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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1109248
審判番号 不服2001-675  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-18 
確定日 2005-01-07 
事件の表示 平成 6年特許願第290991号「回路のシミュレーション方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月 7日出願公開、特開平 8-147267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯および本願発明
本願は、平成6年11月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(本願発明)の要旨は、平成10年11月24日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「回路の特性を表す非線形連立方程式を、BDF法を用いて該非線形連立方程式をもとに構成されたホモトピー方程式が描く非線形な解曲線を追跡することにより数値解析する回路のシミュレーション方法において、
BDF法を用いた前記解曲線の追跡における解曲線上のj+1(jは整数)番目の数値解を求めるステップは、
予測子と修正子とのなす角度φj+1を算出し、この角度φj+1が所定値より大きいか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記角度φj+1が所定値より大きいと判断された場合には、前記解曲線の追跡の数値解析ステップのj+1番目の数値解を求めるステップをより小さな数値解析ステップ幅によって再実行し、j+1番目の数値解を新たに求め直すステップと、
を含むことを特徴とする回路のシミュレーション方法。」

2.原査定の理由
原査定の理由の概要は、本願発明は、自然法則を利用した技術思想の創作とは認められないから、特許法第2条でいう、特許法上の「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていないというものである。

3.当審の判断
「シミュレーション」とは、ある現象を数量的に研究するために、その現象の中で成り立つ要素的関係と正確にまたは近似的に同じ要素関係が成り立つような、観測に便利な他の現象を実現して、それに対する観測を行うことにより、問題の現象を解析する研究方法をいう。(岩波理化学辞典 第3版増補版 1986年2月20日、発行者 株式会社 岩波書店、第596〜597頁)
したがって、本願発明の「回路の特性を表す非線形連立方程式を(中略)数値解析するシミュレーション方法において」は、回路の現象を数量的に研究するために、現実の「回路」の現象の中で成り立つ要素的関係と正確にまたは近似的に同じ要素関係が成り立つような、観測に便利な他の現象である「回路の特性を表す非線形連立方程式を、BDF方を用いて該非線形連立方程式をもとに構成されたホモトピー方程式が描く非線形な解曲線を追跡することにより数値解析する」ことを実現して、それに対する観測を行うものである。
このことから当該請求項に係る発明の処理対象は「現実の回路」ではなく、『回路の特性を表す非線形連立方程式』によって表された「回路の数学モデル」である。
そして、上記『BDF法を用いて該非線形連立方程式をもとに構成されたホモトピー方程式が描く非線形な解曲線を追跡することにより数値解析する』は、本願発明の「シミュレーション方法」の処理手順を特定したものであるが、当該特定事項は、純粋に数学的な計算手順を明記したにすぎない。
そして、上記『BDF法を用いた前記解曲線の追跡における解曲線上のj+1(jは整数)番目の数値解を求めるステップは、
予測子と修正子とのなす角度φj+1を算出し、この角度φj+1が所定値より大きいか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記角度φj+1が所定値より大きいと判断された場合には、前記解曲線の追跡の数値解析ステップのj+1番目の数値解を求めるステップをより小さな数値解析ステップ幅によって再実行し、j+1番目の数値解を新たに求め直すステップと、
を含む』こと、すなわち、非線形性を有する解曲線の疑似解に収束してしまうことを防止するために、「予測子と修正子のなす角度を算出し、この角度が所定値より大きい場合には、数値解析ステップ幅を縮小して再計算する」ことは、純粋に数学的な非線形な解曲線に対する数値解析の計算手順(「回路の数学モデル」特有の処理と認められる点はなく、対象の技術的性質に基づいた情報処理に該当しない)にすぎない。(もちろん、現実の回路の特性に応じた処理でもなく、また、回路シミュレーション固有の処理でもない)
してみれば、本願発明は、全体として、純粋に数学的な計算手順のみからなり、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。
したがって、本願発明は特許法上の「発明」に該当しない。

なお、請求人は、審判請求書において、現実の回路特性が反映されたデジタルモデルをコンピュータで処理する方法を規定している旨を述べ、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、法上の「発明」であると主張している。

しかしながら
(1)上述したように、本願発明のシミュレーション方法の処理(数値解析)対象は、審判請求書において「デジタルモデル」、「コンピュータモデル」又は「数値モデル」と述べているところの、現実の「回路」の現象の中で成り立つ要素的関係と正確にまたは近似的に同じ要素関係が成り立つような、非線形連立方程式で表された「数学モデル」であって、現実の回路そのものを処理対象としていない。
(2)本願発明の処理(数値解析)は、処理(数値解析)すべき非線形連立方程式が現実の回路を表現しているか否かに関わらず、非線形方程式の数値解析を、疑似解に収束してしまうことを防止して、実行できるものであり、処理(数値解析)手法中に回路固有の自然法則を利用しているものでもない。
(3)解曲線が非線形であることは回路以外の物理的又は非物理的な非線形現象でも同様であるので、解曲線が非線形であることは回路固有の物理的性質ではない。そして、疑似解発生の問題も非線形方程式の問題であり、回路固有の問題ではない。
したがって、本願発明の処理(数値解析)手法は、現実の回路固有の物理的性質に依存するものではなく、非線形連立方程式そのものに対する処理(数値解析)手法であって、純粋に数学的である。
そして、本願特許請求の範囲の請求項1には「コンピュータで処理」する構成がない。また、仮に「コンピュータで処理」するものとしても、「コンピュータを用いて処理すること」のみである場合には「発明」とはしない。このように取り扱うのは、「発明」に該当しないものを実質的に特許の対象とするに等しいからである。
したがって、上記主張は採用することができない。

4.むすび
したがって、本願発明は特許法第第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2004-02-24 
結審通知日 2004-03-02 
審決日 2004-03-15 
出願番号 特願平6-290991
審決分類 P 1 8・ 14- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼田 耕一  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 村上 友幸
平井 誠
発明の名称 回路のシミュレーション方法  
代理人 石田 純  
代理人 金山 敏彦  
代理人 吉田 研二  
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