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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1108815
審判番号 不服2001-23140  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-26 
確定日 2004-12-09 
事件の表示 平成 8年特許願第235035号「ファクタリング情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月24日出願公開、特開平10- 78993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は平成8年9月5日の出願であって、平成13年11月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年1月24日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成14年1月24日付手続補正書の特許請求の範囲に係る補正は、平成13年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲に係る請求項1〜8を削減し、同補正書の請求項9を新たな請求項1とするものであるから、上記記補正は特許法第17条の2第4項第1号に掲げる事項を目的とするものと認められる。
よって、本件出願の請求項1に係る発明は、平成14年1月24日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載から特定される次のとおりのものと認められる。
「各納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録する、前記購入企業に置かれた端末装置と、
前記商品の売掛債権に関する債権情報を前記端末装置から取得する債権データ入力手段と、
前記債権データの支払期日を管理する支払期日管理手段と、
前記債権データに基づいて譲渡対象の債権明細等の帳票データを作成し、前記各納入企業が有する端末機宛の帳票データをブロック化してVANを介して前記端末機へ送信する帳票データ送信手段と、
前記端末機から前記VANを介して割引申込データを受信する割引申込データ受信手段と、
前記債権情報および前記割引申込データに基づいて、割引希望日での割引金額を算出して前記納入企業への支払いに関する支払データを作成する支払データ作成手段と、
前記支払データを電気通信回線を介して金融機関が有する業務処理ホストへ送信する支払データ送信手段と、
前記業務処理ホストからの入金明細データを前記電気通信回線を介して受信し、受信した入金明細データに基づき決済の完了を判定し、当該債権データを消し込む債権データ消込手段と、
を備え、
前記端末装置と前記業務処理ホストとの間が前記電気通信回線を介して接続されており、
前記端末装置から前記業務処理ホストへ振込データを送信する際に各債権毎に消込用コードを持った振込データを送信すると共に、
前記債権情報処理装置が前記業務処理ホストから前記振込データに対する入金明細データを受信する際に前記各債権毎の消込用コードを持った入金明細データを受信し、
前記消込用コードをキーとして当該債権データの消し込み処理を行なうようになっている債権情報処理装置。」(以下、本願発明という。)

3.引用例
(a)原審の拒絶の理由に引用された『志村、玉木,「Lotus1-2-3&一太郎を活用した 代理店の与信・債権管理の実務」,実教出版株式会社,平成5年7月20日,p.139〜147』(以下、引用例1という。)には、「ファクタリング」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

A.「前頁の図表はある輸送用機器メーカーが代理店を経由したユーザー債権を買い取るファクタリング方式による販売金融の一例です。この例では高額商品の長期分割販売による債権をできるだけ早く資金化するための手段として考えられたもので,一種の割賦販売ファクタリングともいえるものです。次のような利点があります。(略)3.情報システム化により管理がしやすい。」(第140頁11行〜第21行)
B.「 ファクタリング(Factoring)
償還請求権なしに売掛債権を買い取り,債務者の帳簿作成,債権管理,回収の代行引受け,クライアントの要請に応じ,前払い金融を行い,顧客の信用調査,情報システム管理等を提供するファクターの業務をいいます。売掛債権を資金化するための最も有効な金融手段であり,欧米では広く普及しています。一方,日本では手形が普及し,銀行での手形割引という調達手段があったためと,債権譲渡という意味が信用が低下するという解釈になりがちであったため,まだ一般的普及をみていません。しかし,最近では企業での手形管理,事務処理の煩雑さの解消や銀行での取立業務の効率化の決め手としてファクタリングが見直され,代金回収のシステムの合理化策として注目されています。」(第140頁下部欄)
C.「 ファクタリングのしくみ もう少しファクタリング(factoring)について説明しておきましょう。(略)日本では昭和47年三和銀行系のオリエントファクターが最初にファクタリングを日本へ持ち込みました。(略)次の図表のように,きわめて単純明快な販売金融で,もっと多くの企業で検討すべきでしょう。
・どこそこへ,なにを,いくらで売りたい………クライアント
・そこへ売ってよいかどうか決定する………………ファクター
・販売が成立し,商品を出荷したので前払いする…ファクター→クライアント
・そしてファクターは顧客から代金を回収する
ファクターの機能 前記の図解で理解できるように,ファクターは複雑な流通機構を単純化,合理化する商権をもたない特殊商社といえます。
またファクタリングも売上債権,延払い債権に付随する複雑な手続きを販売業者に代わって円滑に進めるための各種サービス機能を提供するシステムであり,金融はサービス機能の一つということになります。第4節で紹介したように,ファクタリングの一機能である代金回収システムの採用により,飛躍的に販売効率や生産性の向上に結びつけた企業もあり,画期的なシステムと評価できます。またファクタリングは金融機能だけをとっても,その取引形態によっていくつかの種類、があります。
・前払いによる金融(標準ファクタリング)
・銀行提携ファクタリング(売上債権の満期に支払われる)
・無通知ファクタリング(債権譲渡を通知せず,クライアントが請求,督促する)
・在庫を担保とする金融(扱いは前払いでなく借入であり,アメリカではフロアリングと呼び広く普及している。当然,売上時,ファクタリングへ移行し,返済財源が確保される)
・輸出入金融」(第141頁第2行〜142頁第20行)
D.「繊維問屋の例 繊維問屋のS社は取引先の全リストと販売資料をファクターへ提出し,今後の与信管理をファクターへ移行させ,重点取引先への営業活動と新規得意先の開拓に注力し,2年後には販売先が50%洗い替えられ,販売網の新旧交代に成功した。売上増大と貸倒れの解消により,ファクタリングの費用負担は十分吸収できた。」(第145頁第2行〜第7行)

また、第139頁の図表において、ファクターとユーザー間の代金取立、支払が銀行を介して行われていることが示されており、ユーザーから銀行に対し振込データが送られているとともに、ファクターは銀行から入金明細データを受け取っているものと認められる。更に、Dの記載から債権者から譲渡対象の債権データをファクターに提供しているものと認められる。
そして、引用例1には、ファクタリング業務の詳細については記載されていないが、ファクタリング会社において、イ.各債権データの支払期日を管理すること、ロ.債権データに基づいて譲渡対象の債権明細等の帳票データを作成すること、ハ.納入企業から割引申込データを受け取ること、ニ.割引希望日での割引金額を算出して支払データを作成すること、ホ.支払データを金融機関へ送ること、および、ヘ.受け取った入金明細データに基づき決済の完了を判定し、当該債権データを消し込むことは、ファクタリング業務における通常の事務処理として行われているものであり、引用例1に説明されているファクタリングもこれらの業務を実質的には含んでいるものと認められる。
更に、購入企業において、納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録することは、当然のこととであり、引用例1においても、債務者(購入企業)において、納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録しているものと認められる。
従って、これらの記載からして、引用例1には次のような発明が記載されていると認められる。
「購入企業において、金融機関へ振込データを送ると共に、各納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録する機能を有し、
前記商品の売掛債権に関する債権情報を納入企業から取得する債権データ入力機能と、
前記債権データの支払期日を管理する支払期日管理機能と、
前記債権データに基づいて譲渡対象の債権明細等の帳票データを作成する機能と、
納入企業からの割引申込データを受け取る割引申込データ受信機能と、
前記債権情報および前記割引申込データに基づいて、割引希望日での割引金額を算出して前記納入企業への支払いに関する支払データを作成する支払データ作成機能と、
前記支払データを金融機関へ送付する支払データ送付機能と、
前記金融機関からの入金明細データを受け取り、受け取った入金明細データに基づき決済の完了を判定し、当該債権データを消し込む債権データ消込機能と、
を備えたファクタリングに関するサービス機能の提供システム」(以下、引用例1記載の発明という。)

(b)同じく原審の拒絶の理由に引用された『香川、徳田、北原編,「<新版>金融実務辞典」,社団法人金融財政事情 研究会,平成7年7月10日』(以下、引用例2という。)には、「ファームバンキングおよびVAN」に関して、次の事項が記載されている。
A.「ファーム・バンキング firm banking コンピュータと通信回線を利用して企業と銀行を接続することにより,企業にとって有効なサービスを提供するシステムである.サービス形態は,1.電話,テレックス,ファクシミリを使用して預金残高や入金通知等のサービス,2.DDX回線を利用して企業と銀行のコンピュータを結合し,銀行取引データの伝送と,総振データ等の受付,3.公衆電話回線を利用して銀行のコンピュータと企業のパソコンによるデータ伝送サービスなどがある.アメリカでいうCMSサービスをわが国ではファーム・バンキング・サービスと呼んでいる.」(第1334頁 ファームバンキングの欄参照)
B.「VAN Value Added Network 付加価値通信網,高度情報通信網をいう.コンピュータと通信回線を駆使し,情報を処理・加工して付加価値をつけ情報を伝達する通信網.VANという言葉の発生元のアメリカでは,1970年代半ばに始まり,現在は異機種間相互接続や高速データ伝送の高度サービスが普及しはじめており,エンハンスト・サービスと呼んでいる.通信回線ネットワークにパケット交換機をつけて効率の良い伝送サービス,異機種コンピュータ接続でのプロトコル変換,コード変換,フォーマット変換等の機能をもつ.→パケット交換,プロトコル」(第1296頁 VANの欄参照)

(c)同じく原審の拒絶の理由に引用された『石崎編,「[自己啓発シリーズ] コンピュータバンキング -第3次オンの全貌と情報戦略」,社団法人金融財政事情研究会,昭和62年1月20日,p.170〜196,225〜232』(以下、引用例3という。)には、「VAN、ファームバンキング、および、コンピュータを用いた自動消込処理」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。
A.「(2)地元金融機関の地域VAN構想対応 (略)したがって地元金融機関としては、地域VAN構築により、地域内フロー資金の決済機関として機能していくとともに、地元企業との取引深耕を図ることが重要である。(3)地域VANのイメージ 地域VANのイメージを図4-19に示す。(略)地元金融機関と地元企業、地元デパート、スーパー、商店、商流・物流グループなどとをVANセンターを介して接続する。」(第170頁18行〜第188頁第2行)
B.「ファーム・バンキングとは、(略)一般的には、「企業のコンピュータ(または端末など)と銀行のコンピュータを通信回線で接続することにより、データのやりとりを行うこと」と定義される。」(第190頁第4行〜第7行)
C.「こうしたファーム・バンキングは、企業サイドでは、(略)銀行からのデータが直接企業のコンピュータに入力されるため、入力負担の軽減や、売掛金の自動消込みなど大幅な事務合理化を図ることが出来る。」(第190頁第14行〜第17行)
D.「こうした状況のなかで、大衆化路線の推進とともに、受託業務を含めた周辺業務への進出が銀行業務の一つの潮流となっていくのである。銀行におけるコンピュータの導入は,大量事務処理を狙いとして,昭和30年代半ばから始まるが,業務多様化時代への突入と相まってコンピュータの利用がかかなりの程度まで進んできており,このことが技術面での後ろ盾となっていたといえよう。今後の金利自由化の進展に伴い,銀行業務も業際問題を含めますます複雑多様化していくと思われるが,一ついえることは,情報ネットワークの発達を通して,銀行もコンピュータによる情報処理産業への進出がみられていくことだろう。
2 周辺業務への展開 周辺業務として,クレジット・カード業務,ファクタリング業務,リース業務,コンサルタント業務,コンピュータによる受託業務などがあげられるが,都市銀行を中心として昭和40年代後半から別会社への資本参加という形をとり,これら周辺業務の多様化を発展させていった。この背景には銀行のコンピュータリゼーンョンの進行につれて,ハードウェアの性能が向上し,かつ大型化するとともにソフトウェアにも進歩がみられ,銀行業務だけではコンピュータに余裕ができ,有効利用の面からもコンピュータによる計算受託を行なうことができるようになってきていたことがあげられる。」(第226頁第16行〜第227頁第8行)

したがって、引用例2,3には以下の事項が記載されているものと認められる。
イ.「企業のコンピュータや端末等と銀行のコンピュータを通信回線で接続することによりデータのやりとりを行うことは、ファームバンキングとして周知の技術であること」(引用例2((b)A)、引用例3((c)B,C) 参照)
ロ.「金融機関と企業等とをVANを介して接続すること、また、VANを介してデータを送受信するときデータをブロック化(パケット交換)することは、いずれも周知の技術であること」(引用例2((b)B)、引用例3((c)A)参照)
ハ.「コンピュータを用いて自動消込み処理を行うことは周知の技術であること」(引用例3((c)C)参照)
ニ.「ファクタリング業務をコンピュータ化することは周知であること」(引用例3((c)D)参照)

4. 本願発明と引用例1記載の発明の対比
ここで、本願発明と引用例1記載の発明を比較すると、本願発明の「債権情報処理装置」と引用例1記載の発明の「ファクタリングに関するサービス機能の提供システム」は、「債権情報処理に関するサービス機能の提供システム」という点で一致する。
また、本願発明と引用例1記載の発明は、「債権データ入力機能」、「支払期日管理機能」、「帳票データを作成する機能」、「割引申込データ受信機能」、「支払データ作成機能」、「支払データ送付機能」、および、「債権データ消込機能」を有する点で一致する。更に、本願発明と引用例1記載の発明とは、「購入企業において、金融機関へ振込データを送ると共に、各納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録する機能を有する」点で一致する。
したがって、本願発明と引用例1記載の発明は「購入企業において、金融機関へ振込データを送ると共に、各納入企業から購入企業に納入された商品の買掛金に関する買掛金データを記録する機能を有し、
前記商品の売掛債権に関する債権情報を納入企業から取得する債権データ入力機能と、
前記債権データの支払期日を管理する支払期日管理機能と、
前記債権データに基づいて譲渡対象の債権明細等の帳票データを作成する機能と、
納入企業からの割引申込データを受け取る割引申込データ受信機能と、
前記債権情報および前記割引申込データに基づいて、割引希望日での割引金額を算出して前記納入企業への支払いに関する支払データを作成する支払データ作成機能と、
前記支払データを金融機関へ送付する支払データ送付機能と、
前記金融機関からの入金明細データを受け取り、受け取った入金明細データに基づき決済の完了を判定し、当該債権データを消し込む債権データ消込機能と、
を備えた、債権情報処理に関するサービス機能の提供システム」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「商品の売掛債権に関する債権情報を購入企業の端末装置から債権情報処理装置の債権データ入力手段に提供しており」、また、その結果、「債権情報を基に作成される譲渡対象の債権明細書等の帳票データを債権情報処理装置の帳票データ送信手段から債権者に提供する」ようになっているが、引用例1記載の発明では、債権情報は債権者からファクターに提供している点。

(相違点2)
本願発明では、ファクタリング業務をコンピュータ化し、ファクタリング会社内の「債権情報処理装置が債権データ入力手段、支払期日管理手段、帳票データ送信手段、割引申込データ受信手段、支払データ作成手段、支払データ送信手段、および、債権データ消込手段を備えて各処理を行っている」が、引用例1記載の発明では情報システム化の記載はあるが、業務のコンピュータ化については明確に記載されていない点。
また、本願発明では、購入企業の端末装置が買掛金データを記録しているが、引用例1記載の発明では端末装置が記録する構成について明確に記載されていない。

(相違点3)
本願発明では、金融機関と債権情報処理装置および購入企業間を電気通信回線を介して接続し、支払いデータは債権情報処理装置の支払いデータ送信手段から電気通信回線を介して金融機関の業務処理ホストへ送信され、また、購入企業からの振込データも電気通信回線を介して金融機関の業務処理ホストに送信されているが、引用例1記載の発明ではこの点は記載されていない点。

(相違点4)
本願発明では、債権情報処理装置と納入企業はVANを介して接続され、帳票データと割引申込データはVANを介して送受信され、更に、帳票データはブロック化してVANを介して送信されているが、引用例1記載の発明にはこれらの構成は記載されていない点。

(相違点5)
本願発明では、「購入者の端末装置から金融機関の業務処理ホストへ各債権毎に消込用コードを持った振込データを送信すると共に、債権情報処理装置が金融機関の業務処理ホストから各債権毎の消込用コードを持った入金明細データを受信し、消込用コードをキーとして当該債権データの消し込み処理を行なって」いるが、引用例1記載の発明にはこのような構成は記載されていない点。

5.判断
(相違点1)について
ファクタリング会社が債権情報を債権者あるいは債務者のどちらから得るかはファクタリング会社と債権者あるいは債務者のビジネス上の関係等から決められるものであり、この点に技術的には格別な特徴はない。また、明細書中にもこの構成に基ずく効果については何ら記載されていない。
したがって、引用例1記載の発明において、ファクターが債権情報を債務者から得るようにすることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。
そして、債権情報を債務者から得た場合には、その結果、債権情報を基に作成される譲渡対象の債権明細書等の帳票データをファクターから債権者に送付することは、当然のことである。
なお、請求人は、平成13年5月7日付けの意見書において、この構成により「債務者に個々の納入企業への支払いデータ作成の労力の軽減という効果をもたらす」と主張しているが、同意見書で請求人も述べているとおり、債権者から債権情報を得た場合には、債権者の労力の軽減となるものであり、結局、いずれの場合も債権情報提供者の労力が軽減されるという点では同じである。

(相違点2) について
一般に、業務処理をコンピュータ技術によりコンピュータ化することは一般的な課題である。また、業務処理の一つであるファクタリング業務をコンピュータ化しようとすることも課題としては一般的なものである。そして、引用例1にはファクタリング業務のシステム化についても言及されており、また、ファクタリング業務をコンピュータ化することは、例えば引用例3に記載のように周知のことである。
したがって、引用例1記載の発明においてもファクタリング業務をコンピュータ技術によりコンピュータ化して各機能を達成するようにすることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。
また、購入企業においても、コンピュータ化を図り、端末装置に買掛金データを記録しさせるようにすることは、当業者が適宜実施し得ることと認められる。

(相違点3)について
企業のコンピュータや端末等と銀行のコンピュータを通信回線で接続することによりデータのやりとりを行うことは、例えば引用例2,3に記載のようにファームバンキングとして周知の技術であることであるので、引用例1記載の発明においても、周知のファームバンキングの技術を採用し、金融機関のコンピュータとファクターおよび債務者の端末を通信回線で接続し、データのやりとりを行うようにすることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。

(相違点4)について
金融機関と企業等とをVANを介して接続すること、また、VANを介してデータを送受信するときデータをブロック化(パケット交換)することは、例えば引用例2,3に記載のように、いずれも周知の技術であるので、引用例1記載の発明においてもこれら周知の手段を採用し、ファクターと債権者間をVANで接続し、帳票データと割引申込データをVANを介して送受信するとともに、債務者から取得した債権情報を基に作成した債権明細書等の帳簿データを債権者に送信する際、帳票データをブロック化して送信するようにすることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。

(相違点5)について
コンピュータを用いて自動消込み処理を行うことは、例えば引用例3に記載のように、周知の技術であり、また、消込み処理に際し、消込み情報を用いて消込み処理を容易にすることは、例えば、特開平2-7166号公報、登録実用新案第3018299号公報等に見られるように、周知の手段である。
したがって、引用例1記載の発明においても、周知の手段を採用し、「購入者から金融機関の業務処理ホストへ各債権毎に消込用コードを持った振込データを送信すると共に、ファクターにおいて金融機関の業務処理ホストから各債権毎の消込用コードを持った入金明細データを受信し、消込用コードをキーとして当該債権データの消し込み処理を行なう」ように構成することは、当業者が容易に考え得ることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、 引用例1記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-16 
結審通知日 2004-09-28 
審決日 2004-10-15 
出願番号 特願平8-235035
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠小山 満伊藤 健太郎  
特許庁審判長 山下 弘綱
特許庁審判官 竹中 辰利
佐藤 智康
発明の名称 ファクタリング情報処理システム  
代理人 鳥海 哲郎  

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