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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) G01B |
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管理番号 | 1110368 |
審判番号 | 無効2002-35116 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-01-20 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-03-29 |
確定日 | 2004-11-09 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2139911号発明「電子部品のリード浮きの検出方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2139911号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.本件の経緯の概要 本件特許第2139911号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。 平成2年5月10日 特許出願 平成7年10月11日 特許公告公報の発行 平成11年1月14日 特許権の設定登録 平成14年3月29日 無効審判請求 平成14年6月17日 答弁書及び訂正請求書の提出 平成14年9月6日 請求人弁駁書提出 平成14年12月13日 口頭審理 平成14年12月13日付 請求人陳述要領書(2)提出 平成14年12月13日付 被請求人陳述要領書提出 平成15年1月10日 請求人上申書提出 平成15年2月19日 被請求人上申書提出 平成15年3月31日付 無効理由通知 平成15年3月31日付 請求人へ職権審理結果通知 平成15年6月3日 請求人上申書提出 平成15年6月3日 被請求人意見書提出 2.訂正の適否 2-1.訂正事項 訂正を請求する事項は、次のとおりである。 訂正事項a: 特許請求の範囲に「移載ヘッド」とあるのを、「XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッド」と訂正する。 訂正事項b: 特許請求の範囲に「ノズルに電子部品を吸着して」とあるのを、「ノズルに電子部品をその上面において吸着し、」と訂正する。 訂正事項c: 特許請求の範囲に「基板に移送する途中において、」とあるのを、「前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、」と訂正する。 訂正事項d: 特許請求の範囲に「レ一ザ光を照射することにより、」とあるのを、「レ一ザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、」と訂正する。 訂正事項e: 明細書第3頁第9〜17行(特許公告公報第2頁左欄第9〜15行)に「このために本発明は、移載ヘッドの・・・高低差を求めるようにしたものである。」とあるのを、「このために本発明は、XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からし一ザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしたものである。」と訂正する。 訂正事項f: 明細書第7頁第12〜20行(特許公告公報第2頁右欄第25〜31行)に「以上説明したように本発明は、移載ヘッドの・・・高低差を求めるようにしているので、」とあるのを、「以上説明したように本発明は、XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレ一ザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしているので、」と訂正する。 2-2.新規事項追加の有無、訂正の目的の適否、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 (1)訂正事項a及びcは、特許公告公報第2頁左欄第28〜37行の「このテーブル6上で、電子部品2の位置ずれの認識や荒補正を行った後、移載ヘッド7のノズル8にこの電子部品を吸着してテイクアップする。次いでこの電子部品2をレーザ装置9の上方に移送し、移載ヘッド7をXY方向に移動させながら、電子部品2の各々のリード2aに向ってレーザ光を照射して、リード2aのXYθ方向の位置ずれを検出する。・・・XYθ方向の位置ずれを補正したうえで、この電子部品2を基板3に移送搭載する。」なる記載事項、上記特許公報第2頁右欄第34行〜第35行の「移載ヘッドをXY方向に移動させるXYテーブル」なる記載事項、および上記特許公報第2頁右欄第36行〜第42行の「電子部品を移載ヘッドのノズルに吸着して基板に移送する途中において(すなわち電子部品を基板に実装する作業の途中において)、リードの浮きを検出できるので、電子部品を基板に実装するのに要するタクトタイムを大巾に短縮し、高速度・高能率で電子部品を基板に実装することができる。」なる記載事項に基づき、「移載ヘッド」及び「移送する途中」を限定するものであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (2)訂正事項bは、上記特許公報の第1図、第2図および第2頁右欄第30行から第36行の「各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしているので、・・・電子部品を吸着するノズルの下面の傾斜誤差、電子部品のモールド体の上面の傾斜誤差・・・等の様々な原因に起因するリードの浮きを簡単・迅速に求めることができる。」との記載事項に基づき、電子部品の吸着の条件を「その上面において」と限定するものであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (3)訂正事項dは、上記特許公報の第2頁左欄第48行〜右欄第1行の「移載ヘッド7をXY方向に水平移動させながら、各々のリード2aにレーザ光を照射し、その反射光を受光部11,12に受光することにより、各々のリ ード2aの基準面Sからの高さZiを検出する。」なる記載事項に基づき、リードの3点の高さの検出方法について、「移載ヘッドをXY方向に移動させることにより」と限定するのであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (4)訂正事項e及びfは、発明の詳細な説明の項の記載を、上記訂正事項aないしdによる特許請求の範囲の訂正に整合させるためのものであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2-3.訂正の適否の結論 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第134条第5項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 上記のごとく、訂正は認められるので、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。 「XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレ一ザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしたことを特徴とする電子部品のリード浮きの検出方法。」 4.請求人の請求の趣旨及び理由の概要 請求人(アンリツ株式会社)は、「特許2139911号はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第4号証及び参考資料1及び2を提示し、本件発明は、本件出願の前に頒布された刊行物である甲第1、2号証に記載された発明及び当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1に係る特許は、同条同項の規定に違反して特許されたものであり、よって、本件の請求項1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものであると主張している。 記 甲第1号証 米国特許第4,736,108号明細書 甲第2号証 特開平1-265144号公報 甲第3号証 「応用機械工学」第30巻、第5号、1989年5月1日発行 、第86〜93頁“レーザ変位計を利用した非接触形状測定機 ” 甲第4号証 「静岡県工業試験場報告」昭和55年2月発行、第153〜1 56頁“平面度の一計算方法について” 参考資料1 特開昭63-51699号公報 参考資料2 特開昭63-129700号公報 5.被請求人の反論の概要 被請求人は、平成14年6月17日付答弁書及び平成15年2月19日付上申書において、概ね、以下のように反論している。 (1)甲第2号証記載の発明は、ロータリーヘッドタイプの実装機に係るものであり、ロータリヘッドの間欠回転中の停止時、すなわち電子部品の停止時にリード浮きを検出するものである。 一方、甲第1号証記載の検査装置は、検査台上に電子部品を載置固定し、レーザ装置をXY移動させることにより、三点法を実施してリード浮きを検出するものであって、三点法を電子部品の移動により実現することが容易であるとしても、それは、検査台のXY動により、電子部品を移動させることを意味するにすぎない。 (2)本件発明は、実装の途中においてノズルに吸着された電子部品の高精度なリード浮き検査を行うことを技術的課題とする。この課題を解決するに際し、吸着条件がその検査精度に悪影響を与えることを認識し、この認識に基づいて三点法を採用したものであって、甲第1号証及び甲第2号証からは予想できない新規な技術的課題の解決のために三点法を採用したものであるから、甲第2号証記載の発明への甲第1号証記載の発明の適用によって本件発明に想到することが容易であるとする旨の請求人の主張は失当である。 (3)甲第2号証記載のロータリヘッドタイプの実装機の高速実装の効果を損なうことは、甲第2号証記載の発明に甲第1号証記載の発明を適用することに対する特段の阻害要因である。 (4)甲第2号証、参考資料1、2のいずれにおいてもヘッドの移動は部品を基板に向け搬送するための目的を有するのみであり、また、甲第2号証のロータリヘッドタイプの実装機の機構からして、レーザ装置を固定しておきヘッド側を移動させることは想定できない。 6.当審における無効理由通知及び被請求人の意見書の概要 6-1.平成15年3月31日付無効理由通知の概要は、 「本件発明は、本件出願の前に頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明及び刊行物4ないし6に記載のごとき当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1に係る特許は、同条同項の規定に違反して特許されたものであり、よって、本件の請求項1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものである。 記 刊行物1:特開昭63-129700号公報(上記参考資料2) 刊行物2:米国特許第4,736,108号明細書(上記甲第1号証) 刊行物3:特開平1-265144号公報(上記甲第2号証) 刊行物4:「応用機械工学」第30巻、第5号、1989年5月1日発行、 第86〜93頁“レーザ変位計を利用した非接触形状測定機” (上記甲第3号証) 刊行物5:「静岡県工業試験場報告」昭和55年2月発行、第153〜15 6頁“平面度の一計算方法について”(上記甲第4号証) 刊行物6:特開昭63-51699号公報(上記参考資料1) 」 というものである。 6-2.上記無効理由通知に対して、被請求人は、平成15年6月3日付意見書において、概ね、以下のように主張している。 (1)本件発明は次の構成A、Bを備えている。 A.XYヘッドにより電子部品を基板へ移送する途中で、XYヘッドに電 子部品を吸着した状態で、リードの浮きを検出する。 B.上記リードの浮きを、XYヘッドをXY方向に移動させながら、XY ヘッドに吸着された電子部品の各リードにレ一ザ光を照射し、「3点 法」により検出する。 そして、本件発明が上記構成Bを採用したのは、下記の両立困難な効果a、bを併せ奏することができるリード浮き検出方法を提供するためである。 a.リード浮き検出が実装タクトタイムに関し不利とならない。 b.実装機上で高精度なリード浮き検出を行うことができる。 (2)刊行物1記載の発明は、XYヘッドに電子部品を吸着した状態でリードの変形を検出するものであるので、実装タクトタイムに関し不利とならないが、その検出をカメラ撮像法により行うため、その検出精度が悪い。そして、実装機においては、実装タクトタイムが非常に重要であるため、検出精度よりも実装タイムを優先してしまい、格別な精度上の問題意識を有しない限り、リード浮きの検出のためにカメラ撮像法以外の方法を採索しようとしないのが一般的であるから、高精度にリード浮きを検出することができる刊行物2記載の検査装置が周知であったとしても、刊行物1記載の発明には精度上の課題認識が全くないので、刊行物1に記載されたリードの変形を検出する方法に代えて、刊行物2記載の検出方法を適用することは、当業者と云えども容易ではない (3)刊行物2記載の検査装置は、検査台上に保持された電子部品を「3点法」により検査するものであるが、部品供給部から検査台に電子部品を移載導入し、検査後に検査台から部品排出部に電子部品を移載排出しなければならないものであって、検査タクトタイムが長時間化するものであるから、刊行物2記載の検出方法の適用が検討対象となったとしても、本件発明においては上記aのリード浮き検出が実装タクトタイムに関し不利とならないことを必須の要件としているので、その適用に対し当業者は拒絶反応を示すと考えるべきである。 (4)刊行物2記載の検出方法を刊行物1記載の発明に適用しうるためには、その長所(高精度検出)を生かし、短所(実装タクトタイムに不利)を改善して、本件発明の構成Bに示すような構成(特にXYヘッドをXY方向に移動させて、レーザ測定時の走査手段とする構成)とすることが必要であるが、それに創意工夫が必要であって、上記適用は当業者と云えども容易に為し得ることではないのである。 7.当審における判断 7-1.各刊行物に記載された技術事項 刊行物1:特開昭63-129700号公報 電子部品の吸着位置及び形状を認識する認識装置に関し、 (1a)従来技術について、第6図と共に、「101はXテーブルであり、図中X方向に位置決め可能である。102はYテーブルであり、図中Y方向に位置決め可能である。103は吸着ノズルであり、電子部品104を吸着により保持することが可能である。電子部品の装着の手順は、図示されない部品供給装置から、吸着ノズル103が電子部品104をピックアップする。XYテーブルの移動により、電子部品104は第1のカメラ105上に移動する。第1のカメラ105に取りつけられた第1のレンズ106により、電子部品104の全体像をとらえる。第7図に第1のカメラ105のとらえた電子部品104の全体像を示す第1のカメラ105によりとらえた画像で、認識装置107は、電子部品104のリード108の数を、予め登録されている数と比較し、一致しなければプリント基板109上への装着の禁止指令を発する。さらにリード線間のピッチを検定し、予め登録されたピッチと異なる場合にも、装着の禁止指令を発する。次にXYテーブルが移動し、電子部品104は第2のカメラ110上に移動する。第2のカメラ110にはレンズ111が取付けられており、電子部品104の一部分を拡大した像をとらえる。電子部品104の一部分を拡大した像を第8図に示す。この像により、認識装置107はリード線108の画面上の位置から吸着ノズル103との相対位置を割り出し、予め登録された値とのズレ量を算出し、プリント基板109上への装着位置を補正する。」(第1頁右下欄第6行〜第2頁左上欄第16行) と記載されている。 刊行物2:米国特許第4,736,108号明細書(なお、請求人が提出した平成15年6月3日付上申書に添付された甲第1号証翻訳文をもって、刊行物2に記載された技術事項とする。) 「半導体素子の同一平面性を測定する装置と方法」に関し、 (2a)発明の技術分野について、「本発明は、光を使った位置検出に関するものであり、特に、表面実装型集積回路の同一平面性を測定することに関するものである。」(刊行物2第1欄第8〜10行、翻訳文第1頁第3〜4行) (2b)従来技術について、「レーザあるいは他の光源を利用して、対象の位置や形状を検出するための方法や装置は多数存在する。ある一つの方法では、対象から反射する光が複数の構成要素を有するカメラやあるいは半導体イメージディテクタにフォーカスされる。」(同第1欄第11〜15行、翻訳文第1頁第5〜7行) (2c)課題について、「回路基盤上に正確にマウントするために、このような表面実装デバイスのすべてのリードが同一の平面内にあることが必要である。表面実装デバイスの同一平面性を測定するテスタが必要である。」(同第1欄第33〜37行、翻訳文第1頁第15〜17行) と記載され、発明の要約として、 (2d)「本発明は、集積回路パッケージの周辺のリードの位置決めを計測するための方法と装置である。パッケージは、第一のリード線が光源から放射されたビームの光路内に入るように、置かれる。光源をパッケージの周辺で動かして、ビームがパッケージのすべてのリードに当たるようにする。ビームは各々のリードである角度で反射する。そこでは、フォトディテクタ上でのビームの入射ポイントは、リードの高さに比例して水平線上で変動する。リードの位置決めは、最初に装着面(集積回路のリードが取り付けられる面)を計算し次に装着面からの各々のリードのばらつきを計算して決定される。LEDあるいはレーザが単色光をリードに照射し、反射光が位置検出器に反射されるのが望ましい。」(同第1欄第40〜56行、翻訳文第1頁下から第8〜2行) (2e)「表面実装型集積回路パッケージが、センサに対して位置決めされたプレートの中のソケットに上下逆にしてセンサの下に置かれる。」(同第1欄第61〜63行、翻訳文第2頁第1〜2行) (2f)「データのすべてがプローブから信号を収集しデジタル・フォーマットに変換されメモリに入力されると、データははじめて解析される。データはまず隣接しない2つの側面にあるリードの高さの3つの最低値を測定することによって装着平面を決定するために解析される。これらの3つのポイントによって形成される三角形は、半導体パッケージに投影されたときに、パッケージの重心を含んでいなければならない。ー旦装着平面が決まると、リードの高さに相当するデータ・ポイントの残りは、装着平面と比較され、許容される範囲内にあるか測定する。リードが許容差の範囲外である場合は、エラー信号が発生する。」(同第2欄第3〜15行、翻訳文第2頁第6〜12行) と記載され、 (2g)第5図に示す他の実施例について、「図5は、他の実施例を示す。ここでは、プレート110が可動ではなく、ロボットアーム112が集積回路パッケージをプレート110のソケット114の中に置くために用いられる。アーム112は、集積回路パッケージをサポート62からつかみ取って集積回路パッケージをソケット114の中に置くための吸引装置116を有している。測定が完了すると、アーム112は集積回路をソケット114から取り出し、ガイドウェー68,70の一つに置くことができる。」(同第4欄第11〜18行、翻訳文第5頁第7〜11行) と記載され、 (2h)第8図のブロック図の説明として、「セントラルプロセッサ166は、2軸テーブル182の動きを制御するモーション制御プロセッサ180に結合されている。2軸テーブル182は、一対のモータ184,186で駆動される。・・・(中略)・・・動作中、部品の一部が計測領域にくると、セントラルプロセッサ166は、センサ18に命令し、検査部分のリードのピークを辿る経路にくるようにする。これは、センサ18が取り付けられた2軸閉ループサーボテーブル182を制御することによりなされる。」(同第5欄第7〜25行、翻訳文第6頁下から第13〜4行、第8図参照)と記載され、さらに (2i)「すべての計測は、センサの位置決めを行うx-yサーボ・テーブル182の面に対して相対的なものである。マシン・フレームの構造、ソケット・プレートの摺動、最も重要なものとしてパッケージ・ボディの不均一性の故に、パッケージのリード平面とセンサの移動平面が平行であることはまれである。これは、図7に示すとおり、ピンの値のスロープが平坦でないことの原因となる。装着面を検出するためのアルゴリズムを行うために、基準面の上と下に均等に分布する一組の三次元ポイントがある必要がある。この基準面は、最も良くフィットする面であり、線形代数の最小平均二乗法から派生する。」(同第5欄第41〜53行、翻訳文第7頁第6〜11行) と記載され、 (2j)特許請求の範囲の第1項には、集積回路パッケージの周辺の複数のリードのコンタクト点の同一平面性を計測するための方法について、「前記ビームが前記パッケージの前記リードの各コンタクト点を照射するように、前記パッケージの周りで前記光源を前記パッケージに対して相対的に移動し、」(同第6欄第65〜68行、翻訳文第8頁末行〜第9頁第1行)と記載され、 (2k)特許請求の範囲の第10項には、集積回路パッケージの周辺の複数のリードの接触点の同一平面性を計測するための装置について、「前記ビームが前記リードの前記コンタクト部分に反射されるように、前記プロープとパッケージを互いに相対的に移動させる手段」(同第8欄第14〜16行、翻訳文第9〜10行)を有すること、 がそれぞれ記載されている。 刊行物3:特開平1-265144号公報 (3a)「部品を装着ヘッドに保持し平面画像によりその保持部品の位置を認識して回路基板へ実装する際に、上記平面画像から上記保持部品のリード先端位置を求める過程と、このリード先端位置のリード長さ方向の基準からのズレに基づいて上記保持部品に縦曲がりのリード変形の有無を判定する過程とを備えることを特徴とする実装部品のリード変形チェック方法」(特許請求の範囲)に関し、 (3b)従来の技術として、第6図とともに、「従来より表面実装タイプの電気部品等を回路基板等に自動的に実装する装置としてチッププレーサーが知られている。一般的なチッププレーサーは、装着ヘッドとして吸着ノズルを備え、部品供給部のパーツカセットから種々の部品を吸着して保持し、X-Yテーブル等で位置決めされた回路基板上の所定位置に移動して、吸着ノズルの保持部品をマウントする。以上の過程において、吸着ノズルに吸着された部品位置は、一般に平面方向に位置ズレを有しているので、第6図の従来技術の構成図に示すように吸着ノズル1に吸着された部品をカメラ3等の視覚センサの上にもって行き、この位置で部品2の平面画像をパターン認識ユニット4でパターン認識して部品位置を検出し、必要があれば位置ズレを補正して、上述した部品実装を行っている。第7図(a)、(b)は実装部品の一例を示すフラットパッケージICを示す平面図(a)と側面図(b)である。通常の電気部品はフラットパッケージIC(集積回路)2のリード2aのようなリードを有している。前述したパターン認識により保持部品の位置ズレは補正されたとしても、リード自体にリード2b、リード2cに示すようなリード変形があると実装不良の原因となる。このリード変形には、主にピッチ方向(平面方向)の横曲がり変形(リード2b)と平面に垂直方向の縦曲がり変形(リード2c)とがあるが、従来は横曲がり変形のチェックだけが行われていた。」(第1頁右下欄下から第5行〜第2頁右上欄第3行) (3c)解決しようとする課題について、「しかしながら、上記従来の技術におけるリード変形チェック方法では、縦曲がりのリード変形を確認することができず、装着不良の原因の多くを排除できないという問題が残っていた。・・・縦曲がりのリード変形は、そのリードのみならず隣接する複数リードに半田付け不良(リフロート状態)が及ぶ場合があり、また、検査工程では異常現象が現れず、2〜3年を経て接触不良が現れるという発見困難な重大不良となる虞れがある。しかも、実際には横曲がりよりも縦曲がりのリード不良の方が多いのが実情である。」(第2頁右上欄下から第3行〜左下欄下から第7行) (3d)発明の目的について、「本発明は、上記問題を解決するために創案されたもので、部品実装機において、装置製造上のコストアップを招くことなく、実装不良の原因となる部品の縦曲がりのリード変形を自動的に確認することのできる実装部品のリード変形チェック方法を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄下から第6〜末行) と記載されており、実施例を示す第1図及び従来例を示す第6図には、吸着ノズルは、実装部品をその上面において吸着していることが図示されている。 刊行物4:「応用機械工学」第30巻、第5号、1989年5月1日発行、 第86〜93頁、 「レーザ変位計を利用した非接触形状測定機」と題し、 (4a)「表面形状(比較的平坦な形状)および輪郭寸法の測定を行うものであり、・・・表面実装電気部品などが対象となる。」(第87頁第22行〜26行) (4b)「図3に、測定系の構成を示す。光マイクロをZステージに搭載し、ワークをXYステージ上に載せる構造で、テーブル移動形の構造となっている。」(第87頁第29〜31行) (4c)「その測定機能について、図6と共に、「データム基準の取り方は、・・・指定された3点が作る平面・・・などを任意に選ぶことができる。」(第89頁下から11行〜下から7行) と記載されている。 刊行物5:「静岡県工業試験場報告」昭和55年2月発行、第153〜15 6頁 「平面度の一計算方法について」と題して、 (5a)「平面度を計算するのに、3測定点で参照平面を代表させ、」(第153頁右欄第3〜4行) (5b)「本方法では参照平面を平面の方程式で表わし、各点の平面度は各点から参照平面へ降ろした垂線の足として計算する。今、xi yiを測定点のX,Y座標、ziを(xi yi)における測定値とする。3点P1(x1 y1 z1)、P2(x2 y2 z2)、P3(x3 y3 z3)を通る平面の方程式は、・・・すなわちAx+By+Cz+D=0 (2)」(第153頁右欄第8行〜下から第5行) と記載され、 (5c)平面度の一計算手法について、「以下計算は次のようにして行う。 1)測定点のうちの任意の3点が決定する平面より各点までの距離を式(3)〜(7)により計算する。 2)その中で最大値から最小値を引いた値をALとする。(ALはこの3 点が決定する平面を参照平面としたときの平面度) 3)3点をとる組合せを測定点すべてについて行い、各々のALを求める。 4)ALのうちで最小の値FLを求めれば、FLがこの測定平面の平面度 である。 5)FLをとる時の基準平面に対する各点の平面度を計算する。 以上、本方法は数学的に極めて明瞭、簡単である。計算が量的に多くはなるが、ミニコン程度で十分可能である。」(第154頁右欄第6〜21行) (5d)上記平面度の一計算方法の効果について、「本方法のように平面の方程式を利用することのもう1つの利点は、参照平面が基準平面(3次元測定機では測定機のX軸-Y軸平面)に対して傾いたままで直接平面度を計算でき、したがって両平面の傾きの差が大きくても誤差は生じないことである。」(第155頁右欄下から第4行〜第156頁左欄第1行) と記載されている。 刊行物6:特開昭63-51699号公報 「電子部品の吸着位置及び形状を認識する認識装置」に関し、 (6a)従来技術について、第6図と共に、「101はXテーブルであり、図中X方向に位置決め可能である。102はYテーブルであり、図中Y方向に位置決め可能である。103は吸着ノズルであり、電子部品104を吸着により保持することが可能である。105は吸着ノズル103の上下駆動シリンダ、106は吸着ノズルの回転駆動装置である。107は電子部品104の照明装置であり、電子部品104の影をカメラ108で撮り込み、認識装置109に画像を送る。認識装置109内部では、電子部品104と吸着ノズル103の相対位置を撮り込んだ画像より算出し、そのズレ量を補正してXYテーブルがプリント基板110上の正規位置に装着する。」(第1頁右下欄第7行〜末行)と記載されている。 7-2.対比 刊行物1及び刊行物6にも記載されているとおり、電子部品の吸着位置及び形状を認識する認識装置において、吸着ノズルに電子部品をその上面において吸着させ、XYテーブルにより電子部品をカメラ上に移送してリードの位置あるいは位置及び変形を検出し、その後、該電子部品を基板に実装するため、吸着ノズルがXYテーブルによりXY方向に移動して電子部品を基板上に移送することは、本件出願前に既に周知の技術手段である。 特に、刊行物1には、「認識装置107は、電子部品104のリード108の数を、予め登録されている数と比較し、一致しなければプリント基板109上への装着の禁止指令を発する。さらにリード線間のピッチを検定し、予め登録されたピッチと異なる場合にも、装着の禁止指令を発する。」と記載されている。 そこで、本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載された、リードの数やリード線間のピッチを検定するということは、リードの変形を検出するものであって、これに対し、本件発明の「電子部品のリード浮き」の検出も一種のリードの変形を検出するものである。また、刊行物1記載の発明では、該リードの変形をビデオカメラで検出するものであるから、本件発明における検出手段としての「レーザ装置」に対応するものである。 よって、両者は、 「XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品を検出手段の上方に位置せしめ、電子部品のリードに向かって下方から電子部品のリードの変形を検出する方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1: 本件発明では、検出手段が「レーザ装置」であって、このレーザ装置からレ一ザ光を照射し、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めることによりリードの浮きを検出するものであるのに対して、刊行物1記載の発明では、検出手段が「カメラ」であって、該カメラでとらえた画像よりリードの数やリード線間のピッチを検定するものである点。 相違点2: 本件発明では、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより検出するものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、ビデオカメラにより検出するものであるため、移載ヘッドをXY方向に移動させる必要がない点。 7-3.相違点についての判断 7-3-1.相違点1について (1)上記刊行物2には、表面実装型集積回路の同一平面性を測定する方法に関し、「本発明は、集積回路パッケージの周辺のリードの位置決めを計測するための方法と装置である。パッケージは、第一のリード線が光源から放射されたビームの光路内に入るように、置かれる。光源をパッケージの周辺で動かして、ビームがパッケージのすべてのリードに当たるようにする。ビームは各々のリードである角度反射する。そこでは、フォトディテクタ上でのビームの入射ポイントは、リードの高さに比例して水平線上で変動する。リードの位置決めは、最初に装着面(集積回路のリードが取り付けられる面)を計算し次に装着面からの各々のリードのばらつきを計算して決定される。LEDあるいはレーザが単色光をリードに照射し、反射光が位置検出器に反射されるのが望ましい。」(摘記事項(2d))と記載されており、該刊行物記載の発明において、「レーザを用いてリードの同一平面性を測定する」ことは、本件発明における「レーザー光を照射してリードの浮きを検出する」ことに相当するものであることは明らかである。 また、該刊行物2には、リードの同一平面性(すなわち、本件発明における「リードの浮き」)の具体的測定方法に関し、「表面実装型集積回路パッケージが、センサに対して位置決めされたプレートの中のソケットに上下逆にしてセンサの下に置かれる。」(摘記事項(2e)参照)及び「データのすべてがプローブから信号を収集しデジタル・フォーマットに変換されメモリに入力されると、データははじめて解析される。データはまず隣接しない2つの側面にあるリードの高さの3つの最低値を測定することによって装着平面を決定するために解析される。これらの3つのポイントによって形成される三角形は、半導体パッケージに投影されたときに、パッケージの重心を含んでいなければならない。ー旦装着平面が決まると、リードの高さに相当するデータ・ポイントの残りは、装着平面と比較され、許容される範囲内にあるか測定する。」(摘記事項(2f)参照)と記載されており、該刊行物に記載された方法は、所謂「3点法」として表面形状または平面性の測定の分野において本件出願前に周知の測定方法であって(必要ならば、上記刊行物4及び5を参照のこと)、本件発明における「3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出し、各々の仮想平面に対する高低差を求める」ことに相当するものであることも明らかである。 してみれば、刊行物2には、「レーザ装置から集積回路パッケージのリードに向かって上方からレ一ザ光を照射し、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにした集積回路パッケージの周辺のリードの同一平面性を測定する方法。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているといえる。 (2)そこで、刊行物2記載の発明を、刊行物1記載の発明に適用することの容易想到性について検討するに、刊行物2の「回路基板上に正確にマウントするために、このような表面実装デバイスのすべてのリードが同一の平面内にあることが必要である。表面実装デバイスの同一平面性を測定するテスターが必要である。」(摘記事項(2c)参照)という記載から明らかなように、刊行物2には、電子部品の実装において、リードの同一平面性の測定、すなわちリードの浮きの検出が重要であることが記載されている。 なお、電子部品の実装において、リードの浮きの検出が重要であることは、上記刊行物3にも記載されている。すなわち、上記刊行物3には、電子部品の実装不良の原因の多くは、横曲がりのリード変形(刊行物1に記載されたピッチの検定に相当)よりも、縦曲がりの変形であるので、縦曲がりのリード変形(本件発明におけるリード浮きの検出に相当)を検出する必要があることが記載されている。(摘記事項(3b)〜(3d)参照) してみれば、刊行物1記載の発明では、リードの数やリード線間のピッチの検定についてしか開示がないが、刊行物1記載の発明も、電子部品の基板への実装前に、電子部品のリードの変形を検出するものであるから、当業者であれば、刊行物1記載の方法に代えて、刊行物2記載の発明の方法である、検出手段として「レーザ装置」を用い、該レーザ装置からレーザ光を照射して、3点法により電子部品のリード浮きの検出を行うようにすることは、容易に想到し得ることと認められる。 そして、刊行物2記載の発明では、リードに向かって上方からレーザ光が照射されるものであるが、刊行物1記載の発明においては、電子部品は、検出手段である「カメラ」の上方に位置せしめ、電子部品のリードに向かって下方から撮像するものであるから、刊行物1に記載された「カメラ」に代えて「レーザ装置」を用いた場合には、自ずと「電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレ一ザ光を照射する」という構成となるものである。 (3)前項「6.(2)」に記載したとおり、被請求人は、刊行物1記載の発明には精度上の認識がないので、刊行物2記載の検出方法を適用することは容易ではない旨主張している。 しかしながら、刊行物1記載の発明には精度上の課題認識がなくとも、精度向上は、一般的技術課題である上、前述のとおり、刊行物2には、電子部品のリードの浮きを検出することが重要であり、そのため3点法による検出が有効であることが記載されているのであるから、当業者であれば、該刊行物2記載の発明の検出方法を、刊行物1記載の発明へ適用しようとすることは容易に想到しうることである。 また、前項「6.(3)」に記載したとおり、被請求人は、刊行物2記載の検査方法は、検査タクトタイムが長時間化するものであるから、刊行物1記載の発明への適用に当業者が拒絶反応を示すと考えるべきである旨主張している。 しかしながら、刊行物2に記載された発明のリードの浮きの検出方法は実装機における検出方法ではないが、刊行物1には、XYヘッドに電子部品を吸着した状態でリードの変形を検出することが既に記載されているのであるから、刊行物2に記載された検出方法が実装機における検出方法でないということが、刊行物1記載の発明のカメラによる検出方法に代えて、刊行物2に記載されたレーザ装置を用いた3点法によるリード浮き検出方法を適用することの阻害要因とはならないことは明らかである。そして、当業者であれば、刊行物1記載の発明のカメラによる検出方法に代えて、刊行物2に記載されたレーザ装置を用いた3点法によるリード浮き検出方法を適用することにより、刊行物1記載の発明の「実装タクトタイムが不利にならない」という効果と、刊行物2記載の発明の「高精度なリード浮き検出を行うことができる」という効果との、両方の効果が得られるであろうことは、両刊行物の記載から容易に予期しうることである。 7-3-2.相違点2について (1)刊行物1記載の発明においては、リードの変形をビデオカメラにより検出するものであるため、検出時には電子部品を移動させる必要がない。 しかしながら、刊行物2記載の発明においては、3点法によりリード浮きを測定する方法において、レーザ装置と電子部品とを相対的に移動させることが記載されている。 すなわち、刊行物2には「セントラルプロセッサ166は、2軸テーブル182の動きを制御するモーション制御プロセッサ180に結合されている。2軸テーブル182は、一対のモータ184,186で駆動される。・・・(中略)・・・動作中、部品の一部が計測領域にくると、セントラルプロセッサ166は、センサ18に命令し、検査部分のリードのピークを辿る経路にくるようにする。これは、センサ18が取り付けられた2軸閉ループサーボテーブル182を制御することによりなされる。」(摘記事項(2h)参照)と記載されており、具体的な測定方法としては、電子部品(集積回路パッケージ)をソケット内に配置し、その上方に配置されたレーザー装置を2軸テーブル182(すなわち、XYテーブル)を用いてXY方向に移動させながらレーザ光を照射するものが記載されているが、摘記事項(2j)及び(2k)から明らかなように、刊行物2には、リードの浮きを検出する際には、レーザ装置を電子部品(集積回路パッケージ)に対して相対的に移動させること、あるいは相対的に移動させる手段を設けることが記載されており、刊行物2記載の発明においては、レーザ光の照射方法は、レーザ光と電子部品とを相対的に移動させればよく、レーザー装置をXY方向に移動させる前述の具体例に限られないことは明らかである。 また、上記刊行物4(摘記事項(4b)参照)にも記載されているように、3点法を用いた測定方法あるいは検査方法においては、レーザ装置を固定し、XYテーブルにより被測定体あるいは被検査体をXY方向に移動させることも、本件出願前に既に周知である。 そして、前項に記載したとおり、刊行物1記載の発明においては、リードの変形の検出は、XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッド(すなわち、XYヘッド)に電子部品を吸着した状態で行っている。 してみれば、当業者であれば、刊行物1記載の発明の方法に代えて、刊行物2記載の発明の方法を適用して、レーザ光を用いて3点法により電子部品のリード浮きの検出を行うにあたり、刊行物1記載の発明の電子部品を吸着しているXYヘッドを用いて、レーザ装置に対して電子部品をXY方向に相対的に移動させるようにすることは、当然になし得る事項にすぎない。 (2)前項「6.(3)」及び「6.(4)」に記載したとおり、被請求人は、相違点2について、“本件発明は、XYヘッドをXY方向に移動させながら「3点法」により検出するという構成を採用したことにより、両立困難な効果a、bを併せ奏することができるリード浮き検出方法を提供するものである”旨主張すると共に、“刊行物2記載の発明を刊行物1記載の発明に適用するについては、その長所(高精度検出)を生かし、短所(実装タクトタイムに不利)を改善して、本件発明の「XYヘッドをXY方向に移動させて、レーザ測定時の走査手段とする構成」とすることが必要であるが、それに創意工夫が必要であって、上記適用は当業者と云えども容易に為しうることではないのである”旨、主張している。 しかしながら、前項(1)に記載したとおり、刊行物1には、実装途中のXYヘッドに電子部品を吸着した状態でリードの変形を検出することが既に記載されているのであるから、刊行物1記載の発明の方法に代えて、刊行物2に記載されたレーザ装置を用いた3点法による高精度なリード浮き検出方法を適用する際には、該XYヘッドを用いて電子部品の方を移動させるようにすることは当然になしうることであるから、被請求人が主張するような格別な創意工夫が必要なものではなく、当業者であれば容易に想到しうるものである。 7-4.本件発明の効果の予測性について 本件明細書には、「リードの屈曲変形、ノズルの軸心の傾斜誤差、電子部品を吸着するノズルの下面の傾斜誤差、電子部品のモールド体の上面の傾斜誤差、移載ヘッドをXY方向に移動させるXYテーブルの位置誤差等の様々な原因に起因するリードの浮きを簡単・迅速に求めることができる。」と記載されている。 しかしながら、刊行物2の「すべての計測は、センサの位置決めを行うx-yサーボ・テーブル182の面に対して相対的なものである。マシン・フレームの構造、ソケット・プレートの摺動、最も重要なものとしてパッケージ・ボディの不均一性の故に、パッケージのリード平面とセンサの移動平面が平行であることはまれである。」(摘記事項(1k))と、「3点法」が検査装置に起因する誤差を除去しうる方法であることを示す記載がある。 また、上記3点法による平面度の計算について記載された刊行物5には、「本方法のように平面の方程式を利用することのもう1つの利点は、参照平面が基準平面(3次元測定機では測定機のX軸-Y軸平面)に対して傾いたままで直接平面度を計算でき、したがって両平面の傾きの差が大きくても誤差は生じないことである。」という記載もある。 これらの記載から明らかなように、本件発明の効果は、刊行物1記載のビデオカメラによる方法に代えて、刊行物2記載の発明のレーザ装置を用いた3点法による方法を用いることにより当然にもたらされる効果であって、当然であれば容易に予期しうるものである。 8.むすび 以上のとおり、本件発明は、本件出願前に頒布された上記刊行物1ないし3に記載された発明及び上記刊行物4ないし6記載のごとき周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第123条の規定により、本件特許は無効にすべきものである。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電子部品のリード浮きの検出方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレーザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしたことを特徴とする電子部品のリード浮きの検出方法。 【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は電子部品のリード浮きの検出方法に関し、レーザ装置からリードに向ってレーザ光を照射して、リードを含む仮想平面を算出し、この仮想平面に対する各々のリードの高低差を求めることにより、リードの浮きを検出するようにしたものである。 (従来の技術) QFPのようなリードを有する電子部品を基板に実装する場合、リードが浮きを有していると、リードを基板の電極部にボンディングできないことから、従来、第5図に示すように、ノズル100に吸着された電子部品101のリード102に向って、レーザ装置103からレーザ光を照射し、各々のリード102の基準面Sからの高さZ1,Z2・・・を求めることにより、リード102の浮きを検出することが知られている。 (発明が解決しようとする課題) ところで、リードの浮きの原因としては、リードの屈曲変形の他、ノズルの軸心の傾斜誤差△θ1、電子部品を吸着するノズルの下面の傾斜誤差△θ2、更には電子部品のモールド体の上面の傾斜誤差や移載ヘッドをXY方向に移動させるXYテーブルの位置誤差等がある。このような機械誤差若しくは定誤差があると、電子部品101は、水平面Lに対して角度△θ傾斜し、△Zの高さ誤差が生じて、リード102の浮きを誤判断する問題がある。 そこで本発明は、上記のような機械誤差を排除し、リードの浮きを正確に検出することができる手段を提供することを目的とする。 (課題を解決するための手段) このために本発明は、XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレーザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしたものである。 (作用) 上記構成によれば、リードを含む仮想平面を求め、この仮想平面に対する各々のリードの高低差を求めるようにしているので、上記のような機械誤差に基づく高さ誤差を排除し、各々のリードの浮きを正確に検出することができる。 (実施例) 次に図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。 第3図は電子部品実装装置の平面図であって、1は電子部品2の供給部としてのトレイ、3はクランプ手段4に位置決めされた基板である。この装置は、サブ移載ヘッド5により、トレイの電子部品2をテーブル6上に移載し、このテーブル6上で、電子部品2の位置ずれの認識や荒補正を行った後、移載ヘッド7のノズル8にこの電子部品2を吸着してテイクアップする。次いでこの電子部品2をレーザ装置9の上方に移送し、移載ヘッド7をXY方向に移動させながら、電子部品2の各々のリード2aに向ってレーザ光を照射して、リード2aのXYθ方向の位置ずれを検出する。次いで移載ヘッド7のXY方向ストロークを補正したり、ノズル8を軸心を中心にθ回転させるなどして、検出されたXYθ方向の位置ずれを補正したうえで、この電子部品2を基板3に移送搭載する。 第1図及び第2図は、リード2aのXYθ方向の位置ずれの検出と共に、リード2aの浮き(Z方向の誤差)を計測している様子を示すものである。2bはモールド体であり、これからリード2aは4方に多数本延出している。またレーザ装置9は、発光部10の両側部に受光部11,12を有しており、両受光部11,12の計測値を平均することにより、計測精度を上げるようになっている。このリード2aは、リードフレームやフィルムキャリアを打ち抜くなどして形成されている。 さて、電子部品2をレーザ装置9の上方に位置せしめ、移載ヘッド7をXY方向に水平移動させながら、各々のリード2aにレーザ光を照射し、その反射光を受光部11,12に受光することにより、各々のリード2aの基準面Sからの高さZiを検出する。 次いで、3本のリード2aを適当に選択し、これらのリード2aの反射点P1,P2,P3の高さZ1,Z2,Z3から、この3点P1,P2,P3を含む仮想平面Kの高さZ0を算出する。この仮想平面Kの高さZ0は、平面方程式 aX+bY+cZ+1=0 から、簡単に算出することができる。 次いで、上記のようにして予め検出された各々のリード2aの高さZiと、仮想平面Kの高さZ0の高低差 △Z=Zi-Z0 を求めることにより、各々のリード2aの浮きを検出する。 以上のように上記方法は、3本のリード2aを含む仮想平面Kの高さZ0を求め、この高さZ0に対する各々のリード2aの高低差△Zを求めるようにしているので、上記した機械誤差に起因する誤差を排除して、リード2aの浮きを正確に検出できる。また仮想平面の決定手段は様々考えられるのであって、例えば第4図に示すように、モールド体2bの3辺について、各々の辺から突出する複数本のリード2a1〜2anの高さの平均値P1m,P2m,P3mを算出し、これらの3点P1m,P2m,P3mを含む平面を仮想平面としてもよい。なお許容値以上の高低差△Zが検出された場合には、その電子部品2の基板3への実装は中止する。 (発明の効果) 以上説明したように本発明は、XYテーブルによってXY方向に移動せしめられる移載ヘッドのノズルに電子部品をその上面において吸着し、前記電子部品を基板に実装するため基板に移送する途中において、この電子部品をレーザ装置の上方に位置せしめ、このレーザ装置から電子部品のリードに向って下方からレーザ光を照射し、移載ヘッドをXY方向に移動させることにより、リードの3点の高さを検出し、次いでこの3点を含む仮想平面を算出して、各々のリードのこの仮想平面に対する高低差を求めるようにしているので、リードの屈曲変形、ノズルの軸心の傾斜誤差、電子部品を吸着するノズルの下面の傾斜誤差、電子部品のモールド体の上面の傾斜誤差、移載ヘッドをXY方向に移動させるXYテーブルの位置誤差等の様々な原因に起因するリードの浮きを簡単・迅速に求めることができる。しかも、電子部品を移載ヘッドのノズルに吸着して基板に移送する途中において(すなわち電子部品を基板に実装する作業の途中において)、リードの浮きを検出できるので、電子部品を基板に実装するのに要するタクトタイムを大巾に短縮し、高速度・高能率で電子部品を基板に実装することができる。 【図面の簡単な説明】 図は本発明の実施例を示すものであって、第1図は計測中の側面図、第2図は同斜視図、第3図は電子部品実装装置の平面図、第4図は他の実施例の平面図、第5図は従来手段の側面図である。 2……電子部品 2a……リード 3……基板 7……移載ヘッド 8……ノズル 9……レーザ装置 K……仮想平面 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-03-18 |
結審通知日 | 2003-03-24 |
審決日 | 2003-07-15 |
出願番号 | 特願平2-120222 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(G01B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 荒巻 慎哉、濱野 隆 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
三輪 学 瀧 廣往 |
登録日 | 1999-01-14 |
登録番号 | 特許第2139911号(P2139911) |
発明の名称 | 電子部品のリード浮きの検出方法 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 和田 祐造 |
代理人 | 石原 勝 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 石原 勝 |