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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1109183
審判番号 不服2002-12780  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-10 
確定日 2004-12-27 
事件の表示 平成 8年特許願第274993号「3次元計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月15日出願公開、特開平10-124646〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年10月17日に出願した特願平8-274579号の一部を同日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「計測環境を測定する予備計測を本計測に先立って行う3次元計測装置であって、
計測対象の物体に光を投射する投光光学系と、
撮像面に入射した光の光量に応じた信号を出力する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像面に前記物体の光学像を結像する受光光学系と、
本計測に先立って、前記投光光学系によって投光し、前記撮像手段の出力信号に基づいて計測環境としての対物間距離を得るとともに、得られた対物間距離に応じて本計測の計測条件を設定する予備計測制御手段と、
前記投光光学系および前記撮像手段を用いて、設定された計測条件で前記物体に対する3次元形状の本計測を実行する本計測手段と、
を備えたことを特徴とする3次元計測装置。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-5344号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】対象物体の表面へ向けてスリット光を投光するとともに、このスリット光により対象物体の表面を走査する走査手段と、
対象物体表面によるスリット光投光像を、走査手段から一定距離離れた位置で撮像する撮像手段と、
対象物体までの距離を検出する検出手段と、
検出手段により検出された対象物体までの距離に応じてスリット光の走査領域を変更するよう走査手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする3次元形状入力装置。」(2頁1欄2〜11行)
イ 「【0008】3次元形状入力装置の基本構成を図1に示す。光源1から発生した光ビームが、ガルバノスキャナーやポリゴンスキャナーなどの第1の光路偏向装置2によりその光路を偏向され、円筒レンズ3によって一方向に引き伸ばされてスリット光となり、対象物体4上に投光される。このスリット光は、第1の光路変更装置2によりスリット光の長手方向に直交する方向に走査される。また、スリット光投光像は投光光学系から所定の距離だけ離して設置された撮像系5によって撮像される。
【0009】3次元形状入力装置を用いた実際的な測定について、スリット光の長手方向に256点、走査方向に324点の距離情報を持つ画像(以下距離画像と呼ぶ)を生成する場合を例にとって説明する。この場合、撮像系5に備わる距離画像センサは少なくとも256×324画素を有する2次元CCDエリアセンサなどで構成されることになる。
【0010】極めて細い幅を与えられて投光されるスリット光は、距離画像用センサが1回の画像蓄積を行う間に、第1の光路偏向装置2により距離画像用センサの1ピッチ分だけ走査される。距離画像用センサはこの蓄積された画像情報を出力するとともに次の画像蓄積を行う。1回の画像蓄積により得られた画像情報に基づいて、スリット光の長手方向に直交する256列それぞれに受光量の重心位置が演算される。これが、距離画像用センサの1ピッチ分における256点の距離情報となる。受光されたスリット光投光像は対象物体の形状に対応して走査方向に変位しているので、得られた距離情報はスリット光が投光されている位置における対象物体の形状を表すことになる。この画像蓄積を、距離画像用センサのピッチ分、すなわち324回繰り返すことにより、256×324点の距離画像が生成される。
【0011】ここで、対象物体までの距離が変更された場合や、距離画像用センサによる撮像画角(すなわち、光学系の焦点距離)が変更された場合には、距離画像用センサにより撮像される対象物体領域が変化する(詳細は後述する)。従って、このような場合にスリット光の走査領域が一定のままでは、走査されない領域が生じたり、逆に測定領域外の領域を走査してしまうという不都合が生じる。このようなことから、スリット光の走査領域は、対象物体までの距離や撮像画角に応じて適切に設定されることが望ましい。」(3頁3欄7〜47行)
ウ 「【0013】図2に、スリット光の走査領域及び走査速度の変更が可能な実施例の基本構成を示す。図中、実線矢印は情報の流れを示し、破線矢印は光ビーム及びスリット光の進行を示す。
【0014】光源1から発せられた光ビームは、第1の光路偏向装置2によってその進路を偏向される。第1の光路偏向装置2は、走査速度制御装置6により所定のタイミングで且つある速度で駆動される。さらに光路上には偏向角を操作可能な第2の光路偏向装置7が備えられ、光ビームは再度進路を偏向されて、円筒レンズ3でスリット光に引き伸ばされた後、最終的に対象物体4上に投光される。
【0015】一方、撮像系5は、物体距離検出装置8と画角検出装置9とを備え、それぞれ対象物体までの距離と撮像系5の撮像画角を検出する。物体距離検出装置8には、例えばオートフォーカスカメラに用いられる焦点検出装置などを用いればよく、画角検出装置9には、例えば撮像系がズームレンズ系の場合、レンズ駆動部分に備えられたエンコーダを用いればよい。物体距離検出装置8から出力される物体距離情報と画角検出装置9から出力される撮像画角情報は演算装置10に取り込まれる。演算装置10では、物体距離情報と撮像画角情報とに基づいて、その時点で撮像系5において観測されている視野の領域を推定し、その領域をスリット光でくまなく走査するための走査開始角及び走査終了角を決定する。走査範囲制御装置11は、演算装置10で決定された走査開始角及び走査終了角に基づいて、第2の光路偏向装置7を駆動してスリット光の投光方向を調節するとともに、光源1を制御して投光開始時間及び投光終了時間を調節することにより、スリット光の走査範囲を制御する。また、演算装置10では、決定された走査領域から、撮像系の結像面上におけるスリット像の移動速度を所定の値とする走査速度が決定され、その情報に基づいて走査速度制御装置6が第1の光路偏向装置2を駆動する。
【0016】つまり、物体距離情報と撮像画角情報とに基づいて、走査速度制御装置6によりスリット光の走査速度が、走査範囲制御装置11によりスリット光の走査範囲が制御されるわけである。」(3頁4欄10行〜同48行)

これら記載事項及び第2図によると、刊行物1には、
「対象物体の表面へ向けてスリット光を投光するとともに、このスリット光により対象物体の表面を走査する走査手段と、
対象物体表面によるスリット光投光像を、走査手段から一定距離離れた位置で撮像する撮像手段と、
対象物体までの距離を検出する検出手段と、
検出手段により検出された対象物体までの距離に応じてスリット光の走査領域を変更するよう走査手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする3次元形状入力装置。」の発明が記載されている。

(2)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-233518号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【構成】演算・制御部20は、レーザー変位計16と被測定物17との間の相対位置が所定の複数の位置になるように制御しながら、レーザー変位計16の出力を取り込んで、予備測定を行う。次に、演算・制御部20は、予備測定により得た三次元形状データに基づいて、被測定物17の所望の複数の箇所の形状データを得るのに必要な、レーザー変位計16と被測定物17との間の複数の相対位置を示す位置情報を得る。最後に、演算・制御部20は、レーザー変位計16と被測定物17との間の相対位置が前記位置情報により示される相対位置となるように制御しながら、レーザー変位計16の出力を取り込んで、本測定を行う。」(1頁【要約】欄5〜16行)

3.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「3次元形状入力装置」は、刊行物1の段落【0009】〜【0010】(2.(1)イ参照。)の記載から「3次元計測装置」でありそのための3次元形状の計測を実行する計測手段を有することは明らかである。また、刊行物1に記載された発明における「走査手段」の「対象物体の表面へ向けてスリット光を投光する」部分は本願発明の「投光光学系」に相当し、刊行物1に記載された発明の撮像手段は、2次元CCDエリアセンサなどで構成される距離画像センサを有し(2.(1)イの段落【0009】参照。)、これは本願発明の「撮像手段」に相当し、また刊行物1に記載された発明の撮像手段がレンズ等の光学像を結像する受光光学系を有することは明らかである。そして、刊行物1に記載された発明の「スリット光の走査領域」は本願発明の「計測条件」ということができる。
してみると、両者は、
「3次元計測装置であって、
計測対象の物体に光を投射する投光光学系と、
撮像面に入射した光の光量に応じた信号を出力する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像面に前記物体の光学像を結像する受光光学系と、
得られた対物間距離に応じて計測の計測条件を設定する制御手段と、
前記投光光学系および前記撮像手段を用いて、設定された計測条件で前記物体に対する3次元形状の計測を実行する計測手段と、
を備えたことを特徴とする3次元計測装置。」
である点で一致しているが、下記の点で相違する。

(相違点)本願発明は、計測環境を測定する予備計測を前記計測(「本計測」)に先立って行うものであり、本計測に先立って、前記投光光学系によって投光し、前記撮像手段の出力信号に基づいて計測環境としての対物間距離を得る予備計測制御手段を備えるものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は「対象物体までの距離を検出する検出手段」を有し、この検出手段で対物間距離を得るものである点。

4.当審の判断
上記(相違点)について検討すると、「対象物体までの距離を検出する検出手段」について、刊行物1には「物体距離検出装置8には、例えばオートフォーカスカメラに用いられる焦点検出装置などを用いればよく」(上記2.(1)ウの段落【0015】)と記載されており、この趣旨は「物体距離検出装置」を「焦点検出装置」に限定するものではなく、距離を検出できるものであれば適用可能であることは当業者に明らかである。
そして、刊行物2には、3次元計測の分野において本測定(本計測)に先だって予備測定(予備計測)を行いレーザー変位計と被測定物との間の相対位置(すなわち両者の間の距離)を得ることが記載されているから、刊行物1の上記趣旨を勘案すれば、刊行物1に記載された発明において、予備計測により対物間距離を得ることは容易に想到し得ることであり、したがって刊行物1に記載された発明の制御手段に予備計測機能を組み込んで予備計測制御手段として構成することは当業者が容易になしうることである。(なお、この際に刊行物1に記載された発明の「計測」を、相対的に「本計測」と呼ぶことは表現上の問題にすぎない。)

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-19 
結審通知日 2004-10-26 
審決日 2004-11-08 
出願番号 特願平8-274993
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 則和  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
深沢 正志
発明の名称 3次元計測装置  

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