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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1109516
異議申立番号 異議2003-72316  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-17 
確定日 2004-10-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3387396号「画像読取装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3387396号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3387396号の請求項1ないし9に係る発明についての特許出願は平成9年11月10日にされたもので、平成15年1月10日にその発明について特許の設定登録がなされた後、請求項1ないし7に係る発明の特許について特許異議の申立てがなされ、平成16年5月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月20日に訂正請求がなされ、平成16年9月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年9月24日に、平成16年7月20日付けの訂正請求が取下げられるとともに、訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2.1.訂正の内容
平成14年9月24日付けの訂正請求において、特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲を減縮する目的で「前記画像センサからの前記画像信号に所定の処理を施す第2の回路基板」を「前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板」と訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲を減縮する目的で「前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部」を「分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部」と訂正する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲を減縮する目的で「近接配置されたことを特徴とする」を「近接配置され、前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備えることを特徴とする」と訂正する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2において、特許請求の範囲を減縮する目的で「前記画像センサからの前記画像信号に所定の処理を施す第2の回路基板」を「前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板」と訂正する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2において、特許請求の範囲を減縮する目的で「前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部」を「分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部」と訂正する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2において、特許請求の範囲を減縮する目的で「直交する第1の面」を「直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面」と訂正する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4の項番号を3と訂正する。

訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5の項番号を4と訂正する。

訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6の項番号を5と訂正するとともに、「請求項5記載の」を「請求項4記載の」と訂正する。

訂正事項11
特許請求の範囲の請求項7の項番号を6と訂正するとともに、「請求項5記載の」を「請求項4記載の」と訂正する。

訂正事項12
特許請求の範囲の請求項8の項番号を7と訂正するとともに、「請求項5記載の」を「請求項4記載の」と訂正する。

訂正事項13
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

訂正事項14
上記訂正事項1ないし訂正事項13の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明細書段落0012の記載を明りょうでない記載の釈明を目的として、以下のとおり訂正する。
「【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを高周波の前記パルス信号で駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、前記金属面は、単一の面を備え、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記単一の面と平行な同一平面上に近接配置され、前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備えることを特徴とする画像読取装置を提供する。」

訂正事項15
上記訂正事項1ないし訂正事項13の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明細書段落0013の記載を明りょうでない記載の釈明を目的として、以下のとおり訂正する。
「【0013】
本発明は、上記の目的を達成するため、光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、前記金属面は、前記光学的走査の方向と直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面と、前記光学的走査の方向と平行な第2の面を備え、前記第1の回路基板は、前記第1の面に近接配置され、前記第2の回路基板は、前記第2の面に近接配置されたことを特徴とする画像読取装置を提供する。」

なお、訂正請求書の訂正事項の記載には、明らかな誤記(「直行」、訂正事項を識別するためのアルファベットh、及び訂正事項mの訂正個所を示す段落番号0013)があるので、訂正明細書の記載に基づいて、訂正事項を上記のように認定した。

2.2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1
発明を特定する事項である「第2の回路基板」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0016の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項2
発明を特定する事項である「第1の回路基板」、「第2の回路基板」、及び「接続部」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0004及び段落0016の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項3
発明を特定する事項である「光学系」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0014及び段落0015の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項4
発明を特定する事項である「第2の回路基板」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0016の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項5
発明を特定する事項である「第1の回路基板」、「第2の回路基板」、及び「接続部」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0004及び段落0016の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項6
発明を特定する事項である「第1の面」について限定するものであり、願書に添付した明細書の段落0029の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項7
特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項8ないし12
訂正事項7の請求項の削除にともない、他の請求項の記載を整合させるものであるから、訂正事項7と同様の目的であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項13
特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

訂正事項14及び15
特許請求の範囲の訂正にともない、発明の詳細な説明の記載を請求項1及び2の記載と整合させるものであるから、訂正事項1ないし6と同様の目的であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

2.3.独立特許要件について
上記のように請求項1及び2が訂正されると、異議の申し立てられていない訂正前の請求項8に対応する請求項7も、同様の訂正がされることになるので、請求項7に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか検討する。
請求項7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、4、及び7に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、それらの請求項の記載は次のとおりである。

「【請求項1】 光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、
前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを高周波の前記パルス信号で駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、
前記金属面は、単一の面を備え、
前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記単一の面と平行な同一平面上に近接配置され、
前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備えることを特徴とする画像読取装置。」

「【請求項2】 光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、
前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、
前記金属面は、前記光学的走査の方向と直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面と、前記光学的走査の方向と平行な第2の面を備え、
前記第1の回路基板は、前記第1の面に近接配置され、前記第2の回路基板は、前記第2の面に近接配置されたことを特徴とする画像読取装置。」

「【請求項4】前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記金属面との間に所定の距離を設けるように固定具によって取り付けられた構成の請求項1または2記載の画像読取装置。」

「【請求項7】前記固定具は、絶縁部材からなり、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板のグランドと前記金属面とが電気的に絶縁されている構成の請求項4記載の画像読取装置。」

平成16年5月7日付けで通知した取消理由の概要は、本件の請求項1ないし7に係る発明は、特許異議申立人が証拠として提示した甲第1号証(特開平8-214173号公報)、甲第2号証(特開平5-347685号公報)、甲第3号証(特開平8-32762号公報)、及び甲第4号証(特開平8-139871号公報)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
各甲号証には次の記載がなされている。

甲第1号証(特開平8-214173号公報)
甲第1号証には、画像処理装置に関して、以下の記載がされている。

(1)「【0009】感光ドラム24は高圧電源25から負の高圧電流を供給されているマイナス帯電器25により負に帯電させられている。続いて露光部26に達すると原稿台の透明板2上の原稿1は、照明ランプ5,6に照明され、移動反射ミラー9,10及びレンズ11を介してダイクロフィルター12に至り、ブルーフィルター13、グリーンフィルター15、レッドフィルター17により分解されて固体撮像素子(CCD)14,16,18に結像される。これらのCCDからの画像出力は、図2又は図4の画像処理回路により、各色毎にシェーディングユニット104を通り、γ補正ユニット105により、階調補正され、マスキング処理ユニット109、UCR処理ユニット119によりカラー処理され、ディザ処理ユニット124、多値化処理ユニット125により中間調再現処理され、そしてレーザドライバユニット126からレーザ21に出力され、そのレーザ光が感光ドラム24に結像される。そこで静電潜像が形成され、4色の現像器36,37,38,39に入り、現像される。ここで1回の露光スキャンで3色分解し、上記各処理を行うが、各B,G,R,BK対応のUCRの出力がB,G,R、ブラックBKのスキャン毎に順次選択される。本体制御ユニット69からのタイミング信号(各UCR出力に対応する各ゲートへのE信号)によって画像処理ユニット27における1色分解光信号を選択する。そうするとそれに対応する現像器が選択される構成になっている。そこで選択された現像器は磁気ブレード方式による粉体現像により行われ、静電潜像は顕像化される。その後静電潜像の消去する為のゴースト用豆ランプ40と、負の電圧電源25より供給されているマイナスのポスト電極41により負に帯電され静電潜像が消去される。」

(2)「【0015】以下それらに共通の部分を説明する。ダイクロフィルター12より3色に分解された原稿の光がCCD14,16,18を照射すると、その出力はカラー毎のCCD基板101,102,103で増幅されA/D変換して次のシェーディングユニット104に1画素データとして8ビットがパラレルで送られる。CCDの入射光量が同一の時(白の時)CCDの1ビットごとの出力データが等しくなるように、さらに3色用のCCD14,16,18のバラツキがなくなるよう更正するのが、シェーディングユニット104である。これはRAMと演算部の構成であり、先の8ビットデータがRAMのアドレスとなっており、そのデータでRAMをアクセスし演算部から適性出力がされる。」

甲第2号証(特開平5-347685号公報)
甲第2号証には、ディジタル画像読取装置に関して、以下の記載がされている。

(3)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 照明装置により照射された原稿画像を伝送するミラー等の複数の反射体と、この反射体から伝送される前記原稿画像を結像させるための光学レンズと、この光学レンズによって結像された画像を電気信号に変換させるイメージセンサと、このイメージセンサの駆動時に特定の周波数のクロック信号により駆動する電気基板とを備え、前記原稿画像を前記イメージセンサによって読み取るディジタル画像読取装置において、
ノイズ遮蔽用カバーが少なくとも前記電気基板を覆うようにして設けられていることを特徴とするディジタル画像読取装置。」

(4)「【0002】
【従来の技術】従来、ディジタル複写機、イメージスキャナ、ファクシミリ装置等においては、イメージセンサにより原稿の画像を読み取るディジタル読み取り装置を使用している。このディジタル読み取り装置においては、イメージセンサとして、例えばCCD(電荷結合素子)センサを使用し、原稿画像の濃淡を電気信号のレベルの高低に変換してる。
……
【0004】イメージセンサ7は電気基板8に取り付けられているとともに、この電気基板8は位置調整機構9により位置調整されてレンズ載置台10の所定の取付位置に正確に取り付けられている。したがって、イメージセンサ7は正確に位置決めされており、これにより原稿画像の正確な読取が行われ、良好な解像度MTF(Modulation Transfer Function)特性が得られるようにされている。」

(5)「【0018】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明に係るデジタル画像読取装置の一実施例を模式的に示す、図9と同様の断面図、図2はこの実施例における光学レンズおよびイメージセンサ部分の分解斜視図である。なお、前述の従来のデジタル画像読取装置の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。」

(6)「【0019】図1に示すように、ノイズ遮蔽用カバー13が、位置調整機構9、イメージセンサ7および電気基板8を覆うようにして、かつフレアー光遮蔽用カバー11内でマシンMの本体12に設けられている。その場合、ノイズ遮蔽用カバー13は、位置調整機構9、イメージセンサ7および電気基板8に対して3mm以下の隙間を有するように非接触で設けられており、ノイズ遮蔽用カバー13の取付部が振動し、結果的にノイズ遮蔽用カバー13が振動しても、ノイズ遮蔽用カバー13が、位置調整機構9、イメージセンサ7および電気基板8に接触せず、振動が伝達されないようにしている。」

(7)「【0022】図2に示すように、ノイズ遮蔽用カバー13は金属部材または樹脂等の非導電材料の表面に導電性加工を施した部材から形成され、L字状の遮蔽部13aと、この遮蔽部13aの両側端に設けられた側壁13bと、遮蔽部13aに連続して形成された取付部13cとから構成されている。また、ノイズ遮蔽用カバー13の板厚は1mm以下に設定されており、これによりコスト/重量的に有利なものとなっている。」

(8)「【0027】このように構成された本実施例のディジタル画像読取装置においては、電気基板8から発生するイメージセンサ7の駆動クロックの周波数の整数倍の電波ノイスがノイズ遮蔽カバー13により遮蔽されて、ノイズ遮蔽カバー13の外へ漏れるのが抑制される。また、ノイズ遮蔽カバー13の先端と位置調整機構9との間の隙間から電波ノイズが漏れようとするが、この電波ノイズはこの隙間にある挿入部材14および本体12を通ってグランドに流れるので、電波ノイズは効果的に遮蔽される。」

甲第3号証(特開平8-32762号公報)
甲第3号証には、光学系のノイズ遮蔽構造に関して、以下の記載がされている。

(9)「【0017】図2において、1は図示しない原稿を載置するためのプラテンガラスであり、このプラテンガラス1上に載置された図示しない原稿の画像は、光源2によって照明される。そして、上記原稿からの反射光像は、複数枚のミラー3〜5及び結像レンズ6を介してCCDセンサー7に走査露光され、このCCDセンサー7に1って読み取られて電気信号に変換される。上記CCDセンサー7は、コントロール回路が設けられたCCDコントロールボード8によって駆動され、画像の読取りが行われる。また、上記CCDコントロールボード8は、リード線を複数本束ねたハーネス9を介して他の画像処理回路等を備えた基板10に接続されており、この他の画像処理回路等を備えた基板10では、CCDセンサー7によって読み取られた画像データに所定の画像処理等を施すようになっている。
【0018】ところで、上記CCDセンサー7は、高周波のパルス信号によって駆動される電子部品であるため、原稿の画像を読み取る際にCCDセンサー7からは、高周波のノイズが発射される。この画像読取装置を構成するCCDセンサー7から発射されるノイズは、外部に漏れると、デジタル複写機のコントロールボードや他の機器のコントロールボード等に悪影響を及ぼし、誤動作の原因となる。
【0019】そのため、上記CCDセンサー7及び結像レンズ6は、金属製の薄板からなる偏平な直方体状のシールドケース11によって覆われており、このシールドケース11によってCCDセンサー7から発生する電波ノイズが外部に漏れるのを防止するようになっている。また、上記シールドケース11には、CCDセンサー7に原稿の画像を走査露光するための開口部12が設けられており、この開口部12を介して原稿の画像がCCDセンサー7に走査露光されるようになっている。上記シールドケース11の開口部12は、例えば、開口幅lが150mm、高さhが30mmの矩形状に形成される。」

甲第4号証(特開平8-139871号公報)
甲第4号証には、画像読取装置に関して、以下の記載がされている。

(10)「【0012】上記のように構成すると、CCD16と回路基板29の間の距離は放熱部材27のみの寸法で決まるので、この寸法精度をおさえておけばCCD16のリードが回路基板29に実装されたソケット29-aに確実に差し込まれ、接触不良の心配はない。また回路基板29は放熱部材27の基板取付部27-bの接触する部分にアースどり用のアースパターンを設けることにより、放熱部材27と放熱部材27に接触するフタ28および保持部材25をアースに落とすことができる。」

本件の請求項1に係る発明は、「前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを高周波の前記パルス信号で駆動する駆動回路を有する第1の回路基板」と「前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板」とが「分離された」ものであり、「前記金属面は、単一の面を備え、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記単一の面と平行な同一平面上に近接配置され」とするために「前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備える」ものであるのに対して、上記各甲号証にはこれらの事項について、記載も示唆もない。そして、本件の請求項1に係る発明は、これらの事項により明細書に記載された効果を有するものであるから、上記各甲号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件の請求項2に係る発明は、「前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板」と「前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板」とが「分離された」ものであり、「前記金属面は、前記光学的走査の方向と直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面と、前記光学的走査の方向と平行な第2の面を備え、前記第1の回路基板は、前記第1の面に近接配置され、前記第2の回路基板は、前記第2の面に近接配置された」ものであるのに対して、上記各甲号証にはこれらの事項について、記載も示唆もない。そして、本件の請求項2に係る発明は、これらの事項により明細書に記載された効果を有するものであるから、上記各甲号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項1または2を引用する請求項4、及び請求項4を引用する請求項7も、上記各甲号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、平成16年9月10日付けで通知された取消理由は、本件の明細書の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないというものであるが、上記訂正により解消するものである。
さらに、他に、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、4、及び7に係る発明が特許を受けることができない理由を発見しない。
以上のとおりであるから、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

2.4.むすび
上述のように、上記訂正は、特許法の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3.1.申立の理由の概要
特許異議申立人は、特許第3387396号の請求項1ないし7に係る発明の特許に対して、証拠として、甲第1号証(特開平8-214173号公報)、甲第2号証(特開平5-347685号公報)、甲第3号証(特開平8-32762号公報)、及び甲第4号証(特開平8-139871号公報)、を提示し、本件の請求項1ないし7に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

3.2.判断
3.2.1.請求項1、2、及び4に係る発明について
上記2.3.独立特許要件についてのとおりであるから、各甲号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

3.2.2.請求項3、5、及び6に係る発明について
請求項3、5、及び6の記載は次のとおりである。

「【請求項3】前記接続部は、フレキシブルケーブルである構成の請求項1または2記載の画像読取装置。」

「【請求項5】前記所定の距離は、20mm以下とする構成の請求項4記載の画像読取装置。」

「【請求項6】前記固定具は、金属からなり、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板のグランドと前記金属面とが電気的に接続されている構成の請求項4記載の画像読取装置。」

上記のように請求項3、5、及び6はいずれも請求項1、2、または4を引用するものであるから、各甲号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

4,むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像読み取り装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、
前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを高周波の前記パルス信号で駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、
前記金属面は、単一の面を備え、
前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記単一の面と平行な同一平面上に近接配置され、
前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】 光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、
前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、
前記金属面は、前記光学的走査の方向と直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面と、前記光学的走査の方向と平行な第2の面を備え、
前記第1の回路基板は、前記第1の面に近接配置され、前記第2の回路基板は、前記第2の面に近接配置されたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】 前記接続部は、フレキシブルケーブルである構成の請求項1または2記載の画像読取装置。
【請求項4】 前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記金属面との間に所定の距離を設けるように固定具によって取り付けられた構成の請求項1または2記載の画像読取装置。
【請求項5】 前記所定の距離は、20mm以下とする構成の請求項4記載の画像読取装置。
【請求項6】 前記固定具は、金属からなり、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板のグランドと前記金属面とが電気的に接続されている構成の請求項4記載の画像読取装置。
【請求項7】 前記固定具は、絶縁部材からなり、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板のグランドと前記金属面とが電気的に絶縁されている構成の請求項4記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波のパルス信号で駆動される画像センサを備えた複写機、ファクシミリ、スキャナ等の画像読取装置に関し、特に、電磁波ノイズの漏洩の低減を図った画像読取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来の画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図7(a)に示すように、上部に透明の原稿載置台1を備えた金属からなる箱型状の装置本体2を有し、この装置本体2内に、光を発生する光源3と、光源3で発生した光を原稿載置台1上の原稿Pに照射するリフレクタ4と、原稿Pで散乱した光がミラー5A、5B,5Cおよびレンズ6を介して結像される画像センサ7とを配置している。画像センサ7は、例えば、1次元CCD等の固体撮像素子が用いられ、1次元に並んだセンサ画素上の情報を順次読み出すために、高周波のクロックパルス信号を印加して駆動される。
【0003】
画像センサ7は、画像センサ7を駆動する第1の回路基板8A上に設けられ、第1の回路基板8Aは、図示しない支持部材によって装置本体2に取り付けられている。装置本体2の底部2aには、第1の回路基板8Aからの信号に所定の処理を施す第2の回路基板8Bが導電性を有する固定具9によって取り付けられ、第1の回路基板8Aと第2の回路基板8Bとは、互いに直交するように配置され、両者は接続ケーブル10によって接続されている。
【0004】
上記構成の画像読取装置において、光源3、リフレクタ4およびミラー5A、5B,5Cを図7(a)中破線で示すように走査方向Xに移動させることにより原稿Pから2次元画像を読み取ることができる。また、画像センサ7を駆動する駆動回路と画像センサ7から得られた信号を処理する処理回路とは、それぞれ第1の回路基板8Aと第2の回路基板8Bに分離されて搭載されているので、装置の小型化や光学系の単純化等が図れ、画像センサ7の位置調整が容易となる。
【0005】
図7(b)は、図7(a)に示す画像読取装置における電磁波ノイズの発生状態を示す。画像センサを備えた画像読取装置においては、画像センサが高周波のパルス信号で駆動されるため、画像センサ周辺の回路から不要な電磁波ノイズが発生することが知られている。図7(a)に示す構造の場合、第1の回路基板8Aが金属の装置本体2から離れて取り付けられているため、図7(b)に示すように、第1の回路基板8Aおよび接続ケーブル10上のノイズ電流が、空間を介して周囲の金属の装置本体2や第2の回路基板8Bに結合してノイズ電流ループ11A,11Bが流れ、これらのノイズ電流ループ11A,11Bや接続ケーブル10上に発生する定在波電流12が主なノイズ放射源となる。
【0006】
このような電磁波ノイズに対処してなされた従来の画像読取装置としては、例えば、特開平4-282955号公報、特開平8-32762号公報、特開平9-149218号公報に示されるものがある。
【0007】
特開平4-282955号公報に示された画像読取装置は、透明の原稿載置台の表面に透明導電材料をコーティングしたものである。これにより、画像センサ、駆動回路およびセンサ出力処理回路等からなる走行体から発生する不要電波が漏洩するのを防ぐことができる。
【0008】
特開平8-32762号公報に示された画像読取装置は、画像センサを含む光学系をシールドケースで覆い、そのシールドケースに光学系の光路を確保するための開口部を設け、その開口部に筒状構成部を突設し、開口部の幅をノイズの遮断必要最高周波数の波長の1/2以下とし、筒状構成部の長さをノイズの遮断必要最高周波数の波長の1/8以上としたものである。これにより、筒状構成部が一種のハイパスフィルタの働きをして高周波の電磁波ノイズの遮断必要最高周波数以下の電波が開口部から漏れるのを防止することができる。
【0009】
特開平9-149218号公報に示された画像読取装置は、画像センサを含む光学系をシールドケースで覆い、そのシールドケースに光学系の光路を確保するための開口部を設け、その開口部に電磁放射スクリーンを設けたものである。これにより、開口部を通って電磁放射が漏出するのを減少もしくは防止することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平4-282955号公報に示された従来の画像読取装置によると、原稿載置台上の原稿から画像を読み取るためには、原稿載置台は透明性を有することが必須であり、完全なシールドが困難であるため、電磁波ノイズを漏洩しないようにすることができない。また、特開平8-32762号公報および特開平9-149218号公報に示された従来の画像読取装置によると、画像センサを含む光学系をシールドケースで覆ったとしても、光学系の光路を確保することは必須であり、完全なシールドは困難であるため、電磁波ノイズを漏洩しないようにすることができない。
【0011】
従って、本発明は、電磁波ノイズの漏洩の低減を図った画像読取装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを高周波の前記パルス信号で駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、前記金属面は、単一の面を備え、前記第1の回路基板および前記第2の回路基板は、前記単一の面と平行な同一平面上に近接配置され、前記光学系は、前記画像光を前記光学的走査の方向と直交する方向に屈折させる屈折部材を備えることを特徴とする画像読取装置を提供する。
【0013】
本発明は、上記の目的を達成するため、光学的走査によって得られた画像光を光学系を介して入力し、前記画像光を画像信号に変換して出力する画像センサと、前記画像センサを搭載するとともに、画像センサを高周波のパルス信号で駆動し、前記画像センサから出力された前記画像信号を処理する回路基板と、前記回路基板に近接配置され、前記画像センサの駆動および前記画像信号の処理に伴って前記回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流が流れる金属面を備え、前記回路基板は、前記画像センサを搭載するとともに、前記画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と、前記画像センサからの前記画像信号をアナログ/ディジタル変換した信号を補正する処理を含む所定の処理を前記画像信号に施す第2の回路基板と、分離された前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを接続する接続部を備え、前記金属面は、前記光学的走査の方向と直交しかつ装置本体に設けられた縦仕切り部で形成される第1の面と、前記光学的走査の方向と平行な第2の面を備え、前記第1の回路基板は、前記第1の面に近接配置され、前記第2の回路基板は、前記第2の面に近接配置されたことを特徴とする画像読取装置を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図1(a)に示すように、上部に透明の原稿載置台1を備えた金属からなる箱型状の装置本体2を有し、この装置本体2内に、光を発生する光源3と、光源3で発生した光を原稿載置台1上の原稿Pに照射するリフレクタ4と、原稿Pで散乱した光をレンズ6に導くミラー5A,5B,5Cと、レンズ6を通過した光を走査方向Xと直交する方向の90°下方へ反射するミラー5Dと、ミラー5Dで反射した光が結像される画像センサ7とを配置している。画像センサ7は、例えば、1次元CCD等の固体撮像素子が用いられ、1次元に並んだセンサ画素上の情報を順次読み出すために、高周波のクロックパルス信号を印加して駆動される。
【0015】
ミラー5Dは、光路を90度、あるいは90度近傍の角度だけ屈折させるものであればなんでもよいが、代表的には平面ミラーあるいは平面プリズムが用いられる。更には、レンズ6の集光作用の一部または全部をミラー5Dに持たせた非平面ミラーあるいは非平面プリズムを用いることもできる。また、ミラー5Dの挿入位置は、図1に示すように画像センサ7とレンズ6との間が最もよいが、レンズ6の前でもよい。すなわち、ミラー5Dと画像センサ7との間にレンズ6を配置してもよい。なお、ミラー5A,5B,5Cは移動式であるのに対し、ミラー5Dは少なくとも使用時には固定されているものである。
【0016】
装置本体2の底部2aには、画像センサ7を搭載するとともに、画像センサ7を駆動する第1の回路基板8Aと、第1の回路基板8Aからの信号に所定の処理を施す第2の回路基板8Bとが導電性を有する固定具9によって取り付けられている。第1の回路基板8Aと第2の回路基板8Bとは、底部2aの内面と平行かつ同一平面上に配置され、両者はフレキシブルケーブル11によって接続されている。第1の回路基板8Aには、画像センサ7を駆動する駆動回路が搭載され、第2の回路基板8Bには、画像センサ7からの信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路の出力信号をA/D変換するAD変換器と、AD変換器の出力信号を補正する補正回路とが搭載されている。なお、用途に応じては、第1の回路基板8Aに駆動回路の他に上記増幅回路および上記AD変換器を搭載し、第2の回路基板8Bに上記補正回路を搭載してもよい。
【0017】
固定具9は、装置本体2の底部2aと第1および第2の回路基板8A,8Bとの間に所定の距離Gを設けるためのものであり、この距離Gは、小さいほど放射ノイズの抑制効果が大きく、距離が1/2になると6dBの放射減少が期待される。従って、距離Gは、望ましくは20mm以下、更に望ましくは5mm以下(0mm含む)とすることにより、放射ノイズの抑制効果を増大させることができる。また、固定具9は、柱状でも、シート状でもよい。金属の固定具9を用いて、回路基板8A,8Bのグランドと金属の装置本体2とを電気的に接続することが好ましい。これにより、回路基板8A,8Bのグランド面の電位を安定化させることができる。また、固定具9は、一部または全部を絶縁性にするか、あるいは接続パターンを分離する等の方法で、回路基板8A,8Bのグランドと装置本体2の底部2aとを電気的に分離するか、抵抗やコンデンサ等の特定の回路素子を介して接続する等の方法を採ることができる。これにより、回路基板8A,8Bのグランドのノイズが大きい場合にノイズが装置本体2の底部2aに伝播して放射されるのを防ぐことができる。
【0018】
また、第1の回路基板8Aの固定具9は、画像センサ7の光学位置調整ができるように、第1の回路基板8Aの3次元的な微小移動を許容する機構を有している。また、フレキシブルケーブル11も第1の回路基板8Aの位置調整に対応できる柔軟性を有している。なお、第1の回路基板8Aを位置調整せずに、ミラー5Dおよびレンズ6等の光学素子の位置調整によって、調整要素の一部または全部を代用してもよい。
【0019】
次に、上記構成の効果を図1(b)を参照して説明する。
【0020】
図1(b)は、この画像読取装置における電磁波ノイズの発生状態を示す。
(イ)第2の回路基板8Bはもとより、第1の回路基板8Aおよびフレキシブルケーブル11に近接して金属の装置本体2の底部2aが設けられているため、図1(b)に示すように、回路基板8A,8Bを流れるノイズ電流12に対応する鏡像電流13が装置本体2の底部2aの内面上を流れ、ノイズ電流12が相殺されて放射ノイズが減少する。
(ロ)ミラー5Dの作用によって第1の回路基板8Aと第2の回路基板8Bが直交しなくなるため、基板8A,8B間で図7(b)に示したようなノイズ電流ループ11A,11Bが発生せず、従ってノイズ電流が流れる空間の体積が、従来より大幅に減少するため、ノイズ放射が減少する。
(ハ)第1の回路基板8A、第2の回路基板8Bおよびフレキシブルケーブル11が一体の回路基板からなるため、従来よりフレキシブルケーブル11の長さが短く、かつ、従来接続ケーブルのコネクタなどで発生していたグランドの接続不良やインピーダンスの不連続が発生し難くなる。このため、これらに起因する定在波の発生や放射ノイズの発生を抑制できる。
上記(イ),(ロ),(ハ)により、装置本体2から漏洩する電磁波ノイズを大幅に低減することができる。
(ニ)ミラー5Dの挿入位置を画像センサ7とレンズ6との間にしているので、装置の薄型化が図れる。
【0021】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図1に示す第1の実施の形態の第1の回路基板8A、第2の回路基板8Bおよびフレキシブルケーブル11を一体の回路基板18として形成したものであり、他は第1の実施の形態と同様に構成されている。画像センサ7の位置調整は、回路基板18全体を移動させて行う。一体の回路基板18は、非破壊的に分離できない回路基板を意味し、同一の構造体からなる一体基板の他、層数や基板材料の材質が部分的に異なる回路基板、リジッド部とフレキシブル部が混在したリジッドフレキシブル回路基板、分離された複数の回路部を接着や半田付け等により一体化した回路基板を含む。
【0022】
この第2の実施の形態によれば、画像センサ7の光学位置調整時に動かすべき基板18の大きさが大きくなるものの、回路基板間を接続する接続部を完全に除去できるので接続部に起因する放射ノイズを更に低減できる。
【0023】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図1に示す第1の実施の形態のフレキシブルケーブル11の代わりに接続ケーブル10を用いたものであり、他は第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0024】
この第3の実施の形態によれば、回路基板8A,8B間の接続部が第1の実施の形態より長くなるため、接続部からの放射ノイズの低減効果は減少するものの、製造コストを抑えることができる。また、この装置は、回路系からのノイズ放射を元から大幅に減少させるものであるが、シールドを併用してノイズ放射を更に減少させてもよい。シールドを用いる場合でも、本構成により回路系のノイズ放射が元々少ないので、安価なシールド系で済み、他のノイズ低減部品を削減できる等の効果を有する。
【0025】
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、第1の実施の形態のミラー5D、レンズ6、第1の回路基板8A、第2の回路基板8B、固定具9およびフレキシブルケーブル11を光透過部14aを有するシールドケース14を用いて覆ったもので、他は第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0026】
この第4の実施の形態によれば、電磁波ノイズの漏れをより低減することができる。
【0027】
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図5(a)に示すように、装置本体2に光透過部2bを有する仕切り部2bを設け、底部2aと仕切り部2cとの間に画像センサ7を備えた第1の回路基板8A、および第2の回路基板8Bを配置し、第1および第2の回路基板8A,8Bを固定具9によって仕切り部2cに取り付けたもので、他は第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0028】
この第5の実施の形態によれば、図5(b)に示すように、回路基板8A,8Bを流れるノイズ電流12に対応する鏡像電流13が仕切り部2cの下側の面上を流れてノイズ電流12を相殺するので、放射ノイズが低減される。また、光学系と回路系を仕切り部2b介して分離されているので、ミラー5Dやレンズ6の固定が容易になる。また、図4に示すようなシールドケース14より構造が単純であるため、製造コストが安く、また、光透過部2bの面積を小さくできるので放射漏れが少なくなり、さらに、装置の薄型化が可能である等の効果を有する。
【0029】
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る画像読取装置を示す。この画像読取装置は、図6(a)に示すように、図7(a)に示す従来の構成と同様に、ミラー5Dを設けず、第1の回路基板8Aを第2の回路基板8Bと直交する方向に配置し、第1の回路基板8Aに近接して装置本体2に縦仕切り部2dを設け、第1の回路基板8Aを固定具9によって縦仕切り部2dに取り付けたもので、他は第3の実施の形態と同様に構成されている。
【0030】
この第6の実施の形態によれば、図6(b)に示すように、回路基板8A,8Bをそれぞれ流れるノイズ電流12に対応する鏡像電流13が縦仕切り部2dの右側の面上と底部2aの内面上をそれぞれ流れてノイズ電流12を相殺するので、放射ノイズが低減される。また、ミラー5Dが不要になるので、コスト低減を図れる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々な変形例が可能である。例えば、金属面は、上記実施の形態では、平坦な面として説明したが、凹凸を有する面でもよく、非金属の部材の表面あるいは内部に線状,面状等の導体を部分的に設けたものでもよい。
【0032】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、画像センサを駆動する駆動回路を有する第1の回路基板と画像センサからの画像信号に所定の処理を施す第2の回路基板に金属面を近接配置して第1および第2の回路基板に沿って発生するノイズ電流を相殺する鏡像電流を金属面に流すようにし、放射ノイズの発生を元から防止するようにしたので、従来より電磁波ノイズの漏洩の少ない画像読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置の構成図、(b)は電磁波ノイズの発生状態を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る画像読取装置に構成図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置の構成図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る画像読取装置の構成図である。
【図5】(a)は本発明の第5の実施の形態に係る画像読取装置の構成図、(b)は電磁波ノイズの発生状態を示す図である。
【図6】(a)は本発明の第6の実施の形態に係る画像読取装置の構成図、(b)は電磁波ノイズの発生状態を示す図である。
【図7】(a)は従来の画像読取装置の構成図、(b)は電磁波ノイズの発生状態を示す図である。
【符号の説明】
1 原稿載置台
2 装置本体
2a 底部
2b 光透過部
2c 仕切り部
2d 縦仕切り部
3 光源
4 リフレクタ
5A,5B,5C,5D ミラー
6 レンズ
7 画像センサ
8A 第1の回路基板
8B 第2の回路基板
9 固定具
10 接続ケーブル
11 フレキシブルケーブル
14 シールドケース
14a 光透過部
18 回路基板
G 距離
P 原稿
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-27 
出願番号 特願平9-307588
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H04N)
最終処分 維持  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
井上 信一
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3387396号(P3387396)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 画像読取装置  
代理人 片山 修平  
代理人 片山 修平  

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