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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1107922
異議申立番号 異議2002-73071  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-10-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-24 
確定日 2004-10-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3295171号「半導体基板の製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3295171号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3295171号の請求項1ないし4に係る発明の手続の経緯は、以下のとおりである。

出願日(特願平5-80828号) 平成5年4月7日
設定登録 平成14年4月5日
特許異議の申立て(北垣哲郎) 平成14年12月24日
取消理由通知 平成16年3月1日
意見書、訂正請求書 平成16年5月10日
訂正拒絶理由通知 平成16年9月3日
手続補正書(訂正請求書) 平成16年9月9日


第2 訂正の適否についての判断
1.訂正請求に対する補正の適否について
(1)平成16年5月10日付け訂正請求の内容
特許権者が平成16年5月10日付け訂正請求書において求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(訂正事項a)
特許請求の範囲の請求項1の「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄することにより」という記載を、「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すことにより」と訂正する。
(訂正事項b)
特許請求の範囲の請求項1の「混入不純物」という記載を、「混入金属不純物」と訂正する。
(訂正事項c)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(訂正事項d)
特許請求の範囲の請求項2を削除したことに伴い、請求項3を請求項2に繰り上げ、「請求項1または請求項2に記載」とある記載を、「請求項1に記載」と訂正する。
(訂正事項e)
特許請求の範囲の請求項2を削除したことに伴い、請求項4を請求項3に繰り上げ、「請求項3に記載」とある記載を、「請求項2に記載」と訂正する。
(訂正事項f)
明細書の段落【0007】中の「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄すること」という記載を、「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すこと」と訂正する。
(訂正事項g)
明細書の段落【0010】、【0010】、【0015】、【0016】、【0020】、【0021】、【0022】中に記載されている全ての「混入不純物」の記載を、「混入金属不純物」と訂正する。
(訂正事項h)
明細書の段落【0021】中の「上記実施例2において」という記載を、「図4に示すように、上記実施例2において」と訂正する。
(訂正事項i)
明細書の段落【0022】中の「混入した不純物」という記載を、「混入した金属不純物」と訂正する。
(訂正事項j)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図1の説明中、「第1の実施例」という記載を、「実施例1」と訂正する。
(訂正事項k)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図2の説明中、「実施例2」という記載を、「実施例1」と訂正する。
(訂正事項l)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図3の説明中、「実施例3」という記載を、「実施例2」と訂正する。
(訂正事項m)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図1の説明中、「実施例4」という記載を、「実施例3」と訂正する。
(訂正事項n)
明細書の段落【0022】中の「よれば、不純物」という記載を、「よれば、金属不純物」と訂正する。
(訂正事項o)
明細書中の段落番号【0014】〜【0022】を、それぞれ順次【0011】〜【0019】に繰り上げるという訂正をする。

(2)平成16年5月10日付け訂正請求に対する平成16年9月9日付け補正の概要
補正事項ア
上記訂正事項の内、訂正事項b、g、i、n,oを削除する。
補正事項イ
上記訂正事項m中、訂正請求書第2頁第22行に記載の「図1」を「図4」と補正する。
補正事項ウ
上記ア.の訂正事項b、g、i、n,oの削除により、上記訂正事項の符号がa〜oであったものを、順次a〜jと振り直すという補正をする。

(3)補正の適否についての判断
上記補正事項アは、訂正事項の削除であり、また、上記補正事項イ及びウは、請求書の要旨を変更しない範囲での軽微な瑕疵の補正と認められる。
したがって、上記訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第131条第2項の規定に適合する。

2.訂正の内容
特許権者が求めている、平成16年9月9日付け手続補正書(訂正請求書)に添付された全文訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。
(訂正事項a)
特許請求の範囲の請求項1中の「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄することにより、」を「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、
前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すことにより、」と訂正する。
(訂正事項b)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(訂正事項c)
特許請求の範囲の請求項3を請求項2に繰り上げ、「請求項1または請求項2に記載」を「請求項1に記載」と訂正する。
(訂正事項d)
特許請求の範囲の請求項4を請求項3に繰り上げ、「請求項3に記載」を「請求項2に記載」と訂正する。
(訂正事項e)
明細書の段落【0007】中の「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄すること」を「前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すこと」と訂正する。
(訂正事項f)
明細書の段落【0021】中の「上記実施例2において」の記載を、「図4に示すように、上記実施例2において」と訂正する。
(訂正事項g)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図1の説明中、「第1の実施例」の記載を「実施例1」と訂正する。
(訂正事項h)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図2の説明中、「実施例2」の記載を「実施例1」と訂正する。
(訂正事項i)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図3の説明中、「実施例3」の記載を「実施例2」と訂正する。
(訂正事項j)
明細書の図面の簡単な説明の欄の図4の説明中、「実施例4」の記載を「実施例3」と訂正する。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明において、「前記1250度以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返す」点を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、この点の構成は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2、特許明細書の段落番号【0012】に記載されていたものである。

(2)訂正事項b〜dについて
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項c、上記訂正事項dは、請求項を繰り上げる訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(3)訂正事項eについて
上記訂正事項eは、上記訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載内容を訂正後の特許請求の範囲と対応させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(4)訂正事項fについて
上記訂正事項fは、図4が実施例3を説明する図面であることを明らかにするための訂正であり、このことは、出願当初の明細書の図面の簡単な説明の欄及び平成13年12月25日付手続補正書における手続補正8により裏付けられる。よって上記訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(5)訂正事項g〜jについて
上記訂正事項gは、「第1の実施例」を「実施例1」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。
上記訂正事項hは、「実施例2」を「実施例1」と訂正するものであり、図2が実施例1を説明する図面であることは特許明細書の段落番号【0011】に記載されている事項であるから、誤記の訂正を目的とするものである。
上記補正事項iは、「実施例3」を「実施例2」と訂正するものであり、図3が実施例2を説明する図面であることは特許明細書の段落番号【0013】に記載されている事項であるから、誤記の訂正を目的とするものである。
上記補正事項jは、「実施例4」を「実施例3」と訂正するものであり、図4が実施例3を説明する図面であることについては前記(4)で述べたとおりであるから、誤記の訂正を目的とするものである。

以上をまとめると、上記訂正事項a、bは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項c〜fは明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項g〜jは誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当するものである。そして、上記訂正事項a〜jは、いずれも願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1.申立の理由及び取消理由通知の概要
(1)申立の理由の概要
特許異議申立人北垣哲郎は、本件出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証(津屋英樹監修 ULSIプロセス材料実務便覧、1992年1月30日株式会社サイエンスフォーラム発行、70頁〜80頁)、甲第2号証(特開昭63-142655号公報)、甲第3号証(特開平4-249323号公報)、甲第4号証(PROCEEDINGS OF THE FOURTH INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON SILICON-ON-INSULATOR TECHNOLOGY AND DEVICES、Proceedings Volume 90-6、154頁-160頁(1990年))、甲第5号証(特開昭61-50328号公報)、甲第6号証(特開平2-267935号公報)、甲第7号証(特開平4-35044号公報)、甲第8号証(特開昭52-69571号公報)、甲第9号証(特開昭49-40856号公報)を証拠として提出し、本件特許の請求項1、3に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない、また本件特許の請求項1、3に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、本件特許の請求項2に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、本件特許の請求項3に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、本件特許の請求項4に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第6号証、甲第8号証及び甲第9号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張すると共に、甲第10号証(特願平5-81348号)を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、本件出願前になされた他の特許出願であってその出願後に出願公開された特願平5-81348号(特開平6-283420号公報参照)の願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された発明と同一の発明であると認められ、しかも、本件出願の発明者が上記引用発明の発明者と同一であるとも、また、本件出願の時にその出願人が上記引用発明の出願人と同一であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、取り消すべきものである旨の主張をしている。

(2)取消理由通知の概要
「理由1
請求項1、3に係る発明は、下記刊行物1又は2に記載された発明と同一であると認められる。
よって、本件請求項1、3に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
理由2
(1)請求項1に係る発明は、下記刊行物1又は2に記載の発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものと認められる。
(2)請求項2に係る発明は、下記刊行物1又は2、及び7に記載の発明に基づいて、或いは下記刊行物1乃至7に記載の発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものと認められる。
(3)請求項3に係る発明は、下記刊行物1又は2、及び8、9に記載の発明に基づいて、或いは下記刊行物1乃至9に記載の発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものと認められる。
(4)請求項4に係る発明は、下記刊行物1又は2、及び8、9に記載の発明に基づいて、或いは下記刊行物1乃至9に記載の発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものと認められる。
よって、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。


刊行物1(甲第1号証):津屋英樹監修 ULSIプロセス材料実務便覧、1992年1月30日株式会社サイエンスフォーラム発行、70頁〜80頁
刊行物2(甲第2号証):特開昭63-142655号公報
刊行物3(甲第3号証):特開平4-249323号公報
刊行物4(甲第4号証):PROCEEDINGS OF THE FOURTH INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON SILICON-ON-INSULATOR TECHNOLOGY AND DEVICES、Proceedings Volume 90-6、154頁-160頁(1990年)
刊行物5(甲第5号証):特開昭61-50328号公報
刊行物6(甲第6号証):特開平2-267935号公報
刊行物7(甲第7号証):特開平4-35044号公報
刊行物8(甲第8号証):特開昭52-69571号公報
刊行物9(甲第9号証):特開昭49-40856号公報

理由3
本件の請求項1に係る発明は、本件出願日前に出願され本件出願後に出願公開された特願平5-81348号(特開平6-283420号公報参照)の願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された発明と同一の発明であると認められ、しかも、本件出願の発明者が上記引用発明の発明者と同一であるとも、また、本件出願の時にその出願人が上記引用発明の出願人と同一であるとも認められないから、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。」

2.本件請求項1ないし3に係る発明
上記「第2」で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし3に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ表面シリコン層を有する半導体基板の製造において、
前記シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ後、前記シリコン基板を1250℃以上の温度で高温熱処理する際、
雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、前記表面シリコン層の表面に酸化シリコン膜を形成し、
前記表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、
前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、
前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すことにより、
前記表面シリコン層に混入した混入不純物を前記埋め込み酸化シリコン膜を通過させて前記シリコン基板中あるいは前記埋め込み酸化シリコン膜中あるいは表面酸化シリコン膜中へ移動させることを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】 前記高温熱処理の前に、前記シリコン基板にゲッタリング領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】 前記ゲッタリング領域がシリコン基板裏面に形成され、前記高温熱処理後、前記ゲッタリング領域を除去することを特徴とする請求項2に記載の半導体基板の製造方法。」

3.引用刊行物等に記載された発明
当審の取消理由通知で引用した刊行物1(津屋英樹監修 ULSIプロセス材料実務便覧、1992年1月30日株式会社サイエンスフォーラム発行、70頁〜80頁(申立人の提出した甲第1号証))には、
(1a)「SIMOXウェハは,シリコンウェハの内部に薄いSiO2の膜を埋め込んだ構造をしており,表面側から表層Si,埋め込みSiO2層,基板Siの3層に分類される(図-2)。」(第71頁左欄下から10〜7行)ことが図-2と共に記載されている。さらに
(1b)「SIMOXウェハ製造プロセスでの主要工程は酸素イオン注入とその後のアニールである。必要に応じて保護膜形成や洗浄等の処理が行われる。」(第71頁右欄第3〜5行)こと、
(1c)「アニール効果を上げるために,処理温度の高温化および処理時間の長時間化が図られてきた。温度に関しては1400℃以上のシリコンの融点付近の処理がなされたことも報告されているが,最近は1300〜1350℃の温度範囲で6〜10hr程度のアニールが行われることが多い。」(第73頁左欄第8〜12行)こと、
(1d)「最近注目されている低ドーズ注入法を用いた場合,ドーズ量1.2×1018cm-2以下,アニール温度1300℃以上の条件において,転位密度は102cm-2まで減少した事が報告されている。このうちイオン注入条件,アニール条件がそれぞれ180keV,0.4×1018cm-2,1350℃,4hrの試料の断面TEM像を図-12に示す。」(第75頁右欄第26行〜第76頁左欄第3行)ことが図-12と共に記載されている。

同刊行物2(特開昭63-142655号公報(申立人の提出した甲第2号証))には、
(2a)「第2図の左側の分枝に示されるように(低温の)臨界値以下の酸素注入に続いて、酸素の多い注入層から本質的に化学量論的組成のSiO2が形成されるよう、適当な熱処理が行われる。そのような熱処理は典型的な場合アモルファスSiを再結晶化させる低温アニール(たとえば500ないし800℃、好ましくは700℃を越えない温度で30分ないし3時間)を含むと有利である。加熱処理はまた適当に長い時間、たとえば3時間以上、典型的な場合1200℃以上の温度の高温アニールも含む。」(第4頁右下欄第6〜17行)こと、
(2b)「当業者には明らかであろうが、熱処理は非酸化条件又は不活性雰囲気下で行うのが有利である。従来技術は高温アニール中Si上部層を保護するための手段として、比較的厚い(たとえば500nm)酸化物キャップ層を形成することを知っている。我々は高温アニール中Si上部層を保護するための有利な技術を考案した。現在我々が好ましいと考えるその技術は、アニールを主成分として少くとも一種類の不活性ガス(たとえば99%のAr)と、少数成分(たとえば1%)として酸素を含む雰囲気中で行うことを含む。酸素濃度は熱処理中薄い(たとえば20nm)保護SiO2をゆっくり成長させる効果がある。」(第5頁左上欄第6〜19行)ことが第2図と共に記載されている。

同刊行物3(特開平4-249323号公報(申立人の提出した甲第3号証))には、
(3a)「シリコン基板の主表面に、該シリコン基板の主表面から下方の位置で最大値となるような酸素濃度分布を与える第1の高エネルギで、第1の酸素イオンを注入する工程と、前記第1の酸素イオンが注入された前記シリコン基板を熱処理し、それによって前記シリコン基板中にSiO2層を形成する工程と、前記シリコン基板の主表面に、前記SiO2層と、該SiO2層の上に存在するSi層との、界面付近で最大値となるような酸素濃度分布を与える第2の高エネルギで、第2の酸素イオンを注入する工程と、前記第2の酸素イオンが注入された前記シリコン基板を熱処理する工程と、を備えた、シリコン基板中に埋込絶縁膜を形成する方法。」(請求項1)、
(3b)「熱処理については1300℃以上の温度で行なうのが好ましい。雰囲気は、アルゴンと酸素の混合気体を用いる。」(明細書【0029】段落)ことが記載されている。

同刊行物4ないし6(PROCEEDINGS OF THE FOURTH INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON SILICON-ON-INSULATOR TECHNOLOGY AND DEVICES Proceedings Volume 90-6154頁-160頁(1990年)(申立人の提出した甲第4号証)、特開昭61-50328号公報(申立人の提出した甲第5号証)、特開平2-267935号公報(申立人の提出した甲第6号証))には、半導体基板の表面に酸化膜を形成して該酸化膜に不純物を移動させ、その後酸化膜をエッチングすることによって不純物を除去することが示されている。

同刊行物7(特開平4-35044号公報(申立人の提出した甲第7号証))には、
(7a)「本発明は欠陥密度の高い半導体基板の表面に欠陥密度の低い半導体基板層を形成した半導体基板を絶縁膜を介して別の基板に貼り合わせて、研磨と、高い欠陥密度による選択エッチング、更に犠牲酸化とを組み合わせて、絶縁膜上に1μm以下の均一で薄い半導体基板層を有する半導体基板の製造方法を提供するものである。」(第1頁右欄第1〜7行)こと、
(7b)「更にエピ層2の表面の酸化により酸化膜5を形成することによりエピ層2の厚みをより薄く制御し、選択エッチングにより生じたエピ層2の表面の欠陥も取り除くことができる(第1図(g)参照)。そして酸化膜5をエッチング除去して本発明の半導体基板を完成させることができる(第1図(h)参照)。
また、エピ層の厚みが所望の厚みより厚い場合は、酸化膜5を形成し除去する工程(第1図(g)〜(h)参照)を繰り返せば良いことは明らかであり、これによって絶縁膜上の半導体基板層の厚みを0.5μm以下にすることが可能である。」(第2頁左下欄第5〜16行)が第1図と共に記載されている。

同刊行物8(特開昭52-69571号公報(申立人の提出した甲第8号証))には、シリコンウェーハに酸化膜を形成する前に、裏面に多結晶シリコンを形成しておきゲッタリング作用を持たせることが示されている。

同刊行物9(特開昭49-40856号公報(申立人の提出した甲第9号証))には、「半導体基体表面に多結晶半導体層を形成し、上記半導体基体を高温処理することにより半導体基体内の結晶欠陥および重金属を上記多結晶半導体層に集め、然る後に上記多結晶半導体層を除去することを特徴とする半導体基体処理法。」(特許請求の範囲)が記載されている。

また、特許異議申立人が提出した甲第10号証(特願平5-81348号)には、単結晶シリコン基板内に埋込SiO2層を形成した後、1300℃以上の高温にて、Ar/O2またはN2/O2の混合ガス雰囲気中で熱処理を行い、その後表面に形成した二酸化ケイ素薄膜を除去することが示されている。

4.対比・判断
(1)特許法第29条第1項第3号についての判断
ア.本件請求項1に係る発明について
a.上記刊行物1には、1350℃、4hr、Ar+O2雰囲気での熱処理により表面に酸化膜が形成されること(摘記事項(1d)参照)、必要に応じて保護膜形成や洗浄等の処理が行われること(摘記事項(1b)参照)、及び、最終的なSIMOX基板表面には酸化膜が存在しないこと(摘記事項(1a)及び図2参照)が示されており、これらを総合すると、刊行物1には、表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程が記載されているものと認める。
そこで本件の請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ表面シリコン層を有する半導体基板の製造において、前記シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ後、前記シリコン基板を1250℃以上の温度で高温熱処理する際、雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、前記表面シリコン層の表面に酸化シリコン膜を形成し、前記表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、前記表面シリコン層に混入した混入不純物を前記埋め込み酸化シリコン膜を通過させて前記シリコン基板中あるいは前記埋め込み酸化シリコン膜中あるいは表面酸化シリコン膜中へ移動させることを特徴とする半導体基板の製造方法。 」である点で一致するが、
刊行物1に記載された発明は「前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返す」との構成を有さない点(以下、「相違点1」という)で相違する。

b.本件の請求項1に係る発明と上記刊行物2又は3に記載された発明とを対比すると、両者は、「シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ表面シリコン層を有する半導体基板の製造において、前記シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ後、前記シリコン基板を1250℃以上の温度で高温熱処理する際、雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、前記表面シリコン層の表面に酸化シリコン膜を形成し、前記表面シリコン層に混入した混入不純物を前記埋め込み酸化シリコン膜を通過させて前記シリコン基板中あるいは前記埋め込み酸化シリコン膜中あるいは表面酸化シリコン膜中へ移動させることを特徴とする半導体基板の製造方法。」である点で一致するが、
刊行物2又は3に記載された発明は「前記表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程」を有するか明らかでない点(以下「相違点2」という)、及び、「前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返す」との構成を有さない点(相違点1)で相違する。

したがって、本願の請求項1に係る発明と上記刊行物1ないし3に記載された発明とは上記a.ないしb.で述べた相違点を有するから、本願の請求項1に係る発明は上記刊行物1ないし3に記載された発明ではない。

イ.本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明を引用し、さらに限定した発明であるので、上記a.ないしb.と同様な理由により、上記刊行物1ないし3に記載された発明ではない。

(2)特許法第29条第2項についての判断
ア.本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1〜3に記載された発明とを対比した相違点である、上記相違点1について検討する。
上記刊行物4ないし6には、半導体基板の表面に酸化膜を形成し該酸化膜に不純物を移動させ、その後酸化膜をエッチングすることによって不純物を除去することが示されているが、これを繰り返すことについては記載も示唆もされていない。
また、上記刊行物7に関する摘記事項(7a)及び(7b)を総合すると、上記刊行物7には、貼り合わせSOI基板のエピタキシャル層を薄く形成するために、エピタキシャル層表面への酸化膜形成と該酸化膜のエッチング除去を繰り返すことが示されているものと認められる。しかしながら、上記刊行物7には不純物除去について記載されていないこと、及び、そもそも極めて清浄な膜であるエピタキシャル層に対して不純物除去を行う必要はないことからみて、上記刊行物7には、高温熱処理による表面酸化シリコン膜の形成、該酸化シリコン膜の除去及び洗浄を複数回に亙り繰り返すことにより不純物を低減するという技術的思想が記載され、あるいは示唆されているとは認められない。
さらに、上記相違点1の構成は、上記刊行物8ないし9に記載も示唆もされていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、この点で明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記相違点2について検討するまでもなく、刊行物1ないし9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件請求項2ないし3に係る発明について
本件請求項2ないし3に係る発明は、少なくとも本件請求項1に係る発明を引用し、さらに限定した発明であるので、上記ア.と同様な理由により、上記刊行物1ないし9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)特許法第29条の2についての判断
本件の請求項1に係る発明と、本件出願日前に出願され本件出願後に出願公開された特願平5-81348号(特開平6-283420号公報参照)の願書に最初に添附した明細書又は図面に記載された発明(以下「先願発明」という)とを比較すると、先願発明は「前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返す」構成を有さない点で本願の請求項1に係る発明と相違し、当該相違点は課題解決のための具体化手段における微差ではないから、両者は同一ではない。
したがって、本件の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1ないし3に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体基板の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ表面シリコン層を有する半導体基板の製造において、
前記シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ後、前記シリコン基板を1250℃以上の温度で高温熱処理する際、
雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、前記表面シリコン層の表面に酸化シリコン膜を形成し、
前記表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、
前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、
前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すことにより、
前記表面シリコン層に混入した混入不純物を前記埋め込み酸化シリコン膜を通過させて前記シリコン基板中あるいは前記埋め込み酸化シリコン膜中あるいは表面酸化シリコン膜中へ移動させることを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】 前記高温熱処理の前に、前記シリコン基板にゲッタリング領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】 前記ゲッタリング領域がシリコン基板裏面に形成され、前記高温熱処理後、前記ゲッタリング領域を除去することを特徴とする請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ半導体基板(Silicon-On-Insulator。以下、SOI基板と称する)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、SOI基板は、各種の方法で製作されている。例えば、SIMOX(Separation by Implanted Oxygen)は、シリコン基板に酸素イオンを注入することにより、シリコンを内部酸化して埋め込み酸化シリコン膜を形成し、表面に単結晶シリコン層を残すことにより、SOI基板を製作している。
【0003】
このSIMOX法によりSOI基板を製造した場合、酸素イオン注入の行程において、酸素イオンビームが装置の構成部材をスパッタし、望ましくない不純物をSIMOX基板に混入させることがある。SIMOX法により製造したSOI基板に限らず、SOI基板の表面シリコン層に混入不純物があると、基板の表面シリコン層に形成した半導体装置の特性を劣化させるという問題があった。
【0004】
通常の半導体基板では、埋め込み酸化シリコン膜がないため、半導体装置を形成する表面シリコン部分にある混入不純物を基板内部あるいは基板裏面にゲッタリング領域を形成することにより混入不純物を固着して、表面シリコン層に形成した半導体装置への悪影響を避けている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらSOI基板は、半導体装置を形成する表面シリコン層の下に、裏面シリコン層への混入不純物の移動を妨げる埋め込み酸化シリコン膜があるため、半導体装置を形成する表面シリコン層に混入した不純物を除去することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、SOI基板において、混入不純物を低減することにより、清浄なSOI基板を得ることができる半導体基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ表面シリコン層を有する半導体基板の製造において、前記シリコン基板内部に酸化シリコン膜を埋め込んだ後、前記シリコン基板を1250℃以上の温度で高温熱処理する際、雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、前記表面シリコン層の表面に酸化シリコン膜を形成し、前記表面シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去し、前記シリコン層表面に形成した該酸化シリコン膜を除去したことにより露出した前記表面シリコン層を洗浄する工程を含み、前記1250℃以上の高温熱処理、前記酸化シリコン膜の除去および前記洗浄を複数回に亙り繰り返すことを特徴とする半導体基板の製造方法である。
【0008】
【作用】
上述のように構成された本発明の半導体基板の製造方法は、高温熱処理により、混入不純物を、表面シリコン層から埋め込み酸化シリコン膜を通過させてシリコン基板へ移動させることにより、表面シリコン層から除去するものである。熱処理の際、温度が高いほど、混入不純物のシリコン・酸化シリコン内での移動が早いため、短時間でも移動させられる。また、熱処理の際、雰囲気中に酸化性ガスを含ませることにより、表面シリコン層表面に酸化シリコン膜を形成して、表面シリコン層の混入不純物を形成した酸化シリコン膜中に吸いだし、形成した酸化シリコン膜を除去し、基板を洗浄することによって、より表面を清浄にする。さらに、シリコン基板に熱処理の前に、あらかじめゲッタリング領域を形成しておくことにより、シリコン基板に形成したゲッタリング領域により移動してきた混入不純物が元の表面シリコン層に戻らないようにする。SOI基板のゲッタリング領域をSOI基板の裏面に形成し、混入不純物を固着した裏面を混入不純物と共に除去すると、半導体装置を形成する行程において固着された混入不純物が再び表面シリコン層・埋め込み酸化シリコン層の界面へ戻ることがなくなる。
【0009】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0010】
実施例1
図1に示すSOI基板において、埋め込み酸化シリコン膜2の膜厚は0.4μm、表面シリコン層3の膜厚は0.15μmであり、表面シリコン層に含まれる混入不純物が鉄10×1011/cm2、銅10×1011/cm2であった。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
このSOI基板において、1300℃で6時間の高温熱処理する際の炉の雰囲気に0.5%の酸素ガスを混入し、図2に示すように、表面に0.06μmの酸化シリコン膜4を形成した。この酸化シリコン膜4を弗酸の希薄水溶液で除去し、さらに塩酸と過酸化水素水とを混合した酸系の洗浄液で表面シリコン層3を僅かに除去しつつ洗浄した。
【0015】
(a)SOI基板の表面から2μmまでに含まれる混入不純物は、鉄1×1011/cm2、銅6×1011/cm2と減少した
(b)高温熱処理による表面シリコン層3の酸化の工程と表面の酸化シリコン膜4と表面シリコン層3の表面付近を除去・洗浄する工程との組み合わせを2回繰り返すと、SOI基板の表面から2μmまでに含まれる混入不純物は、鉄0.2×1011/cm2、銅4×1011/cm2と、さらに減少した。また、複数回に亙り高温熱処理および表面酸化シリコン膜と表面シリコン層に表面付近の除去・洗浄を繰り返すと、さらに、SOI基板表面の混入不純物が減少した。
【0016】
実施例2
上記実施例1のSOI基板において、図3に示すように、SOI構造を形成する前に、基板シリコン1の裏面に混入不純物を固着するゲッタリング領域5を次のように形成した。
【0017】
(a)ゲッタリング領域として、基板シリコンの裏面に0.3μmの多結晶シリコン膜を付けた。
【0018】
(b)ゲッタリング領域として、基板シリコンの裏面に研磨剤を吹き付けて粗面とした。
【0019】
(c)ゲッタリング領域として、基板シリコンの内部に酸化シリコンの微細な析出物を形成した。
【0020】
上記のようにあらかじめゲッタリング領域5を形成した後、SOI構造を形成し、混入不純物を除去した。その後、1000℃の熱処理をしたところ、固着された混入不純物は、固着状態に留まり、表面シリコン層およびその近傍に移動することはなかった。
【0021】
実施例3
図4に示すように、上記実施例2において、SOI基板の混入不純物を固着したゲッタリング領域5を混入不純物と共に除去した。その後、1000℃以上の熱処理をしても表面シリコン層およびその近傍において混入不純物が増すことはなかった。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の半導体基板の製造方法によれば、不純物が混入したSOI基板を、1250℃以上に高温熱処理して混入不純物を移動させ、その後に表面付近を除去・洗浄し、あるいは、あらかじめSOI基板の内部・裏面に混入不純物を固着する領域を形成し、あるいは、混入不純物を固着領域と共に排除することにより、表面シリコン層に混入した不純物を低減できる。したがって、この表面シリコン層に半導体装置を形成してもSOI基板形成時に混入した不純物の悪影響を現れなくするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による半導体基板の製造方法の実施例1を説明するSOI基板の断面図である。
【図2】 本発明による半導体基板の製造方法の実施例1を説明するSOI基板の断面図である。
【図3】 本発明による半導体基板の製造方法の実施例2を説明するSOI基板の断面図である。
【図4】 本発明による半導体基板の製造方法の実施例3を説明するSOI基板の断面図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板、
2…埋め込み酸化シリコン膜、
3…表面シリコン層、
4…酸化シリコン膜、
5…ゲッタリング領域。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-10 
出願番号 特願平5-80828
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 161- YA (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 岡 和久
橋本 武
登録日 2002-04-05 
登録番号 特許第3295171号(P3295171)
権利者 新日本製鐵株式会社
発明の名称 半導体基板の製造方法  
代理人 野上 敦  
代理人 野上 敦  
代理人 齋藤 悦子  
代理人 奈良 泰男  
代理人 斉藤 悦子  
代理人 八田 幹雄  
代理人 宇谷 勝幸  
代理人 八田 幹雄  
代理人 奈良 泰男  
代理人 宇谷 勝幸  

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