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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1110691
審判番号 不服2002-24430  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2005-01-20 
事件の表示 平成11年特許願第150716号「画像処理方法、及びボリュームレンダリング処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 8日出願公開、特開2000-339486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年5月28日の出願であって、平成14年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年1月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年1月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 3次元空間内に3次元直交座標系で表記される複数の観測点それぞれに対して設定された流体の運動のシミュレーション結果などの数値データを2次元直交座標系に射影し、2次元画像として可視化する画像処理方法において、
前記2次元直交座標系が配置された平面を挟んで、前記3次元直交座標系に対し反対側に設定された視点と、前記2次元直交座標系上の点とを通過する直線上に、サンプリング点を設定するサンプリング点設定工程と、
前記サンプリング点付近における前記数値データの変化の度合いを示すデータ勾配の大きさを求め、勾配の大きさに関して単調減少関数である前もって定められた関数に、前記求められた勾配の大きさを代入して得られた値を新たなサンプリング間隔とし、次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に設定する次サンプリング点設定工程とを有し、
各視線上で前記サンプリング点設定工程と、前記次サンプリング点設定工程とを繰り返すことを特徴とする画像処理方法。」
と補正された。

(2)判断
補正後の特許請求の範囲の請求項1では、「次サンプリング点設定工程」において「勾配の大きさに関して単調減少関数である前もって定められた関数に、前記求められた勾配の大きさを代入して得られた値を新たなサンプリング間隔とし」としているが、願書に最初に添付された明細書(以下、当初明細書という。)には、「単調減少関数」との記載はない。
この点について請求人は、請求の理由で、
「 【本願発明が特許されるべき理由】
[理由1について]
請求人は、本書と同日提出の手続補正書で、請求項1,20の記載「前記サンプリング点付近における前記数値データの変化の度合いを示すデータ勾配の大きさに対する算術演算により、該サンプリング点が設定された視線と同一の視線上に次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に1回の計算で一意に設定する」を、「前記サンプリング点付近における前記数値データの変化の度合いを示すデータ勾配の大きさを求め、勾配の大きさに関して単調減少関数である前もって定められた関数に、前記求められた勾配の大きさを代入して得られた値を新たなサンプリング間隔とし、次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に設定する」
と改めました。
この補正は、例えば、段落106に例示された(7)式、段落126に例示された(12)式、及びこれらの例を踏まえた上での段落114の記載、「このようにして次のサンプリング点までの間隔は、データ勾配の大きさが大きなところでは小さく、データ勾配の大きさが小さなところでは大きくなるように計算されている。」の記載に基づいて、拒絶査定時の特許請求の範囲の記載をより明確化したものです。これらの記載が、新たなサンプリング点までの間隔を、勾配の大きさに対して単調減少となる関数を用いて計算することを開示していることは、当業者には明らかです。」
と主張している。
新たなサンプリング点までの間隔を計算する関数に関する、当初明細書の記載は次のとおりである。

「 【0105】
ステップS3612において、次のサンプリング点X(n+1)までの間隔△t(n)が、上述の(6)式より求めたデータ勾配の大きさを用いて、以下の(7)式によって求められる。
【0106】
△t(n)=△t0/(gD(n)+gD0) ・・・・・・(7) 【0107】
ここで、△t0およびgD0は、あらかじめ定められた正の定数であり、次のサンプリング点X(n+1)までの間隔の全体的な調整を行うために利用される。」

「 【0125】
ステップS3622において、次のサンプリング点X(n+1)までの間隔△t(n)が、上述の透明度の差分を用いて、以下の(12)式によって求められる。
【0126】
△t(n)=△t0/(△T(n)+△T0) ・・・・・(12)
【0127】
ここで、△t0および△T0は、あらかじめ定められた正の定数であり、次のサンプリング点X(n+1)までの間隔の全体的な調整を行うために利用される。」

「 【0114】
ステップS3612において、ステップS3611で求められたデータ勾配の大きさを用いて、次のサンプリング点までの間隔が計算される。このように次のサンプリング点X(n+1)までの間隔は、データ勾配の大きさが大きなところでは小さく、データ勾配の大きさが小さな所では大きくなるように計算されている。」

(7)式及び(12)式が、単調減少となる関数を用いて計算していることは、請求人の主張のとおりであるが、これ以外の単調減少関数については、当初明細書及び図面には記載も示唆もない。
また、関数値が0以下となる単調減少関数では、「サンプリング間隔」が0以下となり、「次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に設定する」ことができないので、どのような単調減少関数でもよいわけではない。したがって、当初明細書及び図面の記載から、単調減少関数を用いることが、当業者に自明のこととはいえない。
以上のように、「次サンプリング点設定工程」において「勾配の大きさに関して単調減少関数である前もって定められた関数に、前記求められた勾配の大きさを代入して得られた値を新たなサンプリング間隔とし」とすることは、当初明細書及び図面の範囲内でなされる補正ではない。
なお、どのような単調減少関数でもよいわけではないから、補正後の明細書の記載は特許法第36条第4項または第6項に規定する要件を満たしていないものでもあり、特許出願の際に独立して特許を受けることができないということもできる。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.特許請求の範囲の記載
平成15年1月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成14年9月30日付けの手続補正で補正されたとおりであり、その請求項1-19の記載は画像処理方法に関するものであり、請求項20-38の記載はボリュームレンダリング処理装置に関するものである。そして、独立形式で記載された請求項は請求項1及び請求項20であり、その請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】 3次元空間内に3次元直交座標系で表記される複数の観測点それぞれに対して設定された流体の運動のシミュレーション結果などの数値データを2次元直交座標系に射影し、2次元画像として可視化する画像処理方法において、
前記2次元直交座標系が配置された平面を挟んで、前記3次元直交座標系に対し反対側に設定された視点と、前記2次元直交座標系上の点とを通過する直線上に、サンプリング点を設定するサンプリング点設定工程と、
前記サンプリング点付近における前記数値データの変化の度合いを示すデータ勾配の大きさに対する算術演算により、該サンプリング点が設定された視線と同一の視線上に次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に1回の計算で一意に設定する次サンプリング点設定工程とを有し、
各視線上で前記サンプリング点設定工程と、前記次サンプリング点設定工程とを繰り返すことを特徴とする画像処理方法。」

4.原審の拒絶理由
原査定の拒絶の理由となった、平成14年7月18日付けで通知された拒絶の理由1で最初に指摘した点は次のとおりである。

「請求項5,6,7,26,27,28に記載された構成と発明の詳細な説明との対応が不明瞭である。
(前記請求項の「サンプリング点から次にサンプリングすべき地点までの間隔を1回の計算で一意に計算する」と、発明の詳細な説明との対応が不明瞭である。
前記請求項に係る発明は、明細書に記載された「第2の実施例」に対応する ものであるが、第2の実施例では、「新たに次のサンプリング点を想定し、現行サンプリング点との間隔が不適切なものであれば、半分の間隔を用いて次のサンプリング点を想定し直す」ものであるから、「間隔を1回の計算で一意に計算する」ものとは認められない。)」

5.判断
平成14年7月18日付けで通知された拒絶の理由でいう請求項は、平成14年5月7日付けの手続補正により補正されたものであり、その請求項5の記載は画像処理方法に関するものである。そして、上記3.のとおり本願の特許請求の範囲で画像処理方法に関する独立形式で記載された請求項は請求項1だけであり、その請求項1に「該サンプリング点が設定された視線と同一の視線上に次のサンプリング点を前記視点側とは反対側に1回の計算で一意に設定する」と、平成14年7月18日付けで通知された拒絶の理由で発明の詳細な説明との対応が不明瞭であると指摘された「サンプリング点から次にサンプリングすべき地点までの間隔を1回の計算で一意に計算する」と同一ではないが、次のサンプリング点の計算に関して1回の計算で一意に行うことが記載されているので、この点が明りょうになり不備が解消したかどうか検討する。
発明の詳細な説明には、「1回の計算で一意に」との文言は特許請求の範囲と同様な記載の【課題を解決するための手段】にしか記載されていない。そして、次のサンプリング点の計算に関しては以下の記載がなされている。

「 【0104】
この次のサンプリング点X(n+1)までの間隔を用いることでステップS3613において、新たなサンプリング点X(n+1)の座標が求められる。サンプリング点X(n+1)の座標(x(n+1),y(n+1),z(n+1))は、3次元直交座標系領域600における座標であり、以下の(8)式〜(10)式によって求められる。
【0105】
x(n+1)=x(n)+Vx(i)×△t(n) ・・・・・・(8)
y(n+1)=y(n)+Vy(i)×△t(n) ・・・・・・(9)
z(n+1)=z(n)+Vz(i)×△t(n) ・・・・・(10)
【0106】
ここで、Vx(i)、Vy(i)、およびVz(i)は、それぞれ、視線S(i)に平行な単位ベクトルのx、y、およびz成分である。単位ベクトルの方向は、視点100からスクリーン200に向かう方向である。」

上記の計算は、複数の式の計算によるものであり、1回の計算でなされるものではない。
さらに、発明の詳細な説明には、次のサンプリング点の計算に関して、上記の計算以外で行うことは記載も示唆もされていない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、平成14年7月18日付けで通知された拒絶の理由1で最初に指摘した点と同様の理由により、依然として発明の詳細な説明との対応が不明りょうであるから、本願の請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものとはいうことができない。

6.むすび
上述のように、本願の明細書の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-16 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-07 
出願番号 特願平11-150716
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06T)
P 1 8・ 561- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 脇岡 剛  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 深沢 正志
加藤 恵一
発明の名称 画像処理方法、及びボリュームレンダリング処理装置  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 河合 信明  

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