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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D |
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管理番号 | 1111018 |
審判番号 | 不服2002-23873 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-05-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-12 |
確定日 | 2005-02-04 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第289119号「塗料色見本カード」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月21日出願公開、特開平 8-127743〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年10月28日の出願であって、平成14年11月12日(発送日)に拒絶の査定がなされ、平成14年12月12日に当該拒絶査定を不服とする審判が請求され、平成15年1月9日に手続補正がなされたものである。 2.平成15年1月9日の手続補正について [結論] 平成15年1月9日の手続補正を却下する。 [理由] 平成15年1月9日の手続補正は、補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 以下に、理由を詳述する。 (い)補正後発明 補正後発明は、補正後の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである。 「オートカラーカードに掲載された色及びそれに近似した塗色を加えた複数の塗色を1枚のシートに記載してなるシート状色見本(A)と該見本の各塗色の原色配合を記載した配合票シート(B)とからなり、しかも、該配合票シート(B)の一部に設けたポケットに該シート状色見本(A)を取出し可能なように収納してなることを特徴とする自動車塗料調色用色見本カード。」 (ろ)原審の拒絶理由で引用された刊行物の記載 (ろ-1)実願平01-053766号(実開平02-144733号)のマイクロフィルム(以下、引用例1という。) 「銘柄の異なるインキを対比するための表示体であって、シート上に第1インキの銘柄及び第2インキの銘柄をそれぞれ表示する第1銘柄表示部及び第2銘柄表示部を並設し、この第1銘柄表示部の下方に形成され、第1インキの色見本及びその属性情報を表示する第1表示部と、前記第2銘柄表示部の下方に形成され、この第1表示部と対応する第2インキの色見本及びその属性情報を表示する第2表示部が設けられていることを特徴とするインキ管理表示体。」[実用新案登録請求の範囲(1)] 「本考案のインキ管理表示体は、・・・、第1の銘柄のインキの色で指定を受けても、これら表示部を対比し、第2の銘柄のインキを用いて再現することが可能となる。」[明細書第4頁10〜16行参照] 「<実施例>本考案の実施例を用いて詳細に説明する。本考案のインキ管理表示体は、第1図に示すようにシート(A)の左側上方に、第1インキ銘柄及び第2インキの銘柄、すなわち・・・が並列して形成されている。」(明細書4頁17行〜5頁3行参照) 「品番や配合等の属性情報を示す表示欄」[明細書5頁8行参照] 「これら第1表示部と第2表示部は対応関係、すなわちA社のインキの色をB社の複数インキを配合して再現する関係となるように並設されており、1つの表示群を形成する。そして、この表示群が複数、つまり複数種類のインキについての表示群が形成されている。」(明細書5頁10〜15行)。 (ろ-2)特開昭61-241627号公報(以下、引用例2という。) 「塗料販売治具と少なくとも3種以上5種以下の定容量でかつ各定容量についてそれぞれ5色以上の基本塗料が内填される塗料容器とを用意し、塗料販売治具が必要数の色見本が表示されるとともにこの色見本の色を調製するのに必要な前記用意された塗料容器の内所定の2個の組合せが記載され、さらに色見本の色がこの2個の塗料容器に内填されるすべての塗料の混合により調製できることを特徴とする塗料販売治具。」[特許請求の範囲(1)] 「表示される色見本が同系色を近づけて配設され、かつこの色見本の色を調製するのに必要な前記用意された塗料容器の内所定の2個の組合せがこの色見本近傍に記載されてなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の塗料販売治具。」[特許請求の範囲(4)] 「この発明は塗料販売治具、特に家庭塗料における塗料販売治具に係り、その目的は、塗料販売治具を提供することにより、塗料に対する知識がない人でも、少ない基本塗料から多くの色を容易かつ確実に得ることができ、このため楽しく塗料の選択ができ、かつその塗料の製造者及び販売者においては在庫量の低減を可能とすることにある。」(第1頁右下欄10〜16行) 「この発明において、・・・、色見本(4)の数が多くなる場合には・・・表示される色見本(4)が同系色を近づけて配設されかつこの色見本(4)の色を調製するのに必要な用意された塗料容器(2)の内所定の2個の組合せがこの色見本(4)近傍に記載されてなる塗料販売治具(1)が好ましく採用できる。この際の色見本(4)の配置はマンセル色票に準じて行うのが最も好ましい。この様に同系色ばかり近づけて配設すれば微妙な色の差異をも把握した上で色を選択することができる。」(第4頁左上欄9〜20行参照) (ろ-3)登録実用新案第3002468号公報(以下、引用例3という。) 「【請求項1】 ベースシートの一面側に透明シートを設け、ベースシートと透明シートとで一辺側が開口した袋状部を構成し、該袋状部の開口部延設方向と実質的に直交する方向にベースシートと透明シートとを複数箇所線状に接合することにより、前記袋状部の開口部延設方向に沿う方向に複数配列された、色見本ピースを収容可能な帯状ポケット部を形成し、該帯状ポケット部を有するベースシートと透明シートとの組み合せ体を複数葉ノート状に綴じたことを特徴とする色見本ピース保持冊子。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1参照) 「従来の色見本は、通常、大型の冊子状に構成されたものが多く、多種多様の色見本ピースが予め定められた規則(たとえば、濃い色から薄い色)に従って配列されている。」(明細書の段落番号0003) 「しかしながら、上記のような色見本は、通常、用紙に直接印刷されているものや、色見本ピースを台紙等に直接貼着しているものが多い。この種の色見本にあっては、・・・、実際の製作物の配色バランスを依頼者に正しく認識させるのが困難なことが多いという問題がある。」(明細書の段落番号0004参照) 「本考案は、上記のような問題点に着目し、色見本ピースを容易に着脱可能に保持することにより、デザイン者の意図する配色を容易に具現化し、正確に依頼者等に認識させることができるとともに、容易に小型に形成でき、持ち運びにも便利な色見本ピース保持冊子を提供することを目的とする。」(明細書の段落番号0006) 「この色見本保持冊子を用いることにより、・・・。また、同色系統の色見本ピース8を配列すれば同色系統の色見本ピース8の微妙な色調の変化を直接対比し観察することも可能になる。」(明細書の段落番号0016参照) (は)対比 引用例1には、前記した記載からみて、発注者の色の再現、すなわち、調色、を目的として作成された、対比すべき複数の色見本とそれぞの配合等の属性情報とからなるシート状のインキ管理表示体に係る発明(以下、「引例1発明」という。)が記載されている。 そして、シート状のインキ管理表示体は、実施例に関して示されるように、1枚のシートに第1インキ銘柄及び第2インキ銘柄の色見本と配合等の属性情報とを並列して記載したカード状のものである。 してみると、前記の補正後発明と引例1発明とは、「複数の色を記載してなる色見本(A)と該見本の各色の配合を記載した配合票とを1枚のシートにまとめた調色用色見本カード」である点において一致し、次の点で一応の相違を有する。 (イ)補正後発明は、「複数の色を記載してなる色見本」を「配合票シート(B)」と別体の「1枚のシートに記載してなるシート状色見本(A)」とし、「配合票シート(B)の一部に設けたポケットに取出し可能なように収納」しているのに対し、引例1発明は、色見本と配合票を1枚のシートに併記している点、 (ロ)調色および色見本の複数の色について、補正後発明は、「自動車塗料調色」とし「オートカラーカードに掲載された色及びそれに近似した塗色を加えた複数の塗色」としているのに対して、引例1発明は、インキ調色とし複数種類のインキの色とする点、 (ハ)配合票の記載について、補正後発明は、「見本の各塗色の原色配合を記載」としているのに対して、引例1発明は、複数のインキの配合等としている点。 (に)前記相違点に対する当審の判断 (に-1)相違点(イ)について 引用例3には、用紙に直接印刷されている色見本を、台紙に設けた帯状ポケットに着脱可能に収納すると、使用に際して便利であることが記載されている。 したがって、引用例3の記載を参照すれば、引例1発明における、1枚のシートに記載されている色見本の部分を、分離可能なシート状色見本とし、配合票の印刷部分にポケットを形成し、当該ポケットに前記シート状色見本を取り出し可能なように収納すること、すなわち、引例1発明において相違点(イ)に係る補正後発明の構成を採用することは、引用例1と引用例3の記載に基づいて、当業者が容易に想到できることである。 (に-2)相違点(ロ)について 色見本を自動車塗料の調色の分野に利用すること、および、色見本において、近似した色が隣接するように配列することは、ともに本出願前に周知であり[前者については、必要であれば、特開昭61-204066号、実願昭59-83626号(実開昭61-976号)のマイクロフィルム、特開平4-29185号を参照、後者については、引用例2,3をも参照)、また、自動車塗料用色見本にオートカラーカードに掲載された色を含むようにすることは当然のことである。 してみると、引例1発明を自動車塗料調色に応用し、その際、色見本の色を近似した塗色を含む複数の塗色とし、さらに当該塗色の中にオートカラーカードに掲載された色を含むこと、すなわち、引例1発明において相違点(イ)に係る補正後発明の構成を採用する際に、相違点(ロ)に係る補正後発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到できることである。 (に-3)相違点(ハ)について 配合票の記載について、本願の明細書の段落番号0007には、「見本色を実現させるために使用する原色名およびその配合量など」と記載されており、補正後発明における「見本の各塗色の原色配合」とは、見本の各塗色を実現させるために使用する原料の色名とその配合量を示すものと解されるところ、塗料の色見本の配合票に、その塗色を実現させるための原料の色名とその配合量を記載することは、当業者が当然に想起することである。 したがって、引例1発明において、相違点(イ)及び相違点(ロ)に係る補正後発明の構成を採用するとともに相違点(ハ)に係る補正後発明の構成を採用するとすることは、当業者が容易に想到できることである。 (に-4)補正後発明の効果について 引用例2には、塗料販売治具において、色見本とそれを実現するための2種類の塗料(5色以上の基本塗料が内填されている)の配合割合とを表示したものを必要数の色見本について表示すること、および、表示される色見本を、微妙な色の差異を把握した上で色の選択ができるように、同系色の色が近くなるように配設することによって、多くの色を微妙な色の差異をも把握した上で容易かつ確実に得ることができることが記載されている。 そして、引用例2の当該記載を併せ考えれば、補正後発明の、調色作業を速やかに行うことができるとの効果は、当業者が容易に想起できるものである。 なお、補正後発明における「近似した塗色」という表現は、その表現からみて、塗料ロッド及び塗装条件などによって生じる微妙なバラツキによる塗色や時間経過と共に変化する塗膜の塗色などにできるだけ一致するように調色した塗色を、限定的に表現したものであると解することはできない。 (ほ)むすび してみると、補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、前記補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。 3.本願発明に対する判断 平成15年1月9日の手続補正は、前記したように、却下されたので、本願発明は、前記補正前の明細書の記載から把握されるものであり、その記載によれば、本願発明は、補正前の明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その内容は、補正後発明において、シート状色見本(A)について、「オートカラーカードに掲載された色及びそれに近似した塗色を加えた複数の塗色を1枚のシートに記載してなる」を「近似の複数の塗色を1枚のシートに記載してなる」とし、色見本カードについて、「自動車塗料調色用色見本カード」を「塗料色見本カード」としたものであって、補正後発明を含むものである。 そして、補正後発明は、前記したように、前記引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 してみると、本願発明は、補正後発明について記載した理由と同様の理由により、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができ、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-11-12 |
結審通知日 | 2004-11-24 |
審決日 | 2004-12-08 |
出願番号 | 特願平6-289119 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09D)
P 1 8・ 575- Z (C09D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 浩子 |
特許庁審判長 |
雨宮 弘治 |
特許庁審判官 |
岩瀬 眞紀子 関 美祝 |
発明の名称 | 塗料色見本カード |