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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1110397
審判番号 不服2002-12141  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-02 
確定日 2005-01-11 
事件の表示 平成8年特許願第242238号「ベンチャー企業評価支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年4月10日出願公開、特開平10-91679〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成8年9月12日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年7月23日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 評価の対象となるベンチャー企業毎に、又はそのベンチャー企業について評価すべき複数の技術があればその技術毎に、技術に関する諸項目を集めた第一の主評価項目の各項目について評価した数値データと、市場に関する諸項目を集めた第二の主評価項目の各項目について評価した数値データと、開発意欲に関する諸項目を集めた第三の主評価項目の各項目について評価した数値データとを記憶する記憶手段と、
前記数値データ等を入力する入力手段と、
前記記憶手段に記憶された前記各項目の各数値データを用いて前記各主評価項目毎に評価点を算出する際に、前記第一の主評価項目の評価点を算出するときには技術が理論的に妥当なものであるか否かを判断するための項目である技術の妥当性の項目の前記数値データが他の項目の前記数値データに比べて高いウエイトとなるように前記評価点を算出し、前記第二の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の技術が社会の顕在又は潜在ニーズに適合するものであるか否かを判断するための項目である社会適合性の項目の前記数値データを他の項目の前記数値データに比べて高いウエイトとなるように前記評価点を算出し、前記第三の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の開発に対する意欲を判断するための項目である起業家の資質又は上級管理者による強力なバックアップの項目の前記数値データを他の項目の前記数値データに比べて高いウエイトとなるように前記評価点を算出する評価点算出手段と、
前記入力手段からの指示信号に基づいて、評価対象となるベンチャー企業又は前記技術毎に前記各主評価項目について対応する軸上に前記評価点を印したグラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフ作成手段によって作成されたグラフを表示する表示手段と、
を具備することを特徴とするベンチャー企業評価支援システム。」
なお、特許請求の範囲の請求項1には「前記第1の主評価項目」、「前記第2の主評価項目」、「前記第3の主評価項目」と記載されているが、これらの記載の前に「第一の主評価項目」、「第二の主評価項目」、「第三の主評価項目」と記載され、発明の詳細な説明にも「第一の主評価項目」、「第二の主評価項目」、「第三の主評価項目」と記載されている(段落【0006】、【0008】、【0035】)ことから、表記を統一するべく、「前記第1の主評価項目」、「前記第2の主評価項目」、「前記第3の主評価項目」は「前記第一の主評価項目」、「前記第二の主評価項目」、「前記第三の主評価項目」の誤記と認め、上記のように認定した。

2 引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された「経営工学ハンドブック」丸善株式会社平成6年9月10日発行、1〜10頁、68〜85頁(以下「引用例1」という。)には、以下(a)〜(c)の事項が記載されている。
(a)「5.1 経営診断のモデル化,アプローチおよびアーキテクチャの選択
企業の評価は,企業の基本的目標である「総資本利益率の長期継続的な維持,向上」を反映させて,1)収益性,2)成長性を中心的に,制約条件的な3)財務流動性,安全性,そして収益性を実態的に支える4)生産性を評価軸として,総合評価するのが従来一般化した見方である.長期的観点,戦略的観点からの評価として,潜在力,将来性などを実態的,定性的な面も考慮して評価する必要があるが,ここでは評価方法の基本としては,従来の4つの軸を用いることにした(4つの評価軸).これらの評価軸は価値的,抽象的なものである.そこから具体的,実態的な改善案に向けて,原因追求と問題点抽出を行うことになる.そこで原因追求を,経営比率の階層関係を体系化したツリー・ブラウザと呼ぶ各種経営比率の関連図を利用することにした(全社的視点からのトップダウン診断).図3.2は,そのツリー・ブラウザの一般的な例である.4つの評価軸によって,経営比率関連図は,4つの系列がある.」(81頁9〜19行)
(b)「5.2 経営診断支援システムの構成と詳細設計
設計されたシステムは,図3.3のように総合評価・原因追求部,問題点抽出部,改善案生成部,エディタ部,ユーザ・インターフェイス部からなる.エディタ部はさらにデータ入力部,ツリー・ブラウザ編集部,知識編集部からなる,以下各サブシステムについて,どのような詳細設計になっているか,ユーザはどのように利用するのかを説明する.
(1)データ入力部とツリー・ブラウザ編集部
入力部では診断に必要な財務諸表や経営比率の入力,および入力済みデータの編集を行う.実際の入力には,表形式のエディタを用い,勘定科目の合計などはシステムが行い,ユーザの負担を軽くしている.この入力には,他比較,自己比較,また階層的診断,さらには複数のユーザ利用ができるように,複数社,時系列,部門別のデータを登録することができるようになっている.
ツリー・ブラウザ編集部では,標準的に準備されたツリー・ブラウザを,ユーザが自分用に編集することが…できる.
(2)総合評価・原因追求部
まず評価に関してユーザにいろいろなオプンョンが準備されている.ツリー・ブラウザ上の最も抽象的な収益性,財務流動性・安全性,生産性に関する評価基準で企業全体を評価する場合,自己比較,他比較,また対象企業と比較対象企業を選ぶことができる.さらに総合評価をする場合の評価軸間の重み付けをユーザが編集することができる.そしてメニューにより総合評価をレーダチャート(図3.4)として得ることができる.このような評価軸の比率,比較基準,比較軸間の重み付けのオプション選択によって,評価の多角的な検討が可能である.」(82頁1行〜83頁4行)
(c)図3.4をみると、収益性、成長性、安全性、生産性の4つについて、対応する評価軸上に各評価値を印したレーダチャートが看取される。
上記(a)、(b)の「経営診断システム」において、収益性、成長性、安全性、生産性の4つは、ツリー・ブラウザ上の最も抽象的な項目であり、又、入力部では診断に必要な財務諸表や経営比率の入力を行うのであるから、上記(c)の「収益性、成長性、安全性、生産性」の4つについて評価値をツリー・ブラウザ上で下位(子孫)となる各項目の評価値から算出手段で算出することは自明のことであり、又、上記(b)の「階層的診断」も行うのであるから、上記(c)の「収益性、成長性、安全性、生産性」の4つについてツリー・ブラウザ上で下位(子孫)となる各項目の評価値を記憶手段で記憶することも自明のことである。更に、可視情報の表示において、入力手段からの指示に基づいて、表示する可視情報を作成手段で作成し、表示手段で表示することが周知であるから、上記(c)の「レーダチャート」を表示するのに、レーダチャートを、入力部からの指示に基づいて、作成手段で作成し、表示手段で表示することも自明のことである。
したがって、上記(a)〜(c)の記載事項及び図面の記載から、引用例1には、
「企業の評価として、収益性、成長性、安全性、生産性の4つについて、対応する評価軸上に各評価値を印したレーダチャートを、入力部からの指示に基づいて、作成手段で作成し、表示手段で表示する経営診断支援システムであって、
ツリー・ブラウザ上で収益性の下位となる各項目の評価値と、ツリー・ブラウザ上で成長性の下位となる各項目の評価値と、ツリー・ブラウザ上で安全性の下位となる各項目の評価値と、ツリー・ブラウザ上で生産性の下位となる各項目の評価値とを記憶する記憶手段と、
前記各項目の評価値等を入力する入力部と、
ツリー・ブラウザ上で収益性の下位となる各項目の評価値から収益性の評価値を算出し、ツリー・ブラウザ上で成長性の下位となる各項目の評価値から成長性の評価値を算出し、ツリー・ブラウザ上で安全性の下位となる各項目の評価値から安全性の評価値を算出し、ツリー・ブラウザ上で生産性の下位となる各項目の評価値から生産性の評価値を算出する算出手段と、
を具備する経営診断支援システム。」
の発明(以下「引用例1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
同じく引用された「Lotus1-2-3による戦略的経営計画の立て方」志村和次郎著、実教出版株式会社1993年1月20日第1刷発行、30〜49頁(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「企業力の評価のねらいは、経営計画を作成する上で、自社の経営資源の中で、どんな点が強いか、どんな点が弱いかを明確にすることにあります。その評価対象は次のように整理できます。
(1)実績推移……総合力としての業績と、戦略事業単位の成長性
(2)製品競争力……製品別シェア、伸長力、貢献度
(3)販売力……販売網の強弱、得意先の優劣
(4)開発力……新製品貢献度、商品化件数、特許件数
(5)生産力……コスト競争力、生産技術、平均年齢
(6)情報化力……情報化投資とシステム化の内容
(7)組織力……経営能力、生産性、平均年齢
(8)財務力……自己資本、資金調達力
成長型企業の特徴は、研究開発およびマーケティング企画を重視しています。そして情報化投資を先行させ、強力なデータベースと情報ネットワークの整備が進んでいる企業です。
さて、企業力の評価というと業績結果(財務諸表中心)に評価しがちですが、もっと上記(2)〜(3)のプロセス、戦略なり、施策、そして戦力分析を優先させるべきでしょう。」(30頁1〜17行)
上記の「成長型企業は開発研究およびマーケティング企画を重視する」旨の記載から、上記の「製品競争力」に市場の需要への製品の適合性を含ませることは自明のことである。
したがって、以上の記載事項から、引用例2には、
「企業力を評価する評価項目として、市場の需要への製品の整合性を含む製品競争力、商品化件数を含む研究開発力、経営能力を含む組織力等があり、企業力の評価として、業績結果よりも戦略なり施策そして戦力分析を優先させるべきであること」
が記載されていると認められる。

3 本願発明と引用例に記載された発明との対比
本願の請求項1に係る発明の「評価の対象となるベンチャー企業毎に、又はそのベンチャー企業について評価すべき複数の技術があればその技術毎に、」は、要素を選択する場合の語句「又は」を用いて並列表現しており、発明を特定する事項として「評価の対象となるベンチャー企業毎に、」又は「そのベンチャー企業について評価すべき複数の技術があればその技術毎に、」の何れかの択一的な事項と認められる。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下「後者」という。)とを対比すると、
後者の「経営診断支援システム」は、企業の評価を支援するものであるから、前者の「ベンチャー企業評価支援システム」と「企業評価支援システム」として共通し、
後者の「レーダチャート」は、前者の「グラフ」に相当し、
後者の「収益性」、「成長性」、「安全性」、「生産性」は、主たる評価項目(評価軸)となるのであるから、前者の「第一の主評価項目」、「第二の主評価項目」、「第三の主評価項目」と「主評価項目」として共通し、
後者の主評価項目(「収益性」、「成長性」、「安全性」、「生産性」)は、ツリー・ブラウザ上で下位となる各項目が属するのであるから、前者の主評価項目と同様に「諸項目を集めた主評価項目」といえ、
後者の「収益性、成長性、安全性、生産性」の4つについての各々の「評価値」は、前者の「評価点」に相当し、
後者の「下位となる各項目の評価値」は、前者の「各項目について評価した数値データ」に相当し、
後者の「入力部」は、前者の「入力手段」に相当している。
したがって、両者は、
「評価の対象となる企業毎に、諸項目を集めた主評価項目の各項目について評価した数値データを複数の主評価項目について記憶する記憶手段と、
前記数値データ等を入力する入力手段と、
前記記憶手段に記憶された前記各項目の各数値データを用いて前記各主評価項目毎に評価点を算出する評価点算出手段と、
前記入力手段からの指示信号に基づいて、評価対象となる企業毎に前記各主評価項目について対応する軸上に評価点を印したグラフを作成するグラフ作成手段と、
前記グラフ作成手段によって作成されたグラフを表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする企業評価支援システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者は、評価の対象となる企業がベンチャー企業であるのに対して、後者は、評価の対象となる企業をベンチャー企業とすることは明記していない点。
[相違点2]
前者は、対応する軸上に評価点を印したグラフが作成され表示される主評価項目が、技術に関する諸項目を集めた第一の主評価項目と、市場に関する諸項目を集めた第二の主評価項目と、開発意欲に関する諸項目を集めた第三の主評価項目であるのに対して、後者は、対応する軸上に評価点を印したグラフが作成され表示される主評価項目が、収益性に関する諸項目を集めた主評価項目と、成長性に関する諸項目を集めた主評価項目と、安全性に関する諸項目を集めた主評価項目と、生産性に関する諸項目を集めた主評価項目であり、又、前者の評価点算出手段は、第一の主評価項目の評価点を算出するときには技術が理論的に妥当なものであるか否かを判断するための項目である技術の妥当性の項目の数値データが他の項目の数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出し、第二の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の技術が社会の顕在又は潜在ニーズに適合するものであるか否かを判断するための項目である社会適合性の項目の数値データを他の項目の数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出し、第三の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の開発に対する意欲を判断するための項目である起業家の資質又は上級管理者による強力なバックアップの項目の数値データを他の項目の前記数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出するものであるのに対して、後者の評価点算出手段は、各項目の各数値データを用いて各主評価項目毎に評価点を算出しているが、前者のようには算出していない点。

4 当審の判断
[相違点1]について検討する。
ベンチャー企業も企業の一種であり、後者において、評価の対象となる企業をベンチャー企業としてシステムを構築することは、当業者が必要に応じて適宜になし得たことである。
[相違点2]について検討する。
引用例2に、「企業力を評価する評価項目として、市場の需要への製品の整合性を含む製品競争力、商品化件数を含む研究開発力、経営能力を含む組織力等があり、企業力の評価として、業績結果よりも戦略なり施策そして戦力分析を優先させるべきであること」が記載されており、「研究開発力」として「技術」があり、商品化するのに「技術」が理論的に妥当なものでなければならないことは自明のことであり、「製品競争力」は技術を基に開発される製品の「市場」における競争力といえ、「組織力」が「開発意欲」に関連し、組織として管理者の部下へのバックアップ体制が必要であることも自明のことである。そして、企業力を評価する上で評価項目として何を採用するかは評価する者が必要に応じて適宜に選択し得ることである。
したがって、後者において、引用例2に記載された事項を適用し、ベンチャー企業を評価する主評価項目として、技術が理論的に妥当なものであるか否かを判断するための項目である技術の妥当性の項目を含む技術に関する諸項目を集めた第一の主評価項目と、技術が社会の顕在又は潜在ニーズに適合するものであるか否かを判断するための項目である社会適合性の項目を含む市場に関する諸項目を集めた第二の主評価項目と、開発に対する意欲を判断するための項目である起業家の資質又は上級管理者による強力なバックアップの項目を含む開発意欲に関する諸項目を集めた第三の主評価項目を採用してシステムを構築することは、当業者が容易に推考し得たことである。
その際に、評価対象の総合評価点を評価対象に属する各項目の評価点から算出するのに、各項目の評価点を各項目毎に重み付けすることが周知であり(例えば特開平6-124294号公報参照。特に段落【0003】の従来の技術に関する記載に注目されたい。)、ベンチャー企業を評価する上で主評価項目に属する各項目の何を重視するかは評価する者が適宜に選択し得ることであるから、第一の主評価項目の評価点を算出するときには技術が理論的に妥当なものであるか否かを判断するための項目である技術の妥当性の項目の数値データが他の項目の数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出し、第二の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の技術が社会の顕在又は潜在ニーズに適合するものであるか否かを判断するための項目である社会適合性の項目の数値データを他の項目の数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出し、第三の主評価項目の評価点を算出するときには評価対象となるベンチャー企業の開発に対する意欲を判断するための項目である起業家の資質又は上級管理者による強力なバックアップの項目の数値データを他の項目の前記数値データに比べて高いウエイトとなるように評価点を算出するようにして、前者のようにすることは、当業者が格別に思考することなく想到し得たことである。
そして、本願の請求項1に係る発明の効果も、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段の効果から当業者が容易に予測し得た程度のものである。

5 まとめ
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-29 
結審通知日 2004-11-05 
審決日 2004-11-30 
出願番号 特願平8-242238
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 山本 穂積
竹中 辰利
発明の名称 ベンチャー企業評価支援システム  
代理人 半田 昌男  
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