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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1111015
審判番号 不服2002-10119  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-06 
確定日 2005-02-04 
事件の表示 平成 8年特許願第 68754号「通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-261365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年3月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年5月18日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】複数の回線に個別的に接続され、それぞれが予め定められる通信制御手順にしたがって送受信動作を実行する複数のモジュールとして構成される複数の通信制御手段と、
前記複数の通信制御手段の中から通信中でない通信制御手段を1つ選んで送信動作を実行させ、前記複数の通信制御手段の中から回線からの呼出信号を受信した通信制御手段を選んで受信動作を実行させる送受信制御手段と、
送信すべき送信情報を記憶する送信情報記憶手段と、
受信した受信情報を記憶する受信情報記憶手段と、
送受信制御手段で選ばれた通信中でない通信制御手段に送信情報記憶手段が記憶する送信情報を与える、および送受信制御手段で選ばれた呼出信号を受信した通信制御手段が受信した受信情報を受信情報記憶手段に与える情報の授受動作を、通信制御手段毎に独立して制御する主制御手段とを含んで構成されることを特徴とする通信装置。」

2.引用例
これに対して、原審の拒絶理由において引用された特開平3-13051号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の(ア)から(ウ)の事項が記載されている。
(ア)「[課題を解決するための手段]
本発明は、複数の回線にそれぞれ接続された回線制御部と、セットされた原稿から画像を読取る画像読取部と、受信した画像を印字出力する画像印字部と、電話機と、各回線制御部と画像読取部、画像印字部、電話機とを選択的に接続制御する回線コントロ-ル部と、この回線コントロ-ル部の接続制御状態を監視し、回線から受信があったとき画像印字部及び電話機の空きをチェックし、対応する回線制御部を空いている画像印字部又は電話機に接続し、また送信を行うとき各回線の空きをチェックし、画像読取部又は電話機を空き回線に対応した回線制御部に接続する制御手段を設けたものである。
[作用]
このような構成の本発明においては、例えば1つの回線から画像情報の受信があるとその回線に対応した回線制御部と画像印字部が接続されて画像情報の印字出力を行う。この状態で原稿の送信操作を行うと、原稿から画像を読取る画像読取部が空き回線に対応した回線制御部に接続され、別の回線を使用して送信が行われる。こうして受信動作と送信動作を同時に行うことができる。また受信中や送信中に電話をかけたいときや相手から電話がかかったときも同様に空き回線を使用して通話ができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図において1は制御部本体を構成する中央制御装置、2はこの中央制御装置1が各部を制御するためのプログラムデ-タ等が格納されたROM(リ-ド・オンリ-・メモリ)、3は送信情報を一時格納したり、受信情報を一時格納する各種のメモリが設けられたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)である。4は回線コントロ-ル部、5は画像圧縮部、6は画像読取部、7は画像復元部、8は画像印字部、9は操作部10を制御する操作制御部である。
前記中央制御装置1とROM2、RAM3、回線コントロ-ル部4、画像圧縮部5、画像読取部6、画像復元部7、画像印字部8、操作制御部9とはバスライン11を介して接続されている。
前記回線コントロ-ル部4は前記中央制御装置1に制御されて動作するもので、前記画像圧縮部5及び画像読取部6、画像復元部7及び画像印字部8、第1回線に接続された第1回線制御部12、第2回線に接続された第2回線制御部13及び電話機14を制御するようにしている。」(第2頁左上欄第1行〜左下欄第9行)

(イ)「前記中央制御装置1は、上述した第3図の回線コントロ-ル部制御を行ないつつ、第4図に示す受信動作制御及び第5図に示す送信動作制御を行なうようになつている。
受信動作制御は、呼出し信号の入力を確認すると、回線を閉じ、回線制御部と画像復元部7を接続する。そして受信手順信号を送受信する。その後受信した画像情報を復元し画像印字部8により印字出力させる。そして画像情報の受信を終了すると受信終了手順信号を送受信し画像復元部7と回線制御部を切り離し回線を開く。
また送信動作制御は、先ず電話機14を使用して回線を閉じ相手を呼出す。そして原稿がセットされ回線が閉じた状態で送信要求があると、回線制御部と画像圧縮部5を接続する。そして送信手順信号を送受信する。その後画像読取部6で原稿の画像読取りを行ない、その画像を画像圧縮部5で圧縮して送出する。そして画像情報の送信を終了すると送信終了手順信号を送受信し画像圧縮部5と回線制御部を切り離し回線を開く。」(第3頁右下欄第6行〜第4頁左上欄第5行)

(ウ)「なお、前記実施例では2回線を使用したものについて述べたが必ずしもこれに限定されるものではなく、3回線を使用したものであっても良い。」(第4頁左下欄第4行〜第6行)

ここで、上記(ア)の「3は送信情報を一時格納したり、受信情報を一時格納する各種のメモリが設けられたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)である。」とある様に、引用例には、送受信動作においてRAMをもちいて、送信情報・受信情報を一時格納することが記載されており、上記(イ)の「前記中央制御装置1は、上述した第3図の回線コントロ-ル部制御を行ないつつ、第4図に示す受信動作制御及び第5図に示す送信動作制御を行なうようになつている。」とある様に、引用例には、送受信動作を制御しているのは、中央制御装置であることが記載されていることから、RAMに一時格納するのは中央制御装置であることが示唆されている。
よって、前記記載事項、図面の記載並び技術常識からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

[引用発明]
「複数の回線に個別的に接続され、それぞれが電話回線の通信手順にしたがって送受信動作を実行する複数の構成要素として構成される複数の回線制御部12,13と、
前記複数の回線制御部の中から通信中でない回線制御部を1つ選んで送信動作を実行させ、前記複数の回線制御部の中から回線からの呼出信号を受信した回線制御部を選んで受信動作を実行させる回線コントロール部およびその制御を行う中央制御装置と、
送信情報を一時格納したり、受信情報を一時格納する各種のメモリが設けられたRAM3と、
回線コントロール部およびその制御を行う中央制御装置で選ばれた通信中でない回線制御部にRAMが記憶する送信情報を与える、および回線コントロール部およびその制御を行う中央制御装置で選ばれた呼出信号を受信した回線制御部が受信した受信情報をRAMに与える情報の授受動作を回線制御部毎に独立して制御する中央制御装置とを含んで構成される通信装置。」

3.対比・判断
次に、本願発明と引用発明とを対比すると、
a.引用発明の「電話回線の通信手順」は、予め規格で定められている通信手順であるから、本願発明の「予め定められる通信制御手順」に相当する。
b.引用発明の「回線制御部12,13」は、上記a.を考慮して、電話回線を介して通信するための通信制御手段であるから、本願発明の「通信制御手段」に相当する。
c.引用発明の「送信情報を一時格納したり、受信情報を一時格納する各種のメモリが設けられたRAM3」は、送信情報と受信情報が混ざらないように独立して領域が設けられることは明らかであるから、本願発明の「送信すべき送信情報を記憶する送信情報記憶手段と、受信した受信情報を記憶する受信情報記憶手段」に相当する。
d.引用発明の「中央制御装置」は、本願発明の「主制御手段」に相当する。
e.本願発明の「複数のモジュールとして構成される」と、引用発明の「複数の構成要素として構成される」は、「複数の構成要素として構成される」の点で一致する。
f.引用発明の「回線コントロール部およびその制御を行う中央制御装置」は、送受信を制御するものであるから「送受信制御手段」である。

そうしてみると、本願発明と引用発明とは、
「複数の回線に個別的に接続され、それぞれが予め定められる通信制御手順にしたがって送受信動作を実行する複数の構成要素として構成される複数の通信制御手段と、
前記複数の通信制御手段の中から通信中でない通信制御手段を1つ選んで送信動作を実行させ、前記複数の通信制御手段の中から回線からの呼出信号を受信した通信制御手段を選んで受信動作を実行させる送受信制御手段と、
送信すべき送信情報を記憶する送信情報記憶手段と、
受信した受信情報を記憶する受信情報記憶手段と、
制御手段で選ばれた通信中でない通信制御手段に送信情報記憶手段が記憶する送信情報を与える、および制御手段で選ばれた呼出信号を受信した通信制御手段が受信した受信情報を受信情報記憶手段に与える情報の授受動作を、通信制御手段毎に独立して制御する主制御手段とを含んで構成される通信装置。」で一致し、
「複数の構成要素として構成される」複数の通信制御手段に関して、本願発明では、「複数のモジュールとして構成される」であるのに対して、引用発明では、「複数の構成要素として構成される」点で相違する。

次に、前記相違点について検討する。
引用例においては、上記摘記(ウ)に「なお、前記実施例では2回線を使用したものについて述べたが必ずしもこれに限定されるものではなく、3回線を使用したものであつても良い。」と記載するごとく、回線を増やすことが考慮されている。この場合、当然、引用発明において、回線制御部も、3個になるものと認められる。ところで、技術一般の手法として、同じ構成を複数用いる場合は、その構成をモジュールとすることは、例えば、パーソナルコンピュータのメモリ・モジュール如く引用文献を示すまでもなく知られたものであるから、引用発明の「複数の構成要素として構成される」を「複数のモジュールとして構成される」ようにすることは当業者が容易に成し得る程度のことである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、および、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-02 
結審通知日 2004-12-07 
審決日 2004-12-20 
出願番号 特願平8-68754
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠塚 隆  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 望月 章俊
野元 久道
発明の名称 通信装置  
代理人 小池 隆彌  
代理人 西教 圭一郎  
代理人 木下 雅晴  

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