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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1108756
審判番号 不服2004-1648  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-10-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-23 
確定日 2004-12-16 
事件の表示 特願2003- 75400「画像生成装置、画像処理方法、ならびに、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月14日出願公開、特開2004-287504〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年3月19日の出願であって、平成15年12月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年2月23日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月23日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ポリゴン情報記憶部と、2次元画像記憶部と、画像生成部と、を備える画像生成装置であって、
前記ポリゴン情報記憶部は、3次元仮想空間内に配置されうるポリゴンを規定する情報を記憶し、
前記2次元画像記憶部は、表示しようとする立体形状のオブジェクトを複数の方向から眺めた場合に対応する複数の2次元画像を、当該ポリゴンに予め設定されている基準方向と、当該ポリゴンから視点位置に向かう視点方向との関係に従ったアドレスに対応させて予め記憶し、
前記画像生成部は、当該ポリゴンを視点方向に向けて配置した後に、当該ポリゴンの基準方向と、視点方向との関係に基づいて、対象となるアドレスの2次元画像を前記2次元画像記憶部から特定し、特定した2次元画像を、視点方向に向けた当該ポリゴンにマッピングすることにより、視点位置から見えるオブジェクトの画像を生成する
ことを特徴とするもの。」
と補正された。(この記載の事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-259672号公報(以下、引用例という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(2.1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の要素を有することを特徴とする3次元仮想空間表示装置
(a)2次元の実写画像の情報を記憶する実写画像情報記憶手段、(b)3次元仮想空間内の少なくとも位置と視点と視線方向のいずれかを入力する入力手段、(c)上記入力手段により入力された少なくとも位置と視点と視線方向とのいずれかに適合する2次元の実写画像情報を上記実写画像情報記憶手段より取得するとともに、取得した2次元の実写画像情報を平面オブジェクトにテクスチャマッピングを施したテクスチャオブジェクトとして配置するためのテクスチャオブジェクト情報を生成するテクスチャオブジェクト生成手段、(d)上記テクスチャオブジェクト生成手段により生成されたテクスチャオブジェクト情報を用いて上記テクスチャオブジェクトを3次元仮想空間に表示するCGモデル情報を生成するCGモデル生成手段、(e)上記CGモデル生成手段により生成されたCGモデル情報に基づいて2次元画面上の表示情報を生成するレンダリング処理を行う画像加工合成手段、(f)上記画像加工合成手段により生成された2次元画面上の表示情報に基づいて3次元仮想空間を表示する画像表示手段。
【請求項2】 上記入力手段は、位置と視点と視線方向とを入力し、
上記テクスチャオブジェクト生成手段は、
上記テクスチャオブジェクトの設定情報を、上記テクスチャオブジェクトの3次元仮想空間内に配置される位置により少なくとも近景、中間景、遠景のタイプ毎に記憶するテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段と、
上記入力手段により入力された少なくとも位置と視点と視線方向のいずれかに基づいて上記テクスチャオブジェクト設定情報記憶手段よりテクスチャオブジェクトの設定情報を取得してテクスチャオブジェクトを3次元仮想空間内に配置する位置を算出するテクスチャオブジェクト配置位置算出手段と、上記テクスチャオブジェクト配置位置算出手段により算出された配置位置に基づいてテクスチャオブジェクトのタイプを決定し、表示対象となるテクスチャオブジェクトを上記テクスチャオブジェクト設定情報記憶手段より選択する表示テクスチャオブジェクト選択手段と、
上記テクスチャオブジェクト配置位置算出手段により算出された配置位置からテクスチャオブジェクトにマッピングを行う2次元の実写画像情報を上記実写画像情報記憶手段より選択するテクスチャ画像情報選択手段と、
上記表示テクスチャオブジェクト選択手段により選択されたテクスチャオブジェクトと、上記テクスチャ画像情報選択手段により選択された実写画像情報とにより表示するテクスチャオブジェクトのCGモデル情報を生成するテクスチャオブジェクトCGモデル生成手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の3次元仮想空間表示装置。
……
【請求項14】 上記テクスチャオブジェクト配置位置算出手段は、
テクスチャオブジェクトが少なくともユーザの位置及び視線方向のいずれかに対して直交するように回転するビルボード型のテクスチャオブジェクトに対応するように、3次元仮想空間内に配置するテクスチャオブジェクトの位置及び形状を算出するビルボードテクスチャオブジェクト配置位置算出手段を備えることを特徴とする請求項2記載の3次元仮想空間表示装置。」

(2.2)「【0032】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1,図2は、この発明の表示装置の各機能手段の構成を示すブロック構成図である。図1において、100はカメラ撮影、ビデオカメラ撮影、写真のスキャナ取り込みなどで撮影した2次元の実写画像(静止画像及び動画像)の情報(gif,jpeg,rgb,mpeg,mov,aviなどのフォーマットの画像ファイル)をハードディスクなどに記憶しておく実写画像情報記憶手段。700は実写画像情報記憶手段100より得られた2次元の実写画像情報を3次元仮想空間内に平面オブジェクト(以降、テクスチャオブジェクトと称する。又は、平板オブジェクトと称することもある)として配置するための情報(テクスチャオブジェクトの位置、形状、動作の定義など)を生成するテクスチャオブジェクト生成手段。200は3次元仮想空間を構成する3次元コンピュータグラフィックス(以降、CGと称する)によるモデルの情報(3次元仮想空間内の各立体を構成するポリゴンの幾何学情報)をテクスチャオブジェクト生成手段700から得られるテクスチャオブジェクト情報(テクスチャオブジェクト自体の構成ポリゴンやテクスチャマッピングに関する情報)を含めて生成するCGモデル生成手段。300はCGモデル生成手段200からのCGモデル情報を元に2次元画面上の表示情報を生成するレンダリング処理を行う画像加工合成手段(実際には、コンピュータ上のソフトウェアとして、OpenGLやDirectX 3Dなどの汎用的なグラフィックライブラリを利用して構成されることが多い)。600は画像加工合成手段300から得られた2次元画面の画像情報をフレームメモリなどに与え、ディスプレイ処理用ボードなどのハードウェアに接続されたビットマップディスプレイ、スクリーンなどの出力装置に、仮想空間の表示を行う画像表示手段。400はユーザがジョイスティック、キーボード、マウスなどの入力装置により3次元仮想空間内のユーザの位置、視点、視線方向などの情報を入力するユーザ入力手段。500はユーザ入力手段400から得られたユーザの位置、視点、視線方向などの情報から仮想空間の表示画像の加工合成を行うための制御情報を生成する制御手段である。
【0033】図2は、この発明の表示装置のテクスチャオブジェクト生成手段700の各機能手段の構成を示すブロック構成図である。710はテクスチャオブジェクトの設定情報を記憶しておくテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段。750はユーザの位置、視点、視線方向などの情報とテクスチャオブジェクトの設定情報から、テクスチャオブジェクトを3次元仮想空間内に配置する位置を算出するテクスチャオブジェクト配置位置算出手段。720はテクスチャオブジェクト配置位置算出手段750により求められたテクスチャオブジェクトの位置情報から表示を行うべきテクスチャオブジェクトを選択する表示テクスチャオブジェクト選択手段。730は同様にテクスチャオブジェクトの位置情報から各テクスチャオブジェクトにマッピングを行うテクスチャ画像情報を選択するテクスチャ画像情報選択手段。740は表示すべきテクスチャオブジェクトのCGモデル情報を生成するテクスチャオブジェクトCGモデル生成手段である。」

(2.3)「【0050】実施の形態4.上記実施の形態1,2では、基本的な構成の3次元仮想空間表示装置を実現し、実施の形態3では、テクスチャオブジェクトの背景領域の透明マッピングを管理するものを示したが、同様に実写画像テクスチャオブジェクトを空間内に配置する観点から、各テクスチャオブジェクトごとに配置を固定するか、何らかの移動をさせるかについて設定を行う場合の表示装置の実施の形態を示す。
【0051】図6は、この発明の表示装置のテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段710の各機能手段の構成を示すブロック構成図である。710はテクスチャオブジェクトの設定情報を記憶しておくものであるが、本実施の形態4で必要となる機能手段は、まず、712のテクスチャオブジェクト運動型設定記憶手段であり、各テクスチャオブジェクトがその配置形態に合わせて、静止しているか、何らかの移動を行うのかについての情報を記憶しておくものである。更に、714のテクスチャオブジェクト配置型設定記憶手段であり、遠景、中間景、近景などのユーザの視点からの距離の遠近に従って、上記の運動型を相応しいものに設定する配置型の情報を記憶しておくものである。
【0052】テクスチャオブジェクトは、基本的に長方形の板であり、テクスチャイメージとして撮影された実体の実際の位置に、それらの実体が存在するかのように、テクスチャオブジェクトを配置させる。これには、遠方の背景のように固定的に配置させるものもあれば、比較的近い場所にある建造物がその場所に存在するように、ユーザの視点に対応して移動させるものもある。代表的な運動型のテクスチャオブジェクトがどのように利用されるかを示すイメージ図を図9(A),(B)に示す。
【0053】本実施の形態では、以下の3レベルのテクスチャオブジェクト群を利用する。仮想空間内では、ユーザはアバタとして表示がなされ、その視点が決定される。
……
(3)近景
アバタが存在する位置の近隣の物体のみを、近景テクスチャ上に映す。図9(A)の2220,2230が近景に当たる。この物体以外は、透明背景領域としてマッピングを行うテクスチャオブジェクトを物体の存在する位置に配置する。直方体のビルの外壁に実写テクスチャを貼った3次元モデルのオブジェクトは、そのまま固定位置に配置して利用する。また、ユーザの位置の方向に対して、正対するように回転するビルボードのようなものも利用できる。」

(2.4)「【0058】実施の形態5.上記実施の形態1〜4では、テクスチャオブジェクトにマッピングする実写画像を固定的に同一のものを使用する基本的な構成の3次元仮想空間表示装置を示したが、更に、ユーザの移動に伴ってよりリアリティのある実写画像を得ることができるマッピングを行うテクスチャ画像を変更する場合の表示装置の実施の形態を示す。
【0059】図6は、この発明の表示装置のテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段710の各機能手段の構成を示すブロック構成図である。710はテクスチャオブジェクトの設定情報を記憶しておくものであるが、本実施の形態で必要となる機能手段は、713のテクスチャ画像変更設定記憶手段であり、ユーザの位置、視点、視線方向に対して、テクスチャオブジェクトにマッピングすべき画像を変更する処理についての情報を記憶しておくものである。
【0060】既に、実施の形態4において、ビルボードタイプのテクスチャオブジェクトについて記したが、図9(A)の例1内の木の遠景2200のように、どこから見ても同じ画像が見えたとしても特に問題がない場合は、確かにマッピングする画像を変更する必要はない。しかし、より複雑な形状を持つオブジェクトに対しては、周囲の見る方向を様々に変えた場合に、オブジェクトがユーザの視点に合わせて回転しているようにしか見えない。これから、実際に該当するオブジェクトが該当地点に静止しているようにする場合は、眺める方向に対して、適宜画像を変更する必要がある。あらゆる方角に対して、多量の切り替えテクスチャ画像を用意するのは、実質的に不可能なので、オブジェクトを周囲360°回転させ、適当にサンプリングして撮影した複数のテクスチャ画像を用意することになる。これら用意されたテクスチャ画像を眺める方角に合わせて適度に切り替える。これをスイッチングビルボードタイプと称する(図11)。
……
【0062】次に、図3,図13に基づき動作について説明する。まず、全体の処理のフローチャートは、実施の形態1〜4にて説明した図3と全く同様である。その中の1040の処理の中で、図13に示すように、テクスチャ画像変更設定記憶手段713からの情報を元に、テクスチャ画像を切り替えるタイプのテクスチャオブジェクト毎に分類し(1041,1042)、切り替えないタイプのものは、デフォルトのテクスチャ画像を選択し(1043)、スイッチングビルボードタイプのものは、視線方向によってテクスチャ画像を選択し(1044)、また、ユーザからの距離に応じて変更するもの(1045)など様々な選択手法に分かれて処理を行う。この処理は、テクスチャ画像情報選択手段730にて行われる。
【0063】以上のように、テクスチャオブジェクトにより表示された複雑なオブジェクトの周辺を移動した場合や、奥行きのある情景に近づいたり離れたりした場合などに、ユーザの位置、視点、視線方向などに応じて、細やかにテクスチャ画像を切り替えることで、固定したテクスチャ画像だけでは得られないリアリティの向上を得ることができる。
【0064】以上のように、この実施の形態5では、テクスチャオブジェクト設定情報記憶手段710が、視点位置情報に応じて、テクスチャオブジェクト上のテクスチャ画像を変更する処理に関する情報の設定をテクスチャオブジェクト毎に記憶しているテクスチャオブジェクト画像変更設定記憶手段713を備え、ユーザの視点位置に応じてテクスチャ画像として表示されている物体の画像を変更し、実際にその立体的な物体が存在するかのような効果をもたらすことのできることを特徴とする3次元仮想空間表示装置を説明した。」

(2.5)「【0103】実施の形態12.以上の実施の形態1〜11では、既にテクスチャオブジェクトとして、遠景、中間景、近景などの様々な種類がもつ表示装置について述べてきた。特に、実施の形態4,5では、ビルボードタイプ、或いは、スイッチングビルボードタイプについて実現した表示装置の概要について説明した。本実施の形態12では、具体的にビルボードをユーザの位置、視点、視線方向などに合わせて移動させる位置の算出手段について詳細を示す。
【0104】ユーザの位置とテクスチャオブジェクトの位置とを結ぶ直線方向に対して、テクスチャオブジェクトの面が常に直交するように特定の位置で回転運動を行うタイプのものである。ユーザが眺めることになる画像は、常に同じものになる。主に、眺める方向が変わっても同じ画像が見えるので、木や煙突など違和感を感じさせないオブジェクトを対象として利用されることが多い。図9(A)の例1内の木を表示しているテクスチャオブジェクトがその例である。また、テクスチャオブジェクト上に複雑な形状のオブジェクトを表示させる場合に、眺める方向によって、マッピングする画像テクスチャ情報を変更するタイプのスイッチングタイプのものもある(図11)。
【0105】図23は、この発明の表示装置のテクスチャオブジェクト配置位置算出手段750の各機能手段の構成を示すブロック構成図である。本実施の形態に必要な手段は、ビルボードテクスチャオブジェクトの配置位置及び形状について、算出を行うビルボードテクスチャオブジェクト配置位置算出手段753である。」

したがって、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「2次元の実写画像の情報を記憶しておく実写画像情報記憶手段、実写画像情報記憶手段より得られた2次元の実写画像情報を3次元仮想空間内に平面オブジェクト(以降、テクスチャオブジェクトと称する。)として配置するための情報(テクスチャオブジェクトの位置、形状、動作の定義など)を生成する、テクスチャオブジェクトの設定情報を記憶しておくテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段を有するテクスチャオブジェクト生成手段、3次元仮想空間を構成する3次元コンピュータグラフィックス(以降、CGと称する)によるモデルの情報(3次元仮想空間内の各立体を構成するポリゴンの幾何学情報)をテクスチャオブジェクト生成手段から得られるテクスチャオブジェクト情報(テクスチャオブジェクト自体の構成ポリゴンやテクスチャマッピングに関する情報)を含めて生成するCGモデル生成手段、CGモデル生成手段からのCGモデル情報を元に2次元画面上の表示情報を生成するレンダリング処理を行う画像加工合成手段と、を備えた3次元仮想空間表示装置において、
テクスチャオブジェクトが少なくともユーザの位置及び視線方向のいずれかに対して直交するように回転するビルボード型のテクスチャオブジェクトに対応するように、3次元仮想空間内に配置するテクスチャオブジェクトの位置及び形状を算出するビルボードテクスチャオブジェクト配置位置算出手段と、実写画像情報記憶手段にオブジェクトを周囲360°回転させ、適当にサンプリングして撮影した複数のテクスチャ画像を用意し、これら用意されたテクスチャ画像を眺める方角に合わせて適度に切り替えるため、視点位置情報に応じて、テクスチャオブジェクト上のテクスチャ画像を変更する処理に関する情報の設定をテクスチャオブジェクト毎に記憶しているテクスチャオブジェクト画像変更設定記憶手段と、テクスチャ画像変更設定記憶手段からの情報を元に、視線方向によってテクスチャ画像を選択するテクスチャ画像情報選択手段と、をテクスチャオブジェクト生成手段に備え、
ユーザの視点位置に応じてテクスチャ画像として表示されている物体の画像を変更し、実際にその立体的な物体が存在するかのような効果をもたらすことを特徴とする3次元仮想空間表示装置。」

(3)対比
引用発明の「テクスチャオブジェクト生成手段」は、「テクスチャオブジェクト自体の構成ポリゴンやテクスチャマッピングに関する情報」をそれから得られるものであり、「テクスチャオブジェクトの設定情報を記憶しておくテクスチャオブジェクト設定情報記憶手段」を有するものであるから、本願補正発明の「ポリゴン情報記憶部」と同様の機能を有するものであり、引用発明の「2次元の実写画像の情報を記憶する実写画像情報記憶手段」は、「オブジェクトを周囲360°回転させ、適当にサンプリングして撮影した複数のテクスチャ画像を用意」しとするものであるから、下記の相異点で異なるものの、表示しようとする立体形状のオブジェクトを複数の方向から眺めた場合に対応する複数の2次元画像を予め記憶する点では、本願補正発明の「2次元画像記憶部」と同様の機能を有するものであり、引用発明の「ビルボードテクスチャオブジェクト配置位置算出手段」は、ポリゴンを視点方向に向けて配置する機能を有するものといえ、引用発明の「テクスチャオブジェクト画像変更設定記憶手段」及び「テクスチャ画像情報選択手段」は、視点位置情報に応じて、「実写画像情報記憶手段」から視線方向によってテクスチャ画像を選択する機能を有するものであるから、下記の相異点で異なるものの、「CGモデル生成手段」及び「画像加工合成手段」の機能と合わせて、ポリゴンを視点方向に向けて配置した後に、視点方向の関係に基づいて、対象となる2次元画像を前記2次元画像記憶部から特定し、特定した2次元画像を、視点方向に向けた当該ポリゴンにマッピングすることにより、視点位置から見えるオブジェクトの画像を生成する点では、本願補正発明の「画像生成部」と同様の機能を有するものである。そして、引用発明の「3次元仮想空間表示装置」は、画像生成装置といえるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下の一致点及び相異点がある。

一致点
「ポリゴン情報記憶部と、2次元画像記憶部と、画像生成部と、を備える画像生成装置であって、
前記ポリゴン情報記憶部は、3次元仮想空間内に配置されうるポリゴンを規定する情報を記憶し、
前記2次元画像記憶部は、表示しようとする立体形状のオブジェクトを複数の方向から眺めた場合に対応する複数の2次元画像を、予め記憶し、
前記画像生成部は、当該ポリゴンを視点方向に向けて配置した後に、視点方向との関係に基づいて、対象となる2次元画像を前記2次元画像記憶部から特定し、特定した2次元画像を、視点方向に向けた当該ポリゴンにマッピングすることにより、視点位置から見えるオブジェクトの画像を生成する ことを特徴とするもの。」

相異点
本願補正発明の「2次元画像記憶部」は、「表示しようとする立体形状のオブジェクトを複数の方向から眺めた場合に対応する複数の2次元画像を、当該ポリゴンに予め設定されている基準方向と、当該ポリゴンから視点位置に向かう視点方向との関係に従ったアドレスに対応させて予め記憶し」とするものであり、それにともない「画像生成部」が、「当該ポリゴンの基準方向と、視点方向との関係に基づいて、対象となるアドレスの2次元画像を前記2次元画像記憶部から特定し」とするものであるのに対して、引用発明では複数の2次元画像をどのように記憶しているのか明示がなく、また、対象となる2次元画像ををどのように特定しているのか明示がない点。

(4)相異点に対する判断
引用発明においても、マッピングする2次元画像は、当該ポリゴンを眺める方角に合わせたものであり、当該ポリゴンは視点方向に向けて配置されるものである。そして、引用例には、本願の明細書に実施例として記載されたものと同様なビルボードの技術により、当該ポリゴンを視点方向に向けて配置することも記載されている。また、引用例のスイッチングビルボードタイプのテクスチャオブジェクトを示す図として示された図11の視線方向を表す2つの矢印を、何も基準を用いることなく定量的に区別することは不可能であるから、そのような方角を特定するためには、何らかの基準を導入しなければならないことは明らかである。
さらに、複数の2次元画像を記憶する場合に、それぞれ異なるアドレスに記憶することは当然のことである。
そして、上記のとおり当該ポリゴンは視点方向に向けて配置されるので、当該ポリゴンの向かう、ある方角を基準の方向とすることに困難な点はないから、引用発明において、当該ポリゴンに基準方向を予め設定し、その方向と視点方向との関係によりマッピングする2次元画像を特定するようにすることで、本願補正発明と同様の構成とすることは当業者が容易になしえることである。
したがって、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、特開平11-259685号公報にも、板ポリゴンである実写映像表示オブジェクトを、視線ベクトルに対して垂直になるように配置し、視線ベクトルに対する視線角「α」(図6のとおり、当該ポリゴンの基準方向との角度であることは明らかである。)に応じて、マッピングする映像を変更することが記載されている。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ポリゴン情報記憶部と、2次元画像記憶部と、画像生成部と、を備える画像生成装置であって、
前記ポリゴン情報記憶部は、3次元仮想空間内に配置されうるポリゴンを規定する情報を記憶し、
前記2次元画像記憶部は、表示しようとする立体形状のオブジェクトを複数の方向から眺めた場合に対応する複数の2次元画像を、それぞれ所定の規則に従ったアドレスに対応させて予め記憶し、
前記画像生成部は、当該ポリゴンを視点方向に向けて配置した後に、当該ポリゴンに予め設定されている基準方向と、当該ポリゴンから視点位置に向かう視点方向との関係に基づいて、対象となるアドレスの2次元画像を前記2次元画像記憶部から特定し、特定した2次元画像を、視点方向に向けた当該ポリゴンにマッピングすることにより、視点位置から見えるオブジェクトの画像を生成する
ことを特徴とするもの。」

本願発明は、本願補正発明が「2次元画像記憶部」について、「当該ポリゴンに予め設定されている基準方向と、当該ポリゴンから視点位置に向かう視点方向との関係」とし、それにともない「画像生成部」について、「当該ポリゴンの基準方向と、視点方向との関係に基づいて」としているのに対して、それぞれ「それぞれ所定の規則」及び「当該ポリゴンに予め設定されている基準方向と、当該ポリゴンから視点位置に向かう視点方向との関係」とするものであるから、本願補正発明と同様、引用例に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-13 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-01 
出願番号 特願2003-75400(P2003-75400)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 俊介村松 貴士  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
深沢 正志
発明の名称 画像生成装置、画像処理方法、ならびに、プログラム  
代理人 石井 裕一郎  

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