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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1109127 |
審判番号 | 不服2003-8635 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-15 |
確定日 | 2004-12-24 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 52115号「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日出願公開、特開2000-249412〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年3月1日の出願であって、請求項1及び2に係る発明は、その 特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 密閉ケース内に圧縮要素と駆動要素とを備えると共に、当該密閉ケース内に潤滑油を貯留し、少なくとも前記圧縮要素の摺動部を前記潤滑油で潤滑しながら熱媒体としての二酸化炭素を圧縮する圧縮機と、 この圧縮機で圧縮された熱媒体が流れる第1熱交換器と、 この第1熱交換器からの熱媒体を減圧する減圧器と、 この減圧器からの熱媒体が流れる第2熱交換器と、 前記第1熱交換器と前記減圧器とをつなぐ管路に配設されて、該第1熱交換器から吐出された熱媒体に含まれている潤滑油を分離するオイルセパレータと、 該オイルセパレータで分離された前記潤滑油を前記圧縮機の熱媒体供給管に戻すように設けられた戻管とを有することを特徴とする冷凍装置。 【請求項2】 前記圧縮機がスクロール圧縮機であることを特徴とする請求 項1記載の冷凍装置。」 (以下、【請求項1】に係る発明を「本願発明1」という。) 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物は、次のものである。 引用刊行物:特開平8-86519号公報 3.引用刊行物に記載されている事項 引用刊行物(特開平8-86519号公報)には、次の事項の記載がされている。 ・「【産業上の利用分野】 この発明は、冷媒に対して相互溶解性がないか、あるいは非常に小さい冷凍機油を用いた冷凍空調装置において、圧縮機から冷媒回路内に吐出された冷凍機油を確実に圧縮機に戻す冷凍空調装置に関するものである。」(段落【0001】) ・「【実施例】 実施例1.以下、この発明の一実施例を図面について説明する。図1はこの発明の一実施例による冷凍空調装置を示す冷媒回路図である。図において、1は冷媒ガスを圧縮する圧縮機、2は圧縮機1から吐出された高圧冷媒ガスを凝縮させる凝縮器、3Aは冷媒流量制御器である電子式膨張弁、4は低圧の気液二相冷媒を蒸発させる蒸発させる蒸発器である。」(段落【0076】) ・「また、70は凝縮器2の出口から電子式膨張弁3A入口の液配管12に設けられた油分離器、71はこの油分離器70で分離された冷凍機油6を圧縮機1の吸入配管14へ送給する返油管、72は返油管71の途中に設けられた毛細管である。」(段落【0077】) ・「なお、この冷凍空調装置内には、冷媒として例えばHFC134aが用いられ、また冷凍機油としては例えばHFC134aと相互溶解性がないかあるいは非常に小さく、しかもその比重量が液冷媒の比重量よりも小さなアルキルベンザン油が用いられている。」(段落【0078】) ・「次に動作について説明する。まず、凝縮圧力および凝縮温度条件下において、冷凍機油は液冷媒への溶解性がないかあるいは微弱であり、また冷凍機油の比重は液冷媒よりも小さいため、油分離器70内では、図示のように、冷凍機油6は液冷媒7bの上方に分離層を形成する。」(段落【0079】) ・「そして、返油管71は油分離器70から毛細管72を介して圧縮機1の吸入管14に接続されているため、油分離器70で液冷媒7bとは分離された冷凍機油6を、毛細管72を介して確実に圧縮機1へ戻すことができると共に、電子式膨張弁3Aや蒸発器4の配管内への冷凍機油6の付着を最小限にとどめることができる。」(段落【0081】) ・「この結果、冷凍機油の不足による圧縮機1内での潤滑不足を回避できるほか、冷凍空調エネルギー効率を向上できるものが得られる効果がある。」(段落【0082】) ・「実施例16.図23はこの発明の他の実施例による冷凍空調装置を示す冷媒回路である。この実施例では液配管12に設けられた油分離器70の返油管71を毛細管72を介して、圧縮機1の吸入配管14に接続している。」(段落【0153】) ・「また、この冷凍空調装置には、冷媒として例えばHFC134aが用いられ、また、冷凍機油6Aとしては例えばHFC134aに対し相互溶解性がないあるいは非常に小さく、しかもその比重量が液冷媒の比重量より大きなフッ素系油が用いられる。」(段落【0154】) ・「この実施例によれば、凝縮圧力条件下および凝縮温度条件下において、冷凍機油6Aは液冷媒7bに対する溶解性がないかあるいは微弱であり、また、冷凍機油6Aの比重は液冷媒7bよりも大きいため、油分離器70内では冷凍機油6Aは液冷媒7bの下方に分離層を形成する。」(段落【0154】) 4.対比・判断 上記摘示した事項からみて、引用刊行物に記載された圧縮機1は、冷凍空調装置の熱媒体が循環する密閉回路中に配設され、その圧縮要素とその駆動要素とを密閉ケース内に納め、その摺動部を冷凍機油6で潤滑するようにされていることは技術常識といえるから、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「密閉ケース内に圧縮要素と駆動要素とを備え、少なくとも前記圧縮要素の摺動部を、アルキルベンゼン油あるいはフッ素系油の冷凍機油6で潤滑しながら熱媒体としてのHFC134aを圧縮する圧縮機1と、 この圧縮機1で圧縮された熱媒体が流れる凝縮器2と、 この凝縮器2からの熱媒体を減圧する電子式膨張弁3Aと、 この減圧器からの熱媒体が流れる蒸発器4と、 前記凝縮器2と前記電子式膨張弁3Aとをつなぐ管路に配設されて、該凝縮器2から吐出された熱媒体に含まれている冷凍機油6を分離する油分離器70と、 該油分離器70で分離された前記潤滑油6を前記圧縮機1の熱媒体供給管14に戻すようにように設けられた管路途中に毛細管72のある返油管71と、 を有する冷凍空調装置。」 そこで、本願発明1と引用刊行物に記載された発明とを対比し、検討すると、 引用刊行物に記載された「冷凍機油6」、「圧縮機1」、「電子式膨張弁3A」、「油分離器70」は、本願発明1の「潤滑油」、「圧縮機」、「減圧器」、「オイルセパレータ」にそれぞれ相当する。また、本願発明1に用いられている第1熱交換器、第2熱交換器について、本願の明細書の段落【0029】、【0030】には、「なお、二酸化炭素は第1熱交換器30で冷却されても特定フロンガスのように凝縮することはないが、特定フロンを用いる冷凍装置との対応を図るため敢て第1熱交換器30と記載した。従って、第2熱交換器40においても二酸化炭素は蒸発することはない。 無論、熱媒体が二酸化炭素であるか特定フロンガスであるかを問わず、第1熱交換器30及び第2熱交換器40での作用は同じである。」と記載されていることからも、引用刊行物に記載されている「凝縮器2」、「蒸発器4」は、それぞれ本願発明1の「第1熱交換器」、「第2熱交換器」に相当しているものといえる。 そうすると、両者は、次の点で一致している。 〈一致点〉 「密閉ケース内に圧縮要素と駆動要素とを備えると共に、少なくとも前記圧縮要素の摺動部を前記潤滑油で潤滑しながら熱媒体を圧縮する圧縮機と、 この圧縮機で圧縮された熱媒体が流れる第1熱交換器と、 この第1熱交換器からの熱媒体を減圧する減圧器と、 この減圧器からの熱媒体が流れる第2熱交換器と、 前記第1熱交換器と前記減圧器とをつなぐ管路に配設されて、該第1熱交換器から吐出された熱媒体に含まれている潤滑油を分離するオイルセパレータと、 該オイルセパレータで分離された前記潤滑油を前記圧縮機の熱媒体供給管に戻すように設けられた管とを有することを特徴とする冷凍装置 」 そして、次の点で相違している。 〈相違点〉 ・相違点1 圧縮機の構成について、本願発明1は、「密閉ケース内に潤滑油を貯留し、」ているのに対し、引用刊行物に記載された発明には、このことの明示がない点。 ・相違点2 熱媒体について、本願発明1は、「二酸化炭素」を用いているのに対し、引用刊行物に記載された発明は、「HFC143a」を用いている点。 ・相違点3 潤滑油を圧縮機の熱媒体供給管に戻すように設けられた管が、本願発明1では、(図面に示されたものを参酌すると管路途中に毛細管のない)「戻管」であるのに対し、引用刊行物に記載された発明では、「管路途中に毛細管72のある返油管71」である点。 そこで、この相違点を検討する。 ・相違点1について 冷凍装置に用いられる圧縮機において、潤滑油を貯留することは、例えば特開平8-136071号公報、特開平9-210514号公報、実願昭54-97278号(実開昭56-15468号)のマイクロフィルムに示されるように、当然に備えている周知な構成にすぎず、相違点1の構成は格別のものではない。 ・相違点2について 冷凍装置の熱冷媒として、二酸化炭素を用いることは、例えば、特開平10-147682号公報、特開平10-238872号公報、特開平10-253177号公報に示されるように周知であるから、このような熱冷媒は、当業者が適宜採用し得たものと認められ、相違点2の構成も格別のものではない。 ・相違点3について 熱冷媒として二酸化炭素を用いたときの冷凍サイクルにおけるモリエル線図(例えば特開平10-238872号公報の図5、特開平10-253177号公報の図4)を参酌すると、この熱冷媒は、第1熱交換器の冷却過程で凝縮されて液体となることがなく、気体状態であるから、圧縮機によって圧縮しても液圧縮されず、例えば特表平10-507211号公報に示されるように、これを圧縮機の熱冷媒供給管側に戻し得る(引用刊行物に示された毛細管を用いないとしても、高圧のオイルセパレータ側と低圧の圧縮機側との圧力差を考慮した構成とすることは、設計上当然の事項である)ことは、技術常識というべきものである。 そうすると、相違点3の構成も格別のものとはいえない。 そして、本願発明1の効果についても、引用刊行物に記載された発明及び周知事項から当業者が予測し得たものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-10-20 |
結審通知日 | 2004-10-26 |
審決日 | 2004-11-10 |
出願番号 | 特願平11-52115 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長崎 洋一 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 櫻井 康平 |
発明の名称 | 冷凍装置 |
代理人 | 紋田 誠 |