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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1109307
審判番号 不服2003-24203  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-12 
確定日 2005-01-04 
事件の表示 平成11年特許願第372971号「建物基礎を利用した収納庫」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-182310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成11年12月28日に出願したものであって、平成15年11月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月12日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年2月23日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成16年6月9日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、同年8月16日付けで意見書が提出されるとともに同年8月25日付けで手続補正がなされたものである。


【2】平成16年8月25日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年8月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
〔1〕補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「二階以上の階を有する集合住宅の地下に設けられた基礎部分を利用することで形成される収納庫であって、一階床部を天井、基礎スラブ面を床面とし、前記一階床部と基礎スラブ面との間を1500〜2500mm程度に施工し、前記天井と床面との間の空間を、集合住宅の態様に合わせた形状及び数を形成するように壁で仕切ることで、前記集合住宅の各戸の住人用の収納庫を形成し、さらに、前記収納庫のうち、一階の住人用の収納庫に出入りするために、一階の住人の自室と当該収納庫とを結ぶ階段部を設けるとともに、前記収納庫のうち、二階以上の住人用の収納庫の2つに挟まれるように階段室が形成され、当該住人が出入りするための階段が前記階段室に設けられており、前記二階以上の住人用の収納庫には、前記階段室からの出入りを可能とする扉が各々設けられていることを特徴とする収納庫。」(以下、「補正発明」という。)
上記補正は、「二階以上の住人用の収納庫」及び「階段室」の構成について、「二階以上の住人用の収納庫の2つに挟まれるように階段室が形成され」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

〔2〕引用刊行物とそれらに記載された事項
1.当審における拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平2-125071号公報(以下、「刊行物1」という。)には、基礎を利用した床下収納庫に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「地盤を所定の深さに掘り下げると共に、掘り下げた部分の底部に梁部の頂端が地盤面より若干突出した布基礎を設けしめ、該布基礎により建物を支持せしめると共に、布基礎と床部で床下収納庫を形成せしめたことを特徴とする基礎を利用した床下収納庫。」(特許請求の範囲)
(2)「産業上の利用分野 本発明は部屋の床下が全域に渉って収納庫となる基礎を利用した床下収納庫に関するものである。」(1頁左欄13〜16行)
(3)「実施例 以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明すると、1は地盤Aを所定の深さに掘り下げると共に、掘り下げた部分の底部全域に割栗地業を施した割栗地業部であり、該割栗地業部1上面に渉って捨てコンクリート2を表面が平坦となる様に薄く打設せしめると共に、該捨てコンクリート2上に部屋の形状に沿って連続した布基礎3、3a…を敷設せしめ、該布基礎3、3a…はスラブ部4、4a…を捨てコンクリート2上に形成し、梁部5、5a…の頂端が地盤A面より若干突出する様に梁部5、5a…の高さを相当高くせしめている。」(2頁右上欄3〜16行)
(4)「7は布基礎3、3a…の内方底部で捨てコンクリート2の上面に薄く打設せしめたコンクリートであり、該コンクリート7の上面には防湿材8により防湿加工を施している。9は建物の壁体であり、該壁体9には地盤A面より若干高い所定の高さとなる様に床部10を架設せしめると共に、該床部10の適宜位置に開閉自在なる出入口11を設けしめている。次に本発明に係る基礎を利用した床下収納庫の作用について説明すると、布基礎3、3a…の梁部5、5a…の高さを上方に相当高くせしめることにより床下収納庫12を設けると共に、布基礎3、3a…が床下収納庫12の耐力壁となり、而も建物を安全に支持せしめるのである。」(2頁左下欄1行〜15行)
(5)「(発明の効果) 要するに本発明は、地盤Aを所定の深さに掘り下げると共に、掘り下げた部分の底部に梁部5、5a…の頂端が地盤A面より若干突出した布基礎3、3a…を設けしめ、該布基礎3、3a…により建物を支持せしめると共に、布基礎3、3a…と床部10で床下収納庫12を形成せしめたので、建物を支持するという基礎本来の目的に加えて、布基礎2、2a…を床下収納庫1の耐力壁と成さしめることが出来る・・・而も部屋の床下全域に渉って床下収納庫12となる為、土地を有効利用せしめることが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。」(2頁左下欄16行〜右下欄12行)
これら(1)〜(5)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「建物の地下に設けられ部屋の形状に沿って連続した布基礎を利用することで形成される床下収納庫であって、部屋の床部を天井、布基礎の内方底部と該布基礎に囲まれた部分において捨てコンクリート上に打設したコンクリートとの上面を床面として形成し、床下収納庫に出入りするために部屋と当該床下収納庫とを結ぶ出入口を設けた床下収納庫。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.同じく、特開平8-326335号公報(以下、「刊行物2」という。)には、共同住宅に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「【請求項1】地下1階と地上2階以上の地上階を有し、各地上階を戸境壁を介して複数個の住戸に区画した共同住宅であって、地上1階の住戸は、対応する地下階に内部階段で連絡されるとともに、外部に面する独立居室を有し、さらに、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されていることを特徴とする共同住宅。 【請求項2】前記地下階に形成された各多目的室は、それぞれ地上2階以上の各住戸に割り当てられている請求項1記載の共同住宅。」(特許請求の範囲)
(2)「【作用】地上1階と、その対応する地下階とは、内部階段で連絡されたメゾネットに形成され・・・ている。また、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されている。この結果、居住者は、居住空間としての地上階を有するとともに、地下階に多目的に使用可能な独立した空間を占用することが可能となり、多様な空間利用を図ることができる。」(段落【0007】【0008】)
(3)「図1には、本発明の共同住宅1が示されている。この共同住宅1は、地下1階および地上3階で構成され、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…,は、各階において戸境壁を介して区画され、詳細には図示しないが、それぞれリビング、ダイニング、二つの寝室を有する2LDKに形成されている。また、地上1階F1の各住戸11,12…は、図2に詳細に示すように、同様に戸境壁を介して区画され、それぞれリビング、ダイニング、二つの寝室を有する2LDKに形成されているとともに、対応する地下1階B1に内部階段11s…を介して連絡された独立居室11h,12h…を備えており(図3参照)、いわゆる、メゾネットに形成されている。」(段落【0010】)
(4)「なお、住戸12については、部屋の構造が省略されているが、戸境壁を中心に住戸11とほぼ左右対称に形成されているものである。また、地下1階B1の、独立居室11h,12h…を除く空間には、図3に示すように、吹き抜けVを通して各地上階F1,F2…に連通された中庭Pが形成されるとともに、この中庭Pに臨んでその周囲には、4個の多目的室21h,22h,31h,32hが形成されている。これらの多目的室21h,22h,31h,32hは、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…に割り当てられるようになっている。したがって、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…についても、居住空間としての地上階を有するとともに、多目的に使用可能な独立した空間としての地下階とを占用することができ、地上2階2F以上の各住戸21,22…,31,32…についても、地上1階F1の各住戸11,12…とほぼ同一の床面積を有するようにしている。」(段落【0011】【0012】)
(5)「このように、共同住宅1の各住戸は、必ず居住空間としての地上階を有するとともに、地下1階に多目的に使用可能な独立居室もしくは多目的室を有することから、これらの地下空間を、地下室のもつ優れた特性に着目して、より積極的に多様な目的に活用することができる。例えば、カラオケルームやマージャンルームといった防音室としての利用や、トレーニングルームや書斎、さらには、ストックルームとしての利用など、地上階とは内容の異なる利用が可能となる。」(段落【0014】)
これら(1)〜(5)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物2には、以下の技術事項a.〜c.が記載されているものと認められる。
a.「地下1階と地上2階以上の地上階を有し、地上2階以上の各住戸が、各階において戸境壁を介して複数個の住戸に区画されて各々2LDKに形成され、また、地上1階の各住戸が、戸境壁を介して複数個の住戸に区画されて各々2LDKに形成されている共同住宅。」
b.「地上1階の各住戸には、対応する地下1階に内部階段を介して連絡された独立居室を備えており、地下1階の独立居室を除く空間には、吹き抜けを通して各地上階に連通された中庭が形成されるとともに、この中庭に臨んでその周囲には、4個の多目的室が形成され、これらの多目的室は各々扉を備えて、地上2階以上の各住戸に割り当てられていること。」
c.「地下1階に設けた独立居室もしくは多目的室は、多目的に使用可能な地下空間となり、例えば、カラオケルームやマージャンルームといった防音室としての利用や、トレーニングルームや書斎、さらには、ストックルームとしての利用など、地上階とは内容の異なる利用が可能となること。」

3.同じく、特開平6-323005号公報(以下、「刊行物3」という。)には、蔵型収納付き建物に関して、以下の技術事項が図面とともに記載されている。
(1)「前記蔵型収納付き建物1は・・・基礎30上に2階建ての住宅が建てられている。このような実施例に係る蔵型収納付き建物1では基礎30の地盤2からの高さを1.4メートル(m)の高さとし、この基礎に囲まれた建物床下空間を収納空間に利用して蔵型収納部3を構成したものである。・・・その収容空間は前記基礎30と前記建物1の床下空間によって構成される。前記基礎(以下布基礎ともいう)30は建物1の荷重を地盤2に伝えるとともに、・・・前記蔵型収納部3の外周壁30A〜30D(図4参照)と内壁30a〜30h(図4参照)とを構成している。この前記布基礎30は地盤2からの高さが1.4mであり、平均的な身長の大人が腰や頭を少し低くした状態で、あるいは椅子に座った状態等で自由に移動できる高さに作られており、物品の搬入や搬出に十分な高さとなっている。前記布基礎30は地盤2からの高さは1.4mに限定されるものではなく、軒高の制限のもとで1階部分の高さと2階部分の高さとの関係で決定されるようになっている。具体的には前記地盤2からの高さの上限は平均的な身長の大人が背伸びした状態でその手を物に届かすことができる高さ、例えば約2.2m程度にすることができる。この点はそれ以上の高さとしても上部はあまり利用されないという利用効率の点からも望ましい。」(段落【0012】〜【0014】)
(2)「上記構成の布基礎30に建物1が建て上げられており、その建物の最下階(1階4)の床1Aによって建物床下空間が構成されている。次に前記蔵型収納部3の配置を図4に基づいて説明する。図4に示すように外周壁30A、30Dと内壁30a、30bに囲まれた空間に蔵型収納部3Aが、外周壁30Aと内壁30b、30c、30dに囲まれた空間に蔵型収納部3Bが、外周壁30Aと内壁30c、30e、30fに囲まれた空間に蔵型収納部3Cが、外周壁30A、30B、30Cと内壁30fに囲まれた空間に蔵型収納部3Dが、外周壁30C、30Dと内壁30a、30gに囲まれた空間に蔵型収納部3Eが、外周壁30Cと内壁30d、30g、30hに囲まれた空間に蔵型収納部3Fがそれぞれ設けられている。このようにこの実施例に係る蔵型収納付き建物1では床下空間を有効に利用して蔵型収納部3A〜3Fが設けられており、可能な限り広いスペースで、保管に効率的な収納空間を設けることができるようになっている。なお、図4では前記蔵型収納部3Dのみを蔵として利用しており、前記建物床下空間の一部を蔵型収納部とした例が図示されている。前記蔵型収納部3Dは1階床パネル・・・を前記外周壁30Bと内壁30f上に敷込めることができるようなものとなっており、該蔵型収納部3Dには1階から階段を介して出入りできるようになっている。」(段落【0018】〜【0020】)
これら(1)(2)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物3には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。
「布基礎上に建物が建て上げられており、該布基礎と建物の最下階の床とによって囲まれた建物床下空間を収納空間に利用した蔵型収納部付きの建物において、布基礎の高さが、例えば、1.4m〜2.2m程度であり、また、布基礎により構成する外周壁と内壁に囲まれるようにして形成した複数の蔵型収納部のうちの1つの蔵型収納部(3F)に、他の1つの蔵型収納部(3D)に連絡する階段を付設してなる蔵型収納付き建物。」

〔3〕対比・判断
1.補正発明と刊行物1記載の発明との対比
そこで、補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「部屋の形状に沿って連続した布基礎」,「部屋の床部」,「布基礎の内方底部と該布基礎に囲まれた部分において捨てコンクリート上に打設したコンクリートとの上面」,「床下収納庫」が、補正発明の「基礎部分」,「一階床部」,「基礎スラブ面」,「収納庫」にそれぞれ相当し、
また、刊行物1記載の発明の「建物」と補正発明の「二階以上の階を有する集合住宅」とは何れも「住宅」である点で一致するから、両者は、
「住宅の地下に設けられた基礎部分を利用することで形成される収納庫であって、一階床部を天井、基礎スラブ面を床面として形成した収納庫。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
住宅の種類について、補正発明が、二階以上の階を有する集合住宅であるのに対し、刊行物1記載の発明は、そのような住宅であるのか否か定かでない点。
<相違点2>
収納庫の構造について、補正発明が、天井と床面との間の空間を、集合住宅の態様に合わせた形状及び数を形成するように壁で仕切ることで、集合住宅の各戸の住人用の収納庫を形成し、さらに、収納庫のうち、一階の住人用の収納庫に出入りするために、一階の住人の自室と当該収納庫とを結ぶ階段部を設けるとともに、収納庫のうち、二階以上の住人用の収納庫の2つに挟まれるように階段室が形成され、当該住人が出入りするための階段が階段室に設けられており、二階以上の住人用の収納庫には、階段室からの出入りを可能とする扉が各々設けられているものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、そのようなものではない点。
<相違点3>
一階床部と基礎スラブ面との間隔について、補正発明が、一階床部と基礎スラブ面との間を1500〜2500mm程度に施工したものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、どの程度の間隔であるのか定かでない点。

2.相違点についての検討
<相違点1について>
相違点1について検討するために刊行物2をみると、刊行物2には、「地下1階と地上2階以上の地上階を有し、地上2階以上の各住戸が、各階において戸境壁を介して複数個の住戸に区画されて各々2LDKに形成され、また、地上1階の各住戸が、戸境壁を介して複数個の住戸に区画されて各々2LDKに形成されている共同住宅。」(技術事項a.参照。)、即ち、「二階以上の階を有する共同住宅(集合住宅)」についての発明が記載されている。而して、このような刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができないから、補正発明の上記相違点1に係る構成は、上記刊行物1,2記載の発明から当業者が容易に想到し得たものと云わざるを得ない。(但し、括弧内には補正発明における対応する部位・部材等の名称を示す。以下同様。)
<相違点2について>
相違点2について検討するために刊行物2,3をみると、刊行物2記載の発明は、上記技術事項a.〜c.を総合すると、「地下空間(天井と床面との間の空間)を、共同住宅の態様に合わせた形状及び数を形成するように壁で仕切ることで、前記共同住宅の各戸の住人用のストックルームとして利用できる独立居室もしくは多目的室(収納庫)を形成し、さらに、前記独立居室もしくは多目的室のうち、地上1階(一階)の住人用の独立居室(収納庫)に出入りするために、地上1階住人の自室と当該独立居室とを結ぶ内部階段(階段部)を設けるとともに、前記独立居室もしくは多目的室のうち、地上2階(二階)以上の住人用の多目的室の4つに囲まれるように中庭が形成され、中庭は、吹き抜けを通して各地上階に連通されており、前記地上2階以上の住人用の多目的室には、前記中庭からの出入りを可能とする扉が各々設けられたものであり、また、刊行物3には、「布基礎(基礎部分)上に建物が建て上げられており、該布基礎と建物の最下階の床とによって囲まれた建物床下空間を収納空間に利用した蔵型収納部(収納庫)付きの建物において、・・・布基礎により構成する外周壁と内壁に囲まれるようにして形成した複数の蔵型収納部のうちの1つの蔵型収納部(3F)に、他の1つの蔵型収納部(3D)に連絡する階段を付設してなる蔵型収納付き建物。」の発明が記載されている。そして、刊行物2記載の発明において、「吹き抜けを通して各地上階に連通されて」いる「中庭」には、「地上2階」以上の「各戸」の住人が立ち入ることができるように、階段等の何らかの昇降手段が連絡していることは明らかであり(そうでなければ多目的室が利用できない。尚、該「昇降手段」は、請求人が云うところの、「図1に点線で表された階段」(意見書(4)(ii)(b)参照。)を指すものではない。)、しかも、集合住宅において、吹き抜け空間に階段を併設することは、例えば、特開昭50-60023号公報,特開昭61-17676号公報,特開昭63-293249号公報等に示されているように従来周知の技術であり、さらに、刊行物2記載の発明において、「4つに囲まれる」との表現が、「2つに挟まれる」との態様を包含することも明らかである。而して、このような刊行物2,3記載の発明及び周知技術を刊行物1記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができないから、補正発明の上記相違点2に係る構成は、上記刊行物1〜3記載の発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものと云わざるを得ない。
<相違点3について>
相違点3について検討するために刊行物2,3をみると、刊行物2記載の発明において、「共同住宅の各戸の住人用のストックルームとして利用できる独立居室もしくは多目的室」は、「カラオケルームやマージャンルームといった防音室としての利用や、トレーニングルームや書斎」(技術事項c.参照。)としての利用が可能なものであるから、その室内高は、少なくとも、「1500〜2500mm程度」のものと思量され、また、刊行物3記載の発明は、「複数の蔵型収納部」の外周壁と内壁とを構成する「布基礎の高さが、例えば、1.4m〜2.2m程度」とし、「該布基礎と建物の最下階の床とによって囲まれた建物床下空間を収納空間に利用した」ものであり、該「収納空間」についての限定事項は、補正発明の上記相違点3における「一階床部と基礎スラブ面との間を1500〜2500mm程度に施工したもの」との構成の範囲内のものであるから、補正発明の上記相違点3に係る構成は、上記刊行物1〜3記載の発明から当業者が容易に想到し得たもの、或いは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないものと云わざるを得ない。

3.まとめ
そして、補正発明によって奏する効果も、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められないから、補正発明は刊行物1〜3に記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと云わざるを得ない。

〔4〕むすび
したがって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
以上のように、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
〔1〕本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成16年8月25日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、平成16年2月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】二階以上の階を有する集合住宅の地下に設けられた基礎部分を利用することで形成される収納庫であって、一階床部を天井、基礎スラブ面を床面とし、前記一階床部と基礎スラブ面との間を1500〜2500mm程度に施工し、前記天井と床面との間の空間を、集合住宅の態様に合わせた形状及び数を形成するように壁で仕切ることで、前記集合住宅の各戸の住人用の収納庫と階段室とを形成し、さらに、前記収納庫のうち、一階の住人用の収納庫に出入りするために、一階の住人の自室と当該収納庫とを結ぶ階段部を設けるとともに、前記収納庫のうち、二階以上の住人用の収納庫に当該住人が出入りするための階段が前記階段室に設けられており、前記二階以上の住人用の収納庫には、前記階段室からの出入りを可能とする扉が各々設けられていることを特徴とする収納庫。
【請求項2】(記載を省略する。)」(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)

〔2〕引用刊行物とそれらに記載された事項
これに対し、当審における拒絶の理由で引用し、本願出願前に日本国内において頒布された引用刊行物の記載事項は、上記【2】〔2〕に記載したとおりである。

〔3〕対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明における「二階以上の住人用の収納庫の2つに挟まれるように階段室が形成され」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の技術事項を全て含む補正発明が、上記【2】〔3〕に記載したとおり、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、刊行物1〜3記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものと云わざるを得ない。

〔4〕むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-02 
結審通知日 2004-11-04 
審決日 2004-11-16 
出願番号 特願平11-372971
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04F)
P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 田中 弘満
南澤 弘明
発明の名称 建物基礎を利用した収納庫  
代理人 三枝 英二  
代理人 舘 泰光  
代理人 小原 健志  
代理人 斎藤 健治  
代理人 関 仁士  
代理人 藤井 淳  
代理人 中川 博司  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 中野 睦子  

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