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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D01H
管理番号 1109320
審判番号 不服2002-4676  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-18 
確定日 2005-01-04 
事件の表示 平成 4年特許願第 94713号「コップ個別化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 4月27日出願公開、特開平 5-106129〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成4年4月15日(優先権主張1991年4月16日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、その請求項1ないし請求項8に係る発明は、平成13年11月20日付け手続き補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「コップ個別化装置であって、該コップ個別化装置が、上部で開いた円形の搬送ポット(2)を有しており、該搬送ポット(2)が、底面として上方に向かって湾曲させられた円形の中心面(2′)と、螺旋状に外方に延びていると同時に上昇しているガイド軌道(3)とを備えており、該ガイド軌道(3)が、螺旋経過に従った壁面(3′)によって外側を制限されており、前記ガイド軌道(3)の外端部がコップ放出装置(8)に開口しており、前記搬送ポット(2)が弾性的な結合手段(7)によって定置のベースフレームと結合されていて、コップを前記中心面から前記ガイド軌道(3)に沿ってコップ放出装置(8)に搬送するための振動装置によって振動運動を加えられるようになっている形式のものにおいて、前記振動装置が少なくとも1つの電気的なモータ(9,31)から成っており、該モータのモータ軸(10,20)に1つまたは複数のアンバランスエレメント(11,12,19)が固定されており、少なくとも1つのモータが、周波数変換器(35)を介して周波数に関連して回転数を制御されるようになっており、制御装置(39,43)によって、前記コップ放出装置(8)における目下のコップ需要に応じて前記周波数変換器(35)の出力側で種々異なる周波数段階が制御可能であることを特徴とする、コップ個別化装置。」

II.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特公昭64-10409号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

記載1.(2ページ4欄34〜35行)
「第1個別化器のボビン送出が後置の第2個別化器のボビン収容量によって制御される点にある。」

記載2.(4ページ8欄35行〜5ページ9欄7行)
「第1個別化器18はばら荷用円形コンベヤとして構成されている。特に第1図及び第3図に示したように、このばら荷用円形コンベヤは底部に円錐床65を有し、該円錐床は、該床面に卸された紡積コツプを周縁部に向つて滑降又は転動させる。第1個別化器18は円弧状の二重矢印67で示した方向にバイブレータ66によつて振動せしめられ、しかも振動毎に、矢印68の方に向いた運動速度は、これとは逆向きの運動速度よりも速い。その結果、円錐床65の周縁部に位置するスリツプ面69上を上向移動することになる。該スリツプ面69は円錐床65から第1個別化器18の上縁70に至るまで立体的な螺旋形に上り勾配を成している。図面から判るようにスリツプ面69は外方へ向つても傾斜している。スリツプ面69は外周でのみ、やはり螺旋形に上り勾配を成す制限壁71を有している。」
そこで、記載2には、紡績コップ用の個別化器であって、ばら荷用円形コンベヤとして構成されたものが記載されている。
この円形コンベヤは、底部に円錐床65を有するとともに、円錐床65の周縁部に、立体的な螺旋形に上り勾配を成しているスリツプ面69を有しており、スリツプ面69は外周でのみ、やはり螺旋形に上り勾配を成す制限壁71を有している。
また、第1個別化器18は、バイブレータ66によつて振動運動を与えられる。

記載3.(5ページ9欄39行〜5ページ10欄6行)
「前記引渡し部78にはシュート88が設けられていて、該シュートは光電スイツチ89によって監視される。該光電スイツチ89は導電線90によって切換スイツチボックス29と結合されている。1つのボビンがシュート88を介して滑動する度毎に、導電線90’によって切換スイツチボツクス29と結合されたバイブレータ66はオフに切換えられる。第2個別化器19はエンドレスの搬送ベルト91及び該ベルトの搬送面に装着した複数のウエブ92から成つており、前記搬送ベルトはベルトガイドローラ93,94を介して循環する。」
そこで、記載3には、第1個別化器18の引渡し部78にはシュート88が設けられていることが記載されている。

記載4.(6ページ11欄10〜15行)
「両搬送ベルト13及び91はまだ始動されていない。それというのは光電スイツチ97がボビン収容仕切り98内にボビンの存在をなお確認していないからである。従つて光電スイツチ97は、第1個別化器18からの1つのボビンの引渡しを生ぜしめるためにバイブレータ66をオンにする。」
そこで、記載4には、光電スイツチ97が、搬送ベルト91のボビン収容仕切り98内にボビンを検出しないとき、バイブレータ66をオンすることが記載されている。

III.当審の判断
(1) 対比
引用例の「第1個別化器18」は、紡績コップ用の個別化器であるので、本願発明の「コップ個別化装置」に相当し、同様に、「円錐床65」は「中心面」に、「スリツプ面69」は「ガイド軌道」に、「制限壁71」は「壁面」に、「シュート88」は、スリツプ面69の開口端に設けられ、コップを放出するものであるので「コップ放出装置」に、「バイブレータ」は「振動装置」にそれぞれ相当している。
また、引用例の第2、3図を参酌すると、本願発明の「搬送ポット」に対応する部分である、引用例の第1個別化器の円錐床65、螺旋形のスリツプ面69、螺旋形の制限壁71等が、上部で開いた円形形状をしていることが認められる。
また、引用例の記載1には、第1個別化器のボビン(紡績コップ)送出が後置の第2個別化器のボビン収容量によって制御されることが記載され、記載3,4を勘案すると、具体的には、光電スイツチ89,97により、第2個別化器19のボビン収容仕切りにボビンが無いとき第1個別化器18のバイブレータ66がオンされ、シュート88からのボビンの放出が検知されるとバイブレータ66はオフに切換わるようにして、シュート88における目下のボビンの需要に応じて第1個別化器18の振動がオンオフ制御され、ボビンの放出が制御されるようになっているので、光電スイツチ89,97等は、本願発明の「制御装置」に対応する。

そこで、本願発明の用語を用いて対比すると、両者は次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。なお、( )内に対応する引用例の用語を示す。

[一致点]
「コップ個別化装置(第1個別化器18)であって、該コップ個別化装置が、上部で開いた円形の搬送ポットを有しており、該搬送ポットが、底面として上方に向かって湾曲させられた円形の中心面(円錐床65)と、螺旋状に外方に延びていると同時に上昇しているガイド軌道(スリップ面69)とを備えており、該ガイド軌道が、螺旋経過に従った壁面(制限壁71)によって外側を制限されており、前記ガイド軌道の外端部がコップ放出装置(シュート88)に開口しており、コップを前記中心面から前記ガイド軌道に沿ってコップ放出装置に搬送するための振動装置(バイブレータ66)によって振動運動を加えられるようになっている形式のものにおいて、制御装置によって、前記コップ放出装置における目下のコップ需要に応じて振動が制御可能であるコップ個別化装置」

[相違点]
相違点1
本願発明の搬送ポットは、「弾性的な結合手段によって定置のベースフレームと結合されて」いるのに対して、引用例記載のものは、搬送ポットの支持手段が明らかでない点。
相違点2
本願発明の振動装置は、「少なくとも1つの電気的なモータから成っており、該モータのモータ軸に1つまたは複数のアンバランスエレメントが固定されて」いるのに対し、引用例記載の振動装置(バイブレータ)は、構造が不明な点。
相違点3
本願発明の振動装置は、「少なくとも1つのモータが、周波数変換器を介して周波数に関連して回転数を制御されるようになっており、制御装置によって、コップ放出装置における目下のコップ需要に応じて周波数変換器の出力側で種々異なる周波数段階が制御可能である」のに対して、引用例記載のものは、振動装置(バイブレータ66)が、コップ放出装置(シュート88)における目下のコップ需要に応じて制御装置(光電スイツチ89,97等)によってオンオフ制御される点。

IV.判断
相違点1について
一般の振動フィーダにおいて、搬送ポットを床面に弾性部材を介し結合したベースフレームに結合することによって支持することは、例えば、特公昭56-15366号公報に示すように周知の技術手段である。
そこで、引用例記載の、振動フィーダである、ばら荷用円形コンベヤとして構成されたコップ個別化装置に、上記周知の技術手段を採用し、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について
一般の振動フィーダにおいて、バイブレータを、モータにアンバランスエレメントを固定した構造で構成したものは、例えば、上記周知例である特公昭56-15366号公報以外にも、特開昭56-117908号公報や特公昭48-23152号公報に示すように周知であるので、振動装置(バイブレータ)に、かかる周知技術を適用して、相違点2に係る本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3について
モータにアンバランスエレメントを固定した構造の振動装置を有する振動フィーダにおいて、出力を変えるために、モータに供給される電気の周波数を周波数変換器(インバータ)により制御し、モータの回転数を制御するようにしたものは、例えば、特開昭56-117908号公報(特に、1頁左下欄12ないし18行目、1頁右下欄19ないし2頁左上欄13行目)に示すように良く知られている。
そこで、モータの電源をオンオフ制御することに代え、モータが周波数変換器を介して周波数に関連して回転数を制御されるようになし、相違点3に係る本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

V.むすび
本願発明は、引用例記載のもの及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-28 
結審通知日 2004-08-04 
審決日 2004-08-19 
出願番号 特願平4-94713
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 豊
中西 一友
発明の名称 コップ個別化装置  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 山崎 利臣  

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