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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
管理番号 1109638
異議申立番号 異議2001-73214  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-01-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-28 
確定日 2004-12-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3171384号「リブ形成法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3171384号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3171384号の請求項1乃至5に係る発明は、平成9年6月11日に特許出願され、平成13年3月23日に特許の設定登録がなされ、その後、請求項1乃至5に係る特許について特許異議申立人 ジェイエスアール株式会社より特許異議申立てがなされ、取消理由が通知され、平成14年5月23日に訂正請求がなされ、この訂正請求に対し権利者に訂正拒絶理由を通知し期間を指定して意見を求めたところ、権利者からは何の応答もなされなかった。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
平成14年5月23日になされた訂正請求は、特許査定時に願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付された明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるもので、以下の訂正事項a、bを含むものである。
訂正事項a
特許明細書の請求項1中の「該セラミックス材料の」を「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の」と訂正する(平成14年5月23日付け訂正請求書の訂正事項bの記載による。)。
訂正事項b
特許明細書の【0030】段落に記載の「600℃における同様の重量減少率(WR600)は98重量%であった。」を、「600℃における同様の重量減少率(WR600)は96重量%であった。」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、実質的には、特許明細書の請求項1に記載の「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」を、「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」に訂正するものであると云える。
(1-1)訂正の目的の適否について
特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、特許明細書の請求項1に記載の「セラミックス材料」は、特許明細書【0005】段落の「本発明に用いられるリブ形成用セラミックス材料としては、低融点ガラスフリット、耐熱顔料、骨剤等を有機バインダー樹脂に分散させた有機ペースト材料や珪酸ナトリウムを主成分とした水ガラス(1〜3号のいずれも使用可)等が挙げられ、・・・。また、該ペースト材料には、硬化剤、安定剤、分散剤等の添加剤を配合することもできる。」との記載、【0019】段落の「ガラス基板上に、上記のリブ形成用セラミックス材料(リブペースト)をスクリーン印刷により塗工して」との記載、及び、【0024】乃至【0032】段落の実施例1乃至4の記載からみて、低融点ガラスフリット、耐熱顔料、骨剤等を有機バインダー樹脂に分散させ溶剤でペースト状としたものであると云えるから、「セラミックス材料中のバインダー樹脂」を含むものであるとは云える。
しかし、特許明細書の請求項1に記載の「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」における『熱天秤(同上)による400℃における重量減少率及び600℃における重量減少率』とは、特許明細書【0017】段落の「熱天秤(測定開始温度:30℃、昇温速度:5℃/min、空気雰囲気下で測定)による400℃における重量減少率(WR400或いはWC400)とは、具体的には感光性樹脂組成物或いはセラミックス材料を150℃で20分間乾燥させた後、サーマルグラビメトリック アナライザー『TGA-7』(パーキンエルマー社製)等の熱天秤を用いて測定される重量減少率であって、測定前(乾燥後)の重量をW0とし、空気雰囲気下で、測定開始温度を30℃として、昇温速度が5℃/minで昇温したときの400℃での重量W1を測定して次式より求められる重量変化を意味するものであり、上記のWR600、WC600もそれぞれの材料を600℃で同様に測定した値を示すものである。重量減少率(%)=[(W0-W1)/W0]×100」との記載からみて、測定対象を150℃で20分間乾燥させた後、サーマルグラビメトリック アナライザー『TGA-7』(パーキンエルマー社製)等の熱天秤を用いて上記のとおりの条件で測定される400℃及び600℃における重量減少率であると云える。
そして、訂正事項aは実質的には上記のとおりのものであり、「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」と「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」とは、熱天秤(同上)による重量減少率の測定対象が異なるものであるから、異なる技術的事項であると云える。
よって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるとは云えない。
また、特許明細書の請求項1の記載を検討すると、もともと、特許明細書の請求項1の「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」という記載自体は、その意味は明りょうであり、誤記であるとも、明りょうでない記載であるとも云えない。さらに、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、特許明細書の請求項1に記載のかかる記載が誤記又は明りょうでない記載であるという根拠を見出すことはできない。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいづれを目的とする訂正にも該当しない。
なお、権利者は、上記の訂正事項aについて、訂正請求書においては明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である旨、特許異議意見書においては誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張している。そこで、これらの主張について検討すると、たしかに、特許明細書の【0028】段落に実施例1について記載された「45重量%(WC400)であった」、同【0032】段落に実施例4について記載された「25重量%(WC400)であった」及び同【0034】段落に比較例1について記載された「75重量%(WC400)であった」は、後述のとおり、実施例1、4及び比較例1のセラミックス材料の成分及び各成分の配合比からみて技術的に理解し難い記載である。しかし、これらの数値の記載自体が誤記である可能性もあり、また、これらの数値が正しい数値を記載したものであったとしても、これらの数値がセラミックス材料中のバインダー樹脂を測定対象として得られた数値であることを信ずるに足る根拠もない。よって、これら実施例1,4及び比較例1において記載されたWC400の値が技術的に理解し難いものであるからといって、特許明細書の請求項1に記載の「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」が誤記又は明りょうでない記載であるとは云えず、しかも、正しくは又は測定対象を明りょうにすると「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」であるとは到底云えない。さらに、特許異議意見書に添付された実験成績証明書には、特許明細書の実施例1,4及び比較例1において使用されたセラミックス材料を測定試料として重量減少率(WC600)を測定した結果が記載されているところであり、特許明細書の実施例1,4及び比較例1において使用されたセラミックス材料中のバインダー樹脂を測定試料として重量減少率を測定することについては何等の記載もない。よって、かかる実験成績証明書の記載を参酌しても、訂正事項aが、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいづれかを目的とする訂正であるとは云えない。
(1-2)新規事項の有無について
特許明細書を如何に検討しても、「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」について記載はない。また、特許明細書には、「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」は記載されているものの、かかる記載が「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」を意味するものであることの根拠となる記載はない。さらに特許明細書の記載を検討しても「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」を導き出すに足る記載は見出せない。
よって、訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内でする訂正とは云えない。
(1-3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項aは実質的には上記のとおりのものであり、上記(1-1)で述べたとおり、「該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」と「該セラミックス材料中のバインダー樹脂の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)」とは、異なる技術的事項であるから、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を変更するものであると云える。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、特許明細書に記載された実施例2において、感光性樹脂組成物の熱天秤による600℃における重量減少率(WR600)の値を「98重量%」から「96重量%」に訂正するものである。
(2-1)訂正の目的の適否について
特許明細書の【0030】段落に記載の「600℃における同様の重量減少率(WR600)は98重量%であった。」は、それ自体明りょうな記載であり、特許明細書の記載を検討しても、かかる記載が誤りであり、特許明細書の実施例2における感光性樹脂組成物の熱天秤による600℃における重量減少率(WR600)の値が正しくは「96重量%」であることを信ずるに足る根拠となる記載は見出せない。
よって、訂正事項bは、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいづれを目的とする訂正にも該当しない。また、訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるとも云えない。
(2-2)新規事項の有無について
特許明細書に記載された実施例2において感光性樹脂組成物の熱天秤による600℃における重量減少率(WR600)の値が「96重量%」であることは、特許明細書には記載がなく、また、特許明細書を検討してもかかる事項を導き出すに足る記載もない。
よって、訂正事項bは、特許明細書に記載された事項の範囲内でする訂正であるとは云えない。
2-3.むすび
訂正事項a及びbは、以上のとおりのものであるから、訂正事項a及びbを含む上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議申立てについて
3-1.本件特許明細書
上述のとおり、平成14年5月23日になされた訂正請求は認められないものであるから、特許第3171384号の請求項1乃至5に係る特許に添付された明細書は、特許査定時に願書に添付された明細書、即ち特許明細書のとおりのものである。
3-2.当審で通知した取消理由の概要
当審で通知した取消理由は、本件の請求項1乃至5に係る発明の特許は、明細書及び図面の記載が不備であり、特許法第36条第4項又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消すべきものであるというものである。
3-3.当審の判断
(1)第36条第6項第2号違反について
特許明細書の請求項1及びそれを引用する請求項2乃至5に係る発明(以下、「本件発明1乃至5」という。)は、いずれも特許明細書の請求項1に記載された(1)式によって特定される発明であるので、まず、特許明細書の請求項1に記載された(1)式によって特定される事項の技術的意味について検討する。
特許明細書の請求項1に記載された(1)式によって特定される事項について特許明細書の記載を検討すると、【0004】段落に「リブ形成用セラミックス材料層に感光性樹脂組成物層を設けて、露光、現像によって所定の凹部を設けた後、該凹部のリブ形成用セラミックス材料を除去し、その後焼成してリブを形成するにあたり、該感光性樹脂組成物の熱天秤(測定開始温度:30℃、昇温速度:5℃/min、空気雰囲気下で測定)による400℃における重量減少率(WR400)及び600℃における重量減少率(WR600)と該セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)が、下式(1)を満足する時、パターン形成性が良好であることを見いだし本発明の完成に至った。」という記載、【0016】段落に「本発明においては、かかる感光性樹脂組成物の熱天秤(測定開始温度:30℃、昇温速度:5℃/min、空気雰囲気下で測定)による400℃における重量減少率(WR400)及び600℃における重量減少率(WR600)とセラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)が下式(1)を満足する必要がある。」という記載、さらには、【0017】段落に「上記の関係が、(WR400/WR600)≦(WC400/WC600)のときは、焼成完了後のセラミックスパターンの上部の形状が著しく悪化又は高さが低くなって、本発明の目的を達成することはできない。」との記載があるだけである。しかし、これらの記載は、本件発明1乃至5において感光性樹脂組成物の熱天秤(測定開始温度:30℃、昇温速度:5℃/min、空気雰囲気下で測定)による400℃における重量減少率(WR400)及び600℃における重量減少率(WR600)とセラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)が(1)式を満足するとき、パターン成形性が良好であることをいうだけであって、(1)式を導出する過程を教示するものではなく、また、(1)式を満足したとき何故パターン形成性が良好であるのか、その理由を示すものでもない。さらに、本件の出願時の技術常識を勘案しても、感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率とセラミックス材料の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率が(1)式を満足することにより、何故パターン形成性が良好となるのか、理解することができない。
しかも、特許明細書の実施例及び比較例には、セラミックス材料の熱天秤(同上)による600℃における重量減少率の値の記載がないため、これら実施例において用いられた感光性樹脂組成物とセラミックス材料の熱天秤(同上)の各温度における重量減少率が(1)式を満たすものであり、比較例において用いられた感光性樹脂組成物とセラミックス材料の熱天秤(同上)の各温度における重量減少率が(1)式を満たすものではないとは云えないから、特許明細書の実施例及び比較例の記載から、実際に、感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率とセラミックス材料の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率が(1)式を満足することにより、セラミックス材料のパターン形成性が良好で、精度の高いセラミックス材料の隔壁を形成することができると認識することもできない。
してみると、本件の出願時の技術常識を勘案しても、特許明細書の記載から(1)式によって特定される事項の技術的意味が理解できないと云わざるを得ない。
次に、本件発明1乃至5の範囲が明確か否か検討する。
本件発明1乃至5はいずれも上記(1)式によって特定されるものであるところ、(1)式は熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率の観点から感光性樹脂組成物とセラミックス材料との組合せを特定するものと云える。
そこでまず、感光性樹脂組成物及びセラミックス材料の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率について特許明細書の記載を検討すると、感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率に関し、【0017】段落に「かかる感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃における重量減少率は、10〜80%であることが好ましく、更には15〜65%が好ましく、また、600℃における同様の重量減少率が90%以上が好ましい。」との記載があり、実施例及び比較例においても感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率の値が記載されている。しかし、特許明細書の記載を如何に検討しても、セラミックス材料の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率の好適な範囲を教示する記載はなく、実施例及び比較例には、後述のとおり技術的に理解し難い値ではあるが、セラミックス材料の熱天秤による400℃における重量減少率の値は記載されているものの、600℃における重量減少率については全く記載がない。そして、個々の感光性樹脂組成物の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率の値が当該技術分野において広く知られているとは云えず、また、上記(1-1)で述べたとおり低融点ガラスフリット、耐熱顔料、骨剤等を有機バインダー樹脂に分散させ溶剤でペースト状としたものであるセラミックス材料の熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率については当該技術分野で知られているとは云えず、本件の出願時における技術常識からその値を予測することも困難であると云えるから、(1)式を満足する熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率を示す感光性樹脂組成物とセラミックス材料との組合せを想到することは、本件の出願時における技術常識からみて困難であると云わざるを得ない。また、特許明細書の実施例及び比較例の記載を検討しても、セラミックス材料の熱天秤による600℃における重量減少率についての記載がないため、(1)式を満足する熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率を示す感光性樹脂組成物とセラミックス材料との組合せと本件の出願時の技術水準との対比もできない。
よって、上記(1)式によって特定される本件発明1乃至5の範囲が明確であるとは云えない。
したがって、本件発明1乃至5を特定する事項の技術的意味が理解できず、本件発明1乃至5の範囲も明確でないため、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5の記載は、特許を受けようとする発明が明確でない。
(2)第36条第4項違反について
上記(1-1)で述べたように、本件発明における「セラミックス材料」とは、低融点ガラスフリット、耐熱顔料、骨剤等を有機バインダー樹脂に分散させ溶剤でペースト状としたものであると云え、『熱天秤(同上)による400℃における重量減少率及び600℃における重量減少率』とは、測定対象を150℃で20分間乾燥させた後、サーマルグラビメトリック アナライザー『TGA-7』(パーキンエルマー社製)等の熱天秤を用いて所定の条件で測定される400℃及び600℃における重量減少率であると云える。
よって、特許明細書の実施例及び比較例において、セラミックス材料は、ガラスパウダーとバインダー樹脂(ガラスパウダー100部に対して実施例で3部、比較例で2部)と溶剤としてのブチルカルビトールアセテート(同じく実施例、比較例ともに20部)とからなるものであり、セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)及び600℃における重量減少率(WC600)は、ガラスパウダーとバインダー樹脂(ガラスパウダー100部に対して実施例で3部、比較例で2部)と溶剤としてのブチルカルビトールアセテート(同じく実施例、比較例ともに20部)とからなるものを測定対象としたものであると云える。
しかし、特許明細書の実施例及び比較例には、セラミックス材料の熱天秤(同上)による600℃における重量減少率(WC600)については全く記載がない。そして、セラミックス材料の熱天秤(同上)による400℃における重量減少率(WC400)の値は記載されているものの、その値は45重量%、25重量%、75重量%であり、空気中で400〜600℃に昇温させてもガラスパウダー成分はほとんど消失しないと考えられることからみて、150℃で20分間の乾燥ではその沸点からみてブチルカビトールアセテート成分は蒸発しないと考えられることを参酌しても、上記の値は技術的に理解し難いものである。
してみると、本件特許明細書には、上記(1)式を満足する熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率を示す感光性樹脂組成物とセラミックス材料の組み合わせを示す実施例が記載されているとは云えず、上記3-3の(1)で述べたとおり、上記(1)式を満足する熱天秤による400℃及び600℃における重量減少率を示す感光性樹脂組成物とセラミックス材料の組み合わせを想到することが本件の出願時の技術常識からみて困難であると云わざるを得ないことを考慮すると、特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1乃至5が、当業者がその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されているとは云えない。
3-5.むすび
以上のとおり、本件の特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に本件発明1乃至5が明確且つ十分に記載されているとは云えず、同じく特許請求の範囲の記載は、記載された発明が明確とは云えないから、本件の請求項1乃至5に係る特許は、特許法第36条第4項及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
したがって、本件請求項1乃至5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-10-26 
出願番号 特願平9-171140
審決分類 P 1 651・ 537- ZB (C03C)
P 1 651・ 536- ZB (C03C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 ▲高崎▼ 久子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 野田 直人
岡田 和加子
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3171384号(P3171384)
権利者 日本合成化学工業株式会社
発明の名称 リブ形成法  
代理人 大井 正彦  

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