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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1109577
異議申立番号 異議2003-72310  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-17 
確定日 2004-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3387204号「偏光板、偏光板の製造方法および液晶表示装置」の請求項1ないし23に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3387204号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3387204号の請求項1乃至23に係る発明についての出願は、平成6年4月15日(優先権主張 平成5年4月15日、平成5年4月23日、平成5年4月27日、平成5年5月24日、平成5年6月11日)に特許出願され、平成15年1月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人・中山省二及び異議申立人・宍戸孝雄より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月17日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「この偏光層の両表面に形成された支持層」とあるのを、「この偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層」と訂正する。
同請求項1について、「この偏光基板を構成する一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層」とあるのを、「この偏光基板を構成する一方の支持層の表面にアクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いて形成されたアンダーコート層」と訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10(訂正請求書には「請求項9」と記載されるが、これは「請求項10」の誤記)について、
「請求項1において、
前記式(1)中、
R1はフッ素を含む、炭素数1〜20のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
Xはハロゲン基,水酸基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の反応性基であることを特徴とする偏光板。」
とあるのを、
「偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板と、この偏光基板を構成する一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層と、このアンダーコート層側の最も外側に位置し、含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層と、を含み、
前記アンダーコート層は、JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであり、
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)で示される、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリブロモシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリヒドロキシシラン、パーフルオロヘプタデシルトリメトキシシラン、パーフルオロオクタデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルメチルジクロロシランおよび3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランから選択される少なくとも一種であり、
当該含フッ素シラン化合物を用いて形成された前記汚染防止層は、水の接触角が70度以上となる撥水性を有していることを特徴とする偏光板。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
前記式(1)中、
R1はフッ素を含む、炭素数1〜20のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
Xはハロゲン基,水酸基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。」
と訂正する。
オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13について、「この偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層」と訂正する。
同請求項13について、「JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程」とあるのを、「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてJIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程」と訂正する。
カ.訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15について、「この偏光層の両表面に形成された支持層」とあるのを、「この偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層」と訂正する。
同請求項15について、「アンダーコート層を形成する工程」とあるのを、「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてアンダーコート層を形成する工程」と訂正する。
キ.訂正事項7
特許請求の範囲の請求項18について、「この偏光層の両表面に形成された支持層」とあるのを、「この偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層」と訂正する。
同請求項18について、「JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程」とあるのを、「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてJIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程」と訂正する。
ク.訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8及び11の削除に伴い、請求項の番号を繰り上げ、かつ、引用する請求項の番号が整合するように当該番号を訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、第1に、偏光基板を構成する支持層について「セルロース系の膜からなる」ことを限定しようとするものであり、特許明細書の段落0044に記載されている。
訂正事項1は、第2に、アンダーコート層について、「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いて」いることを限定しようとするものであり、特許明細書の段落0026に記載され、かつ、特許明細書の特許請求の範囲の請求項8で特定されている内容である。
この訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2は特許請求の範囲の請求項8を削除するものであり、また、訂正事項3は特許請求の範囲の請求項11を削除するものであり、これらの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項4は、第1に、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,10及び11の内容を合わせ、第2に、「汚染防止層は、水の接触角が70度以上となる撥水性を有している」ことを限定したものである。この第2の事項は、特許明細書の段落0011に記載されている。この訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項5,6,7は、訂正事項1と同様の内容であり、これらの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項8は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項8,11の削除に伴い、請求項の番号の整合をとったものである。この訂正は特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項1乃至8はいずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116条による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1乃至21に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1乃至21」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載された事項に特定されるとおりのものである。(上記2.(1)訂正の内容参照。)

(2)異議申立人提出の証拠に記載された発明/平成16年3月5日付けの取消理由で引用された刊行物に記載された発明
刊行物1;実願昭57-140751号(実開昭59-43910号)のマイクロフィルム(異議申立人・中山省二が引用した甲第1号証の1、異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第3号証)
刊行物2;実願平1-11028号(実開平2-102502号)のマイクロフィルム(異議申立人・中山省二が引用した甲第1号証の2)
刊行物3;特開昭64-1527号公報(同甲第1号証の3)
刊行物4;特開昭63-298201号公報(異議申立人・中山省二が引用した甲第2号証、異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第4号証)
刊行物5;特開平2-197801号公報(異議申立人・中山省二が引用した甲第3号証、異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第6号証)
刊行物6;特開昭63-276540号公報(異議申立人・中山省二が引用した甲第4号証、異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第7号証)
刊行物7;特開昭61-17178号公報(異議申立人・中山省二が引用した甲第5号証、異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第8号証)
刊行物8;特開昭59-116601号公報(異議申立人・宍戸孝雄が引用した甲第1号証)
刊行物9;特開平3-266801号公報(同甲第2号証)
刊行物10;特開昭61-241143号公報(同甲第5号証)
刊行物11;特開昭61-209152号公報(同甲第9号証)
刊行物12;特開平4-72055号公報(同甲第11号証)

(3)対比・判断
[本件発明1について]
本件発明1と上記刊行物1乃至12に記載の発明とを比較検討する。
本件発明1は、偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層と、式(1)で示される含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層との間に、「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いて形成されたJIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層」を設けることにより、前記支持層とアンダーコート層との間及びアンダーコートと前記汚染防止層との間に高い密着力を確保することができる効果を奏するものである。
これに対して、刊行物1乃至12のいずれにも、偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層と、前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層との間に、アンダーコート層を設けること、更には「アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いて形成されたアンダーコート層」を設けることを示す記載、ないしはそれらのことを示唆する記載は何等ない。
したがって、本件発明1は、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明2について]
本件発明2と刊行物1乃至12に記載の発明とを比較検討する。
刊行物1乃至12のいずれにも、偏光層の両表面に形成された支持層と、本件発明2で規定する式(1)で示される含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層との間に、アンダーコート層を設けること、更に、「Xがアミノ基およびこの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基」である本件発明2で規定する前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を用いることを示す記載、ないしはそれらのことを示唆する記載は何等ない。
特に、刊行物5において、硬化性有機けい素化合物が請求項5の単位式である場合の「NH基」は窒素で二重結合するイミノ基であるから、本件発明2で規定する「Xがアミノ基」に該当しないことは明白である。
したがって、本件発明2は、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明3乃至8について]
本件発明3乃至8はいずれも、本件発明1または2を引用する発明であるから、[本件発明1について]、[本件発明2について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明9について]
刊行物1乃至12のいずれにも、偏光層の両表面に形成された支持層と、含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層との間に、JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を設けること、更に、前記含フッ素シラン化合物が、「1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリブロモシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリヒドロキシシラン、パーフルオロヘプタデシルトリメトキシシラン、パーフルオロオクタデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルメチルジクロロシランおよび3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランから選択される少なくとも一種」であることを示す記載、ないしはそれらのことを示唆する記載は何等ない。
特に、刊行物3或いは10には、含フッ素シラン化合物として上記の各化合物を使用する旨の記載は何等ない。
したがって、本件発明9は、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明10について]
本件発明10は、本件発明1、2または9を引用する発明であるから、[本件発明1について]、[本件発明2について]、[本件発明9について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明11について]
本件発明11は、アンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程を含む以外は本件発明1と同じような特徴を有する発明であるから、[本件発明1について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明12について]
本件発明12は、アンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程を含む以外は本件発明2と同じような特徴を有する発明であるから、[本件発明2について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明13について]
本件発明13は、アンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程を含む以外は本件発明1と同じような特徴を有する発明であるから、[本件発明1について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明14,15について]
本件発明14,15は、本件発明11乃至13を引用する発明であるから、[本件発明11について]、[本件発明12について]、[本件発明13について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明16について]
本件発明16は、アンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程を含む以外は本件発明1と同じような特徴を有する発明であるから、[本件発明1について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明17について]
本件発明17は、本件発明16を引用する発明であるから、[本件発明16について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明18,19について]
本件発明18,19は、本件発明11乃至17を引用する発明であるから、[本件発明11について]乃至[本件発明17について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明20について]
本件発明20は、本件発明19を引用する発明であるから、[本件発明18,19について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

[本件発明21について]
本件発明21は、本件発明1乃至10を引用する発明であるから、[本件発明1について]、[本件発明2について]、[本件発明3乃至8について]、[本件発明9について]、[本件発明10について]の項で述べた理由と同様の理由により、刊行物1乃至12に記載の各発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由、その証拠及び平成16年3月5日付けの取消理由、その証拠によっては、本件発明1乃至21についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1乃至21についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偏光板、偏光板の製造方法および液晶表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層を有する偏光基板と、
この偏光基板を構成する一方の支持層の表面にアクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いて形成されたアンダーコート層と、
このアンダーコート層側の最も外側に位置し、含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層と、を含み、
前記アンダーコート層は、JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであり、
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物、この化合物単位を有するオリゴマーおよびポリマーの少なくとも一種からなることを特徴とする偏光板。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはハロゲン基,水酸基,アミノ基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項2】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板と、
この偏光基板を構成する一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層と、
このアンダーコート層側の最も外側に位置し、含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層と、を含み、
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物、この化合物単位を有するオリゴマーおよびポリマーの少なくとも一種からなることを特徴とする偏光板。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはアミノ基およびこの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項3】 請求項1または2において、
前記アンダーコート層は、JIS Z 8741に基づく鏡面光沢度が10〜40であり、かつJIS K 6900に基づく曇度が5〜30%であることを特徴とする偏光板。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記アンダーコート層と前記汚染防止層との間に反射防止層が形成されたことを特徴とする偏光板。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記偏光板は、さらに、前記支持層と前記アンダーコート層との間に樹脂フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記アンダーコート層には、平均粒子径が0.5〜5μmの硬質粒子が分散されていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】 請求項6において、
前記アンダーコート層に分散される硬質粒子は、シリカ、チタニア、アルミナおよびジルコニアから選択される少なくとも一種であることを特徴とする偏光板。
【請求項8】 請求項2において、
前記式(1)で示される前記含フッ素シラン化合物は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリアミノシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルジメチルアミノシラン、ビス(1H,1H-パーフルオロブチル)ジアミノシラン、ビス(パーフルオロノニル)ジアミノシラン、パーフルオロヘキサデシルトリアミノシラン、パーフルオロヘプタデシルトリアミノシラン、パーフルオロオクタデシルトリアミノシランおよびビス(パーフルオロノニル)ブチルアミノシランから選択される少なくとも一種であることを特徴とする偏光板。
【請求項9】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板と、
この偏光基板を構成する一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層と、
このアンダーコート層側の最も外側に位置し、含フッ素シラン化合物を用いて形成された汚染防止層と、を含み、
前記アンダーコート層は、JIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであり、
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)で示される、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリブロモシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリヒドロキシシラン、パーフルオロヘプタデシルトリメトキシシラン、パーフルオロオクタデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルメチルジクロロシランおよび3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランから選択される少なくとも一種であり、
当該含フッ素シラン化合物を用いて形成された前記汚染防止層は、水の接触角が70度以上となる撥水性を有していることを特徴とする偏光板。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
前記式(1)中、
R1はフッ素を含む、炭素数1〜20のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基および置換アルコキシ基から選択される少なくとも一種、
Xはハロゲン基,水酸基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項10】 請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記汚染防止層は、屈折率nおよび層の厚みdが次の関係を有することを特徴とする偏光板。
nd<0.1μm
1.25<n<1.45
【請求項11】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面に、アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてJIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程と、
このアンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程と、
この反射防止層の表面に含フッ素シラン化合物を用いて汚染防止層を形成する工程と、を含み、
前記汚染防止層は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含む塗布液を前記反射防止層の表面に塗布して硬化させ、さらに未反応の含フッ素シラン化合物を溶媒洗浄によって除去することにより形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはハロゲン基,水酸基,アミノ基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項12】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面にアンダーコート層を形成する工程と、
このアンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程と、
この反射防止層の表面に含フッ素シラン化合物を用いて汚染防止層を形成する工程と、を含み、
前記汚染防止層は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含む塗布液を前記反射防止層の表面に塗布して硬化させ、さらに未反応の含フッ素シラン化合物を溶媒洗浄によって除去することにより形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはアミノ基およびこの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項13】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面にアクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてアンダーコート層を形成する工程と、
このアンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程と、
この反射防止層の表面に含フッ素シラン化合物を用いて汚染防止層を形成する工程と、を含み、
前記アンダーコート層を形成する工程は、樹脂溶液を含む塗布液を前記偏光基板の表面に塗布して乾燥させ、この塗膜の表面に微細な凹凸を形成した後に前記塗膜を硬化させる工程からなることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項14】 請求項11または12において、
前記アンダーコート層を形成する工程は、樹脂溶液に平均粒子径が0.5〜5μmの硬質粒子を分散させた塗布液を調整し、この塗布液を前記偏光基板の表面に塗布して硬化させ、前記硬質粒子が1〜50重量%の割合で含有される塗膜を形成する工程からなることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項15】 請求項13において、
前記汚染防止層は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含む塗布液を前記反射防止層の表面に塗布して硬化させ、さらに未反応の含フッ素シラン化合物を溶媒洗浄によって除去することにより形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはハロゲン基,水酸基,アミノ基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項16】 偏光層およびこの偏光層の両表面に形成されたセルロース系の膜からなる支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面に、アクリル系樹脂又はシロキサン系樹脂を用いてJIS B 0601に基づく中心線平均粗さが100〜500nmであるアンダーコート層を形成する工程と、
このアンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程と、
この反射防止層の表面に含フッ素シラン化合物を用いて汚染防止層を形成する工程と、を含み、
前記汚染防止層は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を物理的気相成長法によって堆積させることにより形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはハロゲン基,水酸基,アミノ基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【請求項17】 請求項16において、
前記汚染防止層は、前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含浸させたセラミックスを蒸発源として用い、真空槽内において前記セラミックスを加熱し、該化合物を蒸発させて堆積させることによって形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項18】 請求項11〜17のいずれかにおいて、
前記反射防止層は、物理的気相成長法によって形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項19】 請求項11〜17のいずれかにおいて、
前記反射防止層は、シロキサン系樹脂又はアクリル系樹脂を含む塗膜を形成後、これを硬化させることによって形成されることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項20】 請求項19において、
前記反射防止層には、平均粒子径が0.05〜0.1μmの硬質粒子が分散されていることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項21】 請求項1〜10のいずれかに記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特に液晶表示装置に好適に用いられる偏光板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置においては、その表面反射を減らすことで、特に屋外での視認性を向上させることが行われている。このような表面反射を減らすための方法としては、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により偏光板の表面に無機質コート膜からなる反射防止膜を形成する方法、あるいはこのような反射防止膜を表面に形成したアクリル樹脂フィルムを偏光板に接着剤によって貼り付ける方法等がある。
【0003】
しかし、従来の反射防止膜付き偏光板においては、指紋等の汚れが付き易く、また一旦着いた汚れが取れにくいこと、偏光板の表面に水滴が付着し易く、水滴が付着した状態で放置すると、短時間でしみ状の痕跡となるいわゆるヤケが発生すること、さらには偏光板の表面に水滴が着いたまま高温の状態で放置すると、反射防止膜にクラックが生じたり反射防止膜が剥離すること、等の問題があった。
【0004】
このような問題を回避する技術として、特開平3-266801号公報に、反射防止膜上にフッ素樹脂の薄膜を設ける方法が開示されている。しかし、このフッ素樹脂の薄膜は、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニルフルオライドなどを抵抗加熱式の真空蒸着法によって堆積させて形成され、密着力,強度,表面硬度等の点で不十分であって、実用化に適しないものである。また、この技術を用いて膜強度が確保できる程度の厚みの薄膜を形成した場合には、この膜が偏光板の光学特性に影響を与え、反射率の増加,光干渉による色付き,膜厚の不均一に起因する視認性の低下等の新たな問題を生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためのものであって、その目的とするところは、表面反射が少なく優れた視認性を確保しながら、撥水性,汚染防止性に優れた偏光板およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明の偏光板は、偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板と、
この偏光基板を構成する一方の支持層の表面に形成されたアンダーコート層と、
このアンダーコート層側の最も外側に位置し、含フッ素シラン化合物からなる汚染防止層と、
を含むことを特徴としている。
【0007】
この偏光板においては、通常、前記アンダーコート層と前記汚染防止層との間に反射防止層が形成される。
【0008】
この偏光板においては、その最表面に含フッ素シラン化合物からなる汚染防止層を形成することにより、偏光板表面の撥水性および撥油性を向上させることができ、汚染防止性に優れた偏光板を構成することができる。
【0009】
汚染防止層の下位に位置する反射防止層は、通常、例えばSiO2膜等の無機質膜から構成され、その表面には極性の大きな-OH基が露出しており、この活性な基は汚れや水滴が付着しやすい原因となっている。したがって、極性の極めて小さな含フッ素シラン化合物を前記反射防止層の表面に反応あるいは吸着させることで、偏光板表面を化学的に安定した状態に改質することができる。
【0010】
この含フッ素シラン化合物からなる汚染防止層は、原理的には単分子層によって構成されれば十分であり、この程度の薄膜では偏光板の光学特性や表面硬度に問題となるような影響を与えることはない。また、前記反射防止層と汚染防止層とは、反応性置換基を介して化学的に結合しているため、両者の密着力は強固であり、汚染防止層が剥がれるようなことはない。また、含フッ素シラン化合物は耐薬品性、耐熱性、耐擦傷性および耐候性等の化学的,物理的特性において優れている。
【0011】
前記汚染防止層は、純水の表面に対する接触角が70度以上、より好ましくは100度以上あることが望ましい。汚染防止層がこの範囲の接触角を有することにより、優れた撥水性を有し、良好な汚染防止性を発揮することができる。
【0012】
本発明においては、前記アンダーコート層は、JIS Z 8741に基づく鏡面光沢度が10〜40、好ましくは20〜35であり、かつJIS K 6900に基づく曇度(ヘイズ)が5〜30%、好ましくは10〜25%であることが望ましい。
【0013】
この偏光板においては、前記アンダーコート層の鏡面光沢度および曇度を前記範囲に特定することにより、偏光板表面の写り込みやギラツキを低減して優れた視認性を確保しながら、偏光板表面の汚れの拭き取り件を高めることができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、鏡面光沢度(以下「光沢度」という)とは、JIS Z 8741の方法3(60度鏡面光沢)に基づく光沢の度合いをいう。光沢度が10未満では、アンダーコート層の表面の凹凸の分布が高密度となり、偏光板の表面に付着した汚れを除去しにくくなる。一方、光沢度が40より大きい場合には、外光の正反射が強いため、偏光板の表面にいわゆるギラツキが顕著に現れ、視認性が低下する。
【0015】
本発明において、曇度とは、JIS K 6900-113によるものをいう。具体的には、透明体に入射した光線が拡散する度合いをいい、拡散透過光量と全透過光量との比を百分率で示したものである。本発明において、曇度が5未満では、偏光板の表面が鏡面状態となっていわゆる写り込みの現象が顕著になり、視認性が低下する。一方、曇度が30より大きいと、偏光板の表面が曇ガラスのような状態となって解像度が低下し、そのため視認性が低下するだけでなく、平行透過率の低下により暗くなる。
【0016】
また、本発明の偏光板においては、前記アンダーコート層は、JIS B 0601に基づく中心線平均粗さ(Ra)が100〜500nm、より好ましくは150〜300nmであることが望ましい。この中心線平均、粗さが,上記範囲にあることにより、表面の写り込みやギラツキが低減でき、しかも汚れの拭き取り性を高めることができる。
【0017】
前記汚染防止層を構成するフッ素シラン化合物は、下記式(1)で示される含フッ素シラン化合物、この化合物単位を有するオリゴマーおよびポリマーの少なくとも一種からなる。
式(1)
(R1)a(R2)b-Si-(X)c
式(1)中、
R1はフッ素を含む有機基、
R2は水素または有機基、
Xはハロゲン基,水酸基,アミノ基,アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の加水分解可能な反応性基、
aは1〜3の整数、
bは0または1〜2の整数、
cは1〜3の整数を示す。
【0018】
前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物としては、反応性基Xはアミノ基または置換アミノ基であることが好ましい。
【0019】
このようなアミノシラン化合物としては、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリアミノシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルジメチルアミノシラン、ビス(1H,1H-パーフルオロブチル)ジアミノシラン、ビス(パーフルオロノニル)ジアミノシラン、パーフルオロヘキサデシルトリアミノシラン、パーフルオロヘプタデシルトリアミノシラン、パーフルオロオクタデシルトリアミノシランおよびビス(パーフルオロノニル)ブチルアミノシランなどを挙げることができる。これらのアミノシラン化合物は一種単独で、あるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、前記式(1)の含フッ素シラン化合物において、R1はフッ素を含む、炭素数1〜20のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基または置換アルコキシ基、R2は水素または炭素数1〜4のアルキル基,置換アルキル基,アルコキシ基または置換アルコキシ基、Xはハロゲン基,水酸基、アルコキシ基およびこれらの基の一部が置換された基から選択される少なくとも一種の反応性基であることが望ましい。
【0021】
このような含フッ素シラン化合物としては、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリブロモシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリヒドロキシシラン、パーフルオロヘプタデシルトリメトキシシラン、パーフルオロオクタデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルメチルジクロロシランおよび3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランなどをあげることができる。これらの含フッ素シラン化合物は、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
含フッ素シラン化合物のうち、アミノシランは、他のシラン化合物に比較して、室温〜80℃の温度で反応するため、反応の制御や取り扱いが簡単で、かつ反応液の管理も容易であるという利点がある。
【0023】
前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物は、反応の前後において化合物相互が結合してオリゴマーあるいはポリマー化することもあり得るが、冷暗所で保存することによって、その反応を本発明の目的を阻害しない程度に管理することができる。
【0024】
前記アンダーコート層には、平均粒子径0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜2μmの硬質粒子が、該アンダーコート層に対して例えば1〜50重量%の割合で分散されていることが望ましい。硬質粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、防眩効果の点で劣る。一方、硬質粒子の平均粒子径が5μmを越えると、ギラツキが発生し、視認性の点で劣る。また、硬質粒子の割合が1重量%未満であると、防眩効果の点で劣る。一方、硬質粒子の割合が50重量%を超えると、解像度および汚れ拭き取り性の点で劣る。硬質粒子の割合は特に限定されるものではなく、前記アンダーコート層の特性を満足できるように適宜調整される。
【0025】
前記硬質粒子としては、通常の防眩処理に用いられるれシリカが代表的であるが、その他にもチタニア、アルミナ、ジルコニア等を用いることができる。
【0026】
前記アンダーコート層としては、アクリル系樹脂、シロキサン系樹脂等の樹脂をあげることができる。前記アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、ウレタンアクリレート、エステルアクリレート、エポキシアクリレート、エーテルアクリレートなどの重合体等を例示することができる。前記シロキサン系樹脂としては、アルコキシシラン等を用いることができ、例えばメチル基、エチル基等のアルキル基、その他のγ-クロロプロピル基、ビニル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メタクリルオキシプロピル基などの有機基を含むものを例示することができる。
【0027】
本発明の偏光板においては、前記汚染防止層は、屈折率nおよび層の厚みdが次の関係を有することが望ましい。
【0028】
nd<0.1μm
1.25<n<1.45
前記汚染防止層を構成する含フッ素シラン化合物層は、通常屈折率が1.25〜1.45と低く、したがって表面反射を防止する効果をも有する。この場合、汚染防止層はA型の干渉色(基材の屈折率より膜の屈折率が小さい場合)を与え、色相はndの関数となる。そして、汚染防止層の厚みdが大きくなるにつれ、白色から黄,赤,紫,青,緑と干渉色が変化していく。
【0029】
前記偏光基板および反射防止層の条件を考慮してスペクトル色の三刺激値を理論式から計算すると、ndが0.1μm以上になると、色座標(x,y)のx値が0.45を超え、汚染防止層の色付きが認識されるようになる。また、ndが0.1μm以上で、かつ汚染防止層の厚みに不均一があると、シャボン玉の着色のように斑な模様を呈することがある。以上のことを考慮すると、前記汚染防止層は、その厚みdが0.1μmより小さいことが望ましい。
【0030】
本発明の偏光板の製造方法は、
偏光層およびこの偏光層の両表面に形成された支持層を有する偏光基板の一方の支持層の表面にアンダーコート層を形成する工程と、
このアンダーコート層の表面に反射防止層を形成する工程と、
この反射防止層の表面に含フッ素シラン化合物からなる汚染防止層を形成する工程と、
を含むことを特徴としている。
【0031】
前記アンダーコート層を形成する工程は、樹脂溶液に平均粒子径が0.1〜5μmの硬質粒子を分散させた塗布液を調整し、この塗布液を前記偏光基板の表面に塗布して硬化させ、前記硬質粒子が1〜50重量%の割合で含有される塗膜を形成する工程からなることが望ましい。この工程で用いられる樹脂溶液の樹脂としては、前述したアクリル系樹脂,シロキサン系樹脂等を用いることができる。
【0032】
このように、アンダーコート層に硬質粒子を分散させることにより、アンダーコート層に防眩性を付与することができる。
【0033】
この工程において、塗布液を前記偏光基板の表面に塗布する方法としては、一般的に用いられているディップ法、スピンナー法、スプレー法等を用いることができ、特に量産性の点でロールコート法を好ましく用いることができる。塗膜を硬化させる際には、必要に応じて、加熱や、紫外線あるいは電子線などの光照射により樹脂の架橋反応を促進させる。
【0034】
また、前記アンダーコート層に防眩性を付与する他の方法としては、エッチング処理された型板にハードコート処理によって硬質粒子を含まないアンダーコート層を形成し、これをキャスト重合によって偏光基板に転写する方法、あるいは必要に応じて硬質粒子を含む塗布液をスプレー法液滴調整によって偏光基板にアンダーコート層を形成する方法、微細な凹凸を有するロールを硬質粒子を含まないコート層表面に圧接して回転させてコート層表面に凹凸を転写させる方法を用いることができる。
【0035】
前記汚染防止層は、前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含む塗布液を前記反射防止層の表面に塗布して硬化させ、さらに未反応の含フッ素シラン化合物を溶媒洗浄によって除去することにより形成できる。前記塗布液は、含フッ素シラン化合物を濃度0.01〜10重量%で溶剤に溶解させて調整することができる。このとき用いられる溶剤としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルデカヒドロナフタレン等をあげることができる。
【0036】
前記汚染防止層は、前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を物理的気相成長法によって堆積させることにより形成できる。この工程において、物理的気相成長法としては、一般的に用いられる真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いることができ、特に真空蒸着法を好ましく用いることができる。
【0037】
汚染防止層を物理的気相成長法によって形成する場合には、前記反射防止層を汚染防止層の形成手段と同様の堆積法を採用することにより、反射防止層および汚染防止層を連続的に形成することができる。
【0038】
さらに、前記汚染防止層を真空蒸着法によって形成する場合には、前記式(1)で示される含フッ素シラン化合物を含浸させたセラミックスを蒸発源として用い、真空槽内において前記セラミックスを加熱し、該化合物を蒸発させて堆積させることが望ましい。
【0039】
また、前記汚染防止層の形成に先立って、前記反射防止層に、洗浄,脱気,薬品処理,プラズマ処理等の前処理を施すこともできる。
【0040】
前記反射防止層は、超低屈折率の単層構造、あるいは低屈折率層と高屈折率層との組み合わせによる多層構造とすることにより、有効な減反射効果を得ることができる。前記超低屈折率層を構成する物質としては、MgF2,CaF2、LiF等をあげることができ、前記多層構造の屈折率層を構成する材料としては、SiO2,ZrO2,TiO2,Y2O3、Ta2O5、CeO2、Sb2O3、B2O3、SiO、CeF3等をあげることができる。
【0041】
また、反射防止層を構成する物質としては、前記フッ化物あるいは酸化物の代わりに、特定の樹脂あるいは非晶質体等を用いることができる。例えば、超低屈折率層は、アクリル系樹脂にフッ素を含む置換基を導入した樹脂、あるいは多孔質のシリカ系非晶質体をゾルゲル法を用いて形成することにより得られる。また、低屈折率層と高屈折率層は、シロキサン系樹脂またはアクリル系樹脂に適当な置換基を導入したり、あるいは分散させる酸化物粒子の種類や混合比を調整することで、屈折率1.45〜1.65の範囲において比較的容易に形成することができる。さらに高屈折率の膜が必要な場合には、例えばチタニア系非晶質体等をゾルゲル法によって形成することができる。
【0042】
後者の樹脂あるいは非晶質体を用いて反射防止層を形成する場合には、塗布液の溶媒としてアルコール系溶媒あるいはフッ素系溶媒等を用いることができる。このようなアルコール系溶媒としては2-エトキシエタノール、2-メトキシエタノールイソプロピルアルコール等を、フッ素溶媒としてはパーフルオロヘプタン等をあげることができる。
【0043】
【実施例】
(実施例1)
図1は、本実施例に係る偏光板の構成を模式的に示す断面図である。この偏光板100は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。
【0044】
前記偏光基板10は、ヨウ素,染料等の二色性を与える偏光素子がポリビニルアルコール等の偏光基体によって固定された偏光層12と、この偏光層12の両側に接着剤によって貼り合わされた第1の支持層14および第2の支持層16とから構成されている。支持層14,16としては、通常トリアセチルセルロース(TAC)等に代表されるセルロース系の膜が用いられ、これらの支持層14,16によって偏光層12が化学的,物理的に保護されている。前記偏光基体10は、通常20〜200μmの厚さを有し、前記支持層14,16は、通常20〜200μmの厚さを有する。
【0045】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは3μm)のアクリル系樹脂にシリカ(SiO2)が分散され、防眩性(アンチグレア性)が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは2μm)であり、その添加量はアクリル系樹脂に対し1〜50重量%(サンプルでは25重量%)である。
【0046】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は26、中心線平均粗さ(Ra)は220nm、および曇度は20%であった。
【0047】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0048】
この反射防止層30は、可視領域における反射率の平均値が0.5%以下である。
【0049】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この層は少なくとも単分子層ないしは数分子層である。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0050】
次に、本実施例の偏光板100の製造方法について述べる。
【0051】
まず、偏光基板10の表面に、シリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液(ウレタンアクリレートオリゴマーをメタクリル酸モノマーで希釈し、シリカ粒子と光開始剤としてベンゾインエーテルを添加したもの)をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0052】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、真空蒸着法により、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、ZrO2層とSiO2層との積層をλ/4、ZrO2層をλ/4、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0053】
ついで、アミン系パーフルオロ溶媒である「フロリナートFC-40」(住友スリーエム社製)に含フッ素シラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシランを5重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において1分間浸漬させた。ついで、10cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で10分間放置した。その後、「フロリナートFC-40」によって偏光板の洗浄を行い未反応の含フッ素シラン化合物を除去した。
【0054】
前記含フッ素シラン化合物は、偏光基板10の支持層を構成するTACと反応しないため、第2の支持層16上に付着した未反応の含フッ素シラン化合物をフッ素系溶剤によって除去することができる。したがって、第2の支持層16上に接着が困難なシラン化合物層が残存していない。
【0055】
また、このようにして得られた偏光板は汚染防止層40の形成によって外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0056】
次に、偏光板およびこれを用いた液晶表示装置の特性試験の結果について述べる。
【0057】
(1)偏光板の特性
特性試験のサンプルとしては、本実施例の偏光板100のうち膜厚等の各条件が( )内に示されたものを用いた。
a.密着性
汚染防止層40の密着性を碁盤目試験によって判定した。碁盤目試験は偏光板の表面にナイフで切れ目を入れた1mm角の微少領域100箇所について、粘着テープ剥離をした後、反射顕微鏡観察ならびに純水とエタノールを滴下して濡れ性を評価した。
【0058】
碁盤目試験の結果、本実施例の偏光板はまったく表面層の剥がれがなく、汚染防止層40の密着が良好であることが確認された。
b.耐擦傷性
この特性は、#0000のスチールウールを汚染防止層40の表面に置き、1Kg/cm2の荷重をかけてスチールウールを10往復させたときの傷の発生を目視によって確認した。
【0059】
その結果、本実施例の偏光板においては傷がほとんど認められず、優れた耐擦傷性を有することが確認された。
c.耐薬品性
薬品としては、アルコール,酸,アルカリおよび洗剤を選択した。
【0060】
耐アルコール性に関しては、メチルアルコールを偏光板表面に滴下し、30分間放置した後の変化を目視によって観察した。耐酸性については、5重量%の塩酸水溶液を偏光板表面に滴下した後、30分間放置し、その変化を目視によって観察した。耐アルカリ性については、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を偏光板表面に滴下し、30分間放置した後目視によって観察した。耐洗剤性については、5重量%の中性洗剤水溶液を滴下し、24時間放置した後の状態を目視によって観察した。
【0061】
本実施例の偏光板については、各薬品の滴下試験において変形、変色、シミ残りなどの異常は認められず、耐薬品性に優れていることが確認された。
d.汚染防止性
この試験においては、偏光板の表面を指で触れ、指紋の付き易さ、ならびに付着した指紋の拭き取り性を調べた。
【0062】
その結果、本実施例の偏光板においては、指紋が付きにくく、また、付いた指紋も布等によって容易に拭き取ることができることを確認した。さらに、偏光板を中性洗剤や市販のメガネクリーナー等でクリーニングすることにより、初期の状態に容易に回復させることができた。
【0063】
(2)液晶表示装置の特性
以下の特性試験において用いられたサンプルは、上記特性試験に用いられたサンプルと同様の偏光板をMIM(メタル-インシュレータ-メタル)素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて構成されたものである。サンプルは、カラーフィルタを形成したガラス基板と、MIM素子を形成したガラス基板とでTN(ツイストネマチック)液晶を挟持し、カラーフィルタ側に本実施例の偏光板を、素子基板側に通常の偏光板を貼り付けて構成されたものである。
a.高温高湿試験
液晶表示パネルのサンプルを温度50℃,相対湿度90%の雰囲気に1,000時間放置し、外観および特性等の変化を調べた。
【0064】
この試験の結果、サンプルの偏光板において、剥がれ,クラック等が発生せず、ヤケの発生も認められなかった。
b.熱衝撃試験
-20℃(30分)、25℃(5分)および60℃(30分)のヒートサイクルを10回繰り返し、外観および特性等の変化を調べた。
【0065】
この試験の結果、サンプルの液晶表示パネルにおいては、電気的特性、光学的特性などの点で特に異常は認められなかった。
c.日光暴露試験
サンプルを屋外に20,000時間にわたって放置した後、外観および特性等の変化について調べた。
【0066】
この試験の結果、本実施例のサンプルにおいては、電気的特性、光学的特性などの点で特に異常は認められなかった。
d.視認性
上記サンプルの液晶パネルの背面にさらにバックライトユニットを配し、バックライト方式の液晶表示装置を製造した。この液晶表示装置について外部からの影像入力をMIM素子を用いて駆動したところ、表面反射の少ない、視認性に優れた表示を行うことができた。
【0067】
(実施例2)
図2は、本実施例に係る偏光板の構成を模式的に示す断面図である。
【0068】
この偏光板200は、偏光基板10上に接着層52を介して樹脂フィルム50、アンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。本実施例が、前記実施例1と異なるのは、アンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40があらかじめ樹脂フィルム50上に形成され、この積層体が偏光基板10に接着された点にある。
【0069】
なお、偏光基板10の構成は、前記実施例1の偏光基板と同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0070】
前記樹脂フィルム50は、厚さ0.03〜1mm(後述する試験のサンプルでは0.2mm)のアクリル樹脂から構成されている。アクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、およびその他のアクリル酸エステル共重合体などの変成品が好適に用いられる。
【0071】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは5μm)のシロキサン系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは4μm)である。
【0072】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で5Hであり、光沢度(Ga60度)は48、中心線平均粗さ(Ra)は980nm、および曇度は15%であった。
【0073】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、3層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、TiO2層がλ/2、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0074】
前記汚染防止層40は、ビス(1H,1H-パーフルオロブチル)ジアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては300オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0075】
次に、本実施例の偏光板200の製造方法について述べる。
【0076】
まず、前記樹脂フィルム50の表面に、シリカ粒子が分散されたシロキサン樹脂塗布液(γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを2-エトキシエタノールで希釈し、塩酸で加水分解した後、シリカ粒子とシリコーン系界面活性剤と過塩素酸マグネシウムを添加したもの)をディップ法によって塗布し、その後70℃に加熱してシロキサン樹脂を熱硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0077】
ついで、この樹脂フィルムを真空槽内にセットし、真空蒸着法により、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、TiO2層をλ/2、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0078】
ついで、前記真空槽内の真空を保持したまま、アルゴンとビス(1H,lH-パーフルオロブチル)ジアミノシランを9:1の割合で混合した気体を真空度が1〜0.0001Torr(サンプルでは0.01Torr)になるように真空槽内に導入し、測えば13.56MHzの高周波磁場で雰囲気をプラズマ化し、前記含フッ素シラン化合物を反射防止層30上に堆積させ、汚染防止層40を形成した。
【0079】
汚染防止層の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0080】
以上のようにして得られた樹脂フィルムの積層体を、アクリル系接着剤を介して偏光基板10に貼り付けることにより本実施例の偏光板が形成される。前記アクリル系接着剤以外にも、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等も用いることができる。
【0081】
この偏光板200について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において、実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板200をTFT(薄膜トランジスタ)素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の各特性試験を行ったところ、視認性においてギラツキ感があったものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0082】
(実施例3)
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0083】
この偏光板300は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0084】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルにおいては7μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは4μm)である。
【0085】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は76、中心線平均粗さ(Ra)は230nm、および曇度は4%であった。
【0086】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.1μm)であり、単層構造を成している。この膜構成は、MgF2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0087】
前記汚染防止層40は、2-(パーフルオロオクチル)-エチルトリアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0088】
次に、本実施例の偏光板300の製造方法について述べる。
【0089】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1と何様のシリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をバーコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0090】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、真空蒸着法により、基板温度50℃で、MgF2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をアルカリ洗浄後純水ですすぎ、十分に乾燥させた。
【0091】
ついで、「フロリナートFC-40」に含フッ素シラン化合物として2-(パーフルオロオクチル)-エチルトリアミノシランを1重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において5分間浸漬させた。ついで、10cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で10分間放置した。その後、「フロリナートFC-40」によって偏光板の洗浄を行い未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。この汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0092】
この偏光板300について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板を単純マトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、視認性においては、若干の写り込みとギラツキ感があったものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。なお、視認性の試験においては、前記液晶表示パネルの背面に反射板を配設したサンプルを用いた。
【0093】
(実施例4)
本実施例に係る偏光板は、前記実施例1の偏光板100と基本的な構造が同一なため、図1を参照しながら説明する。
【0094】
この偏光板400は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0095】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは15μm)のアクリル系樹脂から構成されている。
【0096】
このアンダーコート層20は、前記実施例1と異なり、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。その代わり、後に詳述するように、その表面には転写法により微細な凹凸が形成されて、防眩性が付与されている。
【0097】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は90、中心線平均粗さ(Ra)は100nm、および曇度は3%であった。
【0098】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0099】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0100】
次に、本実施例の偏光板400の製造方法について述べる。
【0101】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1と同様のアクリル樹脂塗布液(シリカを含まない)をロールコート法によって塗布し、乾燥後その表面に微細な凹凸を有するロールを押し付けながら回転させることにより、塗膜の表面に微細な凹凸を転写した。その後、紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0102】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、真空槽の基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、ZrO2層とSiO2層との積層をλ/4、ZrO2層をλ/4、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0103】
ついで、上記の工程で得られた偏光板を1〜0.001Torrの酸素分圧下、外部入力50〜500WでRF放電させ、発生したプラズマに曝した後スピンナーにセットした。そして、フッ素系溶剤「フロリナートFC-70」(住友スリーエム社製)に含フッ素シラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシランを3重量%溶解させた溶液を上述した偏光板に滴下してスピンナーを約3,000rpmの回転速度で回転させ、溶液を塗布した。その後、偏光板を相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で10分間放置し、さらに、「フロリナートFC-70」によって偏光板の洗浄を行い未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。この汚染防止層40の形成によって、偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0104】
この偏光板400について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板400をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、視認性において写り込みがあったものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0105】
(実施例5)
本実施例および後述する実施例6〜8においては、汚染防止層40を蒸着法により形成し、その際に含フッ素シラン化合物をセラミック製タブレットに含浸させた点に特徴を有する。
【0106】
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0107】
偏光板500は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0108】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルにおいては3μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは1μm)である。
【0109】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は35、中心線平均粗さ(Ra)は180nm、および曇度は13%であった。
【0110】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0111】
前記汚染防止層40は、パーフルオロヘキサデシルトリアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては200オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0112】
次に、本実施例の偏光板500の製造方法について述べる。
【0113】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1で用いたと同様のシリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0114】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、前記反射防止層30および汚染防止層40を形成した。
【0115】
以下に、蒸着装置および蒸着方法について具体的に述べる。
【0116】
図3は、本実施例に用いた蒸着装置の一例を模式的に示した断面図である。
【0117】
この蒸着装置は、排気口1を有する真空槽2内の一端側に、円盤状のタブレット設置台4が設けられている。このタブレット設置台4は、軸4aを介して図示しない回転手段に接続されており、所定の回転速度で間欠的に回転駆動される。このタブレット設置台4上には蒸着すべき材料(蒸着源)からなるタブレットあるいは蒸着源を含むタブレットが該設置台4の周に沿って配置されている。
【0118】
本実施例においては、反射防止層30を構成するための二酸化ケイ素のタブレット6、酸化ジルコニウムのタブレット7、および汚染防止層40を形成するための含フッ素シラン化合物を含むタブレット8が載置されている。
【0119】
汚染防止層40を形成するためのタブレット8は、例えば次のようにして形成される。すなわち、SiO270重量%およびAl2O330重量%を混合し、これを焼結して多孔質のタブレットを形成する。このタブレットを密閉容器に入れてロータリーポンプによって10-3Torrの状態まで排気する。なお、このとき、タブレットは100℃に加熱されている。次いで、タブレットを冷却した後、前記密閉容器にパーフルオロヘキサデシルトリアミノシランを導入して密閉容器を大気圧に戻し、タブレットにこの含フッ素シラン化合物を含浸させる。
【0120】
タブレット設置台4の上方には、少なくとも前記タブレット6〜8の前方を覆う状態で、遮蔽部材5が設置されている。そして、この遮蔽部材5の一部には開閉制御されるシャッタ部5aが設けられている。このシャッタ部5aの開放時間を制御することによって堆積層の膜厚を規定することができる。また、前記タブレット設置台4の近傍には、単一のタブレット(ソース)に電子ビームを照射するための電子ビーム銃3が設置されている。
【0121】
一方、真空槽2内の他方側には、アンダーコート層20が積層された偏光基板10が配置される。このとき、アンダーコート層20が蒸着源であるタブレット側に向くように配置される。
【0122】
この蒸着装置においては、まず、図示しない排気手段を用いて排気口1より真空槽2内の空気を吸引して、圧力10-5Torr以下まで排気した状態で、前記タブレット6および7に交互に電子ビームを照射し、反射防止層30を形成する。この反射防止層30の膜構成は、アンダーコート層20側からSiO2層がλ/4で、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層のSiO2層がλ/4の膜厚で堆積される。
【0123】
次いで、真空状態を保持したまま、タブレット8に電子ビームを照射してタブレットを構成するセラミックスが蒸発しない程度に加熱し、含フッ素シラン化合物だけを所定時間(20秒間程度)蒸発させ、汚染防止層40を形成した。
【0124】
このようにして形成された偏光板500は、反射防止層30および汚染防止層40を形成することによって、偏光板の外観,反射防止特性に特に変化は見られなかった。
【0125】
この製造方法によれば、反射防止層30および汚染防止層40を同一真空槽内で連続的に形成することができる。
【0126】
この偏光板500について、前記実施例1と同様に特性試験を行なった。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施倒1と同様に良好な結果が得られた。
【0127】
(実施例6)
本実施例の偏光板は、その基本的な構造が前記実施例2と同様であるため、図2を参照しながら説明する。
【0128】
この偏光板600は、偏光基板10上に接着層52を介して樹脂フィルム50、アンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。なお、偏光基板10の構成は、前記実施例1の偏光基板と同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0129】
前記樹脂フィルム50は、厚さ0.03〜1mm(後述する試験のサンプルでは0.2mm)のアクリル樹脂から構成されている。
【0130】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは5μm)のアクリル系樹脂層からなる。このアンダーコート層20は、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。その代わり、後述するエアスプレー法によって防眩性が付与される。
【0131】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で5Hであり、光沢度(Ga60度)は48、中心線平均粗さ(Ra)は100nm、および曇度は10%であった。
【0132】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、3層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、TiO2層がλ/2、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0133】
前記汚染防止層40は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0134】
次に、本実施例の偏光板600の製造方法について述べる。
【0135】
まず、前記樹脂フィルム50の表面に、エアスプレー法を用いてアクリル樹脂塗布液を、液滴の平均粒子径が5〜100μmになるように吐出量と空気使用量を調整し、さらに樹脂フィルムの移動速度を適度に調整しながら塗布し、アンダーコート層20を形成した。
【0136】
ついで、この樹脂フィルムを真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、TiO2層をλ/2、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。
【0137】
次いで、この樹脂フィルムを真空槽内にセットし、例えば抵抗加熱による真空蒸着法により汚染防止層40を形成した。真空蒸着装置にセットされるタブレットは、実施例5と同様にして調整され、例えば多孔質アルミナのタブレットに3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランが含有されたものである。
【0138】
真空蒸着を行う際には、真空槽内を10-6Torrまで排気し、被蒸着基板を酸素プラズマに曝した後に、前記タブレットを電気抵抗で約200℃に加熱し、含フッ素シラン化合物(3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシラン)を含むタブレットを30秒間蒸発させ、汚染防止層40を形成した。汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0139】
以上のようにして得られた樹脂フィルムの積層体を、実施例2と同様にアクリル系接着剤を介して偏光基板10に貼り付けることにより本実施例の偏光板が形成される。
【0140】
この偏光板600について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において、汚れの拭き取り性が若干悪かったものの、実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板600をTFT素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の各特性試験を行ったところ、若干のギラツキ感はあったものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0141】
(実施例7)
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0142】
この偏光板700は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0143】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルにおいては3μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは2μm)である。
【0144】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は26、中心線平均粗さ(Ra)は220nm、および曇度は20%であった。
【0145】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.1μm)であり、単層構造を成している。この膜構成は、MgF2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0146】
前記汚染防止層40は、ビス(パーフルオロノニル)ブチルアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては400オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0147】
次に、本実施例の偏光板700の製造方法について述べる。
【0148】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1で用いたと同様のシリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0149】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、MgF2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で形成し、反射防止層30を形成した。
【0150】
一方、実施例5と同様な方法で、多孔質窒化ケイ素のタブレットにビス(パーフルオロノニル)ブチルアミノシランを含浸させた。このタブレットをランプ加熱が可能な真空槽内にセットし、さらに、真空槽内を10-6Torrまで排気した。次いで、偏光基板を酸素プラズマに曝した後、ランプの輻射熱で前記タブレットを約30秒間加熱させ、汚染防止層40を形成した。
【0151】
この偏光板700について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板を単純マトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。なお、視認性の試験においては、前記液晶表示パネルの背面に反射板を配設したサンプルを用いた。
【0152】
(実施例8)
本実施例に係る偏光板は、前記実施例1の偏光板100と基本的な構造が同一なため、図1を参照しながら説明する。
【0153】
この偏光板800は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0154】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは4μm)のアクリル系樹脂から構成されている。
【0155】
このアンダーコート層20は、前記実施例1と異なり、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。その代わり、その表面には転写法により微細な凹凸が形成されて、防眩性が付与されている。
【0156】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は90、中心線平均粗さ(Ra)は100nm、および曇度は3%であった。
【0157】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0158】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリブロモシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては300オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0159】
次に、本実施例の偏光板800の製造方法について述べる。
【0160】
まず、偏光基板10の表面に、実施例4で用いたと同様のアクリル樹脂塗布液を用い、実施例4と同様の転写法によってアンダーコート層20の表面に微細な凹凸を形成した。
【0161】
次いで、実施例5と同様の蒸着装置を用いて反射防止層30および汚染防止層40を連続的に形成した。また、含フッ素シラン化合物は、実施例5と同様に多孔質アルミナのタブレットに1H,1H,2H,2H,-パーフルオロオクチルトリブロモシランを含浸させたものを用いた。真空蒸着においては、まず、アンダーコート層20が積層された偏光基板10を真空槽内にセットし、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、ZrO2層とSiO2層との積層をλ/4、ZrO2層をλ/4、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。
【0162】
次いで、真空状態を保持したまま、含フッ素シラン化合物を含有させたタブレットを電子ビームで照射して含フッ素シラン化合物のみを所定時間(例えば20秒間)蒸発させ、汚染防止層40を形成した。この汚染防止層40の形成によって、偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0163】
この偏光板800について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本実施例の偏光板800をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、視認性において写り込みがあったものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0164】
(実施例9)
本実施例と後述する実施例10〜12においては、前記実施例3と同様に、含フッ素シラン化合物としてアミン系化合物を用い、かつ汚染防止層40をディップ法によって形成している点に特徴を有している。本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0165】
この偏光板900は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。なお、前記偏光基板10の構成は、前記実施例1の偏光基板と同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0166】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルにおいては3μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは2μm)である。
【0167】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は18、中心線平均粗さ(Ra)は310nm、および曇度は32%であった。
【0168】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0169】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、撥油性も有していた。前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0170】
次に、本実施例の偏光板900の製造方法について述べる。
【0171】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1で用いたと同様のシリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0172】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、ZrO2層とSiO2層との積層をλ/4、ZrO2層をλ/4、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0173】
ついで、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンに含フッ素シラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリアミノシランを1重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において1分間浸漬させた。ついで、10cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度60℃の雰囲気で10分間放置した。この状態では、偏光板の両面に10μm程度のかなり厚い塗布層が形成され、塗布面は若干不均一であり、かつ外観上は白濁していた。
【0174】
その後、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンに偏光板を1分間浸漬することによって偏光板の洗浄を行い、未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。
【0175】
前記含フッ素シラン化合物は、偏光基板10の支持層を構成するTACと反応しないため、第2の支持層16上に付着した未反応の含フッ素シラン化合物をフッ素系溶剤によって除去することができる。したがって、第2の支持層16上に接着が困難なシラン化合物層が残存していない。また、このようにして得られた偏光板は、汚染防止層の形成によって外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0176】
この偏光板900について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において、汚れの拭き取り性が悪かったものの、実施例1と同様に良好な結果が得られた。なお、付着した汚れはクリーナーを用いれば除去することができた。さらに、本施例の偏光板900をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0177】
(実施例10)
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0178】
この偏光板1000は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0179】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは3μm)のアクリル系樹脂から形成されている。このアンダーコート層20には、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。
【0180】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は90、中心線平均粗さ(Ra)は50nm、および曇度は0.5%であった。
【0181】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.1μm)であり、単層構造を成している。この膜構成は、MgF2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0182】
前記汚染防止層40は、ビス-(1H,1H-パーフルオロノニル)-ブチル-アミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、撥油性も有していた。前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0183】
次に、本実施例の偏光板1000の製造方法について述べる。
【0184】
まず、偏光基板10の表面に、実施例4で用いたと同様なシリカ粒子が分散されていないアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0185】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、MgF2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をアルカリ洗浄後純水ですすぎ、十分に乾燥させた。
【0186】
ついで、「フロリナートFC-40」に含フッ素シラン化合物としてビス-(1H,1H-パーフルオロノニル)-ブチルアミノシランを5重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において5分間浸漬させた。ついで、10cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で1時間放置した。この状態では、偏光板の両面に10μm程度のかなり厚い塗布層が形成され、塗布面は若干不均一であり、かつ外観上は白濁していた。
【0187】
その後、「フロリナートFC-40」に偏光板を1分間浸漬することによって偏光板の洗浄を行い、未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。
【0188】
前記含フッ素シラン化合物は、偏光板10の支持層を構成するTACと反応しないため、第2の支持層16上に付着した未反応の含フッ素シラン化合物をフッ素系溶剤によって除去することができる。したがって、第2の支持層16上に接着が困難なシラン化合物層が残存していない。この汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0189】
この偏光板1000について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1000を単純マトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、視認性の点では写り込みが顕著であるものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。なお、視認性の試験においては、前記液晶表示パネルの背面に反射板を配設したサンプルを用いた。
【0190】
(実施例11)
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記第1実施例と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0191】
この偏光板1100は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0192】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは5μm)のアクリル系樹脂から構成されている。
【0193】
このアンダーコート層20は、前記実施例1と異なり、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。その代わり、その表面には転写法により微細な凹凸が形成されて、防眩性が付与されている。
【0194】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は37、中心線平均粗さ(Ra)は1000nm、および曇度は35%であった。
【0195】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、3層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、TiO2層がλ/2、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0196】
前記汚染防止層40は、ビス(IH,IH-パーフルオロブチル)ジアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0197】
次に、本実施例の偏光板1100の製造方法について述べる。
【0198】
まず、偏光基板10の表面に、実施例4で用いたと同様のアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、次いで、実施例4で述べたと同様の転写法によって、乾燥させた塗膜の表面に微細な凹凸を形成した。その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0199】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、真空槽の基板温度50℃で、SiO2層をλ/2、TiO2層をλ/2、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0200】
ついで、上記の工程で得られた偏光板を「フロリナートFC-40」に含フッ素シラン化合物としてビス(IH,IH-パーフルオロブチル)ジアミノシランを3重量%溶解させた溶液に、20℃において2分間浸漬させた。その後、5cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、常温の大気中で一日間放置した。さらに、「フロリナートFC-40」に得られた偏光板を1分間浸漬し、さらに「フロリナートFC-40」の蒸気浴において引上げ洗浄を行うことによって偏光板の洗浄を行い未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。
【0201】
前記含フッ素シラン化合物は、偏光基板10の支持層を構成するTACと反応しないため、第2の支持層16上に付着した未反応の含フッ素シラン化合物をフッ素系溶剤によって除去することができる。したがって、第2の支持層16上に接着が困難なシラン化合物層が残存していない。この汚染防止層の形成によって、偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0202】
この偏光板1100について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1100をTFT素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、視認性にいて解像度が若干低下したものの、他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0203】
(実施例12)
この偏光板1200は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。なお、前記偏光基板10の構成は、前記実施例1の偏光基板と同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0204】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは1μm)のシロキサン系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは0.3μm)である。
【0205】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で5Hであり、光沢度(Ga60度)は35、中心線平均粗さ(Ra)は80nm、および曇度は7%であった。
【0206】
前記反射防止層30は、膜厚0.08〜1μm(サンプルでは0.3μm)であり、5層構造を成している。この膜構成は、アンダーコート層20側から、SiO2層がλ/4、ZrO2層とSiO2層の積層がλ/4、ZrO2層がλ/4、最上層であるSiO2層がλ/4(ここでλ=520nm)である。
【0207】
前記汚染防止層40は、2-(パーフルオロノニル)-エチルブチルージアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、撥油性も有していた。前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってndが0.1μmより小さいことが確認された。
【0208】
次に、本実施例の偏光板1200の製造方法について述べる。
【0209】
まず、偏光基板10の表面に、実施例2で用いたと同様のシリカ粒子が分散されたシロキサン系樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後80℃に加熱してシロキサン系樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0210】
ついで、この偏光基板を真空槽内にセットし、例えば電子ビーム加熱による真空蒸着法により、基板温度50℃で、SiO2層をλ/4、ZrO2層とSiO2層との積層をλ/4、ZrO2層をλ/4、SiO2層をλ/4(λ=520nm)の膜厚で順次形成し、反射防止層30を形成した。得られた偏光板をメタノールで洗浄し、十分に乾燥させた。
【0211】
ついで、「フロリナートFC-40」に含フッ素シラン化合物として2-(パーフルオロノニル)-エチルブチルージアミノシランを10重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において5分間浸漬させた。ついで、3cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度40℃の雰囲気で1時間放置した。この状態では、偏光板の両面に1μm程度のかなり厚い塗布層が形成され、塗布面は若干不均一であり、かつ外観上は白濁していた。
【0212】
その後、「フロリナートFC-40」に偏光板を1分間浸漬することによって偏光板の洗浄を行い未反応の含フッ素シラン化合物を除去した。
【0213】
前記含フッ素シラン化合物は、偏光基板10の支持層を構成するTACと反応しないため、第2の支持層16上に付着した未反応の含フッ素シラン化合物をフッ素系溶剤によって除去することができる。したがって、第2の支持層16上に接着が困難なシラン化合物層が残存していない。また、このようにして得られた偏光板は、汚染防止層の形成によって外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0214】
この偏光板1200について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において、汚れの拭き取り性が悪かったものの、その他の特性は実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1200をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0215】
(実施例13)
本実施例および後述する実施例14〜16においては、反射防止層30が前記実施例のように蒸着法ではなく、ディップコーティングなどの塗布法によって形成されている点に特徴を有している。
【0216】
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0217】
この偏光板1300は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは3μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは1.2μm)である。
【0218】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は25、中心線平均粗さ(Ra)は250nm、および曇度は15%であった。
【0219】
前記反射防止層30は、約850オングストロームのシロキサン系樹脂からなる高屈折率層と、膜厚約950オングストロームのアクリル系樹脂からなる低屈折率層から形成されている。前記高屈折率層は、シロキサン系樹脂に平均粒子径が約50オングストロームのチタニア粒子と平均粒子径が約80オングストロームのシリカ粒子が分散されている。
【0220】
前記高屈折率層は、その屈折率がこの実施例では、1.64であった。また、前記低屈折率層は、その屈折率がこの実施例では1.42であった。この反射防止層30は、空気中の反射率が550nmで0.5%であり、高い反射防止効果が確認された。
【0221】
前記汚染防止層40は、2-(パーフルオロオクチル)-エチルトリアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては200オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示し、さらに一般の有機溶剤に濡れず、優れた撥油性も示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0222】
次に、本実施例の偏光板1300の製造方法について述べる。
【0223】
まず、偏光基板10の表面に、シリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0224】
ついで、メチルセロソロブに50重量%のγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを溶解し触媒量(塗布液の0.01重量%程度)の塩酸を加え、室温で撹拌して溶液を調整した。この溶液にさらに前記チタニア粒子とシリカ粒子とを混合し、さらに過塩素酸マグネシウムを触媒量(塗布液に対して0.05重量%程度)添加し、十分に撹拌し、塗布液を調整した。この塗布液は均質なゾルであり、長期間にわたって良好な保存安定性を有し、沈澱等が生じなかった。この塗布液に偏光板を浸漬し、ディップコーティングにより塗膜を形成し、さらに40〜100℃(サンプルでは60℃)に加熱して高屈折率層を形成した。
【0225】
次いで、5重量%のパーフルオロアルキルアクリレートのオリゴマーをフッ素系溶媒(トリフルオロメチルベンゼン)に溶解させ、塗布液を調整した。この塗布液を用いてディップコーティングにより偏光板上に塗布層を形成し、30〜100℃(サンプルでは50℃)で5〜180分間(サンプルでは30分間)加熱した後、紫外線を例えば1ジュールの強さで照射し、アクリル系樹脂の低屈折率層を形成した。
【0226】
このようにして形成された2層構造の反射防止層30は、非常に緻密かつ均質で、クラック等が発生していないことが確認された。また、この実施例においては、塗布層の膜厚を50オングストローム程度の範囲で十分に制御できることがわかった。
【0227】
次いで、実施例5と同様にして、多孔質アルミナのタブレットに2-(パーフルオロオクチル)-エチルトリアミノシランを含浸させた。このタブレットを蒸発源として真空蒸着により汚染防止層40を形成した。真空蒸着においては、例えば真空槽内を10-6Torrまで排気し、前記偏光板を酸素プラズマに曝した後、タブレットを電気抵抗で加熱し、前記フッ素シラン化合物のみを所定時間(サンプルでは30秒間)蒸発させ、反射防止層30上に含フッ素シラン化合物層を堆積させた。この汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0228】
この偏光板1300について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1300をMIM素子によるアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0229】
(実施例14)
本実施例の偏光板は、前記実施例2の偏光板200と基本的な構造が同様であるため、図2を参照しながら説明する。
【0230】
この偏光板1400は、偏光基板10上に接着層52を介して樹脂フィルム50、アンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。なお、偏光基板10の構成は、前記実施例1の偏光基板と同様の構成を有するため、その詳細な説明を省略する。
【0231】
前記樹脂フィルム50は、厚さ0.03〜1mm(後述する試験のサンプルでは0.2mm)のアクリル樹脂から構成されている。
【0232】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは5μm)のシロキサン系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは4μm)である。
【0233】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で5Hであり、光沢度(Ga60度)は48、中心線平均粗さ(Ra)は980nm、および曇度は15%であった。
【0234】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.1μm)であり、多孔質のシリカ系非晶質体の超低屈折率層からなる。この反射防止層30は、その屈折率が1.25〜1.45(サンプルでは1.32)である。また、反射防止層30の空気中の反射率は可視波長領域全体にわたって0.5%程度であり、高い反射防止効果があることが確認された。
【0235】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0236】
次に、本実施例の偏光板1400の製造方法について述べる。
【0237】
まず、前記樹脂フィルム50の表面に、実施例6で用いたと同様のシリカ粒子が分散されたシロキサン系樹脂塗布液をディップ法によって塗布し、その後70℃に加熱してシロキサン系樹脂を熱硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0238】
次いで、エチルセロソロブとエタノールとの混合溶媒(両者の組成比1:1)にテトラエトキシシランを溶解し、さらに純水および触媒量の塩酸を加え、室温で撹拌して加水分解を行った。この溶液に、平均粒子径50〜1000オングストローム(サンプルでは200オングストローム)のシリカ微粒子の分散液を混合し、十分に撹拌して塗布液を調整した。この塗布液は均質なゾルであり、長期間にわたって良好な保存安定性を有し、沈澱などが見られなかった。
【0239】
この塗布液を前記アンダーコート層20の表面にロールコーティングによって塗布し、さらに50〜100℃(サンプルでは80℃)に加熱した後、紫外線を例えば10ジュールの強度で照射して、反射防止層30を形成した。この反射防止層30は、非常に緻密かつ均質で、クラック等が発生していないことが確認された。また、この実施例においては、塗布層の膜厚を100オングストローム程度の範囲で十分に制御できることがわかった。
【0240】
ついで、「フロリナートFC-40」に含フッ素シラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシランを5重量%溶解させた溶液に上述した偏光板を20℃において1分間浸漬させた。ついで、10cm/秒の速度で偏光板を引き上げた後、相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で10分間放置した。その後、「フロリナ-トFC-40」によって偏光板の洗浄を行い、未反応の含フッ素シラン化合物を除去した。
【0241】
汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において特に変化は見られなかった。
【0242】
以上のようにして得られた樹脂フィルムの積層体を、実施例2と同様のアクリル系接着剤を介して偏光基板10に貼り付けることにより本実施例の偏光板が形成される。
【0243】
この偏光板1400について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において、実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1400をTFT(薄膜トランジスタ)素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の各特性試験を行ったところ、視認性においてギラツキ感があったものの、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0244】
(実施例15)
本実施例の偏光板は、その基本的構造が前記実施例1と同様であるため、図1を参照しながら説明する。
【0245】
この偏光板1500は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0246】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは3μm)のアクリル系樹脂にシリカが分散され、防眩性が付与されている。前記シリカは、平均粒子径が0.1〜5μm(サンプルでは1μm)であり、その添加量はアクリル系樹脂に対し1〜50重量%(サンプルでは20重量%)である。
【0247】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は35、中心線平均粗さ(Ra)は180nm、および曇度は13%であった。
【0248】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.095μm)であり、アクリル系樹脂の超低屈折率層から構成されている。この反射防止層30は、その屈折率が1.25〜1.45(サンプルでは1.38)である。前記アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステルのエステル残基にフルオロアルキル基を導入したモノマーの重合体、またはフルオロ基を有する2種以上のモノマーの重合体等を好適に用いることができる。
【0249】
前記汚染防止層40は、ビス(1H,1H-パーフルオロブチル)ジアミノシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては200オングストローム)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0250】
次に、本実施例の偏光板1500の製造方法の一例について述べる。
【0251】
まず、偏光基板10の表面に、実施例1と同様なシリカ粒子が分散されたアクリル樹脂塗布液をロールコート法によって塗布し、その後紫外線を照射してアクリル樹脂を硬化させ、アンダーコート層20を形成した。
【0252】
次いで、フッ素系溶媒(ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)にフルオロアルキルアクリレートを3重量%の濃度で溶解させ、塗布液を調整した。この塗布液をディップコーティングにより前記偏光板の表面に塗布し、30〜100℃(サンプルでは50℃)で5〜180分間(サンプルでは30分間)加熱した後、電子線を例えば100KVの加速電圧で照射し、アクリル系樹脂からなる反射防止層30を形成した。この反射防止層30は、非常に緻密かつ均質で、クラック等が発生していないことが確認された。また、この方法により膜厚は50オングストローム程度の範囲で十分に制御できることが確認された。
【0253】
ついで、アルゴンとビス(1H,1H-パーフルオロブチル)ジアミノシランを9:1の割合で混合した気体を真空度が1〜0.0001Torr(サンプルでは0.01Torr)になるように真空槽内に導入し、例えば13.56MHzの高周波磁場で雰囲気をプラズマ化し、前記含フッ素シラン化合物を反射防止層30上に堆積させ、汚染防止層40を形成した。この汚染防止層40の形成によって偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0254】
この偏光板1500について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1500を単純マトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。なお、視認性の試験においては、前記液晶表示パネルの背面に反射板を配設したサンプルを用いた。
【0255】
(実施例16)
本実施例に係る偏光板は、前記実施例1の偏光板100と基本的な構造が同一なため、図1を参照しながら説明する。
【0256】
この偏光板1600は、偏光基板10上にアンダーコート層20、反射防止層30および汚染防止層40が順次積層された構造となっている。偏光基板10は前記実施例1の偏光基板と実質的に同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0257】
前記アンダーコート層20は、厚さ0.5〜20μm(後述する試験のサンプルでは10μm)のアクリル系樹脂から構成されている。
【0258】
このアンダーコート層20は、前記実施例1と異なり、防眩性を高めるためのシリカが分散されていない。その代わり、その表面には転写法により微細な凹凸が形成されて、防眩性が付与されている。
【0259】
本実施例のアンダーコート層20の膜特性の一例をあげると、表面硬度が鉛筆硬度で3Hであり、光沢度(Ga60度)は90、中心線平均粗さ(Ra)は100nm、および曇度は3%であった。
【0260】
前記反射防止層30は、膜厚0.05〜1μm(サンプルでは0.21μm)であり、チタニア系非晶質体の高屈折率層とシロキサン系樹脂の低屈折率層とから構成されている。前記高屈折率層は、屈折率が1.5〜2.0(サンプルでは1.75)であり、前記低屈折率層はその屈折率が1.3〜1.5(サンプルでは1.48)である。また、前記高屈折率層には、平均粒子径が50〜1000オングストローム(サンプルでは50オングストローム)のチタニア粒子が分散されている。前記低屈折率層には、平均粒子径50〜1000オングストローム(サンプルでは80オングストローム)のシリカ粒子が分散されている。
【0261】
この反射防止層30は、非常に緻密かつ均質で、クラック等が発生していないことが確認された。また、反射防止層30の空気中における反射率は、550nmで0.5%であり、高い反射防止効果が確認された。
【0262】
前記汚染防止層40は、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシランからなる厚さ20〜800オングストローム(サンプルにおいては100オングストローム以下)の層から構成されている。この汚染防止層40は、水の接触角が100度以上であり、優れた撥水性を示した。また、前記汚染防止層40は屈折率nが1.25〜1.45であり、したがってnd(d:汚染防止層40の厚さ)が0.1μmより小さいことが確認された。
【0263】
次に、本実施例の偏光板1600の製造方法について述べる。
【0264】
まず、偏光基板10の表面に、実施例4で用いたと同様のアクリル樹脂塗布液を用い、実施例4と同様な転写法によってアンダーコート層20の表面に微細な凹凸を形成した。
【0265】
ついで、エチルセロソロブとエタノールとの混合溶媒(セロソロブ:エタノール=4:1)にテトラブトキシチタンを濃度20重量%で溶解し、触媒量(塗布液に対し0.3重量%程度)の酢酸を加え、室温で撹拌した。この溶液に前記チタニア粒子を分散させ、十分に撹拌して塗布液を調整した。この塗布液は均質なゾルであり、長期間良好な保存安定性が得られ、沈澱は見られなかった。この塗布液をスピンコーティングにより偏光板上に塗布し、50〜100℃(サンプルでは60℃)に加熱してチタニア系非晶質体の高屈折率層を形成した。
【0266】
次いで、メチルセロソロブにγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを濃度20重量%で溶解し、触媒量(塗布液に対し0.01重量%程度)の塩酸を加え、室温で撹拌した。この溶液に前記シリカ粒子を分散させて混合し、さらに、過塩素酸マグネシウムを触媒量(塗布液に対し0.05重量%程度)添加し、十分に撹拌して塗布液を調整した。この塗布液は均質なゾルであり、長期間にわたって良好な保存安定性を有し、沈澱も見られなかった。この塗布液をディップコーティングにより偏光板に塗布し、50〜100℃(サンプルでは60℃)で加熱して、シロキサン系樹脂の低屈折率層を形成した。このようにして2層構造の反射防止層30が形成された。
【0267】
ついで、上記の工程で得られた偏光板を酸素プラズマに曝した後スピンナーにセットした。そして、「フロリナートFC-70」に含フッ素シラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシランを3重量%溶解させた溶液を上述した偏光板に滴下してスピンナーを約3,000rpmの回転速度で回転させ、溶液を塗布した。その後、偏光板を相対湿度50%、温度50℃の雰囲気で1時間放置し、さらに、「フロリナートFC-70」によって偏光板の洗浄を行い、未反応の含フッ素シラン化合物を除去し、汚染防止層40を形成した。この汚染防止層40の形成によって、偏光板の外観ならびに反射防止特性において、特に変化は見られなかった。
【0268】
この偏光板1600について、前記実施例1と同様に特性試験を行った。その結果、偏光板の特性として、a.密着性,b.耐擦傷性,c.耐薬品性およびd.汚染防止性の各特性において実施例1と同様に良好な結果が得られた。さらに、本施例の偏光板1600をMIM素子を用いたアクティブマトリクス駆動の液晶パネル前面に貼り付けて液晶表示パネルを作成した。この液晶表示パネルについて、実施例1と同様に、a.高温高湿試験,b.熱衝撃試験,c.日光暴露試験およびd.視認性の特性試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0269】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のシラン化合物からなる汚染防止層を有することにより、優れた視認性を確保しながら、撥水性,汚染防止性に優れた偏光板、およびこの偏光板を効率よく製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例1(実施例3,4,5,7〜13,15,16)の偏光板を模式的に示す断面図である。
【図2】
本発明の実施例2(実施例6,14)の偏光板を模式的に示す断面図である。
【図3】
本発明の偏光板を形成するのに用いられる真空蒸着装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
10 偏光基板
12 偏光層
14 第1の支持層
16 第2の支持層
20 アンダーコート層
30 反射防止層
40 汚染防止層
50 樹脂フィルム
52 接着層
100〜1600 偏光板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-01 
出願番号 特願平6-102080
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3387204号(P3387204)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 偏光板、偏光板の製造方法および液晶表示装置  
代理人 布施 行夫  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 井上 一  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 井上 一  

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