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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65F |
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管理番号 | 1109673 |
判定請求番号 | 判定2004-60044 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2000-10-10 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2004-05-17 |
確定日 | 2005-01-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3448507号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「ゴミ容器」は、特許第3448507号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
【1】請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す物品である「ゴミ容器」(被請求人の製作に係る「DUSPOT」、以下、「イ号物件」という。)が請求人所有の特許第3448507号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。 【2】本件特許発明 本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その構成要件を分説すると次のとおりである。 A.基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、(以下、「構成要件A」という。) B.内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、(以下、「構成要件B」という。) C.前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、(以下、「構成要件C」という。) D.内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となされている(以下、「構成要件D」という。) E.ことを特徴とするゴミ容器。(以下、「構成要件E」という。) 【3】イ号物件 一方、イ号物件は次のとおりのものと認められる。 a.基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、(以下、「構成a」という。) b.内容器の底面前端から後方にずれた部位に幅方向に沿って突条が垂設され、(以下、「構成b」という。) c.前記突条を基板上面に設けられた長孔に貫通挿入し、(以下、「構成c」という。) d.内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端から前方にずれた部位を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となされている(以下、「構成d」という。) e.ことを特徴とするゴミ容器。(以下、「構成e」という。) なお、イ号図面の説明書には、構成bの突条の垂設された位置について、「内容器の底面前端」と記載されているが、イ号図面の【図3】を参酌すると、突条は、内容器の底面中央部で底面前端より後方に向かって若干凹んだ凹部よりも更に後方にずれた部位に設けられていることが窺えるため、同位置を「内容器の底面前端から後方にずれた部位」と認定し、また、構成cの長孔に対する突条の関係について、「嵌合」と記載されているが、同【図3】を参酌すると、突条は長孔に挿入され、かつ、貫通し基板下面に突出する程度の高さを有していることが窺えるため、同関係を「貫通挿入」と認定し、さらに、構成dの内容器が押上げられる部位について、「底面後端」と記載されているが、同【図3】を参酌すると、踏み板後方の直立した押上げ部は、内容器の底面後端よりも前方にずれた部位を押上げていることが窺えるため、同部位を「底面後端から前方にずれた部位」と認定した。 【4】対比・判断 1.対比 本件特許発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の「構成a」、「構成e」は、それぞれ本件特許発明の「構成要件A」、「構成要件E」を充足している。 しかしながら、両者は、次の点で相違している。 (ア)内容器の底面に幅方向に沿って突条が垂設される部位について、本件特許発明の「構成要件B」では、「底面前端」であるのに対し、イ号物件の「構成b」では、「底面前端から後方にずれた部位」である点(以下、「相違点1」という。)。 (イ)本件特許発明の「構成要件C」では、「突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合」するとしているのに対し、イ号物件の「構成c」では、「突条を基板上面に設けられた長孔に貫通挿入」するとしている点(以下、「相違点2」という。)。 (ウ)踏板を足で下方に踏下げる際に、内容器が押上げられる部位について、本件特許発明の「構成要件D」では、「底面後端」であるのに対し、イ号物件の「構成d」では、「底面後端から前方にずれた部位」である点(以下、「相違点3」という。)。 2.相違点の判断 ・相違点1及び2について 上記相違点1及び2を総合すると、本件特許発明は、「内容器の底面前端に幅方向に沿って突条が垂設され、前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合」するのに対し、イ号物件では、「内容器の底面前端から後方にずれた部位に幅方向に沿って突条が垂設され、前記突条を基板上面に設けられた長孔に貫通挿入」する点で相違するといえる。 ところで、本件特許発明における、内容器の底面前端に垂設された「突条」を、基板上面に刻設された「凹溝」に「嵌合」する構成について、明細書の段落【0011】には、「内容器は、底面前端に幅方向に沿って凹溝を刻設し、該凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合して、容易に抜落しないようにする・・・のが好ましい。・・・又は、内容器と基板との凹凸を逆にして、内容器の前端に幅方向に沿って突条を垂設し、該突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合する。」と、同段落【0020】には、「内容器5の底面前端には、幅方向に沿って凹溝53が刻設されており、凹溝53に基板1上面に突設された突条13を嵌合することによって、内容器5は突条13を支点として前方に傾動可能となされている。」と、同段落【0021】には、「内容器5を容器本体4の内部から抜脱する際には、手掛け51に指先を掛けて内容器5を稍上方に持ち上げ、凹溝53と突条13との嵌合を解除して前方に引出せばよい。」と、また、特許請求の範囲の【請求項1】には、「内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、・・・底面前端を支点として前方に傾動可能となされている」と、それぞれ記載されている。 そうすると、上記相違点1及び2に関連した、本件特許発明における「構成要件B」及び「構成要件C」からなる構成は、内容器の前端に垂設した突条を、基板上面に刻設された凹溝に嵌合することにより、容易に抜落しないようにし、かつ、底面前端を内容器の傾動の支点とするものであるから、支点の位置は固定されており、また、突条と凹溝が嵌合する際の形状寸法は、支点として機能すべく相互に密接係合された関係にあるものといえる。 一方、上記相違点1及び2に関連した、イ号物件における「構成b」及び「構成c」からなる構成は、内容器の底面前端から後方にずれた部位に垂設された「突条」を、基板上面に設けられた「長孔」に「貫通挿入」するものであるから、突条は長孔に対する挿入量が変化し得るものであって、位置決めないし前後方向の抜け防止の機能を有するものの、内容器を傾動すれば底面前端が支点となることは明らかであり、しかも、底面前端そのものは基板上面に嵌合されていないため、支点の位置は固定されていないものであり、また、突条と長孔の形状寸法も、長孔は、内容器の傾動に伴う底面前端を中心とする突条の回動を許容するための遊びを具備する程度の大きさであればよく、相互に密接係合された関係を要求されるものでもない。 このように、上記相違点1及び2に係る相違部分の技術的意義もしくは作用・機能には、両者の間で大きな差異が存在しており、イ号物件における「構成b」及び「構成c」は、本件特許発明における「構成要件B」及び「構成要件C」を充足するとは到底いえない。 よって、相違点3について検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の一部の構成要件を充足していないといえる。 3.均等の判断 請求人は、本件特許発明とイ号物件との相違点について、いわゆる均等論の適用を主張しているので、これについて検討する。 最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)は、均等論が適用される場合について、次の五つの条件を付して認める旨の判示をしている。 (1)相違部分が、特許発明の本質的な部分でない。 (2)相違部分を対象製品の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。 (3)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到できる。 (4)対象製品等が、出願時における公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではない。 (5)対象製品等が特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。 そこで、まず、イ号物件が、前記条件(1)を満たすか否かについて検討する。 ところで、本件特許の出願人である判定請求人は、審査段階において、実公昭36-3967号公報(乙第2号証)を引用例として当該発明の進歩性を否定した拒絶理由通知(甲第6号証)に対し、特許請求の範囲の請求項1を「基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となされていることを特徴とするゴミ容器。(下線部は補正により限定付加された部分)」と補正する補正書(甲第8号証)を提出すると共に、意見書(甲第7号証)において、『しかし乍ら、視点を変えて本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、本願発明は、「内容器の底面前端を支点として」即ち、「底面前端を固定された動かない点として」前方に傾動可能となされており、従って、引用例に記載された発明の如く底面前端が位置ズレすることなく、安定して、内容器が開口されるという、実用的に重要な、引用例に記載発明の奏し得ない効果を奏するものであります。』と主張し、これを踏まえて特許査定がなされたものである。 上記審査段階における経緯を総合的に判断すれば、本件特許発明の「構成要件B」及び「構成要件C」は、本件特許発明の本質をなすものと解するのが相当であるから、上記相違点1及び2に係る相違部分は本件特許発明の本質的な部分であるといわざるをえない。 以上のとおりであるから、相違点3について検討するまでもなく、イ号物件は、前記条件(1)を満たしていないというべきである。 なお、請求人は、判定請求書において、前記条件(1)に関し、相違するとした「凹溝」については、「凹溝」であろうが「長孔」であろうが、嵌合した突条を支点として内容器が傾動すればよいのであるから、本件特許発明の本質的な部分ではなく、条件(1)の要件を満たしている旨主張している。 しかしながら、本件特許発明とイ号物件との相違は、単に、「凹溝」か「長孔」かの相違に留まらず、「内容器の底面前端に垂設された突条を凹溝に嵌合」するか「内容器の底面前端から後方にずれた部位に垂設さた突条を長孔に貫通挿入」するかでも相違しており、前者の構成が本件特許発明の本質をなすものであることは既に指摘したとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。 したがって、前記条件(2)〜(5)について検討するまでもなく、イ号物件と本件特許発明との関係において均等論は適用できない。 【5】むすび してみれば、イ号物件は、本件特許発明の一部の構成要件を充足しておらず、また、均等論が適用される余地もないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
イ号図面及びその説明書 |
判定日 | 2004-12-17 |
出願番号 | 特願平11-86132 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B65F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増沢 誠一 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
山本 信平 大元 修二 |
登録日 | 2003-07-04 |
登録番号 | 特許第3448507号(P3448507) |
発明の名称 | ゴミ容器 |
代理人 | 小原 英一 |
代理人 | 石川 壽彦 |