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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1110803
審判番号 不服2003-13909  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-22 
確定日 2005-01-26 
事件の表示 平成 5年特許願第228134号「エラー制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 7月26日出願公開、特開平 6-209473〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯(手続・本願発明・査定)
(1)手続
本願は、パリ条約による優先権主張(優先日:1992年8月20日、アメリカ合衆国)を伴う平成5年8月20日の出願である。
(2)本願発明
その請求項1から請求項3までに係る各発明は、本願明細書および図面(平成12年8月16日付けおよび平成15年4月1日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1から請求項3までにそれぞれ記載したとおりの「装置」であると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、本願発明ともいう)は下記1のとおりのものである。
記1(請求項1に係る発明)
画像表現デジタル信号処理システムにおいて、
上記画像表現信号に応答して、画像情報を表すビデオ信号を供給する手段と、
上記画像情報をシャッフルする手段と、
上記シャッフルされた画像情報をデータ圧縮する手段と、
を備えてなる装置。
(3)査定
原査定の理由は、概略、下記2のとおりである。
記2(査定の理由)
本願各発明(請求項1から請求項3までに係る各発明)は、下記刊行物に記載された各発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平4-95467号公報
刊行物2:特開平2-185188号公報
刊行物3:特開平2-243079号公報
刊行物4:特開平2-117289号公報
刊行物5:特開平3-24885号公報
刊行物6:特開平4-91587号公報

2.刊行物の記載
原査定において引用された刊行物5及び刊行物3には、各々、以下の記載が認められる。
(a)刊行物5(特開平3-24885号公報)
(ア)「この発明は、ディジタル画像信号のデータ量を圧縮して回転ヘッドにより磁気テープに記録するディジタルVTRに適用できるディジタル画像信号の符号化装置に関する。」(1頁右下欄4行〜7行)
(イ)「第1図において、1で示す入力端子に映像信号が供給される。2で示すA/D変換器により、1サンプルが8ビットのディジタル映像信号に変換される。このディジタル映像信号がブロック化回路3に供給され、テレビジョン走査の順序の信号が画像ブロックの順序の信号に変換される。ブロック化回路3の出力信号には、有効データ以外のデータ欠如期間が含まれる。」(4頁左下欄1行〜9行)
(ウ)「ブロック化回路3の出力信号がシャフリング回路4に供給される。シャフリング回路4は、第3図Bに示すように、画像ブロックの単位で、1フレーム内のブロックの位置の並び変えを行う。シャフリング処理は、メモリのアドレス制御でなしうる。シャフリング回路4の出力信号がADRCエンコーダ5に供給される。ADRCエンコーダ5では、画像ブロック毎の最大値MAX、最小値MIN、両者の差であるダイナミックレンジDRが検出され、ダイナミックレンジDRに適応して可変長の符号化がなされる。」(4頁右下欄6行〜16行)
(オ)「更に、この発明は、ADRCに限らず、他の高能率符号化例えばDCT(ディスクリートコサイン変換)に対しても適用できる。」(7頁右下欄8行〜10行)
(b)刊行物3(特開平2-243079号公報)
(カ)「上記画像データ伝送装置Aは、テレビカメラなどからの映像信号をA/D変化するA/D変換手段1と、このA/D変換手段1の出力を蓄積する蓄積手段2と、この蓄積手段2に蓄積されたデータを・・・4×4画素などのブロックに分解し、そのブロックの順番を・・・予め設定された順番に並べ換える順序変換手段3と、この並べ換えられたブロック毎のデータを外挿予測-離散コサイン変換・・・符号化法あるいは離散コサイン変換・・・符号化法で圧縮するデータ圧縮伸張手段4と、データ圧縮伸張手段4の出力を送信する通信手段6とで構成してある。」(2頁右上欄13行〜左下欄7行)
(キ)「このためたとえ伝送エラーがあっても正常なデータに基づくブロック毎の画像が画面全体に分布する形で映し出され、従っておぼろげながらも欠けた部分をある程度想像でき、全体の様子を把握できる利点がある。」(3頁左上欄12行〜17行)

3.本願発明と刊行物5に記載された発明との対比
(1)刊行物5に記載された発明
上記各記載によれば、刊行物5には、下記3の構成を備えた「デジタル画像信号の符号化装置」が記載されている。なお、シャッフル処理が、伝送エラーに対する有効な対策手段であることは、上記刊行物3の記載からも明らかなように、周知である。これによれば、刊行物5の「シャフリング回路4」が伝送エラーに対するものであることは、同刊行物に記載はなくとも明らかである。
記3(刊行物5記載の発明)
A/D変換されたディジタル映像信号が供給され、このテレビジョン走査の順序のディジタル映像信号を、有効データとデータ欠如期間を含む画像ブロックの順序の出力信号に変換して出力するブロック化回路3と、
ブロック化回路3の出力信号が供給され、ブロックの位置の並び変えを行うシャフリング回路4と、
シャフリング回路4の出力信号を、画像ブロック毎のダイナミックレンジDRに適応して可変長の符号化を行うADRCエンコーダ(あるいは、DCTによる高能率符号化を行なうエンコーダ)と、
を備えてなるデジタル画像信号の符号化装置。
(2)対応関係
(a)刊行物5の「デジタル画像信号の符号化装置」は、ディジタル画像信号のデータ量を圧縮してディジタルVTRに記録する装置であるから(記載ア)、本願発明にいう「画像表現デジタル信号処理システム」に相当するとして、差し支えはない。
(b)本願発明の「上記画像表現信号」(請求項1の2行)とは、「画像表現デジタル信号」(請求項1の1行)を指すものと認める。そして、刊行物1の「ディジタル映像信号」は、映像信号がディジタル化された信号であるから、本願発明の「画像表現デジタル信号」と異なるところはない。
刊行物5の「ブロック化回路3」は、ディジタル映像信号が供給されて所定の動作をすることからディジタル映像信号に応答するものである。
(c)「シャフリング回路4」が、本願発明にいう「シャッフルする手段」に相当することは明らかである。
(d)「ADRCエンコーダ5(あるいは、DCTによる高能率符号化を行なうエンコーダ)」は、シャフリング回路4の出力信号を符号化するものであり、かかる符号化によりデータ量を圧縮するものであるから(上記(a))、本願発明にいう「データ圧縮する手段」に相当することは明らかである。
(3)一致点・相違点
本願発明と刊行物5記載の発明とは、下記4の点において一致し下記5の点において相違することが認められる。
記4(一致点)
画像表現デジタル信号処理システムにおいて、
上記画像表現デジタル信号に応答して、所定情報を表す出力信号を供給する手段と、
上記所定情報をシャッフルする手段と、
上記シャッフルされた所定情報をデータ圧縮する手段と、
を備えてなる装置。
記5(相違点)
本願発明は、出力信号が「画像情報を表すビデオ信号」であり、その「画像情報」(所定情報)をシャッフルするとしているのに対して、刊行物5は、出力信号が「有効データとデータ欠如期間を含む画像ブロックの順序の出力信号」であり、その「有効データとデータ欠如期間を含む信号」(所定情報)を画像ブロック単位でシャッフルする点。

4.相違点の判断
(1)上記相違点について判断する。
(a)請求項1には、「画像情報を表すビデオ信号」につき、これ以上の記載は見当たらない。ところで、ビデオ信号は、一般に、映像信号とも呼ばれ、映像情報を表す信号(単位)からなる一連の信号であると理解されている。一方、請求項1の記載において、本願発明の「画像情報」とかかる「映像情報」とが互いに排他的な概念であると解釈しなければならない理由もない。
(b)刊行物5の出力信号に含まれる「有効データ」は、ディジタル映像信号がブロックに分解されたもの(ディジタル映像信号の一部)であり、加えて、ディジタル映像信号は映像情報をディジタル形式で表す信号であることから、同出力信号が「映像情報を表す」信号であることは明らかである。また、同出力信号は、画像ブロックの順序で出力される信号でもあることから、前記したような、一連の信号でもあることが認められる。
他方、「この発明は、ディジタル画像信号のデータ量を圧縮して・・・ディジタルVTRに適用できるディジタル画像信号の符号化装置に関する。」(記載ア)のとおり、刊行物5は、データ圧縮の対象とする信号を「ディジタル画像信号」とも「ディジタル映像信号」とも指称しており、「画像(信号)」と「映像(信号)」とを、格別、区別して使用してはいない。
(c)そうすると、上記相違するとした点は、単に表現上の相違ともいうべきものである。刊行物5の「有効データとデータ欠如期間を含む画像ブロックの順序の出力信号」を本願発明のような「画像情報を表すビデオ信号」とし、その「画像信号」をシャッフルすることに格別の困難は認められない。上記相違点は、刊行物5に記載された発明および周知技術から当業者が容易になし得ることである。
(2)効果等
以上のとおり、上記相違点に係る構成は当業者が容易になし得ることであり、また、本願発明の効果も、刊行物5の記載及び周知技術から予測することができる程度のものである。
(3)請求人の主張
請求人は、本願発明は、「画像情報をシャッフルする手段と、シャッフルされた画像情報をデータ圧縮する手段」を特徴とし、その画像情報は、特に残差画像情報であるところ、各刊行物には上記特徴が存在しないし、刊行物2及び刊行物3では、画像信号そのものがシャッフルされるに過ぎない、と主張する。
しかし、請求項1には、本願発明の「画像情報」につき「画像情報」との記載があるだけで、他に、これが「残差画像情報」であるとの趣旨の記載はない。主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、採用することができない。かえって、出願当初「残差画像情報」とあったのを「画像情報」と書き換え、新たに「画像情報は残差画像情報である」との請求項3を追加した補正の経緯からすると、「画像情報」は「残差画像情報」以外の情報を含むものと解さざるを得ない。この点からも、「画像情報は残差画像情報である」というように「画像情報」を限定して解釈することもできない。

5.むすび
以上、請求項1に係る発明は、刊行物5に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2および請求項3に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-31 
結審通知日 2004-08-31 
審決日 2004-09-14 
出願番号 特願平5-228134
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 素直山崎 達也  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 藤内 光武
小松 正
発明の名称 エラー制御装置  
代理人 田中 浩  
復代理人 川上 光治  

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