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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1109012
審判番号 不服2003-4835  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-24 
確定日 2004-12-22 
事件の表示 特願2000-551192「ねじプロテクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月 2日国際公開、WO99/61836、平成14年 6月11日国内公表、特表2002-516974〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、1998年(平成10年)5月22日の米国出願を優先権の基礎として、1999年(平成11年)5月20日に国際出願されたものであって、平成14年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年3月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年4月23日付けで手続補正されたものである。

2.平成15年4月23日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年4月23日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
(1)補正の内容
平成15年4月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項16を、
「【請求項16】 パイプの端部に設けられているねじを保護するためのねじプロテクタであって、ねじプロテクタは最大外径を有し、
第1の長さ及び所定の高さを有するとともに第1及び第2の端部を有するベース部と、
前記ベース部の前記第1の端部から軸方向に延びるとともにパイプにねじ係合可能なねじ部と、
前記ベース部の前記第2の端部から軸方向に延びるとともに平均長さを有する延出した中実の環状のバンパと、
を有し、前記バンパの平均長さが前記ベース部の高さよりも大きく設定されているねじプロテクタ。」
と補正するものを含むものである。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項16に係る発明を特定する構成要件である「前記第1の長さ及び前記平均長さの合計が少なくとも2インチ(5.08cm)である」という構成を削除している。
そうすると、この補正は、発明の構成要件を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、また、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明、又は請求項の削除のいずれを目的とするものにも該当しない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法159条第1項により読み替え準用する同法第53条第1項の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

3.本願の請求項16に係る発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項16に係る発明は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項16に記載されたとおりの、次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明16」という。)
「【請求項16】 パイプの端部に設けられているねじを保護するためのねじプロテクタであって、ねじプロテクタは最大外径を有し、
第1の長さを有するとともに第1及び第2の端部を有するベース部と、
前記ベース部の前記第1の端部から軸方向に延びるとともにパイプにねじ係合可能なねじ部と、
前記ベース部の前記第2の端部から軸方向に延びるとともに平均長さを有する延出した環状のバンパと、
を有し、前記第1の長さ及び前記平均長さの合計が少なくとも2インチ(5.08cm)であるねじプロテクタ。」

4.原査定の拒絶の理由で引用された刊行物

刊行物1:米国特許第4210179号明細書

5.周知例

周知例1:特開平8-217130号公報
周知例2:実願昭61-150787号(実開昭63-57258号)のマイクロフィルム
周知例3:実願平2-125957号(実開平4-82492号)のマイクロフィルム

6.刊行物1及び周知例1ないし3に記載された事項

(1)刊行物1
刊行物1には、パイプねじ山プロテクタ(pipe-thread protector)に関して、図面と ともに、次の記載がある。
(a)「Conventional practice is to cover the threaded end portions of metal pipes with protectors which prevent damage to threads during handling and shipment.」(1欄6行〜同8行)
(当審の仮約:金属パイプのねじ切り端部が作業や船荷中に損傷するのを防ぐために、プロテクタで金属パイプのねじ切り端部を被うことは従来の手段である。)
(b)「The plastic body 10 has an outer circumferential wall 15 which tapers toward the closed end and has length-wise corrugations 16. An enlarged integral ring 17 is joined to the outer wall 15 at the open end. 」(1欄63行〜同66行)
(当審の仮約:プラスチック体10は、閉鎖端に向いてテーパのある外周壁15を持ち、長さ方向のうね(corrugations)16を持っている。開放端の外壁15には伸びた必須のリング17が取り付けられる。)
(c)「A relatively narrow integral annular web 19 is joined to the outer wall 15 at the closed end and extends inwardly toward the central axis. The web has corrugations 20 which are continuations of corrugations 16. An integral cylindrical inner wall 21 is joined to the web 19 at its inner circumference and extends back toward the open end of the protector. The inner wall 21 is concentric with the outer wall 15 and spaced therefrom and preferably is of somewhat shorter axial length. An integral end wall 22 is joined to the inner wall 21 at the end opposite the web 19.」(2欄2行〜同13行)
(当審の仮約:比較的狭い必須の環状の板状体(web)19は、外壁15に閉鎖端でつながり、かつ、中心軸に向いて内側に伸びている。その板状体は、うね(corrugation)16に連続するうね(corrugation)20を持つ。必須の円筒状内壁21は、内周で板状体(web)19につながり、プロテクタの開放端に向いて伸びている。内壁21は、外壁15と同心状でかつそれから一定の距離を、好ましくは、軸方向長さより幾分短い距離を置いて設けられている。必須の端壁22が、板状体(web)19と反対側の端で内壁21とつながっている。)
(d)「The taper in the outer wall 15 is approximately the same as the taper in the threaded portion of the pipe. The taper provides means for futher tightening the wall of the thread protector on the pipe. 」(2欄44行〜同47行)
(当審の仮約:外壁15におけるテーパは、パイプのねじ切り部のテーパとほぼ同じである。このテーパは、パイプのねじプロテクタの壁を更に堅く締める手段を与えるものである。)

(2)周知例1
周知例1には、管端保護具に関して、図面とともに、次の記載がある。
(e)「例えば、油井管や油輸送管などの両端にねじを備える管は、ねじに管端保護具を装着し、ねじの保護を図った状態で輸送される。」(段落【0002】)
(f)「図1に示す第1の実施例の管端保護具11は、管端に外嵌螺合するタイプであり、保護具本体12を、管より軟質の合成樹脂、例えばPEを用い、管に外嵌する内径を有する円筒部13の一方端部を端壁14によって閉鎖すると共に、円筒部13の一方端部に筒状突部15を延長状に突設し、上記円筒部13の内周面にねじ16を設けた構造を有し、管端の外部にねじ16で円筒部13と外嵌螺合し、管の外周面に形成されたねじを保護するようになっている。」(段落【0011】)

(3)周知例2
周知例2には、管端保護キャップに関して、図面とともに、次の記載がある。
(g)「本考案は管端保護キャップに関し、さらに詳しくは……又パイプの輸送時における管端部の損傷及びネジ山の潰れを防止するために使用するものである。」(1頁12行〜同17行)
(h)「第1図には本考案にかかる管端保護キャップが示されており、……さらに図において1はキャップの一側に設けた径大部、3はキャップの他側に設けた径小部を示し、径大部1は装着すべきパイプPの管端の外周径に略等しい内径aを有し、また径小部3は装着すべきパイプPの管端の内周径に略等しい外径Bを有する。」(3頁8行〜同17行)
(i)「上記した構成において、パイプPの管端の外周側をマスキングする場合にはその管端に径大部1の内周側を被嵌させ(第2図参照)、またパイプPの管端の内周側をマスキングする場合にはその管端開口部内に径小部3の外周側を挿通する(第3図参照)。」(4頁12行〜同17行)

(4)周知例3
周知例3には、鋼管の保護キャップ及びプラグに関して、図面とともに、次の記載がある。
(j)「油送管などの中空鋼管の輸送中や保管中などに、鋼管端部を保護するために用いられるキャップ及びプラグに関する。」(1頁19行〜2頁1行)
(k)「この種の鋼管は、接続のために予め両端部にねじが設けられており、さらに連結用スリーブを一方に端部に取り付けておくのが普通である。このようなねじ部が取り扱い中に損傷を受けないようにするため、ねじ部に保護キャップを被せ、また連結用スリーブ内にプラグをさし込むことが行われている。」(2頁3行〜同9行)
(l)「上記キャップ及びプラグのいずれにおいても、合成樹脂筒状本体のねじが鋼管又は連結用スリーブのねじ部とねじ結合するようになっているので、それ自体で鋼管等のねじ部を損傷することなく、また衝撃が加えられても合成樹脂のショック性によりねじ部を損傷しない。さらに、筒状本体のねじがテーパねじになっているため、鋼管等のねじ部に対するクッション性が増加する。また、テーパねじであるためねじ込み易い。そして、合成樹脂筒状本体の外部に露出する部分は、亜鉛メッキ鉄板製スリーブで被われているため、外部からの衝撃に対して筒状本体を保護しており、かつスリーブが亜鉛メッキ鉄板であるため、錆びることがない。」(3頁16行〜4頁9行)
(m)「第1図に示すように、鋼管1の両端には、ねじ部2、2’が設けられており、一方のねじ部2に保護キャップ10がねじ嵌合され、他方のねじ部2’には、連結用スリーブ3がねじ嵌合されている。このスリーブ3の外端にプラグ20がねじ込まれている。前記キャップ10は、第2図に示すように、合成樹脂中空筒状本体11と、この筒状本体11の外周に嵌合された亜鉛メッキ鉄板製アウタスリーブ12より成り、このアウタスリーブ12の上端部には、内側方向の縁巻き13が形成され、この縁巻き13によって、筒状本体11の外端部14を挟持している。」(4頁13行〜5頁5行)

7.対比・判断

(1)刊行物1記載の発明
刊行物1の上記(a)〜(d)に摘示した事項と図面が図示するところによれば、刊行物1には、少なくとも次の発明が記載されているものと認められる。
「パイプ32の管端ねじ山が、作業或いは船荷中に損傷するのを防ぐために、該ねじ山を被うようにされたねじ山プロテクタであって、パイプのねじ切り部分におけるテーパとほぼ同じテーパの外壁15を有し、
環状の板状体(web)19と、
該環状の板状体(web)19の一方の側から管軸方向に延びるとともに、パイプねじ山に係合するねじ山部を有するとともに、
該環状の板状体(web)19の他方の側から管軸方向に所定長さで延びるとともに、管端から延出した突起部と底部とからなるうね(corrugation)20と、
を備えているねじプロテクタ。」

(2)対比
刊行物1に記載された外壁は、パイプねじ切り部分におけるテーパとほぼ等しいテーパを有してパイプと螺合する形状のものであるかる、プロテクタは、本願発明16の「最大外径」を有するものと認められる。
次に、刊行物1に記載された「環状の板状体(web)19」は、管肉厚方向(径方向)に所定の長さと管軸方向に所定の厚さを有して、パイプの端部に位置するものであるから、本願発明16の「ベース部」に相当する。
また、本願発明16の「第1の長さ」とは、その記載からではベース部のどこを指しているのかが明らかではないので、本願明細書の詳細な説明の記載と図面を参酌すると、段落【0024】には、図2に示された実施例について「バンパ62の長さLとベース56高さ56bとの和は少なくとも1.75インチ(4.45cm)であることが好ましい。」と記載され、段落【0051】には、図17に示された実施例について「ベース長さ56bはおよそ0.20インチ(0.51cm)であり、」と記載され、段落【0053】には、図19に示された実施例について「ベース長さ56bはおよそ0.43インチ(1.09cm)であり、」と記載されているので、これらの記載と対応する図を参照すると、本願発明16の「ベース部」の「第1の長さ」とは、管軸方向のベース部の長さ(高さ)を意味するものと解される。そうすると、刊行物1の「環状の板状体(web)19」について上記認定した「管軸方向の所定の厚さ」は、本願発明16の「ベース部」の「第1の長さ」に相当するものと認められる。
さらに、刊行物1の「環状の板状体(web)19」は、その一方の端部にパイプねじ山と係合する側壁を有し、その他方の端部にうね(corrugation)の突出部(図2において符号20が矢示する部分)を有して、それぞれを一体的に構成するものであるから、該「一方の端部」、該「他方の端部」及び該「うね(corrugation)の突出部」は、それぞれ本願発明16の「第1の端部」、「第2の端部」及び「バンパ」に相当するものと認められる。
加えて、刊行物1の上記「うね(corrugation)の突出部」の高さの平均は、本願発明16の「バンパ」の「平均長さ」に相当するものと認められる。

そうすると、本願発明16と刊行物1に記載された発明の一致点及び相違点は次のとおりであるものと認められる。
【一致点】
「パイプの端部に設けられているねじを保護するためのねじプロテクタであって、ねじプロテクタは最大外径を有し、
第1の長さを有するとともに第1及び第2の端部を有するベース部と、
前記ベース部の前記第1の端部から軸方向に延びるとともにパイプにねじ係合可能なねじ部と、
前記ベース部の前記第2の端部から軸方向に延びるとともに平均長さを有する延出したバンパと、
を有しているねじプロテクタ。」
【相違点】
(イ)「バンパ」の構成について、本願発明16は、「環状の」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、かかる形状のものではない点(以下「相違点A」という。)。
(ロ)本願発明16は、「前記第1の長さ及び前記平均長さの合計が少なくとも2インチ(5.08cm)である」ものであるのに対し、刊行物1には、かかる構成は明示されていない点(以下「相違点B」という。)。

(3)相違点の検討
上記の相違点を、以下検討する。
(イ)相違点Aについて
パイプの端部に設けられているねじを保護するための保護具において、環状のバンパとしたことは、例えば、周知例1ないし3に示されるように本願発明の出願前に周知の技術の構成であると認められる。そうすると、相違点Aに係る本願発明16の構成は、刊行物1記載の発明に周知の技術を単に適用したにすぎない。
(ロ)相違点Bについて
本願の明細書の記載によれば、
段落【0024】には、「再び図2を参照すると、バンパ62の寸法は保護されるべきパイプ48の寸法に応じて変更可能である。……以下の好ましい寸法は7インチ(17.78cm)の公称外径48aを有するパイプ48について発見されたものである。本発明によって形成された延出したバンパ62の長さLは、好ましくは、少なくとも約1.1インチ(2.79cm)であり、より好ましくは、少なくとも約2.0インチ(5.08cm)である。……たとえば、図2の実施の形態においては、長さLは約2.0インチ(5.08cm)であり、……さらに、バンパ62の長さLとベース56の高さ56bとの和は少なくとも1.75インチ(4.45cm)であることが好ましい。たとえば、図2の実施の形態においては、高さ56bは約0.38インチ(0.97cm)であり、したがって、L+56bは約2.38インチ(6.05cm)である。……図2のプロテクタ50は、約7.0インチ(17.78cm)の公称外径を有するパイプ48用に設計されており、」と記載され、
段落【0044】には、「本発明によって形成された延出したバンパ162の長さLは少なくとも約1.5インチ(3.81cm)である。さらに、バンパ162の長さLとベース156の高さ156bとの和は少なくとも1.8インチ(4.57cm)である。たとえば、図11の好ましい実施の形態においては、バンパ162の長さLは少なくとも約1.8インチ(4.57cm)であり、バンパ162の長さLとベース156の高さ156bとの和は少なくとも1.9インチ(4.83cm)、好ましくは、2.2インチ(5.59cm)より大きい。」と記載され、
段落【0051】には、「図17は5.5インチ(13.97cm)の公称径48aを有するパイプ46のピン端部46のためのピンねじプロテクタ400を示している。バンパ長さLはおよそ2.0インチ(5.08cm)であり、……ベース長さ56bはおよそ0.20インチ(0.51cm)であり、…」と記載され、
段落【0055】には、「図17は9+5/8インチ(24.45cm)の公称径48aを有するパイプ48のピン端部46のためのピンねじプロテクタを示す図でもある。その場合、バンパ長さLはおよそ2.09インチ(5.31cm)であり、……ベース長さ56bはおよそ0.46インチ(1.17cm)であり、…」 と記載されている。
これらの記載によれば、バンパの長さL、ベースの長さ(高さ)は、パイプの寸法に応じて変更されるものであると認められる。
そうすると、バンパ長さ及びベース長さ(高さ)は、刊行物1及び周知例1ないし3に記載されたものにおいても相応の長さを備えており、相違点Bの 「前記第1の長さ及び前記平均長さの合計が少なくとも2インチ(5.08cm)である」とする構成は、パイプの寸法に応じて当業者が適宜決定する設計事項の範囲ものというべきものであって、当業者にとって格別困難の構成であったとは認められない。

そして、本願発明16の効果を検討してみても、刊行物1に記載された発明及び周知な技術の基づいて当業者が容易に予測し得る程度のものであって、それを超えるような格別顕著なものを見出すことはできない。

したがって、本願発明16は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

8.むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項16に係る発明(本願発明16)は、特許法第29条第2項の規定のより特許を受けることができない。
よって、本願の特許請求の範囲に記載されたその余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-20 
結審通知日 2004-07-27 
審決日 2004-08-09 
出願番号 特願2000-551192(P2000-551192)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 信平内山 隆史  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 ねじプロテクタ  
代理人 福田 鉄男  
代理人 中村 敦子  
代理人 犬飼 達彦  
代理人 石岡 隆  
代理人 岡田 英彦  

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