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審決分類 |
審判 一部申し立て 発明同一 H01F |
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管理番号 | 1107961 |
異議申立番号 | 異議2002-72804 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-06-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-11-22 |
確定日 | 2004-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3286650号「高電圧用電子部品及び高電圧用可変抵抗器」の請求項1、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3286650号の請求項1、4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3286650号の請求項1ないし5に係る発明の手続きの経緯は、以下のとおりである。 出願(特願平5-305043号) 平成5年12月6日 設定登録 平成14年3月8日 特許異議の申立て(請求項1、4に対して;雨山範子)平成14年11月22日 取消理由通知 平成15年3月7日(起案日) 意見書 平成15年5月19日 2.特許異議の申立ての理由の概要 ア.申立ての理由の概要について 特許異議申立人は、甲第1号証として実願平4-77022号の願書に添付した明細書及び図面を提出し、本件請求項1、4に係る発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された上記実願平4-77022号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された考案と同一であると認められ、しかも、請求項1、4に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された考案の考案者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、請求項1、4に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるので特許を受けることができず、取り消されるべきものである旨主張している。 3.本件請求項1、4に係る発明 本件請求項1、4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、4に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】一端が開口した絶縁基板収納部を有する絶縁樹脂製の絶縁ケースと、 表面に回路パターンが形成されて前記絶縁ケースの内壁面と前記表面とが対向するように前記絶縁基板収納部に収納された絶縁基板と、 前記絶縁基板収納部の開口部から絶縁樹脂が充填されて形成された絶縁樹脂層と、 前記絶縁基板収納部の開口部に隣接して前記絶縁ケースに設けられた端子保持部材と、 一方の端部が前記絶縁基板を貫通して前記回路パターンの電極部に半田付け接続され他方の端部が前記端子保持部材に保持された線状端子部材とを具備してなる高電圧用電子部品であって、 前記線状端子部材は前記一方の端部と前記他方の端部との間にあって前記他方の端部と連続する部分が前記絶縁基板収納部の周囲を囲む前記絶縁ケースの側壁に沿って延びるように成形され、 前記端子保持部材は前記絶縁基板収納部から離れる方向に並び且つ間隔をあけて配置された第1の保持部及び第2の保持部からなり、 前記第1の保持部及び第2の保持部は前記絶縁基板収納部が開口する開口方向に向かって開口して前記線状端子部材の前記他方の端部を受け入れる保持構造をそれぞれ有しており、 前記第1の保持部は前記絶縁基板収納部側の端面部と前記線状端子部材の前記部分との間に前記絶縁樹脂が毛細管現象によって上る間隙が形成されるように配置されていることを特徴とする高電圧用電子部品。」 「【請求項4】前記第2の保持部の前記保持構造は、前記線状端子部材を挟むことができる間隔をあけて配置され且つ前記線状端子部材と係合する係合部を有する一対の係合片からなる請求項1,2または3に記載の高電圧用電子部品。」 4.甲第1号証(先願明細書)に記載された考案 実願平4-77022号の願書に添付した明細書及び図面には、図1、図7とともに、 「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 一面側に開口部を有する絶縁ケースと、この絶縁ケース内に収納された絶縁基板と、前記絶縁ケースに軸受けされた回転軸と、前記絶縁ケースの開口部側に注型された樹脂とを備えてなる高圧用可変抵抗器であって、 前記絶縁ケースの開口部側の一端に鍔が形成され、この鍔上面に突起が形成され、この突起に溝が形成され、前記絶縁基板から前記絶縁ケース開口部側に導出されたリード端子が前記突起の溝内に配置されて位置決めされ、前記突起には前記溝を分断する切欠きが形成されていることを特徴とする高圧用可変抵抗器。」 「【0003】 絶縁基板2には、図示は省略しているが、絶縁ケース1内底面と対向する側の面に、可変抵抗部と固定抵抗部とを形成する皮膜抵抗体と、この皮膜抵抗体に接続された端子電極等が形成されている。」こと、 「【0006】 また、絶縁基板2の端子電極と接触して絶縁ケース1内部に配置されている導電性ゴム8に一端が差し込まれ、他端が絶縁ケース1の開口部側に導出されたリード端子9が前記突起6の溝7内に配置されて位置決めされている。 【0007】 なお、リード端子9の一端は端子電極に直接、半田付けされる場合もある。また、この高圧用可変抵抗器には、入力端子や出力リード線等が設けられているが、図示は省略している。 【0008】 【考案が解決しようとする課題】 ところが、上記のように構成された高圧用可変抵抗器においては、図8に示すように、絶縁ケース1の開口部側に注型した樹脂4が注型時に絶縁ケース1の内壁面をつたわって突起6の位置にまで達し、さらに突起6の溝7内に侵入して絶縁ケース1の外部側にまで流出することがある。このような現象は、リード端子9の樹脂4内に埋没している部分が絶縁ケース1の内壁面に接近していると、その間の表面張力が大きくなって、より顕著にあらわれる。」こと、 「【0013】 【作用】 請求項1において、鍔上面の突起に、そこに形成された溝を分断する切欠きを形成したので、絶縁ケースの開口部側に注型した樹脂がその突起にまで達し、そこに形成されている溝内に侵入しても、その樹脂は切欠き部分に溜められることになり、絶縁ケース外部側にまで流出することはない。」こと、 「【0022】 【考案の効果】 以上のように本考案の請求項1によれば、絶縁ケースの開口部側の一端に形成された鍔上面の突起に、そこに形成された溝を分断する切欠きを形成したから、突起の溝内に侵入した樹脂はその切欠き部分に溜まることになり、絶縁ケースの外部側にまで流出するようなことがなくなる。」ことが、記載されている。 5.対比・判断 本件請求項1に係る発明と上記先願明細書に記載された考案とを対比すると、上記先願明細書には、本件請求項1に係る発明の構成要件である「前記第1の保持部は前記絶縁基板収納部側の端面部と前記線状端子部材の前記部分との間に前記絶縁樹脂が毛細管現象によって上る間隙が形成されるように配置されていること」について、記載も示唆もない。 すなわち、上記先願明細書の図1に示された構造では、絶縁ケース1の内壁面とリード端子9(本件の線状端子部材に相当)との間に大きな間隔が開いているため、積極的にまたは常に樹脂4(本件の絶縁樹脂に相当)が突起6(本件の第1の保持部及び第2の保持部に相当)の溝7内に入り込むものではなく、絶縁ケース1内に樹脂4を入れ過ぎたときに、絶縁ケース1の開口部側に注型した樹脂4が、注型時に表面張力により絶縁ケース1の内壁面を伝わって突起6の位置にまで達し、さらに突起6の溝7内に侵入して絶縁ケース1の外部側にまで流出することがあるというものであり、本件のように、絶縁樹脂が毛細管現象によって上る間隙が形成されているものではない。 したがって、本件請求項1に係る発明と上記先願明細書に記載された考案とは、同一ではない。 また、本件請求項4に係る発明は、少なくとも、本件請求項1に係る発明を引用し、さらに限定した発明であるから、本件請求項1に係る発明と同様に、上記先願明細書に記載された考案とは、同一ではない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、4に係る発明の特許を取り消すことができない。 そして、他に本件請求項1、4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1、4に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-11-18 |
出願番号 | 特願平5-305043 |
審決分類 |
P
1
652・
161-
Y
(H01F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 重田 尚郎 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
浅野 清 橋本 武 |
登録日 | 2002-03-08 |
登録番号 | 特許第3286650号(P3286650) |
権利者 | 北陸電気工業株式会社 |
発明の名称 | 高電圧用電子部品及び高電圧用可変抵抗器 |
代理人 | 西浦 嗣晴 |