ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
---|---|
管理番号 | 1110509 |
審判番号 | 不服2002-23564 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-06 |
確定日 | 2005-01-14 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 41524号「インク供給容器」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-217499〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成9年2月10日の出願であって、平成14年10月31日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月6日付けで本件審判請求がされたものである。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年6月21日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「ケース本体内部に仕切部材を介して収容した複数のインク収納袋のそれぞれに検出板を添設するとともに、該各検出板の一部に折曲げ形成したそれぞれの被検出片を、前記各インク収納袋が満タン状態のもとで各先端がほぼ同じ位置を占めるように、かつ互いに位置をずらすようにして共通の検出手段に臨ませたことを特徴とするインク供給容器。」 第2 当審の判断 本審決では、「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いる。 1.引用刊行物の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-13351号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜カの記載が図示とともにある。 ア.「インクを収納するための複数のインク容器と、該インク容器内のインクを検出する為の電極とを有するインクカートリッジにおいて、 少なくとも2つの前記インク容器に係わる前記電極を電気的に接続したことを特徴とするインクカートリッジ。」(1頁左下欄特許請求の範囲) イ.「インクカートリッジ用のインク袋の従来例を第4図に示す。ここで、1はインク残量検出機能を有するインク袋の本体であり、・・・2,3はインク残量検出用電極であり、これらの電極を挿入成形したポリエチレン製の側板4と、インク残量検出器5とを溶着し、さらにこの検出器5を上述のインク袋(インク袋本体)1の側方開口部に溶着してある。」(1頁右下欄7〜17行) ウ.「一対の電極2,3間には電流が印加されており、電極間の抵抗値を測定するようになつている。このため、インク残量検出器5の中に空気11が流入すると、電極2,3がインク液面から離れて、電極2,3間の抵抗値が無限大となる。よつて、この抵抗値が無限大となった時に、インク袋1内にインクが無くなつたと、例えば図示しないマイクロコンピユータ等の判断手段により判断することにより、インク残量の有無を検出している。」(2頁左上欄13行〜右上欄2行) エ.「第6図は上述のようなインク残量検出機能付のインク袋1を複数個、1つのインクカートリッジ内に配設した場合の一例を示す。・・・15は各インク袋1間に挿入してインク袋1を仕切る仕切り板であり、各々の爪22をインクカートリッジ本体12の突起23に乗せる・・・16は上蓋である。上蓋16はインク袋1等をインクカートリッジ本体12内に収納した後、その本体12に溶着され、第7図に示すような状態となる。」(2頁右上欄7行〜左下欄6行) オ.「[発明が解決しようとする問題点] しかしながら、第6図に示すような複数個、例えば4個のインク袋1を1つのインクカートリッジ本体12内に収納したインクカートリッジでは、インクの残量と検出する電極2,3は第7図に示すように、8個必要であり、本体12にこれらの電極を接合するための端子が8個必要となる。・・・本発明は、上述の点に鑑み、特別複雑な装置を設けることなしに、確実に電極の接合がなされるインクカートリッジを提供することを目的とする。」(2頁左下欄13行〜右下欄8行) カ.「電極の直列配線は、例えば第2図および第3図に示すように行う。すなわち、イエローの上部の電極2-Yとブラックの上部の電極2-Bとを電線21Aで接続し、マゼンタの上部の電極2-Mとブラックの下部の電極3-Bとを電線21Bで接続し、シアンの上部の電極2-Cとイエローの下部の電極3-Yとを電線21Cで接続する。すると、シアンの針22-CがシアンのインクCを介してシアンの上部の電極2-Cと接続し、イエローの下部の電極3-YがイエローのインクYを介してイエローの上部の電極2-Yに接続し、ブラックの上部の電極2-BがブラックのインクBを介してブラックの下部の電極3-Bに接続し、マゼンタの上部の電極2-MがマゼンタのインクMを介してマゼンタの針22-Mに接続するから、第3図に示すように、シアンの針22-Cからマゼンタの針22-Mまで、フレキシブル基板20上の3本の電線21A、21B、21Cと、インクB、Y、M、Cとを介して各電極が直列に接続する。 以上のような構成において、シアンの針22-Cとマゼンタの針22-Mとの間に電流を流して抵抗を測定する。各インク袋1-B,1-Y、1-M、1-Cのいずれかにインクが無くなると、その抵抗が無限大となるので、インクが無くなつたことが確実に検知できる。」(3頁右上欄2行〜左下欄6行) (2)同じく引用された特開昭59-194855号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のキ〜シの記載が図示とともにある。 キ.「インクカセツト内に収納されたインク袋内のインク残量を検出するインク残存検出装置において、カセツト内面とインク袋間にシート材を配置し、インク量減少にともなつて変化するシート材の位置を無接触検出手段を介して検出することによりインク残存を検出することを特徴とするインク残存検出装置。」(1頁左下欄5〜11行) ク.「前記無接触検出手段が磁気感応素子からなることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のインク残存検出装置。」(同欄15〜17行) ケ.「従来一般に液体収納容器内の液体残存を検出するのに第3図に図示されたような機構が用いられている。・・・第3図(c)に図示された機構では液体15中に2本の導体18を差し込み、これを電極として用い液体15の減少による抵抗変化を検出し、残量が少なくなつた時急に抵抗値が上ることを利用したものである。・・・第3図(C)に図示されたような機構においてもインクが残り少なくなつて完全に無くなつたとしてもインク収納袋内部に付着したインクで抵抗が下がる危険性があり正確なインク残量を検出することができない。」(2頁左下欄3行〜右下欄14行) コ.「第4図は本発明にかゝわるインク残存検出装置の基本的構造を示す為の分解斜視図であつて、第1図に示されたインクカセツト4に収納されるインク収納袋1とその上面1aに載置されるシート部材19とを示している。・・・シート部材19は適度の弾性を有する材料、例えばポリエステルシートなどから成る薄板より構成されており、・・・端部にはシート部材に対して直角に下方に向つて折り曲げられた検知板(作動板)19bが設けられている。」(3頁左上欄3行〜右上欄6行) サ.「インク収納袋1の中のインク2が完全に消費された状態にあつては、・・・検知板19bはインクカセツトの外部に突出することとなる。」(3頁左下欄4〜9行) シ.「第10図は本発明の第3の実施例を示す図であつて、本実施例においては・・・磁気的検知手段がシート部材の作動を検知するよう構成されている。 本実施例にあつてはシート部材19の検知板19bに、接着又は塗布等公知の方法によつて付着された磁性体30が設けられており、又インクカセツト4の底部には、磁性体30を有する検知板19bの出入する為の孔部31が穿孔されている。更にこの孔部31に近接して磁気感応手段32(例えばリ-ドスイツチ等)が配置され、導線26,27によつてインク残存検出部25を経て報知部28に電気的に接続される。・・・第11図はインク収納袋のインク2が消費しつくされて、インクの残存しない状態を示しており、この状態にあつては・・・シート部材19は下方に押圧され、それに従つて検知板19bも下方に降下する結果、磁気感応手段32は検知板19bに付着した磁性体30の磁力に感応して信号を発生する。インク残存検知部25はその信号によつてインクの残存しないことを検知し、報知部28はその検知結果を使用者に報知して警告する。」(4頁右下欄15行〜5頁右上欄8行) 2.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載アの「インク容器」とは、その他の記載の「インク袋」のことである。 引用例1の記載エは従来技術に関する記載であるが、それを改良したものにも当てはまる(第1図参照)。 したがって、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。 「インクカートリッジ本体を仕切り板により仕切り、各仕切られた室にインク袋を収納し、上蓋により閉鎖したインクカートリッジであって、 インクカートリッジ本体の突起に仕切り板の爪が乗せられており、上蓋はインクカートリッジ本体に溶着されており、 各インク袋には2つの電極が設けられ、複数のインク袋の電極は直列接続されているインクカートリッジ。」(以下「引用発明1」という。) 3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定 引用発明1の「仕切り板」、「インク袋」及び「インクカートリッジ」は、本願発明の「仕切部材」、「インク収納袋」及び「インク供給容器」にそれぞれ相当し、引用発明1の「インク袋」が「ケース本体内部に仕切部材を介して収容」されていることは明らかである。 引用発明1において「各インク袋には2つの電極が設けられ、複数のインク袋の電極は直列接続されている」ことと、本願発明において「複数のインク収納袋のそれぞれに検出板を添設するとともに、該各検出板の一部に折曲げ形成したそれぞれの被検出片を、前記各インク収納袋が満タン状態のもとで各先端がほぼ同じ位置を占めるように、かつ互いに位置をずらすようにして共通の検出手段に臨ませたこと」は、複数のインク袋のうちの1つでもインク切れになったことを検出する構成である点で一致する。 したがって、本願発明と引用発明1とは 「ケース本体内部に仕切部材を介して複数のインク収納袋を収納し、複数のインク袋のうちの1つでもインク切れになったことを検出する構成を有するインク供給容器。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉「複数のインク袋のうちの1つでもインク切れになったことを検出する構成」につき、本願発明が「複数のインク収納袋のそれぞれに検出板を添設するとともに、該各検出板の一部に折曲げ形成したそれぞれの被検出片を、前記各インク収納袋が満タン状態のもとで各先端がほぼ同じ位置を占めるように、かつ互いに位置をずらすようにして共通の検出手段に臨ませた」のに対し、引用発明1では「各インク袋には2つの電極が設けられ、複数のインク袋の電極は直列接続されている」構成とした点。 4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 引用例2の記載コ,シ及び第4図によれば、「シート部材19」、「検知板19b」及び「無接触検出手段」(「磁気感応手段32」)は、本願発明の「検出板」、「検出板の一部に折曲げ形成した被検出片」及び「検出手段」に相当し、特に第4図によれば、「検知板19b」はそれが形成される「シート部材19」の全長にわたって形成されるのではなく、一部にのみ形成されている。 引用例2の記載ケにおける第3図(C)図示の従来技術は、引用発明1において採用されている技術である(仕切り板を設けて複数のインク袋を収納するかどうかの相違はあるものの、1つのインク袋の残量検出手段としては実質的に同一といえる。)から、記載ケにある課題は当然引用発明1にも当てはまる。 そうであれば、同課題を解決するため、引用発明1の残量検出手段を引用例2記載の技術に変更することは当業者が当然試みることである。その際、引用発明1が仕切り板を有することが、引用例2記載の技術を採用することの障害になるかどうか検討しなければならないが、引用発明1の仕切り板は、爪部が突出した形状となっており、爪のない部分ではインクカートリッジ本体と仕切り板間に隙間があると認められ(引用例1の第1図参照)、かつ引用例2記載の「検知板19b」は「シート部材19」の一部にのみ折り曲げ形成されているのだから、上記隙間を介してインク消費時にインクカートリッジ本体外部に突出するよう構成することには何の障害もない。 さらに、引用発明1は、電極及び電極を接合するための端子数を減少することを課題としているのだから(引用例1の記載オ参照。)、引用発明1に引用例2記載の技術を採用する場合にあっても、無接触検出手段(磁気感応手段)の数は少ない方が好ましいことは自明である。そして、引用発明1に引用例2記載の技術を採用して、インク袋ごとに「検出板」(シート部材)を設け、その一部を折り曲げて「被検出片」(検知板)とし、被検出片に磁性体を設けた場合、それら複数の被検出片(磁性体)が1つでもインクカートリッジ本体から突出したことを検出できるように、検出手段(磁気感応手段)を複数の磁性体に対して共通化し、そのためそれら複数の被検出片(磁性体)を「各インク収納袋が満タン状態のもとで各先端がほぼ同じ位置を占めるように」共通の検出手段(磁気感応手段)に臨ませることは設計事項程度というべきである。また、複数の被検出片(磁性体)を「互いに位置をずらすように」配することは当然である。 以上を総合すれば、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明1に引用例2記載の技術を採用することにより、当業者が容易に想到できた構成といわざるを得ない。また、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-11-16 |
結審通知日 | 2004-11-17 |
審決日 | 2004-11-30 |
出願番号 | 特願平9-41524 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大元 修二、後藤 時男 |
特許庁審判長 |
砂川 克 |
特許庁審判官 |
谷山 稔男 津田 俊明 |
発明の名称 | インク供給容器 |
代理人 | 木村 勝彦 |
代理人 | 西川 慶治 |