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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1108007
異議申立番号 異議2003-71950  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-29 
確定日 2004-11-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第3373137号「有機性汚水の生物処理方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3373137号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第3373137号に係る出願は、平成9年7月18日に特許出願され、平成14年11月22日にその発明についての特許権の設定の登録がなされ、その後、平成15年7月29日付けで栗田工業株式会社(以下、「申立人」という)より特許異議の申立てがなされたものである。
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】有機性汚水を好気性生物処理法により浄化する工程から、余剰汚泥量より多い汚泥を引抜き、オゾン酸化工程と前記好気性生物処理工程とは別に設けた汚泥曝気工程との間を循環させたのち固液分離し、該分離水および前記汚泥曝気工程で曝気された汚泥の一部を、前記生物処理工程に返送することを特徴とする有機性汚水の生物処理方法。」
2.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証乃至甲第4号証を提出し、
本件発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものである、
旨主張している。
3.証拠の記載内容
甲第1号証乃至甲第4号証には次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証:特開平6-206088号公報
(1-ア)「好気性微生物を含む活性汚泥の存在下に、有機性排液を好気性処理する方法において、被処理液中のBODの同化により増殖する汚泥量よりも多い活性汚泥を好気性処理系から引抜き、引抜汚泥をオゾン処理したのち好気性処理系に導入することを特徴とする有機性排液の好気性処理方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(1-イ)「本発明の目的は、負荷および処理効率を低下させることなく、余剰汚泥の生成を抑制し、場合によっては余剰汚泥量の発生をゼロにすることも可能な有機性排液の好気性処理方法を提供することを目的とする。」(段落【0008】)
(1-ウ)「本発明では、被処理液中のBODの同化により増殖する汚泥量よりも多い活性汚泥を好気性処理系より引抜き、これをオゾン処理して好気性処理系に戻すことにより、活性汚泥の見かけ上の増殖を抑制する。これにより余剰汚泥の量が減少し、条件よっては余剰汚泥の発生量をゼロにすることができる。」(段落【0012】)
(1-エ)「オゾン処理系2では、図5の場合は曝気槽11から、図6の場合は・・・汚泥引出路22を通して引抜汚泥をオゾン処理槽21に循環し、オゾン供給路24より供給されるオゾンと接触させてオゾン処理を行う。オゾン処理汚泥はオゾン処理汚泥路25から曝気槽11に戻され負荷として好気性処理される。」(段落【0035】)
(2)甲第2号証:特開平8-299995号公報
(2-ア)「有機性排液を生物処理する生物処理工程と、生物処理工程から排出される余剰汚泥を消化する汚泥消化工程と、消化汚泥の少なくとも一部をオゾン処理して汚泥消化工程に循環するオゾン処理工程とを含む有機性排液の処理方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(2-イ)「このため汚泥消化工程における消化方法としては好気性消化および嫌気性消化のいずれかの消化方法を採用してもよい。好気性消化は余剰汚泥を消化槽に導入して曝気し、曝気した汚泥の一部を取出して固液分離する方法であるが、分離汚泥の一部を消化槽に循環するのが好ましい。嫌気性消化は・・・消化槽に循環するのが好ましい。」(段落【0012】)
(2-ウ)「本発明では上記の汚泥消化工程における消化汚泥の少なくとも一部を、オゾン処理工程においてオゾン処理し、汚泥消化工程に循環する。オゾン処理する消化汚泥は、消化槽から抜出したものをそのままオゾン処理してもよいが、固液分離した分離汚泥をオゾン処理するのが好ましい。固液分離した消化汚泥をすべてオゾン処理して循環してもよいが、前述のように一部をオゾン処理することなく循環し、残部をそのまままたは濃縮してオゾン処理し循環するのが好ましい。」(段落【0014】)
(2-エ)「そこで余剰消化汚泥量がゼロとなるように、消化汚泥の発生量より多い汚泥を消化汚泥として抜出し、これをオゾン処理して循環すると、過剰に抜出した汚泥量を増殖した汚泥量がバランスし、見掛上汚泥の増加量がゼロに近づく。この場合でも無機化した汚泥の蓄積を避けるために、最小限の消化汚泥を排出するのが望ましい。」(段落【0021】)
(2-オ)「オゾン処理工程では、・・・消化汚泥21の他の一部は必要により、無機物濃度の上昇を防止するために排出汚泥25として排出する。」(段落【0027】)
(2-カ)「固液分離槽4の分離液19は別途処理するか、あるいは生物処理槽1に循環して処理する。オゾン処理により・・・処理が容易になる。」(段落【0031】)
(3)甲第3号証:「第32回下水道研究発表会講演」日本下水道協会、平成7年6月12日発行、第673頁
(3-ア)「曝気槽の一部を利用し、好気性消化したところ、汚泥量の減少及び濃縮性の向上が認められ、汚泥処理経費が削減された。また、これに付随して脱窒素効果もみられた。」(第673頁9〜11行)
(3-イ)図1(第673頁)に「処理場フローシート」として「流入水を曝気槽で処理した後最終沈殿池で固液分離して放流する処理工程で、分離した汚泥の一部を返送汚泥として曝気槽・消化槽に送り、余剰汚泥を最初沈殿池に戻し、消化槽から消化汚泥としてポンプ場に戻す」ことが記載されている。
(4)甲第4号証:「排水の生物学的処理」技報堂出版、平成51年1月25日発行、第99頁
(4-ア)図10.6(第99頁)に「Kraus法・Hatfield法」として「ばっ気槽2の処理水を最終沈殿池3で固液分離した分離汚泥を消化槽に導入して処理し、その後処理液を再ばっ気槽4を経由してばっ気槽2に戻す」ことが記載されている。
4.当審の判断
甲第1号証には記載事項1-ア〜1-エからみて「好気性微生物を含む活性汚泥の存在下に、有機性排液を好気性処理する方法において、被処理液中のBODの同化により増殖する汚泥量よりも多い活性汚泥を好気性処理系から引抜き、引抜汚泥をオゾン処理したのち好気性処理系に導入する有機性排液の好気性処理方法。」の発明(以下「甲1発明」という)が記載されているといえる。
そこで、本件発明と甲1発明を対比すると、甲1発明の「被処理液中のBODの同化により増殖する汚泥量よりも多い活性汚泥を好気性処理系から引抜き」は本件発明の「余剰汚泥量より多い汚泥を引抜き」に相当することから、両者は「有機性汚水を好気性生物処理法により浄化する工程から、余剰汚泥量より多い汚泥を引抜き、オゾン酸化処理しのち生物処理工程に返送する」点で一致し、下記の点で相違している。
相違点:本件発明では「汚泥を引抜き、オゾン酸化工程と前記好気性生物処理工程とは別に設けた汚泥曝気工程との間を循環させたのち固液分離し、該分離水および前記汚泥曝気工程で曝気された汚泥の一部を、前記生物処理工程に返送する」のに対して、甲1発明は「引抜汚泥をオゾン処理したのち好気性処理系に導入」している点
そこで、この相違点について他の証拠を検討すると、甲第2号証の記載事項2-アに「有機性排液を生物処理する生物処理工程と、生物処理工程から排出される余剰汚泥を消化する汚泥消化工程と、消化汚泥の少なくとも一部をオゾン処理して汚泥消化工程に循環するオゾン処理工程とを含む有機性排液の処理方法」と記載され、この「オゾン処理工程」に関し、記載事項2-ウに「オゾン処理する消化汚泥は、消化槽から抜出したものをそのままオゾン処理してもよいが、固液分離した分離汚泥をオゾン処理するのが好ましい。固液分離した消化汚泥をすべてオゾン処理して循環してもよい」と、また、記載事項2-オに「消化汚泥21の他の一部は必要により、無機物濃度の上昇を防止するために排出汚泥25として排出する」と、そして記載事項2-カに「固液分離槽4の分離液19は別途処理するか、あるいは生物処理槽1に循環して処理する」と記載されている。これらの記載からみると、甲第2号証には「有機性排液を生物処理する生物処理工程と、生物処理工程から排出される余剰汚泥を消化する汚泥消化工程と、オゾン処理して汚泥消化工程に循環するオゾン処理工程とを含み、オゾン処理する消化汚泥は、消化槽から抜出したものをそのままオゾン処理するか、固液分離した分離汚泥をオゾン処理するものであって、固液分離した消化汚泥をすべてオゾン処理して循環し、固液分離槽の分離液を物処理槽に循環して処理するものであって、消化汚泥の他の一部は必要により、無機物濃度の上昇を防止するために排出汚泥として排出する有機性排液の処理方法」が記載されているといえる。そうすると、甲第2号証には上記相違点に係る本件発明の構成の「汚泥を引抜き、オゾン酸化工程と前記好気性生物処理工程とは別に設けた汚泥曝気工程との間を循環させ」ること、「固液分離」すること、「分離水を生物処理工程に戻す」ことについて記載されているといえるが、本件発明の構成の(a)「オゾン酸化工程と前記好気性生物処理工程とは別に設けた汚泥曝気工程との間を循環させたのち固液分離」するプロセス及び(b)「前記汚泥曝気工程で曝気された汚泥の一部を、前記生物処理工程に返送する」ことについて記載されているとはいえない。この(b)について更に検討を加えると、上記したように甲第2号証に「無機物濃度の上昇を防止するために排出汚泥として排出する」と記載され、この記載の「排出汚泥として排出する」汚泥を返送することが容易に行い得るかについては、確かに甲第3号証及び甲第4号証にはそれらの記載事項から一般的に「消化槽から生物処理工程への返送汚泥のように生物処理工程に返送すること」が知られているとしても、この返送汚泥は本件発明のように「オゾン酸化処理工程と汚泥曝気工程を循環した汚泥」とはいえず、また、「無機物濃度の上昇を防止するための排出汚泥」ともみることはできないから、甲第2号証の「排出汚泥」を生物処理工程に戻すことが容易にできるとは直ちに云うことはできなく、また、他にそういえる根拠も見当たらない。
そして、本件発明は相違点に係る構成を具備することによって、「有機性汚泥の系外への廃棄量をほぼゼロにでき、かつ難分解性COD生成量が少なくなる」等本件特許明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲1発明及び甲第2〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-11-09 
出願番号 特願平9-194482
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 真々田 忠博  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 西村 和美
野田 直人
登録日 2002-11-22 
登録番号 特許第3373137号(P3373137)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 有機性汚水の生物処理方法  
代理人 市川 利光  
代理人 濱田 百合子  
代理人 高松 猛  
代理人 本多 弘徳  
代理人 添田 全一  
代理人 小栗 昌平  
代理人 重野 剛  

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