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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1110718
審判番号 不服2004-11603  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-08 
確定日 2005-01-20 
事件の表示 特願2000-290325「個人認証装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月29日出願公開、特開2002- 92616〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月20日の出願であって、平成16年4月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月8日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月8日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月8日付の手続補正を却下する。
[理由]
2-1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「指に対して前記指の甲側から光を照射する光源と、
前記指を透過する光の撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像から前記指の血管パターンを抽出し、照合を行う画像演算部と、
前記指を透過した光の出射面に非接触で且つ前記指の一部に接触する治具とを有し、
前記光源は、前記撮像時における前記指の形状に合わせて発光素子を配列した構成であることを特徴とする個人認証装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「光源」について「前記指の甲側から」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例
(1)特開平7-21373号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-21373号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、
ア.「【請求項1】個人識別情報として、手の皮下にある血管のパターンを画像化した血管透視像を用いることを特徴とする個人識別装置。
【請求項2】前記手に光を照射する照明手段と、前記手の内部を透過し、または前記手の内部から反射した光を受光する受像手段と、前記受像手段の出力から前記血管透視像を得る画像処理手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の個人識別装置。
【請求項3】前記照明手段は、近赤外光を発することを特徴とする請求項2に記載の個人識別装置。
【請求項4】前記照明手段は、前記手の甲の側に設けられ、前記受像手段は、前記手の平側に設けられて前記手の内部を透過した光を受光することを特徴とする請求項2に記載の個人識別装置。
【請求項5】前記照明手段と前記受像手段は、共に前記手の平側に設けられ、前記受光手段は、前記手の内部で反射された光を受光することを特徴とする請求項2に記載の個人識別装置。
【請求項6】前記受像手段は、可視光から近赤外光までの波長域で感度を有することを特徴とする請求項2に記載の個人識別装置。
【請求項7】手を照明する照明手段と、前記手の内部を透過し、または前記手の内部から反射された照明光により形成される像を検出する受像手段と、前記受像手段の出力から、前記手の皮下にある血管のパターンを画像化して血管透視像を得る画像処理手段と、登録時に、前記血管透視像に関する情報を個人識別情報として記憶する記憶手段と、照合時に、前記記憶手段に記憶された情報と、前記受像手段から出力される血管透視像に基づいて出力される情報とが一致するか否かを判断する判別手段とを備えることを特徴とする個人識別装置。
【請求項8】前記画像処理手段の後段に、前記血管透視像から個人の特徴量を抽出する特徴量抽出手段が設けられ、前記記憶手段及び前記判別手段は、前記特徴量を血管透視像に関する情報として扱うことを特徴とする請求項7に記載の個人識別装置。」(引用例1の1頁1欄2〜38行)
イ.「【0015】次に、入力装置の具体的な構成例を4例説明する。図3に示す入力装置は、白熱電球、ハロゲンランプ等の光源1から発した光を光ファイバー2を介して利用者の手6へ入射させる。このとき、光ファイバー2の端面を手6に密着させた方が光量のロスが少なくてよい。光源1と光ファイバー2とが照明手段を構成しており、この例では手6の指の部分を検出の対象としている。指部分を検出対象とする場合には、後述する実施例のように、指の腹の方から照明し、皮膚を透過して手の内部で反射した光を照明手段と同一の側に配置された受像手段で受像する構成としてもよい。
【0016】手6を透過した白色光は、波長選択部材として設けられた可視光カットフィルター7に入射し、その赤外成分のみが透過して結像レンズ群8によりCCD等の受像素子9上に血管のパターンを含む像を形成する。
【0017】可視光カットフィルター7、結像レンズ群8、受像素子9は、受像手段を構成する。なお、可視光カットフィルター7は、手6よりも光源1側に設けてもよい。また、受像素子9は、可視光から近赤外光までの波長域で感度を有している。
【0018】受像素子9から出力される画像データは、モニター10に表示されると共に、フレームメモリを備える画像入力装置11に記憶される。コンピュータ12は、画像入力装置11に記憶された画像データを必要に応じて読み込み、手の皮下にある血管のパターンを画像化して血管透視像を形成し、あるいは、この血管透視像から個人の特徴量を抽出する。
【0019】なお、コンピュータ12は、登録時には、特徴量を個人識別情報として記憶する記憶手段としての機能を発揮すると共に、照合時には、記憶された特徴量と受像素子9の出力から得られる血管透視像から抽出される特徴量とが一致するか否かを判断する判別手段として機能する。」(引用例1の3頁3欄27行〜同頁4欄10行)
ウ.「【0023】図4に示すように、図3と同一の構成で、手6の掌部分を検出の対象としてもよい。掌部分を検出の対象とする場合、図示したように手の甲の側から照明し、手の平側で受像する方が望ましい。手の甲側で受像すると、手のメラニン色素の影響によりコントラストが低下し、あるいは、皺、毛穴、体毛等の陰影が生じて血管が透見しにくくなる。
【0024】図5の例では、白熱電球、ハロゲンランプ等の光源1からの光を集光レンズ3で集光させて手6の指部分を照明している。受像手段側の構成は図3の例と同様である。
【0025】図6の例では、電源装置5を備える半導体レーザー4を照明手段の光源として用い、手6の指部分を照明している。発光波長780nm〜830nmの赤外発光レーザーを使用することにより、照明光自体を赤外光に限定することができるため、受像手段側では波長選択部材を設ける必要がない。なお、図5及び図6装置でも、図4と同様に掌部分を検出対象とすることもできる。」(引用例1の3頁4欄35行〜4頁5欄3行)
との記載が認められ、これらの記載、及び図面の記載によれば、引用例1には、
「手に光を照射する手の甲の側に設けられた照明手段と、
前記手の内部を透過した光を受光する手の平側に設けられた受像手段と、
前記受像手段の出力から、前記手の皮下にある血管のパターンを画像化して血管透視像をを得る画像処理手段と、
登録時に、前記血管透視像に関する情報を個人識別情報として記憶する記憶手段と、
照合時に、前記記憶手段に記憶された情報と、前記受像手段から出力される血管透視像に基づいて出力される情報とが一致するか否かを判断する判別手段とを備えることを特徴とする個人識別装置。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)特開平1-281583号公報
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-281583号公報(以下、引用例2という。)には、図面とともに、
「指10を接触させる導光板11の表面13は結像系の一部を形成する。従つて、指を接触させる位置(置く位置)は所定の領域内に限定される。そこで、指を確実に指定した位置に置けるようにするため、第3図に示したように指の形状に対応して略U字形状にくりぬいたガイド21を使用する。
ガイド21の外形形状は特に限定されないが、例えば第3図に示す如く略U字形の位置決め空所22を有する矩形プレートとして形成される。ガイド21は導光板11の所定の場所に固疋される。
ガイド21内には空所22を挟んで指を両側面から照明する光源としてのLED23が配置される。
LED23はガイド21の両側に形成した凹溝24内に固設され、凹溝24に連結した開口、好ましくは照射範囲を広くするために末広がりに拡つた開口26内に臨ませられる。LED23は一対でもあるいは複数対(第3図)でもよい。光源としては原理的にはLEDの代りに電球、豆ランプ等でもよい。
LED23からの光は指の側面から一部指の内部に入り(成分r4)、導光板11との接触面13に伝播する。これによつて指自身が発光体となり、導光板11内に凸部Qの情報を伝播させることができる。LED23の使用波長は、なるべく指内部での吸収が少ない帯域を選ぶ(例えば赤または近赤外がよい)。LED23は指の両サイドから、指の接触面を均一に照明する。LED23として第4図に示す如く指の長手方向に延びるLEDアレイ25を用いることもできる。
本発明を指紋センサとして用いる場合には、指が例えばゴム製の複製ではなく生きている人間のものであるかどうかを判定する生体検知を並行して行うこともできる。第5図はそのような生体検知法の一実施例を示す。指10を一側面から照光r0すると、一部r5は内部を透過し、反対側の側面から出射する。出射光r6は周知の如く脈による赤血球分布の周期的変化によって振幅変調を受けるため、この周期が所定の範囲内(人間の脈拍の周波数帯域)であれば、生体とみなす。このような生体検知法自体は知られている。この生体検知を行うためには指の両側に光源発光素子と受光素子を設けることが必要である。そこでこの生体検知用の光源を上述の指紋像検出用の光源(LED23)と兼用することができ、受光素子28は第1図に示す右側のLED23の位置に取り付けることができる。
尚、第5図においては光源23は指の一方側にのみ配設されることになるが、その場合にも照光の対称性はくずれるが第1図に示す光成分r1,r2,r3は発生するので本発明を実施する上で基本的には何ら不都合はない。」(引用例2の3頁下段左欄8行〜4頁上段左欄19行)
と記載されていることが認められる。

2-3.周知例
(1)特開2000-189391号公報(周知例1)
「【発明が解決しようとする課題】検出部から指を抜き出して、再度指を配置すると指の位置が先程とは異なってしまう。すると得られる撮像画像が左右あるいは上下にずれた画像となるので、同一の生体部位を計測することが難しくなる。このことは、ある特定の血管部位について血管幅や生体成分濃度の経時変化を計測しようとする場合に不都合を生じさせる。」(周知例1の2頁1欄48行〜同頁2欄4行)
「【0024】検出部1はアーム5とアーム5に対して回転移動できるハウジング6とからなり、アーム5の内側に光源部11が内蔵され、アーム5に対向するハウジング6の内側に撮像部12を内蔵している。アーム5とハウジング6の間にヒトの指14を保持し、指14の第2関節部分において指の背側に光を照射し指の腹側からその透過光像を撮像する。指は指の両側から弾性的に挟持されている。」(周知例1の3頁4欄49行〜4頁5欄6行)
(2)特開昭62-87126号公報(周知例2)
「第1図において、1は光源ランプ、2はこの光源ランプ1の光を指尖8を通過させ、その光の通過量を検知する受光素子、3は前記光源ランプ1より発せられる以外の光が指尖8を通過しないように、指9を他の光から遮へいする弾性材よりなる遮へい体で、導電性材料から構成され、それ自体が導電体となっていてアース7に接続されている。4は指の挿入口3a以外の遮へい体3の周囲を覆つたケースである。そして、上記した各構成物により指尖脈波計用プローグを構成している。
5は前記受光素子2より出される信号を信号ケーブル6を介して受け取り、かつ信号処理を行なう本体部で、これは信号検出部、増幅部、出力用レコーダ等からなる。
上記構成において、指先をケース4の中に挿入し、光源ランプ1から発せられる光を指尖8を通過させる。そして、指尖8にある毛細血管中の血の量により、指尖を通過する光量が変化する。この光の通過量を受光素子2で検知している。」(周知例2の2頁上段右欄12行〜同頁下段左欄10行)

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「照明手段」は、本願補正発明の「光源」に相当し、以下同様に、引用例1発明の「受像手段」は本願補正発明の「撮像部」に、引用例1発明の「画像処理手段」、「記憶手段」、「判別手段」は本願補正発明の「画像演算部」に、引用例1発明の「個人識別装置」は本願補正発明の「個人認証装置」それぞれ相当するから、両者は、
「指に対して前記指の甲側から光を照射する光源と、
前記指を透過する光の撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像から前記指の血管パターンを抽出し、照合を行う画像演算部と、
を有する個人認証装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明が、指を透過した光の出射面に非接触で且つ指の一部に接触する治具とを有するのに対して、引用例1発明のものは、そのような治具は記載されていない点。
[相違点2]
光源について、本願補正発明は、光源が撮像時における指の形状に合わせて発光素子を配列した構成であるのに対して、引用例1発明では、照明手段が、白熱電球、ハロゲンランプ等の光源と光ファイバーとから構成されたもの、白熱電球、ハロゲンランプ等の光源から光を集光レンズで集光させて指を照明するもの、あるいは、半導体レーザーを照明手段の光源としているものが示されている点。

2-5.判断
[相違点1]について
透過した画像を得ようとするときに、例えば、レントゲン写真を撮るときなどは、肩を固定することにより同じような写真を撮っていることは周知のことであり、また、指に光を透過させる場合に、指を固定することは、例えば、上記周知例1、2により周知である。さらに、個人認証等を行う場合に、登録してある血管パターンと、検出した血管パターンを比較するときに、同じ位置に指を置いて検出した方が良いことは明らかであり、さらに、指を用いて個人認証をするものである、指の指紋をもちいた個人認証装置において、指を指の一部に接触いる治具を用いて固定することは周知慣用に手段であるから、指に光を透過して個人認証を行うものにおいても、指を同じ位置におくために、指の一部に接触する治具を設けることは当業者が容易に予測できることである。
したがって、引用例1において、指を透過した光の出射面に非接触で且つ指の一部に接触する治具を設けることは当業者が容易に考えられることである。

[相違点2]について
上記引用例2には、個人の識別法の1つとして指紋照合法が示されており、生体検知を行うために、指に光を透過することも示されているものである。引用例2には、光源として複数のLEDが指に沿って設けることと、指の長手方向に延びるLEDアレイ25を用いることが記載されている。このように、個人識別する装置において、指の形状に沿って複数のLEDを設けることは公知である。
指を用いて個人認識するものにおいて、このように、指の形状に沿って複数の発光素子を設けるものが公知であり、さらに、引用例1に示されるように、指を透過する光を用いて、個人認証する装置が公知であって、また、発光素子は撮像するために設けられたものであることを考えれば、引用例1の発光素子を、撮像時における指の形状に合わせて配列することは、当業者が容易に考えられる範囲のものであると認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、引用例2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年7月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年11月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「指に対して光を照射する光源と、
前記指を透過する光の撮像を行う撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像から前記指の血管パターンを抽出し、照合を行う画像演算部と、
前記指を透過した光の出射面に非接触で且つ前記指の一部に接触する治具とを有し、
前記光源は、前記撮像時における前記指の形状に合わせて発光素子を配列した構成であることを特徴とする個人認証装置。」

3-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.2-2.」に記載したとおりである。

3-2.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「光源」の限定事項である「前記指の甲側から」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.2-5.」に記載したとおり、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-16 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-07 
出願番号 特願2000-290325(P2000-290325)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
深沢 正志
発明の名称 個人認証装置及び方法  
代理人 作田 康夫  

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