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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24C
管理番号 1109383
審判番号 不服2003-21382  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-04 
確定日 2005-01-05 
事件の表示 特願2000-272146「電子レンジ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 8日出願公開、特開2001-153371〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯

本願は、平成12年9月7日(パリ条約による優先権主張1999年11月17日、韓国)の出願であって、原審における平成14年7月22日付けの拒絶理由通知書に記載した理由により平成15年7月31日付けで拒絶査定されたが、同年11月4日に拒絶査定に対する審判が請求され、同年12月4日付けで特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正書が提出されたものである。

2. 補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年12月4日付けの手続補正を却下する。

[理 由]

(1)補正後の特許請求の範囲請求項1に係る発明

平成15年12月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正前の請求項1に係る発明について、発明を特定するために必要な事項を限定して新たな請求項1とする補正を含むものであるから、特許請求の範囲についてのこの補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められるが、この補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件補正に係る特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。
「隔壁により隔離された調理室とファン受容部とを有する電子レンジにおいて、
前記隔壁から前記ファン受容部側に陥没され、前記ファン受容部と連通される少なくとも一つの空気送風孔が形成されており、前記調理室方向への空気の流れに障害のないヒーター受容部と;
前記ヒーター受容部に受容される対流加熱器と;
前記ファン受容部に設けられて前記ファン受容部内の空気を前記空気送風孔を通じて前記対流加熱器を経て前記調理室の内部に送風する送風ファンと;を含み、
前記ヒーター受容部は∩状の断面を有し、前記空気送風孔は前記ヒーター受容部の前記送風ファン側の壁に形成されていることを特徴とする電子レンジ。」(以下「本願補正発明」という。)

(2)引用例に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-34137号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の記載がある。

(1a)「加熱室内と仕切板を介して仕切られ加熱ヒータを収容したヒータボックス内に、加熱ヒータによって加熱された空気を所要時に加熱室内に循環させるファンが設置され、
上記仕切板には、ヒータボックス内の空気を加熱室内に吹き出すための吹出口および加熱室内の空気をヒータボックス内に吸い込むための吸込口が形成された電子レンジにおいて、
ヒータボックス内に配置され、仕切板の上記吸込口および吹出口の何れか一方の開口を含む部分を覆った状態で当該部分との間に加熱ヒータ収容空間を形成すると共に、加熱ヒータの熱を上記一方の開口を通して加熱室内に輻射する反射板と、
この反射板に形成され、上記加熱ヒータ収容空間とヒータボックス内とを連通させる連通口とを備えたことを特徴とする電子レンジ。」(特許請求の範囲【請求項1】)
(1b)「以下実施例を示す添付図面によって詳細に説明する。まず、図1および図2を参照して、Aはケーシングであって、内部が仕切板3によって加熱室1とヒータボックス2とに区画される。・・・
仕切板3には、後述するコンベクションファン22により作られる風の吹出口となるパンチング穴32と、上記コンベクションファン22により加熱室1内の空気をヒータボックス2内へ吸気する吸込口となるパンチング穴31とが設けてある。
加熱室1は、被調理物13を収納し、加熱、調理するための室である。
・・・・ヒータボックス2内には、ヒータボックス2の上面中央に、モータ8で駆動されるコンベクションファン22(以下、「ファン22」という。)と、ハロゲンヒータもしくはクォーツヒータ21(以下、「ヒータ21」という。)を収容した反射板5を設けてある。」(段落【0008】〜【0010】)

(1c)「なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、ヒータ21を取り付けた反射板5を、仕切板3の吹出口としてのパンチング穴32の部分を覆い被すように取り付けても、全く同様の効果が得られる。又、この発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことができる。」(段落【0019】)

(3)引用例の発明

記載事項(1b)と図1を勘案して、記載事項(1a)と(1c)をみると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「仕切板3により隔離された加熱室1とヒータボックス2とを有する電子レンジにおいて、
前記仕切板3の吹出口としてのパンチング穴32の部分を覆い被すように取り付け、前記仕切板3から前記ヒータボックス2側に陥没され、前記ヒータボックス2と連通される連通孔51が形成されている反射板5で囲まれた加熱ヒータ収容空間Bと;
前記加熱ヒータ収容空間Bに受容されるヒータ21と;
前記ヒータボックス2に設けられて前記ヒータボックス2内の空気を前記連通孔51を通じて前記ヒータ21を経て前記加熱室1の内部に送風するファン22と;を含み、
前記加熱ヒータ収容空間Bは台形状の断面を有する電子レンジ。」(以下「引用例の発明」という。)

(4) 対比・一致点・相違点

本願補正発明と引用例の発明を対比すると、引用例の発明の「仕切板3」、「加熱室1」、「ヒータボックス2」、「連通孔51」、「加熱ヒータ収容空間B」、「ヒータ21」および「ファン22」は、それぞれ本願補正発明の「隔壁」、「調理室」、「ファン受容部」、「空気送風孔」、「ヒータ受容部」、「対流加熱器」および「送風ファン」に相当するから、両発明は、下記する一致点の構成で一致し、同じく相違点の構成で相違する。
〈一致点〉
「隔壁により隔離された調理室とファン受容部とを有する電子レンジにおいて、
前記隔壁から前記ファン受容部側に陥没され、前記ファン受容部と連通される少なくとも一つの空気送風孔が形成されているヒーター受容部と;
前記ヒーター受容部に受容される対流加熱器と;
前記ファン受容部に設けられて前記ファン受容部内の空気を前記空気送風孔を通じて前記対流加熱器を経て前記調理室の内部に送風する送風ファンと;を含む電子レンジ。」
〈相違点〉
A.前記ヒーター受容部について、本願補正発明は、「前記調理室方向への空気の流れに障害のない」ものであって、「∩状の断面を有し」としたものであるのに対し、引用例の発明は、「前記調理室方向への空気の流れに障害のない」構成を備えるものであるかどうか明らかではないものであって、台形状の断面を有するものである点。
B.前記空気送風孔について、本願補正発明は、「前記ヒーター受容部の前記送風ファン側の壁に形成されている」ものであるのに対して、引用例の発明は、かかる構成を備えるものであるかどうか明かではないものである点。

(5)相違点の検討

(5-1)相違点Aについて
熱風循環を行う加熱調理器において、調理室方向への空気の流れに障害のないヒーター受容部を設けることは、当業者において従来周知の技術(例えば、特開平6-281148号公報、特に図3、図4とその説明個所の記載、実願昭54-130641号(実開昭56-47403号)のマイクロフィルム参照。)であり、また、ヒーター受容部の断面形状を台形状の断面を有するものに替えて「∩状の断面を有する」ものとすることは、具体的な設計の際に当業者が適宜になし得る設計変更というべき差異にすぎない。そうすると、相違点Aに係る本願補正発明の構成は、引用例記載の発明に周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たことというべきである。

(5-2)相違点Bについて
記載事項(1a)に「仕切板の上記吸込口および吹出口の何れか一方の開口を含む部分を覆った状態で・・・輻射する反射板」と記載され、かつ、記載事項(1c)には、「ヒータ21を取り付けた反射板5を、仕切板3の吹出口としてのパンチング穴32の部分を覆い被すように取り付け」ることの記載がある以上、引用例の図1に示された中央側の傾斜壁に連通孔51を備えた反射板5のそれぞれを、パンチング穴32(吹出口)の部分を覆い被すようにした実施態様においては、連通孔51がファン22側の壁に形成されるようになることは、自然にそうなるというべき結果にすぎない。そうすると、相違点Bに係る本願補正発明の構成は、引用例1の発明から自明であるから実質的に備えた構成であるものとみることができるし、仮にそうでないとしても、当業者であれば容易になし得る設計事項であるというべきである。

そして、本願補正発明の効果は、引用例の発明及び周知の技術から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、それを超えるような顕著な効果は見出せない。

(6) むすび

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3. 本願発明について

(1) 本願の請求項1ないし3に係る発明

本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成14年10月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1ないし3に記載されたとおりの次のものである。
【請求項1】 隔壁により隔離された調理室とファン受容部とを有する電子レンジにおいて、
前記隔壁から前記ファン受容部側に陥没され、前記ファン受容部と連通される少なくとも一つの空気送風孔が形成されているヒーター受容部と;
前記ヒーター受容部に受容される対流加熱器と;
前記ファン受容部に設けられて前記ファン受容部内の空気を前記空気送風孔を通じて前記対流加熱器を経て前記調理室の内部に送風する送風ファンと;
を含み、
前記ヒーター受容部は∩状の断面を有し、前記空気送風孔は前記ヒーター受容部の前記送風ファン側の壁に形成されていることを特徴とする電子レンジ。
【請求項2】 前記隔壁の中央領域には少なくとも一つの空気吸入孔が形成されており、前記ヒーター受容部は前記空気吸入孔の周に沿って形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ。
【請求項3】 前記隔壁は前記調理室の後方壁であることを特徴とする請求項2に記載の電子レンジ。

(2)本願の請求項1に係る発明について容易想到性について

本願の請求項1に係る発明は、本願補正発明の「前記調理室方向への空気の流れに障害のないヒーター受容部」を「ヒーター受容部」とした以外は、同一の構成のものである。
そうすると、本願の請求項1に係る発明を限定して減縮した本願補正発明について、前記のとおり、その容易想到性が肯定される以上、本願の請求項1に係る発明は、本願補正発明についてと同じ引用例の発明及び周知技術に基づいて同様な理由により、その容易想到性が肯定されるものであるというべきである。

(3) まとめ

したがって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願のその余の請求項に係る発明を判断するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-03 
結審通知日 2004-08-10 
審決日 2004-08-26 
出願番号 特願2000-272146(P2000-272146)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24C)
P 1 8・ 575- Z (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 哲生  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 電子レンジ  
代理人 志賀 正武  

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