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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1110965
審判番号 不服2001-11564  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-05 
確定日 2005-02-03 
事件の表示 平成11年特許願第34411号「カラー印字装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月29日出願公開、特開2000-236451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成11年2月12日の出願であって、審査官により拒絶査定がなされたのにともない審判請求人からこれを不服として平成13年7月5日付で審判が請求されるとともに平成13年8月3日付で明細書についての手続補正書が提出され、前置審査官の特許査定できない旨の報告を経て、当審より本願明細書及び図面の記載は特許法第36条に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由が通知され、審判請求人よりこれに対応する意見書と明細書についての手続補正書が提出され、更に当審より補正後の本願明細書及び図面の記載は特許法第36条に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由が平成16年6月11日付で通知され、審判請求人よりこれに対応する意見書と明細書についての手続補正書が提出されたものである。

2.平成16年6月11日付で通知した拒絶の理由
平成16年6月11日付で通知した拒絶の理由は次のとおりである。
『 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

(1) 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載において、「演算描画(ROP)」および「ラスタ演算」については、これらを具体的にいってどのように行うかについて例示も概括的な説明もなされていないから、当業者が実施しうる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
(CMY系で表現された2つの画像をかさね合わせる場合に、それらの画像をRGB系に変換することなくかさね合わせるにはどのようにすればよいのか(単に各画素位置ごとのC、M、Yのデータ値それぞれを加算するまたは減算する(差を取る)等の簡単な演算をするだけでは、RGB系での重ね合わせ画像と同様の画像(色、明るさ等)にはならないものと考えられる。)明らかでない。
この点について明細書又は図面に説明を追加する補正をする場合は、新規事項の追加とならないように注意するとともに、その説明する事項が新規事項でないことが分かるように、公知文献等を引用して意見書で釈明されたい。)
(2) 上記(1)の点が明確にされたとしても、特許請求の範囲の請求項1における「前記C、M、Yの最大値と最小値の差により場合分けして、前記C、M、Yの削減量に、生成された前記黒色の画像データの階調量をUCR変換した値を設定する」という記載は、次の点が明確でない。(明細書の発明の詳細な説明中の【0028】,【0029】等に記載の内容を明確に表現していない。)
(a) 「黒色の画像データの階調量をUCR変換した値」という記載におけるUCR変換が、どのようにすることを意味するのかが明確でない。(明細書の発明の詳細な説明中にも明確な定義はないから、一義的に理解できない。)
(b) C、M、Yの削減量の設定については1つの手法しか特定されていないから、場合分けした結果のそれぞれの場合にそれぞれどのように設定するのかが明らかでない。
なお、上記記載で意図していること(明細書の発明の詳細な説明中の【0028】,【0029】に記載の内容)は、例えば特開平2-118680号公報の44頁左下欄12〜19行及び図面第36図(e)に記載されているように公知の技術にすぎないから、この点が明確な記載に補正されたとしても、この点には発明としての格別の意義(進歩性)は認められない。 』

3.本件出願の拒絶理由の有無についての判断
(1)審判請求人は、提出した平成16年11月12日付意見書において、上記拒絶理由(1)については次のように釈明している。
『 本願明細書の段落0016,0017に、「描画データ生成手段1は、描画データを色材ごとの色に分解しながら出力する。描画データ生成手段1からは、Cs、Ms、Ysが出力され、演算手段2に入力される。演算手段(ROP)2は、ソースデータ(描画データ)と、ディスティネーションデータ(下地画像データ)との演算を、アプリケーションにより指定されたコードに基づいて行う。すなわち描画データ生成手段1から出力されるCs、Ms、Ysをソースとし、逆UCR/BG変換手段5から出力されるCd′、Md′、Yd′とをディスティネーションとして入力とし、演算結果をC、M、Yとして生成し出力する。」と記載されています。この記載から「演算描画(ROP)」および「ラスタ演算」については、描画データを色材ごとの色に分解して出力されたソースデータ(描画データ)Cs、Ms、Ysと、逆UCR/BG変換手段5から色材ごとの色に分解して出力されたディスティネーションデータ(下地画像データ)Cd′、Md′、Yd′との論理演算、例えばAND、OR、NOT、XOR等の演算を、アプリケーションにより指定されたコードに基づいて行い、その演算結果をC、M、Yとして出力することは当業者には明らかなものと信じます。
また、CMY系で表現された2つの画像をかさね合わせる場合に、それらの画像をRGB系に変換することなくかさね合わせるにはどのようにすればよいのかについては、RGBとCMYは補色の関係にあることから演算コードは対応するものに変え、CMYはCMYのまま演算してもRGBで演算して最終的にCMYに変換した画像と同様の結果を得ることができることは当業者には明らかです。 例えば、(Cs、Ms、Ys)=(0,0,1)で表される色と(Cd′、Md′、Yd′)=(0,1,1)で表される色との論理演算の場合、RGBに変換するとRGBとCMYは補色の関係にあることからそれぞれ(1,1,0)と(1,0,0)であり、これらを例えばAND演算する場合には演算結果は(1,0,0)となります。これをRGBに変換しないで同じ結果を得るためには(Cs、Ms、Ys)=(0,0,1)と(Cd′、Md′、Yd′)=(0,1,1)との演算結果が(0,1,1)となる論理演算、すなわちOR演算に変更して論理演算処理すれば同じ結果が得られます。』

(2)そこで、上記釈明と明細書についての補正によって、当業者が実施できる程度に記載が明確かつ十分になったかどうか判断する。
明細書についての補正では上記拒絶理由(1)に関してはなんら訂正していないので、上記釈明について検討する。
用紙などにカラー画像をプリントする場合のプリントされたものは、色材の色以外の中間色は一般的には減法混色により画像が表現されるものであるから、CRTや液晶表示装置で表示する場合の加法混色に比べて、明度、彩度、色相共に表現できる幅が小さく、また、それを見る環境の光源の光量や光質、プリントする用紙などの光の反射率等が影響するから、これらの画像を「かさね合わせ」てかさね合わせ画像を得るようにする場合は、例えば単にもとの2つの画像のデータ値を加算などするだけでは、画像全域において一応満足のいく品質のプリントさえも得られず、一応満足のいく品質のプリントが得られるようにするためには、何らかの工夫が必要である。しかし、本件明細書にはこの点に関する技術開示は無い。
そこで、請求人の意見書の釈明をみると、請求人の『「描画データ生成手段1から出力されるCs、Ms、Ysをソースとし、逆UCR/BG変換手段5から出力されるCd′、Md′、Yd′とをディスティネーションとして入力とし、演算結果をC、M、Yとして生成し出力する。」と記載されています。この記載から「演算描画(ROP)」および「ラスタ演算」については、描画データを色材ごとの色に分解して出力されたソースデータ(描画データ)Cs、Ms、Ysと、逆UCR/BG変換手段5から色材ごとの色に分解して出力されたディスティネーションデータ(下地画像データ)Cd′、Md′、Yd′との論理演算、例えばAND、OR、NOT、XOR等の演算を、アプリケーションにより指定されたコードに基づいて行い、その演算結果をC、M、Yとして出力する』という釈明においては、ソースデータ(描画データ)Cs、Ms、Ysと、逆UCR/BG変換手段5から色材ごとの色に分解して出力されたディスティネーションデータ(下地画像データ)Cd′、Md′、Yd′との論理演算、例えばAND、OR、NOT、XOR等の演算を行うとしているが、ここに列挙しているNOTはさておき、AND、OR、XOR等の演算は、2つ以上の入力端子の入力が1か0かに応じて出力端子に所定の1か0かの出力が得られる演算をいうから、入力、出力共に1か0即ちC、M、Y成分があるか無いかという情報のみを利用することを想定していることになる。そうすると、色としては、C、M、Y、これらの2つの混合色合計3色、3つの色の混合色であるBK(黒)及びC、M、Yのいずれもない(白)状態の8色しか表現できず、また、階調といわれる最大値と0の間の複数の中間値も取り得ないこととなる。そして、上記釈明中の「例えば、(Cs、Ms、Ys)=(0,0,1)で表される色と」で始まる段落部分もこのようなことを説明していると解されるものである。
ところが、本源明細書の発明の詳細な説明の【0001】の「本発明は、・・・特に、複数色の中間調画像データを入力し描画処理を行う、カラー印字装置などの装置に用いて好適とされるカラー画像処理装置に関する。」という記載、及び請求項1中の「出力多階調データ」「UCR/BG変換」、「C、M、Yの最大値と最小値」あるいは「画像データの階調量」等の技術用語を用いた限定などをみると、本件技術は、多階調の演算描画をすることを想定しているようであるから、結局、本件開示発明自体が当業者に理解しがたいものといわざるを得ない。
従って、上記釈明をみても、拒絶理由として指摘した、本件明細書の記載は、減法混色を意味するCMY系で表現された2つの画像をかさね合わせる場合にそれらの画像をRGB系に変換することなくかさね合わせるにはどのようにすればよいのか明らかでないという点は依然として解消しておらず、本件明細書には、当業者が開示された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

なお、審判請求人は意見書において、本件明細書には当業者が開示された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていることを前提に、本件発明に進歩性があることの根拠として、特開平2-118680号公報のものは、下地画像のC、M、Yの最大値と最小値の差に基づいてUCR/BGの逆変換を行うことは全く開示していないから、そのようにすることは当業者でも容易に想到できないという趣旨のことを述べている。しかし、仮に、本件明細書には当業者が開示された発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとしても、逆変換は変換を逆にたどるようにしないと変換前のものと同じものにはならないのが普通であり、当業者であれば、逆変換のやり方として、下地画像のC、M、Yの最大値と最小値の差に基づいてUCR/BGの逆変換を行うことをまず最初に考えるものと考えられるから、下地画像のC、M、Yの最大値と最小値の差に基づいてUCR/BGの逆変換を行うことは当業者でも容易に想到できないという主張は採用できないものである。

4.むすび
そうすると、本件明細書の記載は依然として少なくとも特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-01 
結審通知日 2004-12-07 
審決日 2004-12-20 
出願番号 特願平11-34411
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04N)
P 1 8・ 537- WZ (H04N)
P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 則和  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
深沢 正志
発明の名称 カラー印字装置  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 河合 信明  
代理人 河合 信明  
代理人 机 昌彦  

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