での運搬時)、望ましくは、図8に示すように、上の容器1の底部1aの下方に下の容器1の植物Pが上の容器1の底部1aに接触しないで位置している方が良い。 このように上の容器1の底部1aの下方に下の容器1の植物Pが上の容器1の底部1aに接触しないようにすれば、植物Pを痛めないで運搬することができる。 また、植物Pを収納しない状態においては、図10に示すように、上の容器1の脚部1bを隣り合う下の容器1の脚部1b内に挿入することにより、垂直方向に容器1を嵩張らないで積層して、運搬等することができる。 【0013】そして、図5に示すように、敷き詰められた容器1と容器1は連結具3で連結されている。 このように、容器1と容器1が連結具3で連結されているため、容器1を整然と設置できると共に、設置後、容器1の移動をも防止することができる。 【0014】なお、植物Pを収納した容器1を複数敷き詰める際、容器1を屋上100に設けられた水貯留部4内に容器1を設けても良い。水貯留部4は、防水シ-ト、防水材の塗布等により防水処理が施されている。 その際、容器1の底部1aに複数の開口部Hを設け、水貯留部4内より蒸発する水分を、底部1aに設けた複数の開口部Hを介して植物Pに供給するようにしても良い。複数の開口部Hは、望ましくは、底部1aの全体に亙って設ける方が良い。 【0015】また、図5に示すように、容器1の脚部1bを介して、一端を水貯留部4内の水に接触し、他端をシ-トSに位置して容器1内に水を吸い上げる水吸い上げ部材5(例えば、ガ-ゼ)を設け、水吸い上げ部材5により水貯留部4内の水を吸い上げて植物Pに供給するようにしても良い。 【0016】更に、容器1の設置部位は屋上100に設けられた水貯留部4内で、水貯留部4は規定液面101を超えた水を外部へ排水される、例えば、図示しないオバ-フロ-管を備えている。この図示しないオバ-フロ-管により、容器1は脚部1bで立設すると共に、規定液面101と容器1の底部1aとの間に空気が位置するように構成されている。 このように規定液面101と容器1の底部1aとの間に、空気が位置することにより、容器1内の植物Pに必要以上の水を供給しないと共に、植物Pに必要な空気をも供給することができ、更に、水貯留部4内の水により屋上100をも冷却することができる。 【0017】上述した屋上緑化装置Aに使用される植物Pを収納した容器1は、栽培時(例えば、農家等において、植物Pは容器1の中で栽培される。)、運搬時(例えば、車等の荷台によって容器1は運搬される。)及び施工時、共に同一の容器1で対応するものである。 即ち、農家等において、容器1の中で植物Pを栽培し(図11参照)、栽培後栽培した植物Pを収納した容器1を施工場所である屋上へ複数運搬(例えば、図8に示すように、植物Pを収納した容器1を積層した状態で運搬)し、植物Pを収納した容器1を屋上100に敷き詰めて屋上100を緑化させるものである。 この屋上の緑化方法によれば、栽培時、運搬時及び施工時、共に同一の容器1で対応することができるため、従来のように、運搬する際、栽培した植物を運搬用の容器の大きさに合うように切ったり、切った植物を運搬用の容器に移し替えたり、屋上に運搬後、屋上において植物を植えたりする作業が不要となり、栽培時使用した容器1を使って運搬し、容器1をそのまま、屋上100に複数敷き詰めて、屋上100を簡易に緑化させることができる。 【0018】そして、屋上100に敷き詰められた植物Pを収納した容器1の内、植物Pが枯れた場合、又は植物Pが病気にかかった場合、図12に示すように、枯れた植物Pを収納した容器1を取り除き、又は、病気にかかった植物Pを収納した容器1を取り除き、取り除いた場所(例えば、図12に示すZの部位)に新たに植物Pを収納した容器1を置いて交換するようにしている。 また、容器1は底部1aに複数の開口部Hを設けると共に、底部1aより突出した複数の脚部1bを備えているため、増殖した根は容器1の底部1aの開口部Hより容器1の外へ伸びるため、植物Pの根を容易に切断でき植物Pを活性化させることができる。 この屋上の緑化方法によれば、作業が極めて簡単で、屋上緑化を簡易に保守することができることとなる。 【0019】なお、容器1が合成樹脂で成形されていると、紫外線等により劣化するために、図13に示すように、屋上100に敷き詰められた容器1と容器1との接合部を覆う覆い部材102(例えば、石、砂利、土、マルチング材等)が設けられている。特に、覆い部材102として土、砂利等の培土を用いると、覆い部材102により植物Pがより成長し易くなり容器1と容器1との接合部を該植物Pでより早く覆うことができる。 【0020】 【発明の効果】請求項1記載の屋上の緑化方法によれば、容器は水貯留部内で脚部で立設すると共に、水貯留部内の規定液面と容器の底部との間に空気が位置するように構成されているため、容器内の植物に必要以上の水を供給しないと共に、植物に必要な空気をも供給することができ、更に、水貯留部内の水により屋上をも冷却することができる。 【0021】 【0022】また、請求項2記載の屋上の緑化方法によれば、根が増殖し切断する必要が生じた場合、増殖した根は容器の底部の開口部より前記容器の外へ伸びるため、植物の根を容易に切断でき植物を活性化させ、屋上緑化を簡易に保守することができる。 【0023】 【0024】また、請求項3記載の屋上の緑化方法によれば、屋上に敷き詰められた容器と容器との接合部を覆い部材で覆うため、合成樹脂製の容器の劣化を防ぐことができると共に、覆い部材として土、砂利等の培土を用いると、覆い部材により植物がより成長し易くなり容器と容器との接合部を該植物でより早く覆うことができる。 【0025】 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1は、本発明の一実施例の屋上の緑化方法の形成過程を概略的に示す概略的斜視図である。 【図2】 図2は、図1の形成過程により完成した屋上緑化装置の概略的断面図である。 【図3】 図3は、図2の一部を拡大して示す概略的一部拡大分解断面図である。 【図4】 図4は、図1の屋上緑化装置の構成部材である容器の概略的斜視図である。 【図5】 図5は、図1の容器と容器の接続関係を示す概略的一部断面図である。 【図6】 図6は、図1の容器の一部よりシ-ト、土壌、植物を除いて示す概略的一部平面図である。 【図7】 図7は、図6の容器の一部にシ-ト、土壌、植物を含む概略的断面図である。 【図8】 図8は、図1の屋上緑化装置に使用される植物を収納した容器を積層して示す概略的断面図である。 【図9】 図9は、図8に示した容器の係合関係を説明するための概略的斜視図である。 【図10】 図10は、植物を収納していない容器を積層した状態の概略的断面図である。 【図11】 図11は、本発明の一実施例の屋上の緑化方法による栽培時の状態を概略的に示す概略的斜視図である。 【図12】 図12は、本発明の一実施例の屋上の緑化方法による保守時の状態を概略的に示す概略的斜視図である。 【図13】 図13は、容器と容器との接合部を覆う覆い部材が設けられている状態を概略的に示す概略的一部断面図である。 【符号の説明】 P ・・・・・植物 1 ・・・・・容器 100・・・・・屋上 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-02 |
出願番号 | 特願2002-106291(P2002-106291) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(A01G)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 坂田 誠 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 白樫 泰子 |
登録日 | 2003-02-14 |
登録番号 | 特許第3398147号(P3398147) |
権利者 | 株式会社環境アセスメントセンター 吉川化成株式会社 |
発明の名称 | 屋上の緑化方法 |
代理人 | 加藤 静富 |
代理人 | 野末 寿一 |
代理人 | 加藤 静富 |
代理人 | 野末 寿一 |
代理人 | 野末 寿一 |
代理人 | 入江 一郎 |
代理人 | 入江 一郎 |
代理人 | 入江 一郎 |
代理人 | 加藤 静富 |