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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1109613 |
異議申立番号 | 異議2003-70512 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-09-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-02-25 |
確定日 | 2004-12-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3317676号「硬化性組成物の硬化物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3317676号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第3317676号に係る出願は、平成3年9月9日に出願された特願平3-255888を原出願とする分割出願として平成10年11月27日に出願され、平成14年6月14日に特許権の設定登録がなされ、その後、旭硝子株式会社より特許異議の申立がなされ、平成15年6月11日付けで取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月22日付けで特許異議意見書が提出され、さらに、平成15年11月21日付けで特許異議申立人から上申書が提出されたものである。 [2]本件発明 本件特許第3317676号の請求項1に係る発明は、特許された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により構成される次のとおりのものである。 「【請求項1】(a)分子量が10,000以上であり、分子量分布をしめすパラメータ(Mw /Mn )が1.5以下である反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体及び(b)充填材として膠質炭酸カルシウム、可塑剤としてエポキシ可塑剤、硬化触媒としてオクチル酸錫とアミン化合物を含む添加剤を含有する硬化性組成物の硬化物であって、その硬化物は、(c)JISA-5758の耐久性評価項に準拠し、90℃にて、1サイクル実施後、常温で1日間放置後に測定した数値を基準にして求められる加熱圧縮復元率が30%以上であり、(d)50%引張時の応力が0.5〜1.8kg/cm2 、かつ(e)最大引張強度時の伸びが400%以上であり、前記反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の反応性ケイ素基は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性組成物の硬化物。 【化1】 ![]() 〔式中、R1及びR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R3)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR3は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR3は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解基(ただし、メルカプト基を除く)を示す。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。また、m個の下記基におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。〕 【化2】 ![]() 」 [3]特許異議申立理由 特許異議申立人の主張する理由は、概略以下のとおりである。 1.本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に実質的に記載された発明であり、また、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて又は甲第6号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明は特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 従って、請求項1に係る発明の特許は、同法第113条第1項第2号により取り消すべきものである。 2.本件明細書の記載に不備があるので、請求項1に係る特許は特許法第36条第4項又は第5項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、請求項1に係る特許は同法第113条第1項第4号により取り消すべきものである。 [4]取消理由 取消理由通知の内容は次のとおりである。 1.引用刊行物 刊行物1:特開平3-72527号公報(特許異議申立ての甲第1号証) 刊行物2:「日本接着協会誌」19巻6号(1983)32〜39頁(同甲第2号証) 刊行物3:特開平57-155249号公報(同甲第3号証) 刊行物4:特開昭58-47054号公報(同甲第4号証) 刊行物5:「フィラーハンドブック」株式会社大成社、昭和62年6月25日発行、131〜140頁(同甲第5号証) 刊行物6:昭和63年4月12日に発行された、特願昭55-186818号に係る昭和62年12月29日付け手続補正書を掲載した特許公報(同甲第6号証) 2.取消理由 刊行物1〜6には、旭硝子株式会社が提出した特許異議申立書の7頁2行〜14頁25行に指摘されている発明が記載されているものと認められる。 すなわち、刊行物1には、本件発明で規定する要件を満たす重合体に対し、充填剤、可塑剤、硬化触媒等が配合されることが記載されており、本件発明では、これら各成分が特定されてはいるが、それらは、いずれも刊行物2〜6に明示されているものである。 したがって、本件発明は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 [5]特許異議申立についての判断 〈1〉刊行物の記載事項 1.刊行物1:特開平3-72527号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証) 該公報には次のことが記載されている。 (1)「(4)複合金属シアン化物錯体触媒の存在下イニシエーターに炭素数3以上のモノエポキサイドを開環付加重合させ、つづいて分子末端の水酸基を不飽和基に変換し、さらに不飽和基に加水分解性基を有するヒドロシリコン化合物を反応させることを特徴とする、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドの製造法。 … (12)請求項4項記載の方法で製造された加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲) (2)「[従来の技術] 末端に不飽和基を有するポリアルキレンオキシドはそれ単独で硬化反応をおこし、弾性材料として用いる事ができる。又末端不飽和基の反応を利用して加水分解性シリル基などの他の官能基を導入する事によって非常に柔軟な硬化性組成物を得ることもできる。 上記いずれの場合でも、硬化物に柔軟性を持たせるためには、ポリアルキレンオキシドとして高分子量体のものを用いる必要がある。」(第2頁右上欄7行〜16行) (3)「このポリアルキレンオキシドの末端基当たりの分子量は2000以上、特に4000以上が好ましい。また、末端基の数は2〜8、特に2〜6が好ましい。分子量(末端基当たりの分子量×末端基の数)は、1.5万〜8万、特に2万〜5万が好ましい。さらに、このポリアルキレンオキシドから誘導される後述の誘導体の硬化特性の面から、末端基の数は2を越えることがより好ましい。即ち、末端基数の2ポリアルキレンオキシドが高分子量となる程硬化物の架橋点間分子量が大きくなるため硬化物の伸びは大きくなるが強度等の機械的物性が不十分となるおそれがある。従って、末端基数が2を越えるポリアルキレンオキシドを使用することによって架橋点を導入しておくことが好ましい。よって特に、ポリアルキレンオキシドとしては2.3〜4の末端基を有するポリアルキレンオキシドが好ましい。」(第4頁左上欄最下行〜同頁右上欄17行) (4)「硬化反応においては、硬化促進触媒を使用してもしなくてもよい。硬化促進触媒としては…オクタン酸錫…等のごときカルボン酸の金属塩:ジブチルアミン-2-エチルヘキソエート等の如きアミン塩:ならびに他の酸性触媒および塩基性触媒を使用しうる。より好ましくは、この触媒を加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドに対し、0.01〜5wt%配合する。」(公報第5頁左下欄8行〜17行) (5)「本発明における加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドには更に必要であれば補強剤、充填剤、可塑剤、タレ止め剤、架橋剤などを含ませてもよい。補強剤としてはカーボンブラック、微粉末シリカなどが、充填剤として炭酸カルシウム、タルク、クレイ、シリカなどが、可塑剤としてはジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、塩素化パラフィン及び石油系可塑剤などが、顔料には酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどの無機顔料及びフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機顔料が、タレ止め剤として有機酸処理炭酸カルシウム、水添ひまし油、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、微粉末シリカなどがあげられる。架橋剤としては、前記ヒドロシランの水素原子が加水分解性基あるいはアルキル基に変換された化合物、例えばメチルトリメトキシシランやテトラエトキシシランがある。」(第5頁左下欄18行〜右下欄16行) (6)「本発明の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを含む湿気硬化性樹脂組成物は、建造物、航空機、自動車等の被覆組成物およびシーリング組成物またはこれ等の類似物として好適に使用する事ができる。」(第5頁右下欄17行〜第6頁左上欄1行) (7)「(実施例1) アリルアルコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、片末端不飽和基含有ポリプロピレンオキシドを得た。これにナトリウムメチラートのメタノール溶液を加え、メタノールを除去した後、アリルクロライドを加えて、末端の水酸基を不飽和基に変換した。 得られた不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は11,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。 上記末端がアリル基である不飽和基末端ポリアルキレンオキシド1モルに塩化白金酸の存在下メチルジメトキシシラン2モル反応させ、1分子当たり平均2個のメチルジメトキシシリル基を有する加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを得た。得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は12,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。 得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは3.5Kg/cm2、引張り強度は9.0Kg/cm2、破断伸度は180%であった。 (実施例2) 分子量1,000のジエチレングリコール-プロピレンオキシド付加物を開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリプロピレンジオールを得た。これにナトリウムメチラートのメタノール溶液を加え、メタノールを除去した後、アリルクロライドを加えて両末端の水酸基を不飽和基に変換した。得られた不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は14,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。 上記末端がアリル基である不飽和基末端ポリアルキレンオキシド1モルに塩化白金酸の存在下メチルジメトキシシラン2モル反応させて、1分子当たり平均2個のメチルジメトキシシリル基を有する加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを得た。得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。 得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは2.8Kg/cm2、引張り強度は8.5Kg/cm2、破断伸度は260%であった。 (実施例3) 分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は25,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。 得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは1.3Kg/cm2、引張り強度は9.2Kg/cm2、破断伸度は240%であった。 (実施例4) 分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は25,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。 得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは2.1Kg/cm2、引張り強度は10.3Kg/cm2、破断伸度は210%であった。 (実施例5) 分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は35,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.23であった。 得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは0.8Kg/cm2、引張り強度は7.8Kg/cm2、破断伸度は280%であった。」(第6頁左上欄6行〜第7頁右下欄16行) (8)「[発明の効果] 以上示した様に、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて重合したポリアルキレンオキシドを用いることによって末端不飽和基を有する高分子量で分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドを簡便で実用的な方法で得られる事が本発明によって明らかとなった。また、この不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの不飽和基を加水分解性基シリル基に変換することにより、水分の存在下に硬化しうる硬化性樹脂が得られる。この硬化性樹脂の硬化物は優れた物性を有し、シーリング剤等として有用である。」(第7頁右下欄17〜第8頁左上欄8行) 2.刊行物2:「日本接着協会誌」19巻6号(1983)32〜39頁(特許異議申立人の提出した甲第2号証) 該刊行物は「新しい弾性シーリング材-変性シリコーン-」と題する新材料を紹介した論文であって、次のことが記載されている。 (1)「1.はじめに ………変性シリコーン系シーリング材用のベースポリマーである変性シリコーンは、…現在市場に供給され使用されているのは1種類だけである。我々が開発した、ポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有するテレケリック液状ポリマー(商品名「カネカMSポリマー(R)」、鐘淵化学工業(株))である。 この液状ポリマーは、水分及び触媒により末端のケイ素原子上のメトキシ基が加水分解を受けてシラノール基が生成し、続いてシラノール縮合反応が起きシロキサン結合が生成する事によって、分子鎖延長反応及び架橋反応が進みゴム弾性体となる。この硬化反応が常温下数時間という短時間で進むので、弾性シーリング材として有用な液状ポリマーとなる。」(第32頁左欄14行〜27行) (2)「2.液状ポリマーの製造法と性質 2.1 液状ポリマーの製造法 …一方、弾性シーリング材としての重要な要求性能として、低応力でかつ高伸びである事が必要とされるが、このためには硬化物の架橋点間分子量が大きい事、すなわちテレケリック液状ポリマーができるだけ高分子量である事が一般には必要とされる。… CH2=CHCH2O…―OH、OH……OH MW 約3,000 (反応式など省略) ―OCH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2 図1 MSポリマーの製造法」(第32頁右欄18行〜第33頁第左欄2行) (3)「2.2液状ポリマーの性質 表1にメチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキシド(「カネカMSポリマー(R)」)の一般性状を示す。… 表1 MSポリマーの一般性状 … 平均分子量 約7,500」(第33頁左欄10行〜21行) (4)「3.変性シリコーン系シーリング材の基本特性 3.1 配合組成 表2に2成分系の代表的配合組成を示す。充填剤の種類により硬化物の引張特性がかなり異なる。低応力高伸び硬化物を得るには炭酸カルシウムを充填剤として使用するのがよい。…縮合触媒としてはスズ、鉛、鉄などの脂肪酸塩、チタン酸エステルなど各種のシラノール縮合触媒が効果あるが、低温硬化性や耐久性などよりスズ(II)脂肪酸塩とアミンとの併用系が最も代表的である。… 表2 配合組成(2成分系) 配合原料 配合比(重量部) 基材 カネカMSポリマー 100 可塑剤 40〜70 CaCO3 、TiO2 etc 90〜130 だれ防止剤 3〜6 … … 硬化剤 スズ(II)脂肪酸塩 2〜4 アミン 0.5〜1.5 可塑剤 5〜10 TiO2 、CaCO3 10〜20 」(第34頁右欄11行〜第35頁左欄13行) (5)「3.2弾性シーリング材の要求性能 建築用弾性シーリング材に要求される性能は多岐多様にわたるが、大別すると施工性、接着性、耐久性、非汚染性、及び経済性の5つに要約する事ができよう。 … 3)耐久性 耐熱性、耐寒性、耐候性、耐疲労性、耐オゾン性、耐水性、耐アルカリ性などが組み合わされた硬化物の総合性能であり、これら各性能が良好なレベルにある事が要求される。 …」(第35頁左欄15行〜41行) (6)「3.6 耐久性 シーリング材でいう耐久性は前述したように各種性能の組み合わされた総合性能と位置づける事ができる。特に耐疲労性性能が重要な意味を持っている。この耐疲労性試験が繰返し疲労試験機にて±10%、±20%及び±30%の各伸縮率で50万回まで行なわれ,±10%と±20%では異常はないが、±30%では20万回強で亀裂が発生し、シリコーン系シーリング材につぐ耐疲労性であるとの報告がある。 耐久性の試験方法としては、(1)JISA5758耐久試験による方法、及び(2)実際の目地の動きを再現するという事で考案された動曝露試験機による方法の2方法が一般に採用されている。(1)については変成シリコーン系シーリング材は最高ランクの9030区分耐久性に合格する。配合上のポイントは硬化物の圧縮永久歪が小さくなる縮合触媒を使用する事にある。表3に縮合触媒と圧縮永久歪との関係を示すが,スズ(II)カルボン酸塩系の触媒を使用すれは,圧縮永久歪が40%と2液シリコーン系シーリング材の30%に近いレベルのものが得られるようになり耐久試験に合格する。」(第36頁右欄15行〜最終行) (7)「表3 2成分形変性シリコーンの縮合触媒と硬化物圧縮永久歪 縮合触媒 引張物性 圧縮永久歪 M50 TB EB (%)*1 … … … … … Sn(OCOC7H15)2 1.1 6.7 650 40 -LA*2 … … … … … *1 90℃×30%圧縮×7日後 *2 C12H25NH2 」(第37頁左下欄) 3.刊行物3:特開平57-155249号公報(特許異議申立人の提出する甲第3号証) (1)「(1)〔A〕主鎖が…からなり、少なくとも一つの末端に架橋可能なシリコン官能基を有する、分子量が300〜15,000のオキシアルキレン重合体100重量部と〔B〕分子中にエポキシ基を含有する可塑剤1〜150重量部 とを含有する硬化性組成物。」(特許請求の範囲(1)) (2)「本発明は、架橋可能なシリコーン官能基を含有するオキシアルキレン重合体を含む復元性良好な硬化性組成物に関する。」(第2頁左上欄6〜8行) (3)「本発明でいうエポキシ基を含有する可塑剤とは…具体的にはエポキシ化不飽和油脂類…用いることができる。このような可塑剤としては、エポキシ化大豆油、…等が挙げられる。」(第2頁右上欄8行〜20行) (4)「実施例1 CH3 | 全末端の80%に(CH3O)2Si-基を有する平均分子量8,000のオキシプロピレン重合体100重量部に対し、エポキシ化大豆油50重量部 炭酸カルシウム110重量部、酸化チタン30重量部、タレ防止剤として水添ヒマシ油6重量部、酸化防止剤として…を加え、ヘラで充分撹拌後3本ペイントロールを3回通す。 該配合物を30重量部とり、これにオクチル酸スズ0.3重量部を加え、スパチュラで充分混合後、23℃、60%湿度のふんい気中で7日間硬化させ、さらに50℃、55%湿度のふんい気中で7日間養生する。こうして得た硬化物を50℃温水に1日浸漬したのち、1日23℃、60%湿度に放置後、90℃にて30%圧縮し7日間放置する。この後圧縮を解除し、1日23℃60%湿度に放置したあとの復元率は60%であった。比較例として、エポキシ化大豆油のかわりにDOPを用いたものについて同様の試験を行なうと30%であった。」(第3頁右上欄10行〜同頁左下欄11行) 4.刊行物4:特開昭58-47054号公報(特許異議申立人の提出した甲第4号証) (1)「特許請求の範囲 (1)(A) 少なくとも1つの加水分解性珪素基及び/又はシラノール基を含有し、主鎖が本質的に-RO-(Rは2価のアルキレン基)で示される化学的に結合された繰り返し単位を有するものであつて、且つ分子量が500〜15000であるポリエーテルと、 (B) エポキシ基含有化合物とを、 有効成分として含有することを特徴とする室温硬化性組成物。」(特許請求の範囲) (2)「本発明の珪素基含有ポリエーテルは、種々の充填剤を配合する事により変性しうる。充填剤としては、…如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、…などの如き充填剤;…の如き繊維状充填剤が使用できる。これら充填剤で強度の高い硬化組成物を得たい場合には、主に…表面処理微細炭酸カルシウム、…などから選ばれる充填剤を珪素含有ポリエーテル100重量部に対し1〜100重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。又、低強度で伸びが大である硬化組成物を得たい場合には、主に…炭酸カルシウム、…などから選ばれる充填剤を珪素基含有ポリエーテル100重量部に対し5〜200重量部の範囲内で使用すれば好ましい結果が得られる。…本発明において、可塑剤を充填剤として併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填剤を混入できたりするのでより有効である。」(第3頁右上欄11行〜左下欄19行) (3)「該可塑剤としては、…例えば…;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどの如きエポキシ可塑剤類;…使用できる。」(第3頁左下欄20行〜右下欄14行) (4)「実施例1 平均分子量8000、末端基として CH3 | (CH3)2Si-CH2-CH2-CH2-O-基を全末端基のうち80%有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル20重量部、ジオクチルフタレート45重量部、キシレン樹脂(三菱ガス化学工業製、商品名ニカノールHH)20重量部、脂肪酸処理炭酸カルシウム(白石カルシウム製、商品名CCR)100重量部、重質炭酸カルシウム175重量部、酸化チタン30重量部、水添化ヒマシ油6重量部、オリゴエステルアクリレート(東亜合成化学工業(株)、商品名アロニックス-M8060)5重量部、エピコート834 10重量部(三菱油化製)、…オクチル酸錫4重量部、ラウリルアミン0.75重畳部を加え、三本ペイントロールでよく混合した配合物を作製する。…」(第4頁右上欄7行〜左下欄末行) 5.刊行物5:「フィラーハンドブック」株式会社大成社、昭和62年6月25日発行、131〜140頁(特許異議申立人の提出した甲第5号証) 該刊行物には、1.粉末状無機充填剤、補強剤 1.1炭酸塩 1.1.1沈降製炭酸カルシウム、1.1.2重質炭酸カルシウム という項目があり、1.1.1 沈降製炭酸カルシウムの項には次のことが記載されている。 (1)「さらに、沈降製炭酸カルシウムの一般的な製造で反応条件を比較的早くなるように選んで得られる炭酸カルシウムはコロイド状の微粒子なので、コロイド性炭酸カルシウム(…)、あるいはコロイドにちなんで膠質炭酸カルシウムとも呼ばれている。このコロイド性炭酸カルシウムは有機物等で表面処理しないままでも医薬用、食品添加物栄養剤、アート紙、艶紙などの塗被用顔料として使用されるが、更に炭酸カルシウムの1〜5%量の脂肪酸塩等の有機物で表面処理した炭酸カルシウムはゴム、プラスチック等に混練使用された場合に、補強性その他特殊の性能を与えることから“活性化極微細炭酸カルシウム”(…)ともよばれている。」(131頁右欄4行〜18行) (2)「2.2 表面処理炭酸カルシウム コロイド性炭酸カルシウムの表面を脂肪酸塩、あるいはロジン塩などで被覆した製品(それぞれ白艶華CC、白艶華DD)が世界にさきかけて日本で開発されたのは1927年であった。」(133頁左欄27〜31行) (3)「表3 代表的炭酸カルシウム製品の物理、化学的性質 極微細活性化炭酸カルシウム 軽微性炭カル 重質炭カル …白艶華CC…白艶華CCR… PC ホワイトン …………」(第134頁) 6.刊行物6:昭和63年4月12日に発行された、特願昭55-186818号に係る昭和62年12月29日付け手続補正書を掲載した特許公報(特許異議申立人の提出した甲第6号証) (1)「特許請求の範囲 (1)(イ) ………繰り返し単位よりなる分子量500〜15,000のポリエーテル100重量部に対して、200重量部以下の (ロ) ………で示されるジオルガノポリシロキサンを含有してなる室温硬化性組成物。」(特許請求の範囲) (2)「本発明は、水分に触れるとゴム様物質へと硬化しうる、加水分解性シリル基末端ポリエーテルの組成物に関する。」(第2頁左上欄17行〜19行) (3)「本発明の組成物では、種々の充填剤を混入する事により変性しうる。充填剤としては、…如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、…などの如き充填剤;…の如き繊維状充填剤が使用できる。これら充填剤で強度の高い硬化組成物を得たい場合には、主に…表面処理微細炭酸カルシウム、…などから選ばれる充填剤を珪素含有ポリエーテル100重量部に対し1〜100重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。又、低強度で伸びが大である硬化組成物を得たい場合には、主に…炭酸カルシウム、…などから選ばれる充填剤を珪素末端ポリエーテル100重量部に対し5〜200重量部の範囲内で使用すれば好ましい結果が得られる。…本発明において、可塑剤を充填剤と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填剤を混入出来たりするのでより有効である。」(第5頁左下欄16行〜第6頁左上欄4行) 〈2〉対比、進歩性の判断 先ず、本件請求項1に係る発明(以後単に「本件発明」という)と、刊行物2に記載された発明とを対比する。 刊行物2には、ポリプロピレンオキシド主鎖の末端にメチルジメトキシシリル官能基を有するテレケリック液状ポリマー(「カネカMSポリマー」)を用いた変性シリコーン系シーリング材が記載され(2.(1))、そのシーリング材の配合組成やその硬化物の物性も記載されている(2.特に(4)、(7))。 即ち、刊行物2には反応性ケイ素基(メトキシ基)含有オキシアルキレン重合体をポリマー成分とする組成物の硬化物が記載されているということができ、本件発明とは、反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体をポリマー成分とする組成物の硬化物であるという大枠の点で共通している。 次にこの組成物を構成する各成分について検討する。 1.ポリマー成分について 1)本件発明の(a)成分である反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレンは、分子量が10,000以上であり、分子量分布をしめすパラメーター(Mw/Mn)が1.5以下であるのに対し、刊行物2に記載された「カネカMSポリマー」は分子量が7500であり(2.(3))、Mw/Mnについて記載がない点で両者は相違している。 2)刊行物2の「カネカMSポリマー(R)」の「メチルジメトキシシリル基末端」(2.(3))は、本件発明の一般式(1)で表される反応性ケイ素基において、m=0、R2=炭素数1のアルキル(即ちメチル)、X=加水分解基(即ちメトキシ)、a=2、の場合に該当する。さらに付言すれば、本件発明の実施例の重合体Bの末端である(CH3O)2Si(CH3)CH2CH2CH2-基は、刊行物2の図1のMSポリマーの製造法の最終段階(2.(2))で示される―OCH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2と同じ化学構造を有するものである。 2.充填剤成分について 本件発明では、(b)成分の充填剤として膠質炭酸カルシウムを使用するのに対し、刊行物2に記載された発明では、充填剤として単にCaCO3 (炭酸カルシウム)を使用すると記載(2.(4))されている点で両者は相違している。 3.可塑剤について 本件発明では、(b)成分の可塑剤としてエポキシ可塑剤を使用するのに対し、刊行物2に記載された発明では単に可塑剤を使用すると記載(2.(3)及び(7))されている点で両者は相違している。 4.硬化触媒について 本件発明では、(b)成分の硬化触媒としてオクチル酸錫とアミン化合物を使用するが、刊行物2に記載された発明においてもSn(OCOC7H15)2(即ち、オクチル酸錫)とC12H25NH2(即ちラウリルアミン)を使用する点で(2.(7))、両者は一致している。 5.物性値について 1)本件発明の硬化物は(c)JISA-5758の耐久性評価項に準拠し、90℃にて、1サイクル実施後、常温で1日間放置後に測定した数値を基準にして求められる加熱圧縮復元率が30%以上である。 これに対し、刊行物2では、耐久性はJISA5758耐久試験による方法が一般に採用され(2.(6))、圧縮永久歪は40%であり、その条件は90℃×30%圧縮×7日後(2.(7))、と記載され、表現上は相違する。 しかし、永久歪と復元率とは密接な関係にあり、永久歪みが40%ということは回復率が60%であると認められるから、その値は本件発明の30%以上の規定範囲と重複するものであり、仮に、試験条件等で若干の相違があるとしても、刊行物2に記載された物性値が本件発明の要件に該当しない値とは認められない。 なお、本件発明では、1サイクル実施後、常温で1日間放置後に測定した数値を基準にする旨規定されているが、前審段階で特許権者が提出したJISA5958の4.9.4「耐久性試験方法」の項目に、「24時間標準状態に置いた後、試験体を調べる。」旨記載されているので、刊行物2においてもその方法を採用しているものと認められ、この点で両者に相違はない。 2)本件発明の硬化物は(d)50%引張時の応力が0.5〜1.8kg/cm2であるのに対し、刊行物2ではM50は1.1であり(2.(7))、M50が50%伸長時応力で単位はKg/cm2であることは刊行物2の36頁3.4「耐熱性と耐寒性」に「50%伸長時応力(M50)」及び「50%伸長時応力(Kg/cm2)」(図8の縦目盛の説明)の記載から明らかであるから、この点で両者に差異はない。 3)本件発明の硬化物は(e)最大引張強度時の伸びが400%以上であるのに対し、刊行物2記載ではEB は650であり(2.(7))(EBは破断伸び(%):elongation at break)、この点で両者に差異はない。 以上、本件発明と刊行物2に記載された発明とは「(a)反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体及び(b)充填材として炭酸カルシウム、可塑剤、硬化触媒としてオクチル酸錫とアミン化合物を含む添加剤を含有する硬化性組成物の硬化物であって、その硬化物は、(c)JISA-5758の耐久性評価項に準拠し、90℃にて、1サイクル実施後、常温で1日間放置後に測定した数値を基準にして求められる加熱圧縮復元率が30%以上であり、(d)50%引張時の応力が0.5〜1.8kg/cm2、かつ(e)最大引張強度時の伸びが400%以上であり、前記反応性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の反応性ケイ素基が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性組成物の硬化物。 ![]() 〔式中、R1及びR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R3)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR3は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR3は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解基(ただし、メルカプト基を除く)を示す。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。また、m個の下記基におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。〕 【化2】 ![]() 」 の点で一致し、上記1.1)、2及び3の点で相違する。 次に各相違点について検討する。 相違点1.1)について 刊行物1には、「加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物」(1.(1)請求項12)の発明について記載され、この加水分解性シリル基末端としては一例を挙げれば末端アリル基にメチルジメトキシシランを反応させたものであるから(1.(7)実施例2)、これは-CH2CH=CH2 +(CH3O)2SiH(CH3)→(CH3O)2Si(CH3)-CH2CH2CH2-となり、本件発明の一般式で表される反応性ケイ素基において、m=0、R2=炭素数1のアルキル(即ちメチル)、X=加水分解基(即ちメトキシ)、a=2、の場合に該当するものであり、硬化する際の硬化促進触媒としてオクチル酸錫やアミン塩を用いることも記載され(1.(4))、組成物とする際の配合成分として充填剤(その一例としての炭酸カルシウム)や可塑剤の使用も記載され(1.(5))、また、その硬化物は優れた物性を有しシーリング材として有用であることも記載されている(1.(6)、(8))。 このようにしてみると、刊行物1記載の発明は、重合体、硬化触媒、配合成分、用途などで、本件発明や刊行物2に記載された発明と多くの共通点を有し、当然に同じ技術分野に属するものであり、刊行物2に刊行物1を結びつけることは当業者が当然に考えることである。 そして、刊行物1には、その実施例1〜5に(1.(7))、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドとして、分子量が10,000以上でかつMw/Mnが1.5以下の要件を満足する重合体が以下に示すように記載されている。 実施例No. 数平均分子量 Mw/Mn 1 12,000 1.10 2 15,000 1.10 3 25,000 1.20 4 25,100 1.20 5 35,100 1.23 してみれば、刊行物2の分子量7500の重合体に代えて刊行物1記載の分子量10,000以上で且つMw/Mnが1.5以下の重合体を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2について 刊行物5には、沈降製炭酸カルシウムはコロイドないし膠質炭酸カルシウムと呼ばれ、脂肪酸塩等の有機物で表面処理したものは“活性化極微細炭酸カルシウム”と呼ばれていること(5.(1))、コロイド性(膠質)炭酸カルシウムの表面を脂肪酸(塩)で処理したのが白艶華CCであり1927年にすでに開発され(5.(2))、表3では白艶華CCを始め5種類が極微細活性化炭酸カルシウムの代表的な製品として挙げられている(5.(3))。 なお、刊行物4にも「充填剤で強度の高い硬化組成物を得たい場合には、主に…表面処理微細炭酸カルシウム、…などから選ばれる充填剤を」使用する旨の記載がなされている(4.(2))。 このようなことからすると、刊行物1の充填剤としての炭酸カルシウムとして、その代表的なものである膠質炭酸カルシウムを用いることは当業者が容易に想到することである。 相違点3について 刊行物3に記載された発明は、架橋可能なシリコーン官能基を含有するオキシアルキレン重合体〔A〕を含む復元性良好な硬化性組成物に関するものであり(3.(2))、そのために該〔A〕にエポキシ化不飽和油脂類などの可塑剤〔B〕を配合するものである(3.(1)請求項1)。 そして、実施例1では、全末端の80%に(CH3O)2Si(CH3)-基を有する平均分子量8,000のオキシプロピレン重合体100重量部に対し、エポキシ化大豆油50重量部、炭酸カルシクム110重量部、オクチル酸錫0.3重量部、その他の成分を配合した組成で、90℃30%圧縮テストで復元率60%を達成しているのである(3.(4))。 このような刊行物3の記載を見れば、刊行物2記載の発明の可塑剤としてエポキシ可塑剤を使用することは当業者が容易に想到し得ることである。 なお、刊行物4にも、「可塑剤を充填剤と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくしたり、多量の充填剤を混入できたりするのでより有効である。」と記載され(4.(2))、該可塑剤としてエポキシ化大豆油などのエポキシ可塑剤類が挙げられているので(4.(3))、刊行物4に記載された発明からも容易に想到し得るものである。 以上のとおりであるから、上記相違点1〜3はすべて当業者が容易に想到し得るものである。 また、本件発明の「耐久性」についての効果についても、本件明細書実施例の表Aを見ると、その効果が◎○△×という記号が記載されている。 しかし、本件明細書にはこの「耐久性」がどのようなテストにより、何を基準として判定したのかということについて何の記載もなく、また◎○△×という数値に基づかない記号で、客観的にどの程度の効果なのかも判断できない。 特許権者は、特許異議意見書の13頁において、前審段階で提出した意見書を引用し、JISA-5758の耐久性試験全工程(工程1〜9)終了後の硬化性組成物の硬化物を目視で亀裂発生具合を観察し判定したものである旨主張するが、本件明細書の記載からは、それが特許権者の主張するとおりのものであると直ちに認定することはできない。 してみれば、この点に関して、本件発明が顕著な効果を奏するものであると認めることはできない。 また、特許権者は、刊行物1の実施例では破断伸度はいずれも400%を下回り、また、実施例の中には50%モジュラスが本件発明の上限である1.8Kg/cm2 を超えるものがあり、本件発明の(d)や(e)の要件を満足するものは得られない旨主張するが、刊行物1の実施例はすべて本件発明で必須とするエポキシ可塑剤や膠質炭酸カルシウム充填剤を配合していないものであるから、そこでの破断伸度や50%モジュラスのデータを基に、本件発明の(d)や(e)の要件を満足するものは得られない旨の主張は容れられるものではない。 そして、可塑剤を充填剤と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできる旨のことは、刊行物4(4.(4))や刊行物6(6.(3))にも記載されている。 6.まとめ 以上のとおりであるから、本件発明は、本出願前に頒布された刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [5]むすび 以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-10-13 |
出願番号 | 特願平10-337732 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(C08L)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中川 淳子、小野寺 務 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 佐野 整博 |
登録日 | 2002-06-14 |
登録番号 | 特許第3317676号(P3317676) |
権利者 | 鐘淵化学工業株式会社 |
発明の名称 | 硬化性組成物の硬化物 |
代理人 | 萩野 平 |
代理人 | 内田 明 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 萩原 亮一 |
代理人 | 添田 全一 |
代理人 | 石川 祐子 |
代理人 | 渡部 崇 |
代理人 | 栗宇 百合子 |