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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A63F
管理番号 1108693
審判番号 無効2002-35534  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-10 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-16 
確定日 2003-08-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第2981851号発明「パチンコ機の施錠装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2981851号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第2981851号の請求項1及び2に係る発明は、平成8年8月27日に特願平8-225583号として出願され、平成11年9月24日にその設定登録がなされ、これに対して平成14年12月16日に株式会社サクラより本件無効審判の請求がなされ、平成15年1月21日付けで被請求人に対して答弁を指令したところ、答弁期間を経過した平成15年6月16日付けで被請求人から上申書が提出されたものである。

第2.本件発明
特許第2981851号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「請求項1 取付板と支持板からなる基枠体の内側に連結杆が摺動可能に配設され、該支持板の上部と下部に鉤部材が連結杆に連結されて傾動可能に枢支され、該取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差込むように固定され、該錠軸の先端に前記連結杆と係合するカム板が固定され、前記基枠体の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材が係止されて前面枠を施錠するパチンコ機の施錠装置において、鉤部を有する前パネル施錠杆が前記支持板に沿って該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で上下に摺動可能に配設され、該前パネル施錠杆を施錠側に付勢するばねが取付けられ、該前パネル施錠杆の一部に操作部が設けられ、前面枠内の下部に開閉可能に取付けられた前パネルの縁部に係止片が設けられ、該前パネル施錠杆の鉤部が該係止片に係止されて該前パネルが施錠されるように構成したことを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」
「請求項2 鉤部を上下に有するガラス枠施錠杆が、前記支持板に沿って、該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で、摺動可能に配設され、該ガラス枠施錠杆の一部に前記カム板が係合可能な係合孔が設けられ、ガラス枠の一部に設けた係止片にガラス枠施錠杆の鉤部が係止されてガラス枠が施錠され、前記シリンダ錠を前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させ、ガラス枠施錠杆を摺動させてガラス枠を解錠する請求項1記載のパチンコ機の施錠装置。」

第3.当事者の求めた審判
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、本件発明1及び2の出願前に公知の刊行物として下記の甲第1号証乃至甲第7号証を提出して、特許第2981851号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、本件発明1及び2の特許を無効とすべき理由として、次のように主張する。
本件特許に係る発明1及び2は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載される周知技術の単なる寄せ集めであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、あるいは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。
甲第1号証:実公平4-13032号公報
甲第2号証:実公昭56-25724号公報
甲第3号証:特公平6-83745号公報
甲第4号証:特開昭62-53679号公報
甲第5号証:実公昭62-7354号公報
甲第6号証:実公昭49-24303号公報
甲第7号証:実公昭51-6232号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、前記第1.手続の経緯で示したように、請求人の主張に対して上申書をもって反論している。

第4.当審の判断
1.本件発明2の認定
本件発明2は、本件発明1を引用する形式で記載されているところ、その全体構成を分説(a乃至lは、便宜上の整理のために付した。)すると、以下の記載のとおりのものと認められる。
「(a)取付板と支持板からなる基枠体の内側に連結杆が摺動可能に配設され、該支持板の上部と下部に鉤部材が連結杆に連結されて傾動可能に枢支され、
(b)該取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差込むように固定され、
(c)該錠軸の先端に前記連結杆と係合するカム板が固定され、
(d)前記基枠体の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材が係止されて前面枠を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
(e)鉤部を有する前パネル施錠杆が前記支持板に沿って該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で上下に摺動可能に配設され、該前パネル施錠杆を施錠側に付勢するばねが取付けられ、該前パネル施錠杆の一部に操作部が設けられ、
(f)前面枠内の下部に開閉可能に取付けられた前パネルの縁部に係止片が設けられ、
(g)該前パネル施錠杆の鉤部が該係止片に係止されて該前パネルが施錠されるように構成するとともに、
(h)鉤部を上下に有するガラス枠施錠杆が、前記支持板に沿って、該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で、摺動可能に配設され、
(i)該ガラス枠施錠杆の一部に前記カム板が係合可能な係合孔が設けられ、
(j)ガラス枠の一部に設けた係止片にガラス枠施錠杆の鉤部が係止されてガラス枠が施錠され、
(k)前記シリンダ錠を前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させ、
(l)ガラス枠施錠杆を摺動させてガラス枠を解錠するように構成したことを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」

2.刊行物に記載の発明
(1)甲第1号証に記載の発明
i.請求人が甲第1号証として提出した刊行物である実公平4-13032号公報には、以下の事項が記載されている。
「遊技盤を固定した基枠が機枠本体に開閉自在に支持され、前記基枠に前面枠が開閉自在に支持されたパチンコ機のロック装置において、前記基枠に固定されたベース板と、このベース板に固着した共通のガイドピンが挿通され、ベース板を挟む両側で移動自在に支持された同じ形状をした第1および第2作動部材と、これらの作動部材を互いに逆向きに付勢する一対の付勢部材と、前記基枠に回動自在に取付けられ、一方が機枠本体に設けた係止部に係合し、他方が前面枠に設けた係止部に係合する同じ形状をした第1および第2フック部材と、第1付勢部材と第1フック部材並びに第2作動部材と第2フック部材とをそれぞれ連結し、作動部材の各々が前記それぞれの付勢部材に抗して解除方向に移動したときに、対応するフック部材をそれぞれの係止部から離脱させる同じ形状をした第1および第2連結レバーと、基枠の前面から挿入されたキーの回転方向に応じ、前記第1および第2作動部材に設けた押圧部を選択的に押圧して作動部材の一方を解除方向に移動させる解除ピンとからなることを特徴とするパチンコ機のロック装置。」(第1頁第1欄第2〜24行)、
「本考案を用いたパチンコ機の外観を示す第2図において、基枠1は開口部2に遊技盤(図示省略)が固定された後、機枠本体3に周知の手段により開閉自在に取り付けられる。また、基枠1には前面ガラス4を保持した前面枠5が開閉自在に取り付けられている。この前面枠5は、前面ガラスが嵌め込まれた従来のガラス枠と、景品球を貯留してパチンコ球を一個づつ発射装置まで送る上皿が取り付けられた従来の前板とが一体化されたものとして構成されている。前記基枠1の一側面にはベース板8が固定され、このベース板8にはロック装置10が取り付けられている。ロック装置10は、後述するように、機枠本体3に固着された係止金具11に係合する第1フック12と、前面枠5に固着された係止金具14に係合する第2フック15とを含んでいる。これらの第1、第2フックは、それぞれ一対づつ設けられている。基枠1の前面側に露呈して設けられたキー挿入部16にキー18(第1図参照)を挿入し、これを右方向に回動させると(第1図で反時計万向となる)、第2フック15のそれぞれの先端部が下がり、係止金具14から係合解除される。これにより、前面枠5が基枠1から開放されるようになる。また、キー18を左方向に回動させると(第1図では時計方向となる)、第1フック12のそれぞれの先端部が上がり、係止金具11から係合解除される。これにより、基枠1が機枠本体3から開放されるようになる。基枠1を閉じるときには、基枠1を機枠本体3に向かって押し込めば、係止金具11が第1フック12の下側に形成されたテーパ面を介して第1フック12を押し上げるので、基枠1を一定量押し込んだ時点で、第1フック12が係止金具11と係合する。同様に、前面枠5を基枠1に一定量押し込むことによって、第2フック15が係止金具14に係合するので、前面枠5が閉じられることになる。前記ロック装置10を示す第1図において、基枠1に固着されたベース板8は、前面枠5の開閉方向に沿った立ち上がり面9を備えている。この立ち上がり面9には、裏面側まで貫通して突設された一対のガイドピン20が設けられている。そして、前記立ち上がり面9の両側には、前記ガイドピン20が挿通されるスロット23,24がそれぞれ形成された作動レバー25,26がスライド自在に支持されている。作動レバー25の両端には連結レバー28が軸着されている。また、連結レバー28には、ピン30によってベース板8に回動自在に軸着された第1フック12の一端が軸止めされている。同様に、作動レバー26の両端には連結レバー32が軸着されている。また、ピン33によりベース坂8に軸着された第2フック15の一端は、前記連結レバー32に軸止めされている。作動レバー25および作動レバー26は、それぞれベース板8との間に掛けられたばね35,36によって、一方は上方へと付勢され、他方は下方へと付勢されている。作動レバー25,26のそれぞれが前記ばね35,36によって初期位置にあるときには、図示のように、第1フック12、第2フック15のそれぞれはロック位置にあり、係止金具11,14と係合している。作動レバー25には解除片38、作動レバー26には解除片39がそれぞれカシメなどにより固着されている。作動レバー26の解除片39の端部は、ベース板8のスリット40を貫通して、解除片38の上に位置している。そして、これらの解除片38,39の間には、キー18の操作によって回動される回動板42に植設された、解除ピン43が突出している。なお、作動レバー26には手動解除レバー45が固着されている。また、符号46は基枠1に固着された開放ばねを示しており、基枠1に対して前面枠5を閉じたときに蓄勢されて、前面枠5を開き方向に付勢する。」(第2頁第3欄第33行〜第3頁第5欄第19行)。

ii.甲第1号証における前記摘示の記載及び図面第1及び2図によれば、該甲第1号証には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。
「(a′)基枠1に対する固着面部と立ち上がり面部とからなるベース板8の内側に連結レバー28及び作動レバー25が摺動可能に配設され、該ベース板8の立ち上がり面部の上部と下部に第1フック12が連結レバー28に連結されて傾動可能に枢支され、
(b′)該ベース板8の固着面部の中間部にキー挿入部16がそのキー受け入れ軸をベース板8の固着面部に設けた孔から内側に差込むように固定され、
(c′)該キー受け入れ軸の先端に前記作動レバー25に固着された解除片38と係合するように解除ピン43を植設した回動板42が固定され、
(d′)前記ベース板8の固着面部がパチンコ機の基枠1に縦に取付けられ、機枠本体3側に取付けられた係止金具11に前記第1フック12が係止されて基枠1を施錠するパチンコ機のロック装置において、
(e′)前面枠5を対象として第2フック15を有する連結レバー32及び作動レバー26が前記ベース板8の立ち上がり面部に沿って該第2フック15をベース板8の固着面部から前面側に突出させた状態で上下に摺動可能に配設され、該連結レバー32及び作動レバー26を施錠側に付勢するばね36が取付けられ、該連結レバー32及び作動レバー26の一部に手動解除レバー45が設けられ、
(f′)基枠1に開閉可能に取付けられたガラス枠と前板とが一体化された前面枠5の縁部に係止金具14が設けられ、
(g′)該連結レバー32の第2フック15が該係止金具14に係止されて該前面枠5が施錠されるように構成するとともに、
(h′)前面枠5を対象として第2フック15を上下に有する連結レバー32及び作動レバー26が、前記ベース板8の立ち上がり面部に沿って、該第2フック15をベース板8の固着面部から前面側に突出させた状態で、摺動可能に配設され、
(i′)該連結レバー32及び作動レバー26の一部に前記回動板42および解除ピン43が係合可能な解除片39が設けられ、
(j′)前面枠5の一部に設けた係止金具14に連結レバー32及び作動レバー26の第2フック15が係止されて前面枠5が施錠され、
(k′)前記キー挿入部16を基枠1の解錠時と反対方向に回して該回動板42および解除ピン43を同方向に回動させ、
(l′)連結レバー32及び作動レバー26を摺動させて前面枠5を解錠するように構成したパチンコ機の施錠装置。」

(2)甲第2号証に記載の発明
i.請求人が甲第2号証として提出した刊行物である実公昭56-25724号公報には、以下の事項が記載されている。
「第1図は使用状態を示す一部欠截せる斜視図で、第2図は本考案の要部を拡大して示した一部欠截せる斜視図である。これら図面において、1はパチンコ機の前面を塞ぐ木製の前枠で、2は金枠、3はガラス枠、4は前板であり、5は断面U字形に形成した中桟を示す。前枠1は周知の様に額縁形をなし、その一側をパチンコ機枠の閉口縁に蝶着して開閉自在に取付けられるもので、その中央部に開設される窓に上記金枠2を収めるようにしてある。金枠2は矩形に形成した一方の縦框2′の内周に上記ガラス枠3と前板4を上下に並べて各蝶着し、その夫々を開閉自在に取付ける」(第2頁第4欄第12〜24行)、
「図面には示されないが、ガラス枠3は遊技盤の前面を塞ぐもので、この枠には透明な板ガラスが嵌め込まれ、遊技盤が透視できるようにしてあり、また前板4は遊技盤下方に備えられる発射機構部を覆うもので、その前面には賞球受皿が、背面には打玉を発射機構部に供給する供給装置等が装備される。6は上記構成された金枠2の一方の縦框2′の内周縁に沿ってその略全長に亙るように付設した本考案に係る施錠装置の基板で、7はこの基板の側面に取付けられるガラス枠3を係止するための第一の錠片、8は前板4を係止するための第二の錠片で、9はガラス枠の自由端に設けた係止杆、10は前板の同じく自由端に設けた係止杆である。上記両錠片7,8は帯状の金属板で成形してあり、その夫々には縦長の長孔11,12が設けられ、この長孔に前記基板の側面に植設するピン13,14を滑合させることによつて基板6に対し上下に摺動可能に取付けられる。そして、これら錠片7,8は基板6との間に張設するバネ15,16によつて上方に付勢され、長孔11,12の下端にピン13,14を当接し、常には引き上げられた状態におかれる。17及び18は基板6に形成した案内条溝で、19,20は錠片7,8に形成した傾斜係合溝である。」(第2頁第4欄第38行〜第3頁第5欄第17行)、
「そして、突入した係止杆は第3図に示した様に案内条溝18に沿って水平に直進し、その途中に突出する山形の部分21を押下げて案内条溝18の奥の空部22に入り込み、バネ16の付勢によって上昇復帰する錠片8の作動によって傾斜係合溝20の奥に閉じ込められ係止されるようになっている。従って、開放されたガラス枠3と前板4は前述の様に中桟5を縦框2′,2′間に渡したのち、それぞれ閉塞すると、各自由端に設けた係止杆9,10が案内条溝17,18に突入し、錠片7,8を押下げてその傾斜係合溝19,20に各係合するため、その開放が阻止され閉塞状態に拘束されることになる。図中、23は上記拘束された係止杆9と10を釈放するための鍵部材で、24はこの鍵部材の回動子25に設けた回動杆、26は回動杆24と前記第二の錠片8との間に介在させた回動片である。」(第3頁第6欄第4〜20行)、
「上記鍵部材23は鍵穴に鍵29を差し入れ、この鍵を回動操作することによって回動子25を回転させ、回動杆24を回せるもので、図面において矢印R方向に操作したとき、回動杆24をレバー7aの上面に衝合させて第1の錠片7を押下げられるようにしてあり、また矢印L方向に操作したときワイヤ28を引き上げて回動片26を回動させ、第二の錠片8を押下げられるようにしてある。従って、前述の様に、各錠片7,8の傾斜係合溝19,20に係止杆9,10を係合させて閉塞されたガラス枠3と前板4は上記鍵29を左右に回動することによって上記係合が脱され、開放されることになる。そしてこの場合当該実施例では錠片7,8の押下げに伴って上記傾斜係合溝が下降し、その傾斜した上縁19c,20cが係止杆9,10に衝合して案内条溝17,18から押出すため、金枠2の前面に密着したガラス枠3と前板4は前方に押出され、容易に手を掛けて引き出すことができることになる。」(第3頁第6欄第35行〜第4頁第7欄第9行)、
「また、前板4を開放する場合、鍵の操作で回動片26を作動させ、第二の錠片8を操作するようにしたが、ガラス枠3を開放した場合には直接上記第二の錠片8を指で押下げることができるので、ガラス枠と前板を同時に開放する場合にはガラス枠だけを鍵で開放操作すればよいことになる。」(第4頁第8欄第6〜12行)。

ii.甲第2号証における前記摘示の記載及び図面第1乃至4図によれば、該甲第2号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「(b″)前枠1に鍵部材23がその回動子25を回動可能に固定され、
(c″)該回動子25の先端に前記ガラス枠用錠片7と係合する回動杆24が固定され、
(d″)前記基板6がパチンコ機の前枠1に収容した金枠2に縦に取付けられ、
(e″)山形部21を有する前板用錠片8が前記基板6に沿って該山形部21を基板6に形成される案内条溝18に突出させた状態で上下に摺動可能に配設され、該前板用錠片8を施錠側に付勢するバネ16が取付けられ、該前板用錠片8の一部に押下部8aが設けられ、
(f″)前枠1内の下部に開閉可能に取付けられた前板4の縁部に係止杆10が設けられ、
(g″)該前板用錠片8の山形部21が該係止杆10に係止されて該前板4が施錠されるように構成するとともに、
(h″)山形部21を上下に有するガラス枠用錠片7が、前記基板6に沿って、該山形部21を基板6に形成される案内条溝17に突出させた状態で、摺動可能に配設され、
(i″)該ガラス枠用錠片7の一部に前記回動杆24が係合可能なレバー7aが設けられ、
(j″)ガラス枠3の一部に設けた係止杆9にガラス枠用錠片7の山形部21が係止されてガラス枠3が施錠され、
(k″)前記鍵部材23をR方向に回して該回動杆24を同方向に回動させ、
(l″)ガラス枠用錠片7を摺動させてガラス枠3を解錠するように構成したパチンコ機の施錠装置。」

3.本件発明2について
(1)本件発明2と引用発明との対比
i.本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における、「機枠本体3」、「基枠1」、「前面枠5を形成する前板」、「基枠1に対する固着面部と立ち上がり面部とからなるベース板8」、「ベース板8の固着面部」、「ベース板8の立ち上がり面部」、「連結レバー28及び作動レバー25」、「係止金具11」、「第1フック12」、「キー挿入部16」、「キー受け入れ軸」「ロック装置10」は、それぞれ、本件発明における、「本体枠」、「前面枠」、「前パネル」、「基枠体」、「取付板」、「支持板」、「連結杆」、「受け金具」、「鉤部材」、「シリンダ錠」、「錠軸」、「施錠装置」に相当する。
また、引用発明における「前面枠5」は「ガラス枠」と「前板」とからなるところ、それぞれが、本件発明2における「ガラス枠」と「前パネル」に相当するから、引用発明における「前面枠5を対象として第2フック15を上下に有する連結レバー32及び作動レバー26」は、本件発明2における「鉤部を上下に有するガラス枠施錠杆」と対比して、「少なくともガラス枠を対象として鉤部を上下に有する施錠杆」において一致する。
さらに、引用発明における「キー受け入れ軸の先端に固定される回動板42に植設される解除ピン43」は、本件発明2における「錠軸の先端に固定されるカム板」と対比して、「錠軸の先端に固定される錠軸側係合手段」において一致する。
ii.そうすると、本件発明と引用発明の両者は、以下の点で一致及び相違するものと認められる。
一致点.
「(a°)取付板と支持板からなる基枠体の内側に連結杆が摺動可能に配設され、該支持板の上部と下部に鉤部材が連結杆に連結されて傾動可能に枢支され、
(b°)該取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差込むように固定され、
(c°)該錠軸の先端に前記連結杆と係合する錠軸側係合手段が固定され、
(d°)前記基枠体の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材が係止されて前面枠を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
(h°)少なくともガラス枠を対象として鉤部を上下に有する施錠杆が、前記支持板に沿って、該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で、摺動可能に配設され、
(i°)該施錠杆の一部に前記係合手段が係合可能な施錠杆側係合手段が設けられ、
(j°)ガラス枠の一部に設けた係止片にガラス枠施錠杆の鉤部が係止されてガラス枠が施錠され、
(k°)前記シリンダ錠を前面枠の解錠時と反対方向に回して該錠軸側係合手段を同方向に回動させ、
(l°)ガラス枠施錠杆を摺動させてガラス枠を解錠するように構成たことを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」
相違点A.錠軸の先端に固定されて連結杆及び施錠杆と係合する錠軸側係合手段と、該錠軸側係合手段と係合する施錠杆側係合手段が、本件発明2では、それぞれ、カム板と、係合孔であるのに対して、引用発明では、解除ピン43を植設した回動板42と、解除片39である点。
相違点B.本体枠と前面枠とを施錠するために使用される連結杆が、摺動可能に配設される、取付板と支持板からなる基枠体において、本件発明2は、前パネルを対象として施錠杆が前記支持板に沿って該鉤部を取付板から前面側に突出させた状態で上下に摺動可能に配設され、該施錠杆を施錠側に付勢するばねが取付けられ、該施錠杆の一部に操作部が設けられ、前面枠内の下部に開閉可能に取付けられた前パネルの縁部に係止片が設けられ、該施錠杆の鉤部が該係止片に係止されて該前パネルが施錠されるように構成したのに対して、引用発明では、ガラス枠と前パネルとを一体化した前面枠5が施錠されるようにその縁部に係止片が設けられた前記施錠杆の構成である点。

(2)相違点の検討
i.相違点Aについて検討する。
パチンコ機の施錠装置の技術分野において、連結杆及び施錠杆と係合する錠軸側係合手段と、該錠軸側係合手段と係合する施錠杆側係合手段とを、それぞれ、カム板と、該カム板と係合する係合孔(あるいは係合切欠)とで構成することは周知技術(例えば、実公平4-32150号公報、実公平7-10798号公報、特開平7-204337号公報、特開平8-141183号公報)であるから、引用発明に示される前記係合構成に代えて、前記周知技術を採用して、前記相違点Aにかかる本件発明2のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ii.相違点Bについて検討する。
本件発明2と甲第2号証に記載の発明とを対比すると、甲第2号証に記載の発明における、「ガラス枠3」、「前枠1」、「前板4」、「基板6」は、それぞれ、本件発明2における、「ガラス枠」、「前面枠」、「前パネル」、「基枠体」に相当するから、甲第2号証には、ガラス枠と前面枠との間の施錠装置であるガラス枠用施錠装置と、前パネルと前面枠との間の施錠装置である前パネル用施錠装置とにおいて、基枠体を共通にすることが記載されている。この点について、ガラス枠と前パネルとが分離独立して施錠されるように構成したパチンコ機の施錠装置は、周知の形態(例えば、甲第5号証乃至甲第7号証参照。)である。
そして、甲第2号証に記載の発明の前板用施錠装置は、本件発明2の前パネル用施錠装置と対比して、本件発明が「鉤部を取付板から前面側に突出させた状態」構造であるのに対して、甲第2号証に記載の発明では該構造のものではない点で相違し、その余の構成において一致するところ、該構造は、引用発明におけるガラス枠と前パネルとを一体化した前面枠5に係止する鉤部の構造として既に開示されている。
そうすると、引用発明に示される、ガラス枠と前パネルとを一体化した前面枠5について、これを前記周知の形態に倣って分離独立させるとともに、ガラス枠用施錠装置及び鉤部の構造については引用発明におけるガラス枠を含む施錠装置の構成を採用し、また、前パネル用施錠装置については甲第2号証に記載の発明における前パネル用施錠装置の構成を採用することによって、前記相違点Bにかかる本件発明2のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iii.そして、本件発明2の作用効果は、引用発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.本件発明1について
本件発明1は、本件発明2を包含した上位概念の発明であるところ、本件発明2が前記3.のとおり特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1も当然に特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1及び2の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-25 
結審通知日 2003-06-30 
審決日 2003-07-11 
出願番号 特願平8-225583
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 藤井 靖子
渡部 葉子
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2981851号(P2981851)
発明の名称 パチンコ機の施錠装置  
代理人 佐藤 光俊  
代理人 神戸 典和  

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