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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1109364
審判番号 不服2002-21202  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-31 
確定日 2005-01-04 
事件の表示 平成 9年特許願第 77613号「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月13日出願公開、特開平10-276249〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年3月28日の出願であって、平成14年9月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月2日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)新規事項の追加の有無について
平成14年12月2日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項1、2の記載を、
「【請求項1】扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した第1回路基板(4)が設置されると共に、該第1回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を前記第1回路基板(4)上に支持する支持機能と、回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該第1回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が回路基板(4)に可及的に接近して設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されていることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】扁平なケーシング(1)の内部に、上段回路基板(4)と下段回路基板(6)とを上下に配置し、両基板(4)(6)の間にはシールドシャーシ(5)が介在し、上段回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を上段回路基板(4)上に支持する支持機能と、上段回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、下段回路基板(6)の下方には、上段回路基板(4)側に凸部(71)を有する電池ボックス(7)が設置され、シールドシャーシ(5)及び下段回路基板(6)は夫々、少なくとも電池ボックス(7)の凸部(71)に対応する領域が欠落した平面形状に形成され、電池ボックス(7)は、凸部(71)が下段回路基板(6)及びシールドシャーシ(5)の欠落部を通過して、上段回路基板(4)の裏面に形成された部品無配置領域(44)へ可及的に接近し或いは接触した位置に設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記上段回路基板(4)との間に設け、配置された前記下段回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されていることを特徴とする携帯電話機。」
と補正するとともに、段落【0005】、【0006】の記載を、
「【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係る携帯電話機は、扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した第1の回路基板(4)が設置されると共に、該第1の回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を第1の回路基板(4)上に支持する支持機能と、第1の回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該第1の回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が第1の回路基板(4)に可及的に接近して設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されている。
【0006】 又、本発明に係る携帯電話機は、扁平なケーシング(1)の内部に、上段回路基板(4)と下段回路基板(6)とを上下に配置し、両基板(4)(6)の間にはシールドシャーシ(5)が介在している。上段回路基板(4)の上方には、電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置されている。該支持板(3)は、スイッチシート(2)を上段回路基板(4)上に支持する支持機能と、上段回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えている。
下段回路基板(6)の下方には、上段回路基板(4)側に凸部(71)を有する電池ボックス(7)が設置されている。
シールドシャーシ(5)及び下段回路基板(6)は夫々、少なくとも電池ボックス(7)の凸部(71)に対応する領域が欠落した平面形状に形成され、電池ボックス(7)は、凸部(71)が下段回路基板(6)及びシールドシャーシ(5)の欠落部を通過して、上段回路基板(4)の裏面に形成された部品無配置領域(44)へ可及的に接近し或いは接触した位置に設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されている。」
と補正するものである。
上記補正内容のうち、新たに追加された「表面に配置された電子部品をシールドするシールド部」に対応する出願当初の明細書又は図面における構成要件は、「シールドシャーシ(5)」であるものと認められるところ、上記「シールド部」は、「シールドシャーシ」以外のシールド機能を奏する部品を含むものであり、また、出願当初の明細書又は図面には、対応する箇所の構成要件として、「シールドシャーシ(5)」以外のシールド機能を奏する部品については一切記載されていない(シールド機能を奏する「支持板(3)」は、明らかに別の箇所の構成要件として記載されている。)から、上記のように、「シールドシャーシ」以外のシールド機能を奏する部品を含む「シールド部」を新たな構成要件として追加する補正は、新規事項の追加に該当する。
(なお、上記補正内容において、【請求項2】及び段落【0006】においては、「シールドシャーシ(5)」とは別の構成要件として「表面に配置された電子部品をシールドするシールド部」が記載されており、この点からも、上記「シールド部」は、「シールドシャーシ」以外のシールド機能を奏する部品を含むことが想定される。)
したがって、本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとは認められず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)補正の目的の適否について
仮に、本件手続補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとした場合、補正の目的が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。

(2-1)請求項1について
請求項1についての補正内容は、
「扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した回路基板(4)が設置されると共に、該回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を回路基板(4)上に支持する支持機能と、回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が回路基板(4)に可及的に接近して設置されていることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「補正前の請求項1に係る発明」という。)を、
「扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した第1回路基板(4)が設置されると共に、該第1回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を前記第1回路基板(4)上に支持する支持機能と、回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該第1回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が回路基板(4)に可及的に接近して設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されていることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「補正後の請求項1に係る発明」という。)
と補正するものであるが、補正後の請求項1に係る発明における「表面に配置された電子部品をシールドするシールド部」及び「配置された第2回路基板(6)」は、いずれも補正前の請求項1に係る発明には存在しない構成要件であり、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項のうち、いずれの事項を限定したものとも認められないので、特許法第17条の2第4項第2号括弧書きの要件を満たしていない。
また、上記補正が、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものとも認められない。

(2-2)請求項2について
請求項2についての補正内容は、
「扁平なケーシング(1)の内部に、上段回路基板(4)と下段回路基板(6)とを上下に配置し、両基板(4)(6)の間にはシールドシャーシ(5)が介在し、上段回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を上段回路基板(4)上に支持する支持機能と、上段回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、下段回路基板(6)の下方には、上段回路基板(4)側に凸部(71)を有する電池ボックス(7)が設置され、シールドシャーシ(5)及び下段回路基板(6)は夫々、少なくとも電池ボックス(7)の凸部(71)に対応する領域が欠落した平面形状に形成され、電池ボックス(7)は、凸部(71)が下段回路基板(6)及びシールドシャーシ(5)の欠落部を通過して、上段回路基板(4)の裏面に形成された部品無配置領域(44)へ可及的に接近し或いは接触した位置に設置されていることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「補正前の請求項2に係る発明」という。)を、
「扁平なケーシング(1)の内部に、上段回路基板(4)と下段回路基板(6)とを上下に配置し、両基板(4)(6)の間にはシールドシャーシ(5)が介在し、上段回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を上段回路基板(4)上に支持する支持機能と、上段回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、下段回路基板(6)の下方には、上段回路基板(4)側に凸部(71)を有する電池ボックス(7)が設置され、シールドシャーシ(5)及び下段回路基板(6)は夫々、少なくとも電池ボックス(7)の凸部(71)に対応する領域が欠落した平面形状に形成され、電池ボックス(7)は、凸部(71)が下段回路基板(6)及びシールドシャーシ(5)の欠落部を通過して、上段回路基板(4)の裏面に形成された部品無配置領域(44)へ可及的に接近し或いは接触した位置に設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記上段回路基板(4)との間に設け、配置された前記下段回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されていることを特徴とする携帯電話機。」(以下、「補正後の請求項2に係る発明」という。)
と補正するものであるが、補正後の請求項2に係る発明における「表面に配置された電子部品をシールドするシールド部」は、補正前の請求項2に係る発明における「シールドシャーシ(5)」とは別の構成要件ないしは「シールドシャーシ」以外のシールド機能を奏する部品をも含む拡張された構成要件として記載されており、補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項を限定したものとは認められないので、特許法第17条の2第4項第2号括弧書きの要件を満たしていない。
また、上記補正が、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものとも認められない。

(3)独立特許要件について
仮に、本件手続補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、補正の目的が特許法第17条の2第4項の規定に適合するものであるとした場合、補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(3-1)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した第1回路基板(4)が設置されると共に、該第1回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を前記第1回路基板(4)上に支持する支持機能と、回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該第1回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が回路基板(4)に可及的に接近して設置され、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置されていることを特徴とする携帯電話機。」

(3-2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-153986号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特表平5-505929号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

[引用例1]
A.「【0002】
【従来の技術】
図6に従来の携帯形電話機を示す。この携帯形電話機は、上ケース1及び下ケース2よりなるプラスチック筐体、無線回路部が構成された回路基板3、この回路基板3に取り付けられるシールドケース4、電話機の各種機能を構成する回路部が構成された回路基板5、この回路基板5に取り付けられるラバースイッチ7、スピーカ8等の電子部品、上ケース1側に取り付けられる伸縮アンテナ9、筐体内にアンテナ9を収納したときにアンテナ9を電磁波から遮蔽するアンテナ収納部10等より構成されており、下ケース2に回路基板3及びシールドケース4をねじ12を用いて固定し、さらに、シールドケース4の上部側に回路基板5を取り付けて上ケース1で覆い、ねじ13を用いて上下のケース1,2を固定することにより組み立てられている。」(第2頁左欄第36〜50行)
B.携帯形電話機の回路基板5の下方に、2本のねじ13の長さとほぼ同じ厚みで、四角形の形状の空間を設けること。(図6参照)

上記Aの記載において、「ラバースイッチ7」は、電話番号のキー入力のために設けられているとは記載されていないが、引用例1が「携帯形電話機」に係るものであるからには、上記「ラバースイッチ7」は、電話番号のキー入力のために設けられているということは、当業者にとって自明のことと認められる。
また、上記Aの記載において、「シールドケース4」がシールドする対象についての明示の記載はないが、図6の記載からみて、該「シールドケース4」は、回路基板3の表面に配置された電子部品をシールドするものと認められる。
よって、上記A,Bの記載事項、及び図6の記載を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「扁平なプラスチック筐体の内部に、回路基板5が設置されると共に、該回路基板5の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部を具えたラバースイッチ7が設置され、該回路基板5の下方には、四角形の形状の空間が設けられ、表面に配置された電子部品をシールドするシールドケース4を前記回路基板5との間に設けた回路基板3が設置されている携帯形電話機。」

[引用例2]
A.「一般に、無線電話装置で用いられるキーパッドには2種類ある。第1の種類のキーパッドでは、無線電話装置内部の回路板にキーが直接取付けられている。第2の種類のキーパッドでは、キーパッドは無線装置に内蔵される回路板とは別の要素である。キーパッドと回路板とは、配線を介して互いに結合される。」(第3頁左上欄第9〜14行)
B.「バックライト型キーパッド組立部を第1図に示す。ここで、ライトパイプ組立部105は筐体107に音波溶接(sonically welded)される。また、このライトパイプ組立部は、第2図に示すキーパッド回路を内蔵している。・・・(中略)・・・キーパッド103はライトパイプ組立部105上にあり、つめ(bezel)101はキーパッド103をライトパイプ組立部105に固定する。」(第3頁右下欄第12〜20行)
C.「第3A図は、第1実施例におけるライトパイプ組立部の側面図を示す。このライトパイプ組立部は、6つのコネクタ・ピン309を含む透明プラスチック筐体である。筐体107の内部に向いた面である裏側は、EMI/RFIシールド311で被覆され、無線電話装置から発する雑音量を低減する。」(第4頁左下欄第8〜13行)
D.第1図を参照すると、回路板109の表面に複数の電子回路部品が搭載されていることが見て取れる。(第1図参照)

上記Bの記載において、「キーパッド103はライトパイプ組立部105上にあり、つめ(bezel)101はキーパッド103をライトパイプ組立部105に固定する。」とあり、第1図の記載を勘案すると、上記「ライトパイプ組立部105」は、上記「キーパッド103」の裏面に密着する支持部材としての機能を奏するものと認められる。
また、上記「キーパッド103」は、電話番号のキー入力のために設けられているとは記載されていないが、引用例2が「無線電話装置」に係るものであるからには、上記「キーパッド103」は、電話番号のキー入力のために設けられているということは、当業者にとって自明のことと認められる。
よって、上記A〜Dの記載事項、及び第1,3A図の記載を参照すると、引用例2には、次の事項が記載されているものと認められる。
「無線電話装置において、扁平な筐体107の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した回路板109が設置されると共に、該回路板109の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部を具えたキーパッド103と、該キーパッド103の裏面に密着するライトパイプ組立部105とが設置され、該ライトパイプ組立部105は、キーパッド103を回路板109上に支持する支持機能と、回路板109上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えるものであること。」

(3-3)対比
補正後の請求項1に係る発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明における「扁平なプラスチック筐体」、「回路基板5」、「ラバースイッチ7」、「シールドケース4」、「回路基板3」は、それぞれ、補正後の請求項1に係る発明における「扁平なケーシング(1)」、「第1回路基板(4)」、「スイッチシート(2)」、「シールド部」、「第2回路基板(6)」に対応する構成であるものと認められるから、両者は、
「扁平なケーシングの内部に、第1回路基板が設置されると共に、該第1回路基板の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部を具えたスイッチシートが設置され、該第1回路基板の下方には、表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板との間に設けた第2回路基板が設置されている携帯電話機。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:補正後の請求項1に係る発明においては、「第1回路基板」の表面に「複数の電子回路部品を搭載」しているのに対し、引用例1記載の発明においては、「回路基板5」の表面に複数の電子回路部品を搭載するとはされていない点。
相違点2:補正後の請求項1に係る発明においては、「スイッチシートの裏面に密着する支持板が設置され、該支持板は、スイッチシートを第1回路基板上に支持する支持機能と、第1回路基板上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えて」いるのに対し、引用例1記載の発明においては、該「支持板」に対応する構成を欠いている点。
相違点3:補正後の請求項1に係る発明においては、「第1回路基板の下方には、電池ボックスが第1回路基板に可及的に接近して設置され、配置された第2回路基板よりこの電池ボックスがスイッチシート側に近づけて設置されている」のに対し、引用例1記載の発明においては、「回路基板5の下方には、四角形の形状の空間が設けられ」ているものの、電池ボックスについての明示の記載がない点。

(3-4)判断
上記相違点1〜3について検討する。
[相違点1について]
引用例2には、無線電話装置において、扁平な筐体の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した回路板が設置されると共に、該回路板の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部を具えたキーパッドを設けることが記載されており、この記載を参照すれば、引用例1記載の発明において、第1回路基板の表面に複数の電子回路部品を搭載するような構成とすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
[相違点2について]
引用例2には、無線電話装置において、キーパッドの裏面に密着するライトパイプ組立部が設置され、該ライトパイプ組立部は、キーパッドを回路板上に支持する支持機能と、回路板上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えるものであることが記載されており、この記載を参照すれば、引用例1記載の発明において、スイッチシートの裏面に密着する支持板を設置し、該支持板は、スイッチシートを第1回路基板上に支持する支持機能と、第1回路基板上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えるようなものとすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
[相違点3について]
引用例1記載の発明においては、電池ボックスについての明示の記載はないが、回路基板5の下方には、四角形の形状の空間が設けられており、携帯電話機において、回路基板等が存在しない空間に電池ボックスを設けるようにすることは、ごく自然なことであることを鑑みれば、上記四角形の形状の空間に電池ボックスを配置するようにすることは、当業者にとって、ごく自然なことと認められる。
そして、携帯電話機は、携帯することを前提としているのであるから、存在する空間をでき得る限り効率的に利用し、なるべく薄型のものにするということは、当業者が当然考慮すべき事項であり、引用例1記載の発明において、第1回路基板の下方に、電池ボックスを第1回路基板に可及的に接近して設置し、配置された第2回路基板よりこの電池ボックスをスイッチシート側に近づけて設置するように構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

そして、補正後の請求項1に係る発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正後の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。

(4)むすび
上記(1)〜(3)で検討したとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項、第4項、あるいは第5項で準用する同法第126条第4項の規定のいずれかに違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成14年12月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年8月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「扁平なケーシング(1)の内部に、表面に複数の電子回路部品を搭載した回路基板(4)が設置されると共に、該回路基板(4)の上方には、表面に電話番号のキー入力のための複数のスイッチ部(25)を具えたスイッチシート(2)と、該スイッチシート(2)の裏面に密着する支持板(3)とが設置され、該支持板(3)は、スイッチシート(2)を回路基板(4)上に支持する支持機能と、回路基板(4)上の電子回路部品に対するシールド機構とを兼ね具えており、該回路基板(4)の下方には、電池ボックス(7)が回路基板(4)に可及的に接近して設置されていることを特徴とする携帯電話機。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記2.(3-2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.(3)で検討した補正後の請求項1に係る発明から、 「表面に配置された電子部品をシールドするシールド部を前記第1回路基板(4)との間に設け、配置された第2回路基板(6)よりこの電池ボックス(7)が前記スイッチシート(2)側に近づけて設置され」るようにすることを省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の請求項1に係る発明が、上記2.(3-4)に記載したとおり、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-26 
結審通知日 2004-11-02 
審決日 2004-11-15 
出願番号 特願平9-77613
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04M)
P 1 8・ 572- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 和生  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 長島 孝志
浜野 友茂
発明の名称 携帯電話機  
代理人 芝野 正雅  

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