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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1109476
審判番号 不服2001-2260  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-15 
確定日 2005-01-06 
事件の表示 平成 7年特許願第162094号「釣り具」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月14日出願公開、特開平 9- 9825〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月28日の出願であって、平成13年1月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月19日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年3月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]

平成13年3月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「所定形状に成形された部材本体と、前記部材本体上であって外界に露出する領域に形成され、5μm以下の微小粒子状態の無機系抗菌物質を含む厚さ1ないし100μmの抗菌層とを具備することを特徴とする釣り具。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「抗菌物質」について「5μm以下の微小粒子状態の無機系」との限定を付加し、同じく「抗菌層」について「厚さ1ないし100μmの」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-19561号(実開平5-80264号)のCD-ROM(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
「【請求項1】 竿材(R)の外面、あるいは、内面、あるいは、竿材(R)に備えられる部材のうち少なくともいずれかに脱臭塗料(7)の塗布面を形成してある釣り竿。」(【実用新案登録請求の範囲】)、
「本考案の目的は、餌類の残留物に腐敗を生じても、悪臭を抑制できる釣り竿を合理的に構成する点にある。」(段落【0006】)
との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例1には、
「竿材(R)と、前記竿材(R)の外面に形成され、脱臭塗料(7)の塗布面とを具備する釣り竿。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-130546号(実開平2-51552号)のマイクロフィルム(以下、引用例2という。)には、図面とともに、
「本考案は、包装用資材、ラベル、建装材、その他生活資材等に使用する素材に関し、特にカビ等の発生し易い物や場所等に用いるのに好適な、抗菌性を有する素材に関する。」(第1頁第14行〜第1頁第17行)、
「従来、例えば壁紙や、シャンプーボトルあるいは台所洗剤ボトル、あるいはそのラベルなど、カビが発生し易い物に対する防カビ性を付与する方法としては、有機系抗菌剤を・・・塗布する方法が一般的であった。近年では、・・・抗菌性ゼオライトが開発され、無機系抗菌剤としての作用効果が期待されている。」(第1頁最下行〜第2頁第7行)、
「抗菌性ゼオライトは・・・、本発明者らの検討によれば、・・・、そのまま使用したのでは十分な抗菌性が得られないことが判明した。」(第2頁下から第3行〜第3頁第2行)、
「基材(1)は、・・・、あるいはこれらの積層品、さらにはプラスチックの成型品等が任意に使用できる。基材(1)の表面には、抗菌層(2)を設ける。」(第4頁第4行〜第4頁第8行)、
「無機系抗菌剤(4)とは、・・・、特開昭60-181002号公報・・・が使用できる。」(第4頁下から第6行〜第4頁下から第2行)
因みに、特開昭60-181002号公報には、抗菌性組成物の微小粒子状態が記載されている。(第5頁右欄上段最下行〜第5頁左欄下段第9行、第6頁左欄上段第5行〜第6頁右欄上段第7行、第6頁右欄上段第17行〜第6頁左欄下段第12行参照)、
「試験結果を示す。・・・基材に、版深度35μ、グラビア印刷法にて、・・・コーティングし、・・・実施例と同様の材料を用い、・・・・無機系抗菌剤のみを含むもの・・・を・・・作成した・・・。」(第5頁第12行〜第6頁第11行)
との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例2には、
「任意の形状に成形された基材(1)と、前記基材(1)上であって表面に形成され、微小粒子状態の無機系抗菌物質を含む版深度35μmのグラビア印刷法でコーティングした抗菌層とを具備する生活資材等のカビが発生し易い物。」
との発明(以下「引用例2発明」という。)が開示されていると認めることができる。

さらに、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-25012号公報(以下、引用例3という。)には、
「抗菌フィラーとして使用する際は本抗菌性組成物は粉末〜粒子状が好ましく、それの粒子径は、用途に応じて、適宜選択すればよい。厚みのある成形体・・・へ適用する場合は、数μm〜数十μmあるいは100μm以上でよく、一方細デニールの繊維やフィルターに成形する場合は粒子径はより小さい方が好ましく、例えば衣料用繊維の場合は8ミクロン以下、特に5μm以下であることが望ましい。」(第18欄第7行〜第18欄第15行)
との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例3には、
「抗菌性組成物の粒子径は、用途に応じて適宜選択し、5μm以下にすることができる。」
との発明(以下「引用例3発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「竿材(R)」、「竿材(R)の外面」および「釣り竿」は、本願補正発明の「所定形状に成形された部材本体」、「部材本体上であって外界に露出する領域」および「釣り具」に相当するから、両者は、
「所定形状に成形された部材本体と、前記部材本体上であって外界に露出する領域に形成され、悪臭対策のための層とを具備する釣り具。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
悪臭対策のための層が、本願補正発明では、「5μm以下の微小粒子状態の無機系抗菌物質を含む厚さ1ないし100μmの抗菌層」であるのに対し、引用例1発明では、脱臭塗料(7)の塗布面である点

(4)判断
物品の表面にカビ等が発生しないように物品の表面に抗菌層を設けることは引用例2に記載されているように周知であり、また、カビ等の発生を抑えれば腐敗を防止できることは明らかである。
そして、引用例1に記載された発明は、餌類の残留物の腐敗によって生じる悪臭を抑制するものであるから、引用例1に記載された発明において、悪臭対策のための層を抗菌層とすることは当業者なら容易に想到できることである。
また、一般に、抗菌物質を接着剤等を介して素材の表面に付着させて抗菌性を付与する場合、粒子径を細かくし、殺菌時の有効表面積をより大にして活性化の状態下で滅菌効果を上げることが望ましいことは周知(例えば、引用例2記載の先行技術である特開昭60-181002号公報、特開昭60-100504号公報参照)であり、引用例3発明には、抗菌性組成物の粒子径の細かさとして5μm以下のものが記載されていることから、本願補正発明のように微小粒子状態の無機系抗菌物質の粒子径を5μm以下とした点に格別の創意工夫を要したとはいえない。
さらに、抗菌層に微小粒体を混入するのに、抗菌層の厚さが薄くなるほど微小粒体を混入することが難しくなり、また厚くなるほど重量が重くなることは、例をあげるまでもなく当業者ならば容易に推考できるものであり、そして、引用例2には厚さに相当する版深度35μmとしたことが記載されていることなどを考慮すると、本願補正発明のように抗菌層の厚さを1ないし100μmとすることは、格別の臨界的意義を持つものでない。
そうすると、引用例1に記載された発明において、悪臭対策のための層を抗菌層とし、その抗菌層を5μm以下の微小粒子状態の無機系抗菌物質を含む厚さ1ないし100μmとすることは、当業者が容易にできる設計事項に過ぎない。
そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1、引用例2および引用例3に記載された発明、および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年3月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成11年3月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「所定形状に成形された部材本体と、前記部材本体上であって外界に露出する領域に形成され、抗菌物質を含む抗菌層とを具備することを特徴とする釣り具。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「抗菌物質」の限定事項である「5μm以下の微小粒子状態の無機系」との構成を省き、「抗菌層」の限定事項である「厚さ1ないし100μmの」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、引用例2、引用例3、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2、引用例3、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-02 
結審通知日 2004-11-09 
審決日 2004-11-24 
出願番号 特願平7-162094
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 林 晴男
渡戸 正義
発明の名称 釣り具  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 風間 鉄也  

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