• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1110714
審判番号 不服2003-20475  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-21 
確定日 2005-01-20 
事件の表示 平成11年特許願第134731号「遠隔監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開、特開2000-322673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は平成11年5月14日の出願であって、平成15年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月20日付けで手続補正がなされたが、同年9月17日付けで拒絶査定された。これに対して、平成15年10月21日付けで審判請求がなされ、同年11月12日付けで審判請求の理由を補正する手続補正と同時に明細書の記載を補正する手続補正がなされたが、同年12月10日付けで前置報告書が提出されたものである。

【2】平成15年11月12日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年11月12日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は明細書の特許請求の範囲及び段落0008(課題を解決するための手段)をその手続補正書の記載のとおりに補正しようとするものであって、その請求項1、2の記載は次のとおりである。(段落0008の記載は省略する。)
【請求項1】 複数のビル内にそれぞれ設置され、設備機器の異常を通報する複数の監視端末器と、前記ビルとは遠隔地に設置され、少なくとも1つ以上の前記監視端末器からの通報を電話回線を通じて受信する監視センタとからなる遠隔監視装置において、
前記監視端末器に、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視タイマと、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限部と、前記復旧監視タイマによる計時時間と前記復旧監視時限部が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を前記監視センタへ行なう復旧督促手段とを備えたことを特徴とする遠隔監視装置。
【請求項2】 請求項1記載の遠隔監視装置において、前記設備機器の復旧作業の緊急度に応じて、前記復旧監視時限部で前記許容時間をあらかじめ設定するようにしたことを特徴とする遠隔監視装置。

(2)補正前の本願発明
本件補正の対象となる補正前の明細書は平成15年6月18日付けで補正された明細書であって、その特許請求の範囲には請求項1、2が記載されているところ、その内容は以下のとおりである。
【請求項1】 複数のビル内にそれぞれ設置され、設備機器の異常を通報する複数の監視端末器と、前記ビルとは遠隔地に設置され、少なくとも1つ以上の前記監視端末器からの通報を電話回線を通じて受信する監視センタとからなる遠隔監視装置において、
前記監視端末器に、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視タイマと、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限部と、前記復旧監視タイマによる計時時間と前記復旧監視時限部が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を行なう復旧督促手段とを備えたことを特徴とする遠隔監視装置。
【請求項2】 請求項1記載の遠隔監視装置において、前記設備機器の復旧作業の緊急度に応じて、前記復旧監視時限部で前記許容時間をあらかじめ設定するようにしたことを特徴とする遠隔監視装置。

(3)上記本件補正に対する当審の判断
(3-1)請求項1に対する補正(補正後の請求項1)について
本件補正後の請求項1の内容は、補正前の請求項1の発明特定事項である復旧督促手段が行う復旧督促通報の通報先について、これを「前記監視センタへ」と特定する事項を付加するものであるから、かかる補正は特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3-2)独立特許要件について
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(3-2-1)引用刊行物(引用例)
A.引用発明
1.特開昭63-55698号公報
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1(原審の引用例1。以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の記載がある。
a.「(1)ビルの設備に設置されたセンサからの情報を収集する、前記ビルに設けられた被監視局から異常通報があった時、その状態が表示装置に表示され、この表示状態によってオペレータが判断し、作業者へ必要な指示を与える監視センタを備えたビル遠隔監視システムにおいて、前記監視センタに、前記異常通報受信後、所定時間が経過しても復旧した旨の信号の入力がない時、未復旧であることを前記表示装置に表示してオペレータに知らせる復旧時間管理装置を備えたことを特徴とするビル監視システム。」(1頁左欄、特許請求の範囲。)
b.「〔作用〕オペレータが常時監視している表示装置に、異常を発報したビル設備が、所定時間を経過しても未復旧の時、その旨の表示がなされる。従って、オペレータは、未だ未復旧であることを、ビルの保守を実施する作業者に連絡し、早急なる復旧を促すことができる。これにより、長時間の異常事態の未復旧を防ぐことができる。」(2頁上段左欄17行-同右欄4行。)
c.「〔実施例〕以下、本発明の一実施例を図に基づき説明する。図は、本発明の一実施例になるビル遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。1-1から1-nは複数のビルで、例えばビル1-1には、ビル設備の異常を検出する複数のセンサ11aから11nがそれぞれ備えられると共に、被監視局1aも設けられている。・・(略)・・しかして今、ビル1-1の設備に異常事態が発生、及び復旧した場合の動作について説明する。このビル1-1に備えられたセンサ11a〜11nの内、例えばエレベータのセンサ11aは、エレベータの状態が正常であれば理論値0の信号を、一方、異常であれば理論値1の信号を被監視局1aに送信する。すなわち、エレベータの異常事態の発生に伴い、センサ11aが発する信号は理論値0から1へ、一方、復旧した場合は理論値1から0へそれぞれ変化する。この信号の変化を受信したパルス発生器12は、パルスを発生させることにより、自動ダイヤル装置13を起動させる。次に、自動ダイヤル装置13から警報信号が発せられ、送信器16より電話回線18を介し監視センタ2に送信される。」(2頁上段右欄5行-同下段右欄6行)
d.「次に監視センタ2では、被監視局1aより送られてきたビル番号信号とデータ信号を受発信制御装置21が受信して、中央処理装置22に入力として与える。異常事態発生のデータ信号の場合、ビル番号信号に基づいてビル1-1の個別情報ファイルを記憶装置23から読み出す。・・(略)・・そして、先に警報信号を発報したビル1-1のエレベータの異常発生からの復旧予定時間が例えば1時間である場合、復旧時間管理装置24は、データセットから1時間後に作動し、ビル番号とセンサ番号により、ビル1-1のエレベータ復旧に伴う警報信号を受信したか記憶装置23の来歴を確認する。この来歴がなければ未復旧であるので、復旧時間管理装置24は、中央処理装置22を介して表示装置25にビル1-1のエレベータが未復旧であることを表示する。」(3頁上段左欄4行-同右欄11行)

(2)以上の記載から、少なくとも以下のことが明らかである。
ア.記載a、cから、被監視局1a〜1nは、複数のビル内にそれぞれ設置され、例えばエレベータなどの設備機器の異常を通報する複数の監視端末器であるといえる。
イ.同じく記載a、cから、監視センタ2は、前記ビルとは遠隔地に設置され、少なくとも1つ以上の前記監視端末器(被監視局)からの通報を電話回線を通じて受信するものである。
ウ.記載a、b、dから、復旧時間管理装置24は、データセットから例えば1時間後、即ち異常通報を出力した後の時間、を計時する少なくとも1つ以上の(何らかの)手段(以下、便宜上この手段を「手段A」という。)を備えることは自明である。そして、このビル1-1のエレベータの異常発生からの復旧予定時間である1時間は、前記異常通報の出力から前記エレベータなどの設備機器の異常復旧までの許容時間を示すものであるから、その復旧時間管理装置24が前記許容時間を示す少なくとも1つ以上の(何らかの)手段(同じく、「手段B」という。)を備えることも自明である。
エ.同じく記載a、b、dから、その復旧時間管理装置24は、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の手段Aによる計時時間と前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の手段Bが示す許容時間とが一致したとき(即ち1時間)に復旧作業を促す通報を行う(何らかの)手段(同じく、「手段C」という。)とを備え、この手段Cは、当該「監視センタ自体」に備えたものであるということができる。
オ.上記アないしエから、前記「手段A」、「手段B」及び「手段C」を、それぞれその順に、少なくとも「復旧監視手段」、「復旧監視時限手段」及び「復旧督促手段」と呼ぶことができる。

(3)以上のことから、上記引用例には、自明の事項も含め少なくとも次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のビル内にそれぞれ設置され、設備機器(エレベータ)の異常を通報する複数の監視端末器(被監視局1a〜1n)と、前記ビルとは遠隔地に設置され、少なくとも1つ以上の前記監視端末器からの通報を電話回線を通じて受信する監視センタ(監視センタ2)とからなる遠隔監視装置において、
前記監視センタ自体に、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視手段と、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限手段と、前記復旧監視手段による計時時間と前記復旧監視時限手段が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を行なう復旧督促手段とを備えたことを特徴とする遠隔監視装置。」

B.周知技術
2.特開平 3- 8680号公報
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物2(原審の引用例3。)には、図面と共に、例えば「今、機械室7で作業する時、保守員は作業前に作業内容に見合った所定作業時間をタイマ17aでセットし、更にスイッチ9を動作させる。作業が所定時間を経過した場合・・(略)・・しかし、保守員が作業応援を必要と感じ、スイッチ9の復帰をしない場合、制御装置17は異常状態と判定し、通信装置18を介して電話回線19に異常データとして出力し、監視センタ20へと通報される。保守員より応援要請があったことを知った監視センタ20のオペレータは、当該担当営業所へ応援要請を通報し、当該エレベータへ他の保守員を応援に出すことができる。」(2頁下段右欄3行-4頁上段左欄1行。)との記載がある。これによれば、刊行物2の「保守員が作業前に作業内容に見合った所定作業時間をセットし、保守員がスイッチ9を動作させてからの動作時間を計測するタイマ17aと、タイマ17aが所定時間になると保守員にその旨を知らせ、保守員が作業応援を必要と感じ、スイッチ9の復帰をしない場合、通信装置18を介して電話回線19に異常データとして出力し、監視センタ20に通報する」手段は、スイッチ9とタイマ17aによって監視センタに作業応援を必要とする通報を行うための条件を判断する手段であって、当該スイッチ9は別としても、この動作時間を計測するタイマ17aは、通報装置16(又は機械室)側に設けられた、少なくとも該通報装置16側と監視センタ20側との間で通報を行うための「処理手段」であるといえ、また、その通報装置16は監視端末器であるといえる。したがって、上記刊行物2には、遠隔監視装置において、「監視端末器(通報装置16)に、監視端末器側と監視センタ側との間で通報を行うための処理手段(タイマ17a)を備える」技術が記載され、この技術によれば、前記処理手段を監視センタ20側に設けたものに比べ、監視センタ20側の装置の処理容量を小さくできるという効果を奏することは、当業者が自明のこととして認識しうるところと認められる。

3. 特開昭59- 94199号公報
(2)上記刊行物3には、図面と共に、例えば「〔発明の実施例〕中央監視装置21とビル管理端末装置22との回線は、加入電話回線15を利用して接続する方式であるが、回線自動接続回路9は、ビル管理端末装置22側にしか設けず、中央監視装置21側には設けていない。即ち、中央監視装置21側は、回線自動受信回路3のみで、常に受信側になっている。ビル管理端末装置22は、端末処理装置7の管理のもとに・・(略)・・端末処理装置7にも渡される。発報判断回路は、予めセットされた発報条件ファイルを参照し、その変化信号を中央に伝送すべきかどうかを判断する。この回路を設けたことが本発明の1つの特徴である。即ち、取り込んでいる現場設備機器23の状態信号は、単に中央で必要とする故障信号、異常信号のみでなく、機器の動作、停止状態、電源の入、切状態などの信号もある。これらの中には、端末処理装置7のプログラム処理機能の1つであるスケジュール発停制御、間欠運転制御などにより、ビル側だけで、一定時間ごとに機器の電源の入、切を行なう機器も含まれている。これらの機器がローカルで動作停止する度に、中央との回線接続しないように、この発報判断回路で制御するのである。この回路には、予め発報の条件をファイルとして記憶させることにより処理を行わせ、そのファイルの条件は、変更可能としている。このようにして、発報条件が成立した場合には、端末処理装置7より、回線自動接続回路9に起動をかけ、自動ダイヤル発信処理を行ない加入電話回線15を経由し、中央監視装置21の回線自動受信回路3を動作させ、中央監視装置21とビル管理端末装置22との間の回線を接続する。その後、伝送制御回路2、8を介してデータを伝送する。このようにして、発報条件を満した時のみデータ伝送を行うことが出来る。」(2頁5欄2行-3頁7欄4行)、「〔発明の効果〕本発明によれば、従来の方式に比べて、回線の接続回数を必要最小限に減らすことが出来、加入回線の使用料の低減がはかれる。また、無駄な回線接続を少なくすることにより、中央監視装置側の回線トラフィックが緩和され、中央側の回線数および中央処理装置の処理容量などを小さくすることができ、設備の投資費用を下げることが出来る。」(3頁8欄8-16行)との記載がある。これによれば、刊行物3の回線自動接続回路9及び発報判断回路11は、少なくともビル管理端末装置22側と中央監視装置21側との間で通報を行うための処理手段であるといえ、ビル管理端末装置22及び中央監視装置21はそれぞれ監視端末器及び監視センタであるといえる。したがって、上記刊行物3には、遠隔監視装置において、「監視端末器(ビル管理端末装置22)に、監視端末器側と監視センタ側との間で通報を行うための処理手段(回線自動接続回路9及び発報判断回路11)を備える」ことにより、監視センタ側の回線トラフィックが緩和され、監視センタ側の回線数および中央処理装置の処理容量などを小さくする技術が記載されているものと認められる。

4.特開平 7-261836号公報
(3)上記刊行物4には、図面と共に、例えば「【従来の技術】プラントの監視制御装置においては、電圧、電流、水圧、流量などのプロセスデータを取り込んで、毎正時等の一定時間毎の値を記録している。このプロセスデータは、現状制御装置がそれぞれの計測センサーからの信号として取り込んだ後、データ伝送装置により中央監視装置に集められ予め設定されたフォーマットに従って記録される。また、記録されたデータは一定量中央監視装置に記憶されている。【発明が解決しようとする課題】しかしながら、プラントの規模が大きく複雑になると記録しなければならないデータの量が膨大になり、上述した従来の監視制御装置においては中央監視装置の負担が大きくなってしまうため、本来の機能であるプラントの監視制御機能に制限が必要になってしまうという問題があった。また、記録するプラントデータには、日常の運転管理に必要なデータと非定常時に必要なデータがあるが、上述の従来の監視制御装置においては、一括して中央監視装置により記録および記憶されているので、データ管理の面からも作業が繁雑で効率が低下するという問題があった。」(【0002】〜【0004】)、「本発明は上記の事情に鑑み、記録および記憶するプロセスデータの量を減じることなしに中央監視装置のプロセスデータの記録および記憶のための負担を軽減して本来の監視制御機能を向上させると共に、プラントデータの管理効率を向上することができる監視制御装置を提供することを目的としている。」(【0005】)、「図1に示す監視制御装置はプロセスデータを取り込む現場制御装置1と、データの伝送を行なうデータ伝送装置2と、データの記憶管理を行う中央監視装置3と、中央監視装置の指令によりデータを作表するプリンタ4とを備えており、通常データは毎正時の値、一日の最大値、一日の最小値、一日の合計値などが日報として作表されている。プロセスデータのうち予め設定された通常データは定められた手順により現場制御装置1からデータ伝送装置2を通して中央監視装置3に伝送され中央監視装置3にいったん記憶された後、日報データとして一括してプリンタ4により作表される。プロセスデータのうちの予め設定された非定常データは現場制御装置1にもっとも古いデータを消去しもっとも新してデータを記録することにより常に最新の一定量を記憶されており、中央監視装置3から指定された範囲のまとまった量を一括してデータ伝送装置2により中央監視装置3へ伝送されてプリンタ4に非定常データとして作表される。例えば、10は流量、11は圧力である。このように、この実施例においては、中央監視装置3で日常記憶するプロセスデータを減少して作表に関する負担を減じ監視制御機能を向上させることができると共に、プリンタ4で日常作表するデータを通常データのみとしてデータの管理効率を向上させることができる。」(【0010】〜【0013】)との記載がある。これによれば、刊行物4の監視制御装置は即ち遠隔監視装置であって、その現場制御装置1がプロセスデータのうちの予め設定された非定常データを記憶する何らかの記憶手段を備えていることは自明である。そして、この記憶手段は、少なくとも現場制御装置1側と中央監視装置3側との間で通報を行うための「処理手段」であるといえ、また、現場制御装置1及び中央監視装置3をそれぞれ監視端末器及び監視センタと呼ぶことができる。したがって、刊行物4には、遠隔監視装置において、「監視端末器(現場制御装置1)に、監視端末器側と監視センタ(中央監視装置3)側との間で通報を行うための処理手段(記憶手段)を備える」ことにより、監視センタ側の負担を軽減して本来の監視制御機能を向上させる技術が記載されているものと認められる。

(4)以上の刊行物2ないし4の記載から、遠隔監視装置において、少なくとも以下の技術が本願出願前に周知であったものと認められる。
「監視端末器に、監視端末器側と監視センタ側との間で通報を行うための処理手段を備える」ことにより、監視センタ側の装置の負担を軽減(処理容量を小さく)する技術。

(3-2-2)対比・判断
上記本願補正発明(前者)と引用発明(後者)とを対比すると、後者の「復旧監視時限手段」は前者の「復旧監視時限部」に相当し、また、前者の「復旧監視タイマ」は後者の「復旧監視手段」の範疇に含まれるから、両者は以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「複数のビル内にそれぞれ設置され、設備機器の異常を通報する複数の監視端末器と、前記ビルとは遠隔地に設置され、少なくとも1つ以上の前記監視端末器からの通報を電話回線を通じて受信する監視センタとからなる遠隔監視装置において、
少なくとも、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視手段と、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限手段と、前記復旧監視手段による計時時間と前記復旧監視時限手段が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を行なう復旧督促手段とを備えたことを特徴とする遠隔監視装置。」

(相違点1)
本願補正発明は、異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視手段が復旧監視タイマであるのに対し、引用発明は、前記復旧監視手段が復旧監視タイマであるか否か不明である点。
(相違点2)
本願補正発明は、監視端末器に、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視手段と、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限手段と、前記復旧監視手段による計時時間と前記復旧監視時限手段が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を前記監視センタへ行なう復旧督促手段とを備えたものであるのに対し、引用発明は、監視センタ自体に、前記異常通報を出力した後の時間を計時する少なくとも1つ以上の復旧監視手段と、前記異常通報の出力から前記設備機器の異常復旧までの許容時間を示す少なくとも1つ以上の復旧監視時限手段と、前記復旧監視手段による計時時間と前記復旧監視時限手段が示す許容時間とが一致したときに復旧作業を促す復旧督促通報を行なう復旧督促手段とを備えた点。

上記各相違点につき以下に検討する。
(相違点1について)
引用発明において、その復旧時間管理装置24がデータセットから作動するまでの所定時間(1時間)を計時する手段(復旧監視手段)として本願補正発明のような復旧監視タイマを採ることは、計時手段としてタイマを用いることが常套手段であることを考慮すると、当業者がごく容易になし得た設計的事項にすぎないというべきである。
(相違点2について)
前記(3-2-1)に示したように、遠隔監視装置において、「監視端末器に、監視端末器側と監視センタ側との間で通報を行うための処理手段を備える」ことにより、監視センタ側の負担を軽減(処理容量を小さく)する技術が本願出願前に周知であったものと認められ、また、引用発明(引用例のの復旧時間管理装置24)が備えていると認められる前記復旧監視手段や復旧監視時限手段及び復旧督促手段が、少なくとも監視端末器(被監視局)側と監視センタ側との間で通報を行うための処理手段に対応することは当業者が容易に理解するところであるから、前記引用発明と周知技術に接した当業者であれば、引用発明の監視センタ側の処理負担を軽減するために、引用発明の監視センタ自体に備えた前記処理手段を(監視センタから)その監視端末器(被監視局)に移し替えること、即ち、本願補正発明の前記相違点2に係る発明特定事項は、前記周知技術に基づいて容易に想到し得たものであり、その奏する効果も当業者が容易に予測し得る程度のものにすぎない。

(4)むすび
以上のとおり、補正後の本願請求項1に係る発明は、上記引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
(1)本願発明
平成15年11月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年8月20日付手続補正による明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願発明」という。)は、前記【2】(2)に記載されたとおりのものと認められる。(内容は省略する。)

(2)引用刊行物
前記【2】(3-2-1)に示された引用刊行物に同じ。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明において復旧督促手段が行う復旧督促通報の通報先を特定した「前記監視センタへ」との事項を単に削除したものであって、本願補正発明の上位の発明に該当するから、本願補正発明と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、上記引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-24 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-07 
出願番号 特願平11-134731
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 岩本 正義
佐々木 芳枝
発明の名称 遠隔監視装置  
代理人 武 顕次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ